医療一般|page:1

肺がんにおける悪液質の介入は確定診断前から?/日本肺癌学会

 がん悪液質は進行がん患者の30〜80%に発現するとされる。また、がん治療の効果を下げ、毒性を上げ、結果として、がん死亡の30%を占める予後不良因子となる。そのため、がん悪液質には、より早期の段階からの介入が重要とされている。  肺がんはがん悪液質の合併が多い。そして、ドライバー遺伝子変異やPD-L1発現などの検査が必要となるなど、現在の肺がん治療は初診から治療開始までに時間を要する。そのため、悪液質の進行や新規発現による治療成績の悪化が懸念される。

末期腎不全の患者、男女ともに過体重・肥満者が増加/新潟大

 肥満は、腎臓に悪影響を及ぼし、慢性腎臓病(CKD)の発症や悪化に繋がるリスクとなる。最近の透析導入患者でも肥満者の割合が高まっていることが、米国などから報告されているが、わが国の割合の経年変化は検討されていなかった。そこで、新潟大学大学院医歯学総合研究科臓器連関学講座の若杉 三奈子氏らの研究グループは、2006~2019年の間にわが国の透析導入患者について、肥満者とやせた人の割合について経年変化を評価した。その結果、男女とも肥満者の割合が有意に増加し、その増加率は一般住民を上回っていたことが判明した。Nephrology誌オンライン版2024年10月27日号に掲載。

統合失調症に対する電気けいれん療法後の再発率〜メタ解析

 統合失調症患者における急性期電気けいれん療法(ECT)後の再発リスクに関するエビデンスは、うつ病患者の場合と比較し、再発率に関する明確なコンセンサスが得られていない。関西医科大学の青木 宣篤氏らは、統合失調症における急性期ECT後の再発に関する縦断的な情報を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2024年10月4日号の報告。  統合失調症および関連疾患に対する急性期ECT後の再発や再入院に関するランダム化比較試験(RCT)、観察研究をシステマティックレビューおよびメタ解析に含めた。主要アウトカムは、ECT後3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月、24ヵ月時点における再発統合推定値とし、ランダム効果モデルを用いて算出した。サブグループ解析では、維持療法の種類別にECT後の再発率を評価した。

変形性関節症/関節リウマチ患者の約4割が抑うつ、不安、線維筋痛症のいずれかを合併

 変形性関節症(OA)、関節リウマチ(RA)の患者はいずれも約10人に4人が不安、抑うつ、線維筋痛症のうち少なくとも1つを合併しているとする研究結果が「ACR Open Rheumatology」に7月16日掲載された。これらの併存疾患は自記式の多次元健康評価質問票(MDHAQ)で適切にスクリーニングできる可能性があることも示された。  OA患者とRA患者の合併症は類似しており、いずれも抑うつ、不安や線維筋痛症の合併率が高いことが知られている。しかし、実臨床ではこれらの併存疾患のスクリーニングは十分に行われていない。米ラッシュ大学医療センターのJuan Schmukler氏らは、2011年から2022年にかけて同センターを受診したOA患者361人(平均年齢66.6歳、女性80%)およびRA患者488人(同56.9歳、86%)を対象に、MDHAQの回答から不安、抑うつ、線維筋痛症の有病率などを検討するため、後ろ向きの横断研究を実施した。

将来は1時間程度で結果が出る血液検査が可能に?

 いつの日か、手のひらサイズの血液検査デバイスで、わずか1時間程度で結果を得られるようになる可能性を示唆する研究結果が報告された。この携帯型デバイスは手のひらに収まる大きさで、音波を使って少量の全血サンプルからバイオマーカーを分離・測定するもので、検査の全プロセスに必要な時間は70分足らずだという。米コロラド大学ボルダー校化学・生物工学分野のWyatt Shields氏らによるこの研究の詳細は、「Science Advances」10月16日号に掲載された。Shields氏は、「われわれは使いやすく、さまざまな環境で導入でき、短時間で診断に関する有用な情報を提供する技術を開発した」と話している。

