感染症内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:35

COVID-19罹患後症状の追跡調査(解説:小金丸博氏)

COVID-19に罹患した一部の患者にさまざまな罹患後症状(いわゆる後遺症)を認めることがわかってきたが、その原因やメカニズムはまだ解明されておらず、効果的な介入方法も確立していない。罹患後症状はpost COVID-19 condition、long COVID、post-acute sequelae of SARS-CoV-2 infection(PASC)などと呼ばれ、WHOは「新型コロナウイルスに感染した人にみられ、少なくとも2ヵ月以上持続し、他の疾患による症状として説明できないもの」と定義している。罹患後症状の種類や有病率、長期経過の把握は、治療方法や介入方法を検討するための臨床試験の設計につながる有益な情報となる。

オミクロン株(XBB.1.5)に対応した追加免疫に関する承認事項一部変更申請/モデルナ

 メッセンジャーRNA(mRNA)治療薬とワクチンのパイオニアであるバイオテクノロジー企業 Moderna(米国)の日本法人モデルナ・ジャパンは2023年7月7日、「スパイクバックス筋注」において、12歳以上を対象にオミクロン株(XBB.1.5)に対応した追加免疫用1価ワクチンとして厚生労働省に承認事項一部変更申請を行ったことを発表した。  Modernaは、6月に開催された米国食品医薬品局(FDA)の諮問会議VRBPACにおいて、オミクロン株の派生型であるXBB.1.5、XBB.1.16およびXBB.2.3.2などのXBB亜系統に対して免疫応答を示すXBB.1.5対応の1価ワクチンに関する予備的な臨床データを発表している。

ワクチン別、デルタ/オミクロン期の重症化抑制効果/BMJ

 米国退役軍人の集団において、デルタ株およびオミクロン株の優勢期で、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染して30日以内の人を対象に、ワクチン接種の回数や種類と、入院や死亡などの重症アウトカムとの関連性を調べた後ろ向きコホート研究が、米国・Lieutenant Colonel Charles S. Kettles VA Medical CenterのAmy S. B. Bohnert氏らにより実施された。本研究の結果、ワクチンの種類にかかわらず、未接種者よりも接種者のほうが重症化率や死亡率の低下が認められた。また、mRNAワクチンに関しては、ファイザー製よりもモデルナ製のほうが高い効果が得られることが示唆された。BMJ誌2023年5月23日号に掲載の報告。

近年の流行性耳下腺炎のアウトブレイクは免疫減弱が原因

 免疫減弱モデルが、流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふくかぜ)ワクチン接種率が高い国で近年観察されたアウトブレイク再燃と強く合致しているとの研究結果が、「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」1月9日号に掲載された。  米ジョージア大学Odum School of EcologyのDeven V. Gokhale氏らは、流行性耳下腺炎ワクチン接種率の高い複数の国での同疾患のアウトブレイク再燃を踏まえ、この傾向の促進因子として、2つのワクチン効果不全のメカニズムを提示した。それらは、(1)免疫の段階的な減弱、(2)ワクチン免疫を回避する新規ウイルス遺伝子型の登場、である。米国の、年齢構造化した疫学、人口統計学的属性、およびワクチン接種に関する時系列データを基に、伝播メカニズムモデルを用いて尤度に基づく仮説検定を実施した。

既存の保険証の有効期限の延長も必要/日医

 日本医師会常任理事の釜萢 敏氏が、7月5日の定例記者会見で、新型コロナウイルス感染症の現在の感染状況について報告し、「現状は第9波に入ったと判断するのが妥当」との見解を示した。  「4月上旬から、緩やかではあるけれども新規感染者が増えているという状況が今日までずっと続いていて、今後も夏に向けて引き続き感染者が増える恐れがある。幸いに全国的には医療の逼迫はまだそれほど多くはなく、救急搬送困難事例は少し増えてはいるがまだそれほどではない」と述べた一方で、感染者が増加している沖縄県の状況について危機感を示した

