神経内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:64

大うつ病性障害のない認知症患者の抑うつ、非薬物療法が有効/BMJ

 大うつ病性障害のない認知症患者の抑うつ症状の治療において、認知活性化療法やマッサージ/接触療法などを用いた非薬物的介入は、臨床的に意義のある症状の改善効果をもたらすことが、カナダ・セント・マイケルズ病院のJennifer A. Watt氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2021年3月24日号で報告された。抑うつや孤立感、孤独感などの症状を軽減するアプローチとして、地域で患者に非薬物的介入を行う「社会的処方(social prescribing)」への関心が高まっている。また、非薬物療法(たとえば、運動)が認知症患者の抑うつ症状を低減することが、無作為化試験で示されている。一方、大うつ病性障害の診断の有無を問わず、認知症患者の抑うつ症状に関して、薬物療法と非薬物療法の改善効果を比較した研究は知られていないという。

ナノミセルを使った効率的なゲノム編集法の開発に成功

 公益財団法人川崎市産業振興財団 ナノ医療イノベーションセンター(iCONM)の副主幹研究員、内田 智士氏(京都府立医科大学准教授)らの研究グループは、ナノミセルを用いたCRISPR/Cas9の送達手法を開発し、世界で初めてRNAを基盤としたマウス脳内でのゲノム編集に成功したことを3月10日付けのプレスリリースで発表した。本研究の成果は2021年3月4日にJournal of Controlled Release誌に掲載された。  ゲノム編集技術は、遺伝子異常が原因の疾患に対して、ヒトの遺伝子を自由に改変することで異常が起こった遺伝子を修復し、永続的な効果が期待できる治療法である。

米国におけるerenumab使用患者の特徴

 片頭痛は、中等度から重度の再発性発作を特徴とする衰弱性疾患であり、多くの患者が罹病している。erenumabは、クラス初のカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬であり、成人の片頭痛予防に適応を有する薬剤である。米国・IQVIAのDionne M. Hines氏らは、米国の成人片頭痛患者において、erenumabが処方されている患者の特徴、アドヒアランス、治療パターンについて調査を行った。Headache誌オンライン版2021年2月16日号の報告。

視神経脊髄炎スペクトラム障害の治療薬/田辺三菱製薬

 田辺三菱製薬株式会社は、「視神経脊髄炎スペクトラム障害(視神経脊髄炎を含む)の再発予防」を適応症とした治療薬イネビリズマブ(商品名:ユプリズナ 点滴静注 100mg)の製造販売承認を2021年3月23日に取得した。  視神経脊髄炎スペクトラム障害(Neuromyelitis Optica Spectrum Disorder:NMOSD)は、わが国での有病率が10万人あたり2~4人と少ない疾患で、重度の視神経炎と横断性脊髄炎を特徴とする中枢神経系の自己免疫疾患であり、指定難病となっている。

donanemab、早期アルツハイマー病の認知機能/日常生活動作を改善/NEJM

 早期の症候性アルツハイマー病(AD)患者の治療において、donanemabはプラセボと比較して、76週時の認知機能と日常生活動作を組み合わせた複合評価尺度(iADRS)が有意に良好であることが、米国・Eli LillyのMark A. Mintun氏らが実施したTRAILBLAZER-ALZ試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2021年3月13日号に掲載された。donanemabは、N末端がピログルタミン酸化されたアミロイドベータ(Aβ)のエピトープを標的とするヒト化IgG1抗体。第Ib相試験では、アミロイド陽性の軽度認知障害または軽症~中等症のアルツハイマー型認知症患者において、1回の投与でアミロイドプラーク量を減少させることが確認されている。

高齢者のせん妄と認知症リスク~メタ解析

 せん妄と新規認知症発症との関連は、観察研究によって調査されているが、利用可能なエビデンスを定量的および定性的に評価したレビューは、最近行われていなかった。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のJarett Vanz-Brian Pereira氏らは、せん妄と認知症に関連するエビデンスをシステマティックにレビュー、これを厳密に評価したうえで、せん妄発症後の新規認知症発症率を算出するため、検討を行った。International Journal of Geriatric Psychiatry誌オンライン版2021年2月9日号の報告。

認知症への中枢神経系作用薬巡るポリファーマシーの実態/JAMA

 2018年に、米国の認知症高齢患者の13.9%で、中枢神経系作用薬の不適切な多剤併用(ポリファーマシー)の処方が行われており、曝露日数中央値は193日に及び、最も多い薬剤クラスの組み合わせは抗うつ薬+抗てんかん薬+抗精神病薬であることが、同国・ミシガン大学のDonovan T. Maust氏らの調査で示された。研究の成果は、JAMA誌2021年3月9日号に掲載された。米国では、地域居住の認知症高齢者は、向精神薬やオピオイドの使用率が高いとされる。また、これらの患者では、中枢神経系作用薬の不適切な多剤併用により、認知機能の低下、転倒関連の傷害、死亡のリスクが増加する可能性があるという。

日本人高齢者の認知症リスクと近隣歩道環境~日本老年学的評価研究コホート

 日常生活に欠かせない環境資源の1つである歩道は、身体活動を促進するうえで重要なポイントとなる。しかし、先進国においても歩道の設置率は十分とはいえない。東京医科歯科大学の谷 友香子氏らは、日本における近隣の歩道環境と認知症リスクとの関連を調査した。American Journal of Epidemiology誌オンライン版2021年2月19日号の報告。  地域在住の高齢者の人口ベースコホート研究である日本老年学的評価研究の参加者を対象に、3年間のフォローアップ調査(2010~13年)を実施した。公的介護保険制度のデータより高齢者7万6,053人の認知症発症率を調査した。436ヵ所の住宅近隣ユニットの道路面積に対する歩道の割合を、地理情報システムを用いて算出した。認知症発症率のハザード比(HR)は、マルチレベル生存モデルを用いて推定した。

CGRPを標的とした片頭痛治療薬の作用機序比較

 カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を標的とした片頭痛治療薬の臨床効果は、片頭痛の病因に対し重要な役割を果たしている。3つのCGRPリガンドに対する抗体(fremanezumab、ガルカネズマブ、eptinezumab)とCGRP受容体に対する抗体(erenumab)は、米国において片頭痛予防に承認された薬剤である。また、2つの小分子CGRP受容体拮抗薬(ubrogepant、rimegepant)は、急性期片頭痛の治療薬として承認されている。片頭痛の治療では、CGRPリガンドまたは受容体を標的とすることが効果的であるが、これらの治療薬を比較したエビデンスは十分ではなかった。米国・Teva BiologicsのMinoti Bhakta氏らは、これらCGRPを標的とした薬剤における作用機序の違いを明らかにするため、検討を行った。Cephalalgia誌オンライン版2021年2月24日号の報告。

セントラルドグマが崩れたのか(解説:岡村毅氏)-1363

現代のアルツハイマー型認知症の病理のいわばセントラルドグマであるアミロイド仮説がかなり危なくなってきた。背景から説明したい。 アルツハイマー型認知症で亡くなった方の脳では、アミロイドが蓄積している。もっと詳しく書くと、後頭葉や側頭葉内側面から出現したアミロイドプラークが病気の進行とともに広がっていく(Braakらの研究)。このようにしてできたのが「アミロイド・カスケード仮説」である。この仮説は2005年から2010年にかけて行われたADNI(Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative)によって生きているヒトの脳でも確認された。