飛行機の換気システムでナッツアレルゲンは広がらない

 ナッツやピーナッツにアレルギーを持っている人は、「飛行機の中で誰かがナッツを食べているかもしれない」と心配する必要はないようだ。一般的に言われている、「ナッツなどのアレルゲンが機内の換気システムを通じて広がる」という説を裏付けるエビデンスは見つからなかったとする研究結果が報告された。英インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)国立心肺研究所アレルギー・免疫学臨床教授のPaul Turner氏と同研究所のNigel Dowdall氏によるこの研究結果は、「Archives of Disease in Childhood」に10月16日掲載された。Turner氏は、「実際、飛行中の食物アレルギー反応の発生件数は、地上に比べて10~100倍も少ない。これは、おそらく食物アレルギーのある乗客が飛行中にさまざまな予防措置を講じているためと思われる」と述べている。

市中肺炎の入院患者、経口抗菌薬単独での有効性

 市中肺炎の入院患者のほとんどで、静注抗菌薬から経口抗菌薬への早期切り替えが安全であることが無作為化比較試験で示されているが、最初から経口抗菌薬のみ投与した場合のデータは限られている。今回、入院中の市中肺炎患者を対象にβラクタム系薬の投与期間を検討したPneumonia Short Treatment(PST)試験の事後解析として、投与開始後3日間の抗菌薬投与経路を静脈内投与と経口投与に分けて有効性を比較したところ、有意差が認められなかったことをPST研究グループのAurelien Dinh氏らが報告した。Clinical Microbiology and Infection誌2024年8月号に掲載。

本邦初、がん患者の「気持ちのつらさ」のガイドライン/日本肺癌学会

 2024年10月、日本がんサポーティブケア学会と日本サイコオンコロジー学会は『がん患者における気持ちのつらさガイドライン』(金原出版)を発刊した。本ガイドラインは、がん医療におけるこころのケアガイドラインシリーズの第4弾となる。第65回日本肺癌学会学術集会において、本ガイドラインの作成委員長の藤澤 大介氏(慶應義塾大学医学部)が本ガイドライン作成の背景、本ガイドラインで設定された重要臨床課題と臨床疑問(CQ:クリニカルクエスチョン)を紹介した。

乾癬への生物学的製剤、真菌感染症のリスクは?

 生物学的製剤の投与を受けている乾癬患者における真菌感染症リスクはどれくらいあるのか。南 圭人氏(東京医科大学皮膚科)らの研究グループは、臨床現場において十分に理解されていないその現状を調べることを目的として、単施設後ろ向きコホート研究を実施した。その結果、インターロイキン(IL)-17阻害薬で治療を受けた乾癬患者は、他の生物学的製剤による治療を受けた患者よりも真菌感染症、とくにカンジダ症を引き起こす可能性が高いことが示された。さらに、生物学的製剤による治療を開始した年齢、糖尿病も真菌感染症の独立したリスク因子であることが示された。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2024年9月30日号掲載の報告。

MCIの認知機能改善に、最適な運動とその量は?~ネットワークメタ解析

 軽度認知障害(MCI)は、認知症の前駆段階であり、通常の老化による認知機能低下よりも進行することが特徴である。高齢MCI患者における機能低下の抑制、認知機能向上に対する有望なアプローチとして、運動介入への期待が高まっている。しかし、最適な運動様式とその量(用量反応関係)に関する研究は、十分に行われていなかった。中国・大連理工大学のYingying Yu氏らは、用量反応関係を最適化し、十分な強度を確保し、ポジティブな神経学的適応を誘発することによりMCI患者にとって最適な運動様式を特定するため、ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。Frontiers in Psychiatry誌2024年9月12日号の報告。

尿路上皮がん1次治療の更新は30年ぶり、ペムブロリズマブ+EV併用療法とは/MSD

 2024年9月24日、根治切除不能な尿路上皮がんに対する1次治療として、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)とネクチン-4を標的とする抗体薬物複合体(ADC)エンホルツマブ ベドチン(商品名:パドセブ、以下EV)の併用療法および、ペムブロリズマブ単独療法(プラチナ製剤を含む化学療法が選択できない場合のみ)が、本邦で適応追加に関する承認を取得した。尿路上皮がんの標準1次治療の更新としては30年ぶりとなる。10月31日、MSD主催のメディアセミナーが開催され、菊地 栄次氏(聖マリアンナ医科大学腎泌尿器外科学)が「転移性尿路上皮癌治療“ペムブロリズマブ+エンホルツマブ ベドチンへの期待”」と題した講演を行った。

