感染症内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:34

新型コロナワクチン、午前に打つと効果が高い?

 概日リズム(体内時計)によってワクチンによる防御効果に差が出るという研究結果が報告された。米国・ワシントン大学のGuy Hazan氏らによる本研究はJournal of Clinical Investigation誌2023年6月1日号に掲載された。  研究者らは、イスラエルの大規模コホートに登録された1回以上COVID-19ワクチンを接種した151万5,754例(12歳以上、99.2%がファイザー製BNT162bを接種)を後方的に分析、ワクチンの接種時間とCOVID-19感染予防効果との関連を分析した。エンドポイントはブレークスルー感染、COVID-19関連の救急外来受診および入院だった。ワクチン接種の時間帯は、午前(8時~11時59分)、午後(12時~15時59分)、夜間(16時~19時59分)に分けた。年齢、性別、合併症の有無の差を調整するためにCox回帰を採用した。

感染対策義務のない学会参加、コロナ感染はどれくらい?

 対面式の学術集会参加後の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染率を調べた報告はあるが、オミクロン株流行期に開催された感染対策義務のない学術集会参加後のSARS-CoV-2感染率は報告されていない。そこで、Saarland University Medical CenterのAlaa Din Abdin氏らは、オミクロン株流行期に感染対策義務なしで開催された、ドイツ眼科学会年次総会2022の参加者4,463人を対象として、学術集会参加後のSARS-CoV-2感染率と感染に関連する因子を検討した。その結果、調査対象者の8%が学術集会後にSARS-CoV-2検査陽性となり、ほかの研究で報告されている割合(0~1.7%)よりも高かった。また、過去にSARS-CoV-2感染歴があると学術集会での感染は少なく、民泊利用者は感染が多かった。

Long COVIDに早期メトホルミン投与が有効

 Long COVID(いわゆる新型コロナ後遺症)は、倦怠感や味覚症状など多岐にわたる症状があり、世界中で多くの人が苦しんでいるものの、現時点で確立された治療法はない。米国・ミネソタ大学、Carolyn T Bramante氏らは、COVID-19感染直後の外来患者に、メトホルミン、イベルメクチン、フルボキサミンの単独投与と併用投与を行い、COVID-19の重症化予防とLong COVIDのリスク低減効果を評価した研究を行った。  米国の6施設で行われたこの第III相無作為化四重盲検プラセボ対照COVID-OUT試験において、3剤に重症化予防効果がなかったことはすでに報告されているが、本試験のLong COVIDのリスク低減効果の分析がThe Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2023年6月8日号に掲載された。

医療ジャーナル査読者、コロナ流行で変化か/BMJ

 BMJ出版グループの医療ジャーナルについて、査読依頼と依頼同意に関するジェンダーおよび地域性の格差について調べたところ、女性への依頼率が低いことや、依頼同意率は編集者が女性の場合のほうが男性の場合よりも低いといった偏りがあることが示された。また、地域的に欧州に比べアジアやオセアニアへの査読依頼率が低く、高所得国に偏っていることも明らかになったという。スイス・ジュネーブ大学病院のKhaoula Ben Messaoud氏らが後ろ向きコホート研究の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「編集者は、偏りを減らしダイバーシティ(多様性)を改善するために、効果的な戦略を見つけて実行する必要があり、上位中所得国・低所得国からより多くの女性や研究者が査読に参加するよう、戦略の進捗状況を評価し続けなければならない」と述べている。BMJ誌2023年6月13日号掲載の報告。

XBB.1対応コロナワクチン、秋接種から導入へ/厚労省

 厚生労働省は6月16日に厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会を開催し、2023年度秋冬の接種に使用する新型コロナワクチンについて、XBB.1系統を含有する1価ワクチンを用いることが妥当であるという方針を示した。現在の主流であるオミクロン株XBB.1系統に対して、現行のBA.4/5対応2価ワクチンでは中和抗体価の上昇が低く、移行しつつある主流流行株に対してより高い中和抗体価を誘導するためには、最も抗原性が一致したワクチンを選択することが適切であるという。

