精神科入院患者の重症度に応じたうつ病の薬理学的治療

提供元:ケアネット

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公開日:2022/06/21

 

 ICD-10では、うつ病を重症度に応じて分類している。また、ガイドラインでは、重症度に応じたうつ病治療に関する推奨事項を記載している。ドイツ・ハノーファー医科大学のJohanna Seifert氏らは、実臨床における精神科入院患者に対するうつ病の重症度に基づいた向精神薬の使用について評価を行った。その結果、ガイドラインの推奨事項と実臨床での薬物治療には乖離があり、精神科入院うつ病患者の治療における臨床ニーズをガイドラインに十分反映できていない可能性が示唆された。Journal of Neural Transmission誌オンライン版2022年5月7日号の報告。

 精神医学における医薬品の安全性(AMSP)プログラムを用いて、うつ病の重症度に基づく薬物治療のデータを分析した。

 主な結果は以下のとおり。

・2001~17年に、参加病院で治療を受けた精神科入院うつ病患者は、4万3,868例であった。
・多くの患者は、複数の抗うつ薬による治療を受けていた(中等度うつ病患者:85.8%、重度うつ病患者:89.8%、精神病性うつ病患者:87.9%)。
・より重度の患者では、SNRIやミルタザピンで治療されることが多く、SSRIで治療されることは少なかった(各々、p<0.001)。
・重症度の上昇とともに、抗精神病薬、とくに第2世代抗精神病薬使用の有意な増加が認められた(中等度うつ病患者:37.0%、重度うつ病患者:47.9%、精神病性うつ病患者:84.1%[各々、p<0.001])。
・併用では、抗精神病薬+抗うつ薬が最も多く(中等度うつ病患者:32.8%、重度うつ病患者:43.6%、精神病性うつ病患者:74.4%)、次いで抗うつ薬の2剤併用であった(中等度うつ病患者:26.3%、重度うつ病患者:29.3%、精神病性うつ病患者:24.9%)。
・リチウムの使用は少なかった(中等度うつ病患者:3.3%、重度うつ病患者:6.1%、精神病性うつ病患者:7.1%)。
・向精神薬の数は、うつ病の重症度とともに増加が認められ、精神病性うつ病患者では、向精神薬の使用率が最も高かった(中等度うつ病患者:93.4%、重度うつ病患者:96.5%、精神病性うつ病患者:98.7%[各々、p<0.001])。
・抗うつ薬単剤治療の割合は、重症度が低い場合でもあまり多くなかった(中等度うつ病患者:23.2%、重度うつ病患者:17.1%、精神病性うつ病患者:4.4%)。

(鷹野 敦夫)