米国成人の10人に6人は炎症誘発性の食生活

 米国成人の多くが、炎症を引き起こす食生活を送っていて、そのことが、がんや心臓病、その他の深刻な健康リスクを押し上げている可能性のあることが報告された。米オハイオ州立大学のRachel Meadows氏らの研究によるもので、詳細は「Public Health Nutrition」に9月27日掲載された。論文の筆頭著者である同氏によると、「米国の成人の57%が炎症を起こしやすい食生活を送っており、その割合は男性、若年者、黒人、教育歴が短い人、収入の低い人でより高かった」という。  Meadows氏らの研究には、2005~2018年の米国国民健康栄養調査(NHANES)に参加した20歳以上の成人3万4,547人(平均年齢47.8歳、女性51.3%)のデータが用いられた。NHANESでは、過去24時間以内に摂取したものを思い出すという方法により食習慣が把握されており、その結果に基づき、エネルギー調整食事性炎症指数(energy-adjusted dietary inflammatory index;E-DII)を算出した。

急性白血病の発症時点でさまざまな眼科所見が観察される

 急性白血病の発症時点において、多彩な眼科所見が認められるとする、マンスーラ大学(エジプト)のDina N. Laimon氏らの論文が「Annals of Hematology」に7月10日掲載された。特に、網膜出血やロート斑が高頻度に認められるという。  白血病では、白血病細胞による眼組織の直接浸潤、血球減少や白血球増多などの血液学的異常、あるいは化学療法や免疫抑制療法により、眼球およびその付属器に多彩な所見が現れるが、そういった所見の出現率に関するデータは少ない。Laimon氏らは2022年1月~2023年2月に、急性骨髄性白血病(AML)または急性リンパ性白血病(ALL)と新規診断された患者の眼科所見の出現率を詳細に検討した。

固形がんにMRD検査は有用か?学会がガイダンスを作成/日本癌治療学会

 日本癌治療学会は、固形がんを対象に、がん種横断的にMRD検査の最新エビデンスを集め、検査の適正利用・研究を目指すことを目的としたガイダンス「分子的残存病変(molecular residual disease:MRD)検査の適正臨床利用に関する見解書 第1版」(日本癌治療学会:編、日本臨床腫瘍学会・日本外科学会:協力)を作成し、2024年10月に学会サイト上で公開した。  MRDは、抗がん剤の投与などにより一定の治療効果が確認された後も患者の体内に残る微小なレベルのがん病変を指す。もともとは造血器腫瘍における研究が先行しており、2024年4月には米国食品医薬品局(FDA)の委員会がMRDを多発性骨髄腫の臨床開発のエンドポイントとすることを認めるなど、研究・臨床への応用が進む。固形がんにおいても、血液を用いたリキッドバイオプシー検査の臨床導入を契機に、大腸がんなどを中心にMRD評価による再発リスク層別化を検証する臨床試験が多数行われ、臨床応用や保険承認を目指す流れができつつある。今回のガイダンスもこのような背景から作成されたものだ。

40歳未満の2型糖尿病、合併症と死亡率は?~最長30年の前向き調査

 新たに2型糖尿病と診断された患者を前向きに最長30年間追跡した調査において、40歳未満で診断された患者は、40歳以上で診断された患者に比べて糖尿病関連合併症の発症や死亡のリスクが高く、血糖コントロールが20年にわたって不良であることが、オーストラリア・シドニー大学のBeryl Lin氏らによって明らかになった。Lancet Diabetes & Endocrinology誌オンライン版2024年10月23日号掲載の報告。  これまでの研究によって、若年成人期に発症した2型糖尿病は、β細胞機能の劣化が早く、心血管系疾患や腎症などの合併症リスクが大きいことが示唆されているが、若年成人の2型糖尿病に特化した前向きコホート研究はほとんどない。そこで研究グループは、40歳未満と40歳以上で発症した2型糖尿病患者の合併症の発症率や死亡率を比較するために調査を実施した。

