医療一般|page:400

第3世代ALK阻害薬lorlatinibの成績発表/ASCO2017

 lorlatinibは、強力な活性を持ち、中枢神経系(CNS)への良好な移行を示す次世代ALK-TKIである。また、ALK-TKI耐性変異に対する最も広いスペクトラムを有する。とくにクリゾチニブ、アレクチニブ、セリチニブなど、すべてのALK-TKIの耐性に関わるG1202R変異に対しても、唯一有効な薬剤である。米国臨床腫瘍学会年次大会(ASCO2017)では、このlorlatinibの第I/II相試験の主要な結果について、University of California IrvineのSai-Hong Ignatius Ou氏が発表した。

乾癬治療が血管炎症も改善?

 乾癬は慢性の炎症性皮膚疾患で、血管炎症ならびに将来の心血管イベント増加との関連が知られている。一方、炎症はアテローム性動脈硬化の進展において重要である。米国・国立衛生研究所のAmit K. Dey氏らは、乾癬患者における皮膚の炎症の治療と血管性疾患の関連を検討する前向きコホート研究を行い、乾癬の皮膚重症度(PASIスコア)の改善が大動脈の炎症の改善と関連していることを明らかにした。とくにPASIスコアが75%以上改善した場合に、大動脈の炎症の改善がより大きいことが観察されたという。結果を踏まえて著者は、「皮膚など遠隔標的器官の炎症をコントロールすることで血管性疾患が改善するかもしれない」と述べ、無作為化臨床試験で今回の結果を確認する必要性を強調した。JAMA Cardiology誌オンライン版2017年5月31日号掲載の報告。

安定期統合失調症、抗精神病薬は中止したほうが良いのか

 データ集約を含む調査では研究間で再発の定義が異なるため、臨床評価尺度の総スコアはより一般的なアウトカムを提示する。カナダ・トロント大学の竹内 啓善氏らは、統合失調症の1年以上の維持治療における、抗精神病薬とプラセボの総合的な症状の軌跡を比較した。The British journal of psychiatry誌オンライン版2017年5月18日号の報告。

オシメルチニブ、CNS転移例にも有効性示す:AURA3試験/ASCO2017

 中枢神経系(CNS)転移は、EGFR変異陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)の経過中、40%にみられる。CNS転移例の予後は不良で、無増悪生存期間(PFS)は3~5ヵ月といわれる。オシメルチニブは、前臨床試験でCNSへの良好な移行が示されるとともに、臨床では2つの第II相試験(AURA2試験、AURA2拡大試験)においてCNSでの活性を示している。そこで、T790M陽性の進行NSCLCにおけるオシメルチニブの無作為化第III相試験であるAURA3試験から、CNS転移における同剤の最初の包括的評価を、イタリアFondazione IRCCS Instituto Nazionale dei TumoriのMaria Garrassino氏が、米国臨床腫瘍学会年次大会(ASCO2017)で発表した。

dacomitinib、EGFR変異陽性肺がん1次治療の成績発表:ARCHER1050試験/ASCO2017

dacomitinibは、不可逆的にEGFR/HER1、HER2、HER4を阻害する第2世代EGFR-TKIであり、第II相シングルアーム試験であるARCHER1017試験で、EGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療で良好な成績を示している。米国臨床腫瘍学会年次大会(ASCO2017)では、dacomitinibとゲフィチニブを1次治療で比較した、現在進行中の第III相無作為化オープンラベル試験ARCHER1050試験の成績を、香港Chinese University of Hong KongのTony Mok氏が発表した。

学歴と心血管疾患リスク、高卒未満で5割以上発症

 米国のARIC研究(Atherosclerosis Risk in Communities Study)において、学歴別に心血管疾患(CVD)生涯リスクを調べたところ、高校を卒業していない人では5割以上がCVDイベントを経験していたことがわかった。また、他の重要な社会経済的特性にかかわらず、学歴とCVD生涯リスクに逆相関が認められた。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2017年6月12日号に掲載。

うつ病評価尺度HAM-D6の有効性は

 世界でうつ病の重症度に関する情報を含む項目を特定するための調査では、ハミルトンうつ病評価尺度17項目(HAM-D17)に由来した、HAM-D6が使用されるようになり、幅広い研究に用いられてきた。デンマーク・コペンハーゲン大学のN. Timmerby氏らは、HAM-D17およびモントゴメリー・アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)と比較した、HAM-D6の臨床的特性のシステマティックレビューを行った。Psychotherapy and psychosomatics誌86号の報告。

