糖尿病・代謝・内分泌科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:50

人には聞こえない音が食後の血糖上昇を抑える可能性

 人の耳には聞こえない超高周波が含まれている音が流れている環境では、ブドウ糖負荷後(日常生活では食後に相当)の血糖値の上昇が抑制される可能性が報告された。国立精神・神経医療研究センター神経研究所疾病研究第七部の本田学氏、国際科学振興財団の河合徳枝氏らの研究によるものであり、結果の詳細は「Scientific Reports」に11月2日掲載された。  メンタルヘルス関連の病気だけでなく、糖尿病や高血圧などの身体疾患の病状にもストレスが深く関与していることが知られている。そのため、ストレスを抑制する心理的なアプローチが試みられることもあるが、ストレスの原因や効果的な対処法は人それぞれ異なることから、実用性は限定的。一方、脳の情報処理メカニズムに着目し、音や光などの刺激を用いた新たな治療法の確立を目指す、「情報医学・情報医療」という研究が続けられている。

エネルギー消費量が高い歩き方/BMJ

 歩行障害がなく1日平均歩数が約5,000歩の成人において、1日の歩数の約22~34%を、より高エネルギーで低効率な歩き方(『ティーバッグ氏』の歩き方)に変えて歩く(約12~19分間)ことで、1日のエネルギー消費量は100kcal増加した。成人では、このような歩き方で1日約11分間歩くことは、1週間に強強度の身体活動を75分間したことに相当するという。米国・アリゾナ州立大学のGleen A. Gaesser氏らが、英国のコメディグループ「モンティ・パイソン」によるコント『バカ歩き省(Ministry of Silly Walks)』(1970年に英国で放映されたコメディ番組で演じられたスケッチ)にインスピレーションを受け、同コントに登場する「バカ歩き」のエネルギー消費量を定量化する目的で行った実験的研究の結果を報告した。同コントのキャラクター『ティーバッグ氏』と『ピューティー氏』の非効率的な歩き方は、通常の歩き方と比較して3~7倍動きが激しいことが示されていたが、それらのエネルギー消費量は調査されていなかった。著者は、「1970年代初めに非効率的な動作を促進する取り組みが行われていたら、われわれは現在、もっと健康的な社会で生活していたかもしれない」とまとめている。BMJ誌2022年12月21日クリスマス特集号「PHYSICAL」掲載の報告。

“適切な水分補給”、その意義は?

 適切な水分補給をしている人は、慢性疾患発症リスクが低く、長生きであったことを米国国立衛生研究所(NIH)心肺血液研究所のNatalia I. Dmitrieva氏らが明らかにした。eBioMedicine誌2023年1月2日掲載の報告。  マウスでは、水分補給を制限することで、生存期間の短縮や退行性変化の促進がみられることが報告されている。そこで、著者らの研究グループは、適切な水分補給が老化を遅らせるという仮説を立て、45~66歳の成人を対象にその仮説を検証した。

アラーム付き間歇スキャンCGM vs. SMBG-試合前から勝負あり?(解説:住谷哲氏)

持続グルコース測定器(continuous glucose monitoring:CGM)は大きく分けて3種類ある。現在わが国で使用できる機器も併せて記載すると、(1)リアルタイムCGM(real-time CGM[rtCGM]):そのときの血糖値が常に測定表示されるもの(Dexcom G6、ガーディアン コネクト)、(2)間歇スキャンCGM(intermittently scanned CGM[isCGM]、flash glucose monitoring[FGM]とも呼ばれる):患者がセンサーをスキャンしたときにのみグルコース値が表示されるもの(フリースタイルリブレ)、(3)professional CGM(pCGM):患者はグルコース値を装着中に見ることができず検査終了後に解析するもの(フリースタイルリブレPro)、になる。最も汎用されているのはフリースタイルリブレであるが、欧米ではすでに低血糖・高血糖アラーム付きのフリースタイルリブレ2にほぼ移行しており、他の新規医療機器と同じくわが国は周回遅れの状況である。

慢性腎臓病に対するSGLT2阻害薬エンパグリフロジンの有用性(解説:小川大輔氏)