限局型小細胞肺がんへのデュルバルマブ地固め、日本人でも有効(ADRIATIC)/日本肺癌学会

 限局型小細胞肺がん(LD-SCLC)患者を対象とした国際共同第III相無作為化比較試験「ADRIATIC試験」の第1回中間解析において、同時化学放射線療法(cCRT)後のデュルバルマブ地固め療法が全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことが報告されている1)。本試験の日本人サブグループ解析の結果について、善家 義貴氏(国立がん研究センター東病院)が第65回日本肺癌学会学術集会で発表した。 ・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験 ・対象:I~III期(I/II期は外科手術不能の患者)でPS0/1のLD-SCLC患者のうち、cCRT後に病勢進行が認められなかった患者730例(PCIの有無は問わない) ・試験群1(デュルバルマブ群):デュルバルマブ(1,500mg、cCRT後1~42日目に開始して4週ごと)を最長24ヵ月 264例(日本人19例)

第2世代抗精神病薬治療104週間の最終治療結果〜国内JUMPs試験

 CNS薬理研究所の石郷岡 純氏らは、アリピプラゾール、ブロナンセリン、パリペリドンの104週間自然主義的研究である統合失調症に対する有用な薬物治療プログラム(JUMPs)試験の最終結果を報告した。BMC Psychiatry誌2024年9月5日号の報告。  本研究は、日本のリアルワールドにおける、第2世代抗精神病薬(SGA )3剤(アリピプラゾール、ブロナンセリン、パリペリドン)の長期的な有用性を検討するためのオープンラベル多施設共同ランダム化平行群間比較試験として実施された。対象は、抗精神病薬による治療または切り替えによる治療を必要とした20歳以上の統合失調症患者。主要エンドポイントは、104週にわたる治療中止率とした。副次的エンドポイントには、寛解率、個人的・社会的機能遂行度尺度(PSP)、安全性、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、QOL(EuroQol-5 dimension[(EQ-5D])を含めた。

50歳を過ぎたら30秒間片足立ちできるかが老化の指標に?

 50歳以上の人では、片足立ちできる時間が自分の老化の程度を知る指標となるようだ。新たな研究で、片足、特に利き足でない側の足(非利き足)で30秒間立つことができるかが、筋力や歩行の変化よりも老化をよく反映する重要な指標であることが明らかになった。論文の上席著者である米メイヨー・クリニック動作分析研究所所長のKenton Kaufman氏は、「バランスの維持は、筋力に加え、視覚、前庭系、体性感覚系からの入力を必要とするため、老化の重要な指標となる」と述べている。この研究結果は、「PLOS ONE」に10月23日掲載された。

手術後の音楽療法は患者の回復を早める

 手術後には音楽を聞くことで回復が早まるかもしれない。米カリフォルニア州北部医科大学外科分野教授のEldo Frezza氏らによるシステマティックレビューとメタアナリシスで、手術後の音楽療法により患者の不安や痛みが軽減し、心拍数の増加が抑制され、鎮痛薬の使用量も少なく済むことが示唆された。この研究結果は、米国外科学会臨床会議(ACS Clinical Congress 2024、10月19〜22日、米サンフランシスコ)で発表された。  Frezza氏は、「手術後に目を覚ました患者の中には、ひどくおびえていて、自分がどこにいるのか分からない人がいる」と話す。そして、「音楽は、覚醒してから平常の状態に戻るまでの移行を円滑に進め、移行に伴うストレスを軽減するのに役立つ可能性がある」と述べている。

高用量ビタミンDは心血管マーカーを低下させるか

 観察研究において、血清ビタミンD値が低い高齢者の心血管疾患(CVD)リスクが高いことが示されているが、ランダム化比較試験ではビタミンDサプリメントによるCVDリスクの低下効果は実証されていない。今回、米国・ハーバード大学医学部のKatharine W Rainer氏らの研究で、高用量ビタミンD投与は低用量ビタミンD投与と比較し、血清ビタミンD値が低い高齢者の潜在的心血管マーカーに影響を与えなかったことが明らかになった。American Journal of Preventive Cardiology誌2024年12月号オンライン版掲載の報告。