第108回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードが、11月30日に開催された。その中で鈴木 基氏(国立感染症研究所感染症疫学センター長)らのチームが、「献血時の検査用検体の残余血液を用いた新型コロナウイルスの抗体保有率実態調査」について結果を報告した。
本調査は、わが国における今夏の感染拡大を踏まえた市中での感染状況の把握を目的に、2022年11月6日~13日にかけて行われた。対象は、全国の日本赤十字社の献血ルームなどを訪れた献血者8,260人で、献血時の検査用検体の残余血液を用いて抗N抗体の有無が調べられた。日本全体および都道府県・男女・年齢群別の抗体保有率が解析されている。
なお、本調査の対象は全血献血または成分献血の基準を満たし、以下のいずれにも該当しない者とされた。
・新型コロナウイルス感染症と診断または新型コロナウイルス検査で陽性になったことがあり、症状消失後(無症状の場合は陽性となった検査の検体採取日から)4週間以内
・発熱および咳・呼吸困難などの急性の呼吸器症状を含む新型コロナウイルス感染症が疑われる症状や、味覚・嗅覚の違和感を自覚し、症状出現日から2週間以内および症状消失から3日以内
・新型コロナウイルス感染者の濃厚接触者に該当し、最終接触日から2週間以内
全国で26.5%が新型コロナ抗体保有、沖縄県が最高、長野県が最低
過去の新型コロナウイルス感染で獲得したとみられる抗N抗体を保有する人の割合は、全国平均で26.5%(95%信頼区間[CI]:25.6~27.5)であった。都道府県別にみると、最高は沖縄県の46.6%(95%CI:41.2~52.1)、最低は長野県の9.0%(95%CI:4.6~15.6)であった。
<抗体保有率(95%CI)の高かった都道府県(上位10都道府県)>
沖縄県:46.6%(41.2~52.1)
大阪府:40.7%(34.7~46.9)
鹿児島県:35.2%(28.8~42.0)
京都府:34.9%(28.5~41.7)
熊本県:32.9%(26.7~39.5)
長崎県:31.9%(25.4~39.1)
東京都:31.8%(26.1~37.9)
神奈川県:31.6%(25.1~38.7)
宮崎県:31.3%(25.0~38.0)
香川県:30.9%(24.1~38.3)
<抗体保有率(95%CI)の低かった都道府県(下位10都道府県)>
長野県:9.0%(4.6~15.6)
徳島県:13.1%(8.2~19.5%)
愛媛県:14.4%(9.1~21.1%)
新潟県:15.0%(9.3~22.4)
岐阜県:15.5%(10.5~21.8)
岩手県:16.5%(10.1~24.8)
広島県:17.1%(11.9~23.6)
島根県:18.5%(12.6~25.8)
秋田県:18.7%(12.2~26.7)
山形県:19.5%(12.6~28.0)
男女による差はなく、年齢が高いほど抗体保有率が低い傾向
男女別の抗体保有率は、女性26.5%(95%CI:24.7~28.4)、男性26.5%(95%CI:25.4~27.7)で、年齢群別の抗体保有率は以下のとおりであった。
<年齢群別の抗体保有率(95%CI)>
16~19歳:38.0%(33.5~42.7)
20~29歳:35.7%(23.8~38.8)
30~39歳:33.6%(31.0~36.3)
40~49歳:26.8%(24.9~28.8)
50~59歳:21.3%(19.6~23.0)
60~69歳:16.5%(14.4~18.8)
なお、今回の測定結果には献血ができない15歳以下や70歳以上の高齢者は含まれず、単純集計に基づく速報値であることなどから、結果の解釈には留意が必要としている。
(ケアネット 佐藤 亮)