コロナ5類移行後の院内感染対策の現状は?/医師1,000人アンケート

 5月8日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染症法上の位置付けが「5類感染症」に移行となったが、医療機関ではその前後の過渡期に、これまで継続してきたさまざまな院内感染対策の緩和について議論されていた。5類に移行して約1ヵ月経過し、新規コロナ感染者は全国的に増加傾向にあり、院内感染対策をどこまで緩和するか、今なお難しい判断が迫られている。  病床の有無やコロナ診療状況など条件の異なる医療機関において、院内感染対策の現状や、抱えている課題を把握するため、病院を20床以上、診療所を20床未満と定義し、病院522人、診療所502人の会員医師1,024人を対象に『病院・診療所別 新型コロナ5類移行後の院内感染対策アンケート』を5月30日に実施した。

米FDAが治療困難な細菌性肺炎の治療薬を承認

 米食品医薬品局(FDA)は5月23日、Acinetobacter baumannii-calcoaceticus complex(以下、A. baumannii)に起因する細菌性の院内肺炎および人工呼吸器関連細菌性肺炎に対する新しい治療薬として、Xacduro〔一般名sulbactam for injection(スルバクタム静注用);durlobactam for injection(デュロバクタム静注用)〕を承認した。投与対象は18歳以上で、静脈内投与される。  グラム陰性球桿菌であるアシネトバクター属には多くの菌種が存在するが、医療機関で肺炎などの感染症の原因菌となることが最も多いのがA. baumanniiである。A. baumanniiは、互いに区別することが困難な4菌種の総称で、体のさまざまな部位に感染を引き起こす。A. baumanniiはまた、薬剤耐性を獲得しやすい。現状では、薬剤耐性A. baumannii感染に対する治療法は限定的である。

コロナ感染2年後、18%に罹患後症状/BMJ

 感染前にワクチン未接種であった重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染者の約18%に、感染後2年まで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患後症状が認められ、未感染者と比較して感染者には症状の過剰リスクがあることが、スイス・チューリッヒ大学のTala Ballouz氏らが実施した「Zurich SARS-CoV-2 Cohort研究」のデータ解析で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年5月31日号で報告された。

コロナ罹患後症状、スコアに基づく定義を提案/JAMA

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染後に生じる持続的であり再発を繰り返す、あるいは新規の症状は、罹患後症状(postacute sequelae of SARS-CoV-2 infection:PASC)と呼ばれ、long COVIDとしても知られている。米国・マサチューセッツ総合病院のTanayott Thaweethai氏らは、米国国立衛生研究所(NIH)によるRECOVER(Researching COVID to Enhance Recovery)Initiativeの一環として、RECOVER成人コホート9,764例のデータを解析し、SARS-CoV-2感染者では非感染者と比較して37症状が感染後6ヵ月以上の時点で多く認められ、このうち12症状の症状スコアに基づき、PASCを定義する予備的ルールを開発した。著者は、「PASCの実用的な定義のためには、他の臨床的特徴をさらに組み込み反復的な改良が必要である」とまとめている。JAMA誌オンライン版2023年5月25日号掲載の報告。

エムポックス、ワクチン2回接種で優れた予防効果/NEJM

 全米の電子健康記録(EHR)データを用いた症例対照試験の結果、エムポックス(日本では2023年5月26日に感染症法上の名称を「サル痘」から「エムポックス」に変更)患者は対照患者よりも、天然痘/エムポックスワクチン(modified vaccinia Ankara[MVA]ワクチン、商品名:JYNNEOS、Bavarian Nordic)の1~2回接種を受けていないことが示唆された。米国疾病予防管理センター(CDC)のNicholas P. Deputy氏らが報告した。米国では2023年3月1日時点でエムポックスが3万例超報告され、とくにトランスジェンダー、ゲイ、バイセクシャル、男性間性交渉者で流行が認められている。JYNNEOSは、2019年にFDAが承認し(1回0.5mL皮下投与)、2022年8月9日には緊急使用(1回0.1mL皮内投与)が認められた。しかし、リアルワールドでの有効性データはいずれの投与についても限定的であった。NEJM誌オンライン版2023年5月18日号掲載の報告。