医療一般|page:184

日本におけるコミュニティレベルの学力と認知症リスク

 コミュニティレベルの学力と認知症リスクとの関連は、あまり知られていない。浜松医科大学の高杉 友氏らは、認知症発症リスクに対し、コミュニティレベルでの低学歴の割合が影響を及ぼすかについて、検討を行った。また、都市部と非都市部における潜在的な関連性の違いについても、併せて検討した。BMC Geriatrics誌2021年11月23日号の報告。  日本老年学的評価研究(JAGES)より、2010~12年にベースラインデータを収集し、6年間のプロスペクティブコホートを実施した研究のデータを分析した。対象は、7県16市町村のコニュニティ346ヵ所の身体的および認知機能的な問題を有していない65歳以上の高齢者5万1,186人(男性:2万3,785人、女性:2万7,401人)。認知症発症率は、日本の介護保険制度から入手したデータを用いて評価した。教育年数を9年以下と10年以上に分類し、個々の学力レベルをコミュニティレベルの独立変数として集計した。共変量は、まず年齢および性別を用い(モデル1)、次いで収入、居住年数、疾患、アルコール、喫煙、社会的孤立、人口密集度を追加した(モデル2)。欠落データに対する対処として、複数の代入を行った。コミュニティおよび個人における2つのレベルでの生存分析を実施し、ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出した。

「誤解を招く医療略語」の解決に役立つアプリ、ポケットブレインとは?

 電子カルテの普及により多職種間で患者情報を共有しやすくなり、紙カルテ時代とは比にならないくらい業務効率は改善したー。はずだったのだが、今度は医療略語の利用頻度の増加による『カルテの読みにくさ』という新たな課題が浮上している。  医療略語は忙しい臨床現場で入力者の負担軽減に寄与する一方で、略語の多用や種類の増加が、職種間での情報共有における新たな弊害になっている可能性がある。また、診療科や職種により医療略語の意味が異なるため、“医療事故”のリスク因子にもなりかねない。増加の一途をたどる医療略語に、医療現場はどう対処していけばよいのだろうか。

ブースター接種、オミクロン株に対する発症・入院予防効果は?

 オミクロン株に対するワクチンの有効性について、発症予防効果はデルタ株と比較して低く、投与後の期間に応じてさらに低下する一方で、入院予防効果は2回目接種後6ヵ月以降も約50%となり、3回目接種により約90%まで高まるというデータが報告された。英国・UK Health Security Agency(UKHSA)が2021年12月31日にオミクロン株に関する大規模調査結果を公開した。  デルタ株と比較したオミクロン株の症候性COVID-19に対するワクチン有効率(VE)が、診断陰性例コントロールデザインを用いて推定された。2021年11月27日~12月24日までに検査を受けたオミクロン株感染20万4,036例とデルタ株感染16万9,888例のデータを使用している。

統合失調症の遺伝的リスク~併発する他疾患との関連性

 統合失調症は、重度の身体的および精神医学的な症状を伴う深刻な精神疾患である。併発する健康被害が遺伝的リスクにより発生するのか、統合失調症の影響で発生しているかは、よくわかっていない。スウェーデン・カロリンスカ研究所のRuyue Zhang氏らは、この課題に対し統合失調症の遺伝的リスクからアプローチを試みるため、英国バイオバンクより統合失調症と診断されていない40万6,929例を対象に、健康関連問題に対する統合失調症ポリジーンリスクスコア(PRS)の影響について調査を行った。Molecular Psychiatry誌オンライン版2021年11月19日号の報告。

オミクロン株での重症度や死亡率、他の変異株と比較/JAMA

 南アフリカ共和国におけるCOVID-19第4波はオミクロン株が原因とされている。同国・Netcare Ltd South AfricaのCaroline Maslo氏らは、第4波初期におけるCOVID-19の入院患者の特徴や転帰について第1~3波それぞれの初期の入院患者と比較し、JAMA誌オンライン版2021年12月30日号のリサーチレターで報告した。第4波では年齢が若く、併存疾患のある患者が少ないこと、入院や急性呼吸器疾患を発症する患者が少なく、重症度と死亡率も低いことが示された。  本研究は、南アフリカ共和国全土に、1万床超の急性期病院49施設を有するNetcare Ltd South Africaで実施された。南アフリカでは、2020年6~8月(従来株)、2020年11月~2021年1月(ベータ株)、2021年5月~9月(デルタ株)の3つの波が発生したが、2021年11月15日から再び増加し始め、12月7日にコミュニティ陽性率が26%に達した。そこで、各波で陽性率が26%に達するまでの期間(第1波:2020年6月14日~7月6日、第2波:2020年12月1日~23日、第3波:2021年6月1日~23日、第4波:2021年11月15日~12月7日)におけるCOVID-19の入院患者について、患者の特徴、酸素供給・人工呼吸の必要性、ICU入院、入院期間、死亡率を比較した。

