入院患者のほぼ4分の1が入院中に有害事象を経験することが、新たな研究で明らかにされた。このような有害事象の多くは、薬剤の副作用や手術リスクに起因するものであるため、防止することは困難だという。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のDavid Bates氏らが実施したこの研究の詳細は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」1月12日号に掲載された。
Bates氏らは、患者の診療録データを用いて後ろ向きコホート研究を実施し、入院中の患者に生じた有害事象の発生頻度、予防可能性、および重症度を検討した。対象は、米マサチューセッツ州の11施設の病院に2018年に入院した患者からランダムに抽出した2,809人(平均年齢59.9歳)とした。
その結果、対象患者の23.6%(663人)が入院中に1件以上の有害事象を経験していたことが明らかになった。生じた有害事象の総数は978件で、そのうちの222件(22.7%)は予防可能であり、316件(32.3%)は重症度が重篤、またはそれ以上(生命を脅かすもの、致死的なもの)と判断された。対象患者のうちの191人(6.8%)に予防可能な有害事象が1件以上生じ、29人(1.0%)の患者に予防可能な重篤で生命を脅かすあるいは致死的な有害事象が1件以上生じていた。死亡件数は7件で、そのうちの1件は予防可能と考えられた。有害事象として最も多かったのは薬剤に関連するもので39.0%、次いで手術やその他の処置に関連する有害事象が30.4%を占めていた。そのほか、転倒や褥瘡などの患者のケアに関わる有害事象が15.0%、ケアに関連して生じた感染症が11.9%発生していた。
Bates氏は、「これらの数字は残念ではあるが、衝撃的なものではない」とし、「これらの結果は、われわれがなすべきことがまだ山積みであることを如実に示すものだ」と話す。
感染症に関わる有害事象の発生率に関しては、過去数十年の発生率に鑑みれば、大きな改善だと研究グループは述べている。それでもBates氏は、「入院中の有害事象が深刻な問題の一つであることに変わりはない」と強調する。
米ジョンズ・ホプキンス・ブルームバーグ公衆衛生大学院保健サービス・研究成果センターのディレクターであるAlbert Wu氏は、「われわれは、有害事象の原因のいくつかを排除した。だが、効果の高い新薬や新しい処置に関連して、これまでにないタイプの有害事象が生じている」と指摘する。
他の専門家たちもWu氏に同意を示す。そのうちの一人である、本研究論文の付随論評を執筆した、ボストンの医療改善研究所の名誉会長兼シニアフェローであるDonald Berwick氏は、「1991年と比較すると、今日では利用可能な薬剤が豊富になった。ただ、いくつかの薬剤は、治療効果と危険な用量の差である治療マージンが小さい」と懸念を示している。
[2023年1月12日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら