北海道・足立医院の足立 直人氏らは、医師が双極性障害に用いる治療薬を選択する際に影響を及ぼす因子を明らかにするため、日本における全国調査のデータを用いて検討を行った。Human Psychopharmacology誌オンライン版2020年10月22日号の報告。
精神科クリニック176施設より、双極性障害外来患者3,130例の臨床データを、連続的に収集した。患者の一般的特性5項目(性別、年齢、教育、職業、社会的適応)、患者の精神疾患特性5項目(発症年齢、併存する精神疾患、ラピッドサイクラー、精神病理学的重症度、フォローアップ期間)、医師特性5項目(性別、年齢、専門医経験年数、開業年数、開業場所)の合計15項目について評価を行った。薬物療法の指標として、向精神薬(気分安定薬、抗うつ薬、抗精神病薬、抗不安薬、催眠鎮静薬)の数を用いた。各クリニックから収集したデータを分析した。
主な結果は以下のとおり。
・向精神薬の数と関連が認められた因子は、以下の7項目であった。
●患者の社会的適応
●患者の精神病理学的重症度
●患者の併存する精神疾患
●患者のフォローアップ期間
●医師の年齢
●開業年数
●患者の教育年数
・重回帰分析では、疾患重症度(不十分な社会的適応、併存する精神疾患)および難治性の疾患経過(長期フォローアップ期間)は、向精神薬の数と有意な関連が認められた。
著者らは「双極性障害に対する向精神薬の多剤併用は、医師に関連する因子よりも、患者に関連する因子のほうが、影響力が大きいことが示唆された」としている。
(鷹野 敦夫)