正常な老化と初期認知症における脳ネットワークの特徴

 正常な老化と認知症による認知機能の変化に関してその根底にあるメカニズムを解明するためには、脳ネットワークの空間的関係とそのレジリエンスのメカニズムを理解する必要がある。藤田医科大学の渡辺 宏久氏らは、正常な老化と初期認知症における脳ネットワークの特徴について報告を行った。Frontiers in Aging Neuroscience誌2021年11月22日号の報告。  主な内容は以下のとおり。 ・異種感覚統合(multisensory integration)やデフォルト・モード・ネットワークなどの脳のハブ領域は、ネットワーク内およびネットワーク間の伝達において重要であり、老化の過程においても良好に維持され、これは代謝プロセスにおいても重要な役割を担っている。 ・一方、これらの脳のハブ領域は、アルツハイマー病などの神経変性認知症の病変に影響を及ぼす部位である。 ・聴覚、視覚、感覚運動のネットワークなどに問題が生じた一次情報処理ネットワークは、異種感覚統合ネットワークの過活動や認知症を引き起こす病理学的タンパク質の蓄積につながる可能性がある。

肺がんマルチ遺伝子PCRパネルAmoyDx発売/理研ジェネシス

 理研ジェネシスは、複数の抗悪性腫瘍剤のコンパニオン診断薬「AmoyDx肺癌マルチ遺伝子PCRパネル」の日本国内での販売を2022 年1月11日に開始する。  同製品は、非小細胞肺がん(NSCLC)の5種のドライバー遺伝子(EGFR、ALK、ROS1、BRAF、MET)をカバーする、リアルタイムPCR法を原理としたコンパニオン診断薬である。  EGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子、ROS1融合遺伝子、BRAF V600E変異、MET exon14スキッピング変異を1回の測定で同時に検出し、10種の抗がん剤の適応判定の補助が可能。 保険点数は10,000点(5項目)。

日本の入院患者における向精神薬使用と転倒リスク~症例対照研究

 これまでのいくつかの研究において、転倒のリスク因子の1つとして向精神薬の使用が挙げられている。しかし、これまでの研究では、管理データベースより取得したデータを用いる、向精神薬の使用から転倒や転落までの時間間隔に関する情報が欠如しているなど、いくつかの制限が含まれていた。東京医科大学の森下 千尋氏らは、カルテより収集した信頼できるデータを用いて、入院患者における向精神薬の使用と転倒や転落との関連について評価を行った。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2021年12月8日号の報告。

コロナワクチン副反応、もっとも影響する因子は?

 カルフォルニア大学のAlexis L Beatty氏らは新型コロナワクチン接種後に参加者が報告した副反応に関連する可能性のある因子を評価した。ワクチンを商品ごとで比較することで、その要因が、フルドーズのワクチン接種、ワクチン商品名、年齢の若さ、女性、新型コロナウイルス既感染であることが明らかになった。JAMA Network Open誌2021年12月22日号で掲載の報告。  研究者らは、本研究をオンライン上で実施。対象者は2020年3月26日~2021年5月19日に新型コロナワクチンを1回以上接種し、スマートフォンまたはインターネットにアクセスできる18歳以上で、参加者は健康状態(新型コロナ関連のイベント含む)に対する毎日、毎週、毎月の調査を完了した。

抗ムスカリンOAB治療薬と認知症発症リスク

 過活動膀胱(OAB)治療薬の使用による認知症発症リスクへの影響については、明らかになっていない。カナダ・トロント大学のRano Matta氏らは、抗ムスカリンOAB治療薬の使用と認知症発症リスクとの関連について、β-3アゴニストであるミラベグロンと比較し、検討を行った。European Urology Focus誌オンライン版2021年11月3日号の報告。  カナダ・オンタリオ州でOAB治療薬を使用した患者を対象に、人口ベースのケースコントロール研究を実施した。対象は、過去6~12ヵ月間で抗ムスカリンOAB治療薬またはミラベグロンを使用し、2010~17年に認知症およびアルツハイマー病と診断された66歳以上の患者1万1,392例と年齢および性別がマッチした非認知症患者2万9,881例。人口統計学および健康関連の特性に応じて調整し、認知症のオッズ比(OR)を算出した。

