認知症患者の興奮症状の発生を長期間にわたり軽減するための介入として、感覚に基づく介入(Sensory-based Intervention)が一般的に行われている。しかし、この介入の即効性に関するエビデンスは十分ではない。香港理工大学のDaphne Sze Ki Cheung氏らは、認知症患者の興奮症状軽減に対して使用されている感覚に基づく介入を特定し、これら介入の即時効果を調査した。その結果、認知症患者において興奮症状軽減に対する感覚に基づく介入の即時効果を検討した研究はかなり不足しているものの、音楽関連の介入における限られたエビデンスは有望である可能性が示唆された。Aging & Mental Health誌オンライン版2022年9月8日号の報告。
PRISMA ガイドラインに従い、システマティックレビューを実施した。Embase、Medline、PsycINFO、CINAHLより、2022年3月2日までに公表された研究を検索した。介入中または介入開始15分以内に測定した興奮症状の軽減効果を評価した。分析には、英語で公表されたランダム化比較試験または準実験的研究を含めた。
主な結果は以下のとおり。
・選択基準を満たした研究は9件(ランダム化比較試験:2件、クロスオーバー試験:1件、準実験的研究:6件)であった。
・すべての研究は西欧諸国で実施されており、対象者総数は246例であった。
・音楽関連介入は、7件の研究で調査されており、副作用が発現することなく、興奮症状の軽減に効果的であることが示唆された。
・すべての研究において、方法論的制限(単一群デザイン、盲検化、サンプルサイズの小ささ、正確性が不十分に報告された結果など)があった。
・認知症患者の興奮症状に対する感覚に基づく介入効果を確認するためには、より厳密な研究が求められる。
(鷹野 敦夫)