複雑なPCI症例ではDAPTを延長すべきか?

提供元:ケアネット

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公開日:2016/10/28

 

 薬剤溶出ステント(DES)留置を行った複雑な経皮的冠動脈形成術(PCI)後、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の最適期間は定まっていない。Gennaro Giustino氏ら研究グループは、PCIの複雑性に応じ、短期間(3~6ヵ月)と長期間(12ヵ月以上)におけるDAPTの有効性および安全性を比較検討した。Journal of the American College of Cardiology誌2016年10月25日号に掲載。

6つの無作為化コントロール試験から患者データを抽出
 研究グループは、PCI後のDAPTの期間を調査した6つの無作為化コントロール試験に基づく患者データを用いた。複雑なPCIとは、以下に挙げた特徴を少なくとも1つ以上有するものと定義した。すなわち、(1)3つ以上の冠動脈を治療、(2)3つ以上のステント留置、(3)3つ以上の病変を治療、(4)分枝病変で2つのステントの留置、(5)ステントの全長が60mmより長い、(6)慢性完全閉塞、である。1次エンドポイントは心臓死、心筋梗塞、もしくはステント血栓症の複合イベントで定義された主要心血管イベント(MACE)とした。安全性に関する主要評価項目は、大出血イベントとした。主要な解析手法として、Intention-to-treatが用いられた。

9,577例の患者データを解析、85%が新世代DES
 PCIの手技に関する変数が入手可能な患者データ9,577例を解析したところ、1,680例(17.5%)が複雑なPCIを受けていた。全体として、85%の患者が新世代のDESを留置されていた。平均追跡期間の中央値392日(四分位範囲:366~710日)で、複雑なPCIを受けた患者はMACEのリスクが高かった(調整ハザード比[HR]:1.98 、95%信頼区間[CI]:1.50~2.60、p<0.0001)。長期間DAPTで複雑なPCI群においては、MACEを有意に減少させた(調整HR:0.56、95%CI:0.35~0.89)。一方、長期間DAPTで複雑ではないPCI群においては、MACEを有意に減少させなかった(調整HR:1.01、95%CI:0.75~1.35、交互作用のp=0.01*)。
*長期間DAPTの使用に関して、複雑なPCIにおいてはMACEの減少につながるということを示している。

長期間DAPTのベネフィットは手技の複雑性と比例する
 長期間DAPTのベネフィットは、手技の複雑性が増すほど大きくなっていた。また、長期間DAPTは大出血リスクが高かったが、PCIの複雑性にかかわらず同等であった(交互作用のp=0.96)。これまでにわかっている臨床上のリスクに加えて、手技の複雑性もDAPTの継続期間の決定因子として考慮されるべき重要なパラメーターといえる。

(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)

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