大阪公立大学の鵜川 重和氏らは、身体的および社会的に自立した日本人高齢者における毎日の睡眠時間と認知症発症リスク(高血圧、糖尿病、心血管疾患などの併存疾患の有無にかかわらず)との関連を調査するため、日本人の年齢別コホートを行った。その結果、日々の習慣的な睡眠時間は、将来の認知症発症リスクの予測因子であることが示唆された。Sleep Medicine誌オンライン版2022年9月3日号の報告。
64~65歳の日本人1,954人(男性:1,006人、女性:948人)を含むプロスペクティブコホート研究を実施した。1日の睡眠時間、症状、人口統計学的因子、ライフスタイル特性に関するデータは、ベースラインアンケート調査および健康診断調査(2000~05年)より収集した。認知症発症は、厚生労働省が提唱する全国標準化認知症尺度を用いて確認した。認知症発症のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出するため、競合リスクモデルを用いた。死亡例も競合イベントとして扱った。
主な結果は以下のとおり。
・フォローアップ期間中央値は15.6年であり、その間に認知症を発症した人は260人であった。
・併存疾患がなく、1日6~7.9時間の睡眠時間の人と比較し、認知症リスクが高かった人の特徴は以下のとおりであり、併存疾患と睡眠時間との間に有意な相関が認められた(いずれもp<0.001)。
●1日の睡眠時間が6時間未満(HR:1.73、95%CI:1.04~2.88)
●併存疾患があり1日の睡眠時間が8時間未満(HR:1.98、95%CI:1.14~3.44)
●併存疾患があり1日の睡眠時間が8時間程度(HR:1.44、95%CI:1.03~2.00)
●併存疾患があり1日の睡眠時間が8時間以上(HR:2.09、95%CI:1.41~3.09)
(鷹野 敦夫)