SGLT2阻害薬による糖尿病患者の腎保護効果については数多くの報告があるが、糖尿病以外の慢性腎臓病に対する効果はまだ報告が少ない。2021年にSGLT2阻害薬ダパグリフロジンが慢性腎臓病の進行を抑制するという試験結果が発表され、ダパグリフロジンは日本において慢性腎臓病の保険適用を取得した。今回、SGLT2阻害薬エンパグリフロジンの慢性腎臓病に対する試験の結果が報告された。この試験では、推算糸球体濾過量(eGFR)が20~45mL/分/1.73m2未満、またはeGFR 45~90mL/分/1.73m2未満で尿中アルブミン/クレアチニン比(ACR)が200(mg/g・CRE)以上の慢性腎臓病患者、合計6,609例をエンパグリフロジン(10mg・1日1回)投与群、またはプラセボ投与群に無作為に割り付けた。主要評価項目は、腎臓病の進行(末期腎不全、eGFRが持続的に10mL/分/1.73m2未満、eGFRがベースラインから40%以上持続的に低下、腎臓病による死亡)または心血管系による死亡の複合アウトカムであった。結果は追跡期間中央値2.0年の間に、主要アウトカムの発生がエンパグリフロジン群3,304例中432例(13.1%)、プラセボ群3,305例中558例(16.9%)であった(p<0.001)。また糖尿病の有無にかかわらず、またeGFR値によるサブグループ別でも結果は一貫していた。重篤な有害事象の発生率は両群間で有意差はみられなかった。

BMIと心血管疾患による院内死亡率との関連―日本人150万人のデータ解析

 心筋梗塞や心不全、脳卒中などの6種類の心血管疾患(CVD)による院内死亡率とBMIとの関連を、日本人150万人以上の医療データを用いて検討した結果が報告された。低体重は全種類のCVD、肥満は4種類のCVDによる院内死亡リスクの高さと、有意な関連が見られたという。神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科先端医学分野の山下智也氏らの研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」に11月7日掲載された。  肥満が心血管代謝疾患などのリスク因子であることは広く知られており、肥満是正のための公衆衛生対策が長年続けられている。その一方、高齢者では肥満が死亡リスクに対して保護的に働くことを示すデータもあり、この現象は「肥満パラドックス」と呼ばれている。ただし、肥満の健康への影響は人種/民族により大きく異なると考えられることから、わが国でのエビデンスが必要とされる。そこで山下氏らは、日本循環器学会の患者レジストリ「循環器疾患診療実態調査(JROAD)」を用いて、日本人のBMIと急性心血管疾患による院内死亡率との関連を検討した。

若年発症2型DMは世界的な健康問題-30年で1.5倍超に/BMJ

 1990年以降、若年発症2型糖尿病は、世界的に増大している青少年・若年成人(15~39歳)の健康問題であり、とくに社会人口統計学的指標(SDI)低中・中の国で疾病負担は大きく、また30歳未満の女性で疾病負担が大きいことを、中国・ハルピン医科大学のJinchi Xie氏らが世界疾病負担研究2019(Global Burden of Disease Study 2019)のデータを解析し報告した。これまで若年発症2型糖尿病の世界的疾病負担や長期傾向、および性別やSDI分類別にみた違い、さらに国別の若年発症2型糖尿病寄与リスク因子の違いなどは調査されていなかった。BMJ誌2022年12月7日号掲載の報告。

過体重・肥満の膝OA疼痛、食事・運動療法は有効か/JAMA

 過体重または肥満の変形性膝関節症患者では、18ヵ月間の食事療法と運動療法を組み合わせたプログラムは生活指導のみの場合と比較して、わずかだが統計学的に有意な膝痛の改善をもたらしたものの、この改善の臨床的な意義は不明であることが、米国・ウェイクフォレスト大学のStephen P. Messier氏らが実施した「WE-CAN試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2022年12月13日号に掲載された。  WE-CAN試験は、米国ノースカロライナ州の3つの郡(都市部1郡、農村部2郡)で行われた無作為化臨床試験であり、2016年5月~2019年8月の期間に参加者の登録が行われた(米国国立関節炎・骨格筋/皮膚疾患研究所[NIAMS]の助成を受けた)。

心臓に良いとされるサプリのコレステロール低下作用は否定的/JACC

 心臓に良いとされているサプリメント(サプリ)のコレステロール低下作用を検討した結果、いずれも見るべきものはなく、中には負の影響を示すものもあったとする報告が、米国心臓協会(AHA)学術集会(Scientific Sessions 2022、11月5~7日、米シカゴ/バーチャル開催)で発表されるとともに、「Journal of the American College of Cardiology(JACC)」に論文が同時掲載された。米クリーブランド・クリニックのLuke Laffin氏らの研究によるもの。  心血管疾患のリスク抑制には、血清脂質値の改善〔LDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪の低下、HDL(善玉)コレステロールの上昇〕が重要であり、その手段として医師からは、主としてスタチンと呼ばれる薬剤が処方される。一方、処方箋のいらないサプリメントの中にも心臓に良いとされているものがある。ただし、それらの血清脂質改善作用は明らかでない。そこでLaffin氏らは、それら6種類のサプリの脂質改善作用をスタチンの一種であるロスバスタチンと比較するという、前向き無作為化単盲検比較試験を実施した。