コロナのワクチンキャンペーンに効果はある?米国での反響は…

 国内でも若年層へ新型コロナワクチン接種を浸透させるため、いくつかの自治体が接種促進のためのキャンペーンを打ち出していた。その先駆けである米国ではインセンティブとして宝くじを配布し接種の向上を試みていたが、実際のところそれが有効かどうかは不明である。そこで、米・ドレクセル大学のBinod Acharya氏らは、宝くじなどのインセンティブがワクチン接種の増加に寄与するのかを調べるための横断的研究を行った。その結果、宝くじプログラムは新型コロナワクチン接種へのためらいを減らすことに関連していると示唆された。ただし、その成功は州によって異なる可能性があるという。JAMA Network Open誌2021年12月1日号掲載の報告。

モルヌピラビル使用の注意点は?コロナ薬物治療の考え方第11版/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏[東京大学医学部教授])は、12月24日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬について指針として「COVID-19に対する薬物治療の考え方第11版」をまとめ、同会のホームページで公開した。 今回の改訂では、先般特例承認されたモルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)に関する記載が追加された。 以下に主な改訂点について内容を抜粋して示す。 【4. 抗ウイルス薬等の選択】 (1)抗ウイルス薬としてレムデシビル、モルヌピラビルなど、中和抗体薬としてカシリビマブ/イムデビマブ、ソトロビマブなど、(2)免疫調整薬・免疫抑制薬としてデキサメタゾン、バリシチニブ、トシリズマブについて記載を追加。

うつ病患者にみられる併存疾患~ネットワークメタ解析

 うつ病患者は、他の併存疾患を有する可能性が高いといわれているが、これまでの併存疾患に関する研究は、主に特定の一般的な疾患に焦点が当てられており、また自己申告のデータに依存していた。中国・電子科技大学のHang Qiu氏らは、全範囲の慢性疾患を対象とし、うつ病患者における併存疾患の調査を行うため、ネットワークメタ解析を実施した。Journal of Affective Disorders誌2022年1月1日号の報告。  本レトロスペクティブ研究では、うつ病入院患者2万2,872例とこれに1:1でマッチした対照群の登録を行った。併存疾患を測定するために、退院記録を集計し、有病率1%以上の患者について、さらなる分析を行った。共起頻度に基づいて、うつ病患者の性別および年齢別の併存疾患ネットワークを構築し、その結果を対照群と比較した。高度に相互リンクされたコミュニティを検出するため、Louvainアルゴリズムを用いた。

男性乳がんの予後不良因子は?

 男性乳がんは稀な疾患であるものの、近年増加傾向がみられている。認知度の低さなどから進行期になってから診断されるケースが多く、生存に寄与する因子や適切な治療戦略については明確になっていない部分が多い。韓国・忠北大学校病院のSungmin Park氏らは、国民健康保険データベースを用いた男性乳がん患者の転帰に関する後ろ向き解析結果を、Journal of Breast Cancer誌オンライン版2021年12月24日号に報告した。  本研究では、韓国の健康保険データベースを使用して、該当の請求コードをもつ男性乳がん患者を特定、男性乳がんの発生率、生存転帰、およびその予後因子が評価された。最初の請求から1年以内の手術と放射線療法の種類を含む、医療記録と死亡記録がレビューされた。その他、経済状況(≧20パーセンタイル、<20パーセンタイル)、地域(都市部、地方)、チャールソン併存疾患指数(0、1、≧2)、およびBRCA1/2(乳がん遺伝子)テストの実施について情報が収集された。

新型コロナ感染リスク、ワクチン未接種者は接種者の4倍!?

 米国の大手ドラッグストアであるCVSヘルスに所属するYing Tabak氏らは、新型コロナ感染に対するワクチン有効性を推定するにあたり、時間経過による変化がみられるのかなどを評価するため、診断陰性例コントロール試験を実施。その結果、ワクチン未接種者はワクチン接種者よりも感染リスクが最大で4倍も高いことが明らかになった。JAMA Network Open誌2021年12月22日号のリサーチレターに掲載された。  本研究は全米の新型コロナ検査のデータベースを使用し、2021年5月1日~8月7日の期間にドラッグストアのPCR検査で症候性の新型コロナ感染症が確認されたの特有の患者発生率を評価した。新型コロナ関連の症状(CDCの定義に準拠)、ワクチン接種状況、時期、投与回数について、鼻咽頭スワブを収集する前にスクリーニング質問票に自己報告してもらった。分析には、BNT162b2(ファイザー製)、mRNA-1273(モデルナ製)、およびJNJ-78436735(J&J製)のワクチンを使用した。また、米国での昨年7~8月のデルタ変異株の流行を考慮して、最後のワクチン接種からの経時的な症候性新型コロナ感染に対し、ワクチン接種の有効性を検査実施者の年齢、地域、暦月で調整して推定した。