双極性障害の診断遅延は避けられないのか

 双極性障害(BD)の診断は、初期の診断でうつ病とされることが多く、BDの正確な診断や治療の遅れにつながっている。これまでの調査では、うつ病からBDへの診断変更の予測因子に焦点が当てられてきたが、この診断遅延の調査は多くはない。オーストラリア・シドニー大学のKristina Fritz氏らは、この診断遅延を説明できそうな患者の特徴や心理的要因をさらに理解するため、うつ病の初期診断後にBDと診断されるまでにかかった時間を検討した。Bipolar disorders誌オンライン版2017年5月22日号の報告。

たこつぼ症候群の季節変動~日本のコホート研究

 たこつぼ症候群(TTS)の発症における季節的な変動が報告されているが、季節と患者特性の関係や季節による転帰への影響は不明である。東京大学の磯貝 俊明氏らがわが国のDiagnosis Procedure Combination(DPC)データベースを用いて検討したところ、TTSの院内死亡率に季節の影響がないようにみえるものの、月間変動がある可能性が示唆された。また、TTS患者における男性の割合、精神疾患・敗血症患者の割合、心室性不整脈発症率に有意な季節変動がみられた。Heart and vessels誌オンライン版2017年6月7日号に掲載。

認知症者への向精神薬投与は死亡率を高めているか

 認知症高齢者によく用いられる向精神薬は、死亡率の上昇と関連しているといわれている。これまでの研究では、このリスクに関する性差は調査されていない。スウェーデン・ウメオ大学のJon Brannstrom氏らは、認知症高齢者における抗精神病薬、抗うつ薬、ベンゾジアゼピンの使用と2年間の死亡率との関連を分析し、性差に関する調査を行った。BMC pharmacology & toxicology誌2017年5月25日号の報告。

心不全・心機能低下のないAMI患者におけるβ遮断薬と死亡率の関係

 心不全のない急性心筋梗塞(AMI)患者において、β遮断薬が死亡率を低減させるかどうかについては、はっきりしていない。そこで英国リーズ大学のTatendashe B. Dondo氏らの研究グループは、左心機能の保たれたAMI患者において、β遮断薬と死亡率の関連について検討した。Journal of the American College of Cardiology誌2017年6月号に掲載。

患者報告による症状モニターが、外来進行がんのOSを有意に延長/ASCO2017

 経口抗がん剤の増加により、外来診療が増加している。そのような中、患者の合併症管理は大きな問題となりつつある。進行がんでは症状が頻繁に起こるが、患者が医療者に報告するにはさまざまな障害がある。過去の研究結果によれば、診療医が患者の症状に気付くのは半分との報告ある。質の高いがん診療の管理には症状モニタリングが鍵といえる。そこで、Webベースによる症状モニタリングと患者報告を組み合わせたシステムと、通常ケアの結果を比較する大規模な単一施設無作為化比較試験の生存に関する結果が、University of North CarolinaのEthan Basch氏により米国臨床腫瘍学会年次大会(ASCO2017)で発表された。

地球温暖化で網膜剥離のリスク増加?

 外気温の上昇が、牽引性網膜剥離のリスク上昇と関連する可能性が、カナダ・ケベック州公衆衛生研究所(INSPQ)のNathalie Auger氏らによる検討で示された。網膜剥離で入院した患者について調査した結果、高い外気温が牽引性網膜剥離のリスク増加と関連している可能性が示唆されたという。著者は、「気候変動を考慮し、眼や他の感覚器に及ぼす熱波の影響をよく理解する必要がある」とまとめている。網膜剥離は視力障害の重大な原因であるが、これまで屋外の高温曝露との関連は検討されていなかった。Environmental Research誌オンライン版2017年5月23日号掲載の報告。

アビラテロン+ADT、転移前立腺がんのOSを38%改善/ASCO2017

 アンドロゲン除去療法(ADT)+ドセタキセルはホルモン療法未治療前立腺がん(mHNPC)の標準治療となっている。一方、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)は増加しており、米国では前立腺がんの3%、欧州では6%、さらにアジア・パシフィックでは60%を占める。CRPCでは早期から、アンドロゲン受容体のシグナル伝達再活性化がみられADTへの耐性となる可能性がある。ADTだけではアンドロゲン合成を阻害することはできない。去勢抵抗性発現以前に、CRPC治療薬であるアビラテロン酢酸エスエル(AA)を投与することで、mHNPCの生存は改善するのか。LATITUDE試験は、高リスクmHNPC患者において、ADTにAA+P(プレドニゾロン)を追加した臨床的利益を評価する第III相プラセボ対照二重盲検試験である。本試験の初回中間解析の結果が、フランスInstitute of Gustave RoussyのKarim Fizazi氏らにより米国臨床腫瘍学会年次大会(ASCO2017)で発表された。