新型コロナ、軽症でも精子に長期ダメージ

 欧州ヒト生殖医学会(European Society of Human Reproduction and Embryology:ESHRE)第39回年次総会で発表された新たな知見によると、COVID-19に感染した男性は、3ヵ月以上が経過しても精子の濃度が低下し、泳ぐことのできる精子も減少していたという。同学会が2023年6月26日付のプレスリリースで発表した。  スペイン・IERA財団の生殖専門家であるRocio Nunez-Calonge氏は、COVID-19感染後、平均100日が経過しても精子の質と濃度に改善はみられなかった、と述べた。

低中所得国において、せっけん手洗いによる介入は急性呼吸器感染症(ARI)の減少に寄与する(解説:寺田教彦氏)

本研究は、低所得国および中所得国(LMIC)において、せっけんを用いた手洗いにより急性呼吸器感染症(ARI)の減少が推定されることを示した研究である。研究グループは、公衆衛生・感染症研究においてハーバード大学やジョンズ・ホプキンズ大学に並び有名なロンドン大学衛生熱帯医学大学院(LSHTM)である。2020年以降、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが世界的な問題となったが、それ以前はARIが世界的に罹患および死亡の主な原因であり、そしてARIによる死亡の83%が低中所得国で発生していた。本研究の和文要約は「せっけん手洗いで、低中所得国の急性呼吸器感染症が減少/Lancet」にまとめられている。

スコアに基づくコロナ罹患後症状の定義を提案した論文報告(解説:寺田教彦氏)

新型コロナウイルス感染症罹患後、数週間から数ヵ月にわたってさまざまな症状が続くことがあり、海外では「long COVID」や「postacute sequelae of SARS-CoV-2 infection:PASC」、本邦では新型コロナウイルス感染症の罹患後症状と呼称されている。世界各国から報告されているが、この罹患後症状の明確な診断基準はなく、病態も判明しきってはいない。WHOは「post COVID-19 condition」について、新型コロナウイルス感染症に罹患した人で、罹患後3ヵ月以上経過しており、少なくとも2ヵ月以上症状が持続し、他の疾患による症状として説明がつかない状態を定義しており(詳細はWHO HP、Coronavirus disease (COVID-19): Post COVID-19 condition.[2023/06/18最終確認]を参照)、本邦の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント 第2.0版」でも引用されている。

コロナ入院患者の他疾患発症、インフルと比較

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が重症化した人は、急性期後も心血管疾患、神経疾患、精神疾患、炎症性疾患や自己免疫疾患などを発症するリスクが高まり、Long COVIDとして問題になっている。しかし、それはほかの感染症と比較した場合にも、リスクが高いと言えるのだろうか? カナダ・トロント大学のKieran L Quinn氏らはカナダのオンタリオ州において、臨床データベースと医療行政データベースをリンクさせた集団ベースのコホート研究を実施し、研究結果はJAMA Internal Medicine誌オンライン版2023年6月20日号に掲載された。

COVID-19緊急事態は過ぎたが依然として対策意識の維持・向上を―AHAニュース

 世界保健機関(WHO)と米国政府の公式見解によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はもはや緊急事態には当たらないという。これは大きな変化ではあるが、誰もがパンデミックを意に介さずに行動できるようになったわけではないと、多くの専門家が指摘している。その1人、米ミシガン大学のPreeti Malani氏は、「誰にとってもリスクがなくなったわけではない。ただ、3年以上前に緊急事態宣言が発出された時とは、大きく状況が変化した」と語る。  WHOが2020年1月30日に初めて「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した時点で、COVID-19による死亡者はわずか213人しか判明していなかった。しかしその後、その数は世界中で700万人近くに増加した。WHOは今年5月5日に、緊急事態の終了を宣言し、5月11日には米国で公衆衛生上の緊急事態宣言が解除された。これに伴い、COVID-19のモニタリング体制や検査・ワクチン接種費用の公費負担も終了しつつある。とはいえ、COVID-19のウイルスが消え去ったわけではなく、WHOのMaria Van Kerkhove氏も、「緊急事態は終了したがCOVID-19の流行はまだ終わっていない」と、警戒の継続を呼びかけている。