NSCLCの新たなドライバー遺伝子CLIP1-LTK発見

 国立がん研究センター東病院が中心に進める肺がんの遺伝子スクリーニングプロジェクト「LC-SCRUM-Asia」が、非小細胞肺がん(NSCLC)の新しいドライバー遺伝子「CLIP1-LTK融合遺伝子」を世界で初めて発見した。また、このドライバー遺伝子変異には、治療薬としてALK-TKIのロルラチニブが有効である可能性が示されている。  試験結果は、Nature誌2021年11月14日号に掲載され、第62回日本肺癌学会学術集会では、がん研究センター東病の松本慎吾氏により発表された。  NSCLCでは、ドライバー遺伝子が相次いで発見されるととも、それに対応する分子標的薬が登場することで治療成績が著しく向上している。  とはいえ、50〜60%のNSCLCではドライバー遺伝子が存在しない。そのため、新たなドライバー遺伝子の発見と治療薬の開発が求められている。  そのような中、CLIP1-LTK融合遺伝子は、新たなドライバー遺伝子を検索するためLC-SCRUM-Asiaが行った、既知のドライバー遺伝子陰性のNSCLCを対象に行った全RNAシークエンス検査により世界で初めて発見された。

認知症の急速な進行に関する原因調査

 急速進行性認知症(RPD)は、1~2年以内に急速な認知機能低下が認められ認知症を発症する臨床症候群である。RPDの評価に関する進歩は著しく、その有病率は時間とともに変化する可能性がある。ギリシャ・Attikon University HospitalのPetros Stamatelos氏らは、RPD診断の近年の進歩を考慮し、以前の結果と比較したRPD原因となる疾患の頻度を推定した。Alzheimer Disease and Associated Disorders誌2021年10~12月号の報告。  5年間でRPDの疑いによりAttikon University Hospitalに紹介された患者47例を対象に、医療記録をレトロスペクティブに検討した。

片頭痛に対する抗CGRP抗体の有効性と忍容性

 反復性および慢性片頭痛の予防には、いくつかの薬剤が利用可能である。どの治療を、どのタイミングで選択するかを決定することは簡単ではなく、一般的な有効性、忍容性、重篤な有害事象の可能性、併存疾患、コストなどさまざまな因子に基づいて検討される。ベルギー・ブリュッセル自由大学のFenne Vandervorst氏らは、新たに片頭痛予防の選択肢の1つとして加わったカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)またはその受容体に対するモノクローナル抗体の有効性、忍容性について検討を行った。The Journal of Headache and Pain誌2021年10月25日号の報告。

普遍的なうつ病予防~メタ解析レビュー

 うつ病は、心身に影響を及ぼす、非常に蔓延している、しばしば慢性的に経過、治療困難、認知機能や社会的および経済的負荷が非常に大きいといった特徴を有する疾患である。がんなどの非感染性疾患では、治療ではなく予防に焦点が置かれるようになっていることを考えると、うつ病予防は、優先すべき公衆衛生上の課題であろう。オーストリア・ディーキン大学のErin Hoare氏らは、うつ病に対する普遍的に提供される予防的介入についてのメタ解析文献の包括的なシステマティックレビューを実施した。Journal of Psychiatric Research誌2021年12月号の報告。

今後25年間の日本における認知症有病率の予測

敦賀市立看護大学の中堀 伸枝氏らは、富山県認知症高齢者実態調査の認知症有病率データと人口予測データを用いて、日本における認知症有病率の将来予測を行った。BMC Geriatrics誌2021年10月26日号の報告。  まず、1985、90、96、2001、14年の富山県認知症高齢者実態調査のデータを用いて、性別・年齢別の認知症推定将来有病率を算出した。次に、2020~45年の47都道府県それぞれの65歳以上の推定将来人口に性別年齢を掛け合わせ、合計することで認知症患者数を算出した。認知症の推定将来有病率は、算出された認知症患者数を47都道府県それぞれの65歳以上の推定将来人口で除することで算出した。また、2020~45年の47都道府県それぞれの認知症推定将来有病率は、日本地図上に表示し、4段階で色分けした。