医療一般|page:158

「当事者にも目を向けて」―レビー小体型認知症の多様な症状

 2023年1月17日、住友ファーマ主催のレビー小体型認知症(DLB)に関するプレスセミナーが開催され、大阪大学大学院医学系研究科 精神医学教室 教授の池田 学氏から「第2の認知症、レビー小体型認知症(DLB)の多彩な症状と治療法の進歩」について、近畿大学医学部 精神神経科学教室 主任教授 橋本 衛氏からは「当事者に目を向けた診療のすすめと当事者、介護者、主治医に伝えたいこと」について語られた。  多様な症状を示し、アルツハイマー型認知症と比べてケアが難しいDLBでは、当事者、介護者、主治医の3者の理解が深まることで、当事者のQOL向上と介護者の負担軽減が期待される。

ワクチン未接種のコロナ感染、急性期の死亡リスク80倍超

 中国・香港大学のEric Yuk Fai Wan氏らの研究グループは、英国のデータベースを用いて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の心血管疾患(CVD)発症リスクや全死亡リスクに及ぼす短期的および長期的な影響を検討した。その結果、ワクチン未接種のCOVID-19感染は急性期(感染から21日後まで)のCVD発症リスク、全死亡リスクを大きく上昇させ、これらのリスクは最長18ヵ月間の追跡においても上昇していた。Cardiovascular Research誌2023年1月19日号に掲載の報告。  英国において2020年3月~11月にCOVID-19に感染した患者7,584例(感染群)を感染から最長18ヵ月後まで前向きに追跡した。年齢と性別をマッチングさせた同時期の非感染対照7万5,790人(同時期対照群)、2018年3月~11月の非感染対照7万5,774人(過去対照群)とCVD発症リスク、全死亡リスクなどを急性期と急性期後(感染から22日後以降)に分けて比較した。解析にあたり、傾向スコア分析の拡張版であるMarginal Mean Weighting through Stratification(MMWS)法を用いて、年齢、性、喫煙習慣、糖尿病の既往、高血圧症の既往、民族などを調整した。なお、英国では2020年3月~11月において使用可能な新型コロナウイルスワクチンは存在しなかったため、本試験の対象者はワクチン未接種であった。

かかりつけ医の機能が高いとコロナ入院リスクが低下/慈恵医大

 病気をしたときに何でも相談できる「かかりつけ医」が身近にいると心強い。ましてや、現在のように新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行下という環境では、かかりつけ医から的確な助言が受けられると患者は期待している。  COVID-19とかかりつけ医の関連について、青木 拓也氏(東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター臨床疫学研究部)らの研究グループは、COVID-19拡大後のプライマリ・ケアに関する全国的な縦断調査を実施し、かかりつけ医機能はコロナ禍での入院リスク低下と関連することを明らかにした。

コロナ抗体薬エバシェルドの緊急使用許可を停止/FDA

 米国食品医薬品局(FDA)は1月26日、新型コロナウイルス抗体薬のチキサゲビマブ/シルガビマブ(商品名:エバシェルド)について、緊急使用許可(EUA)を改訂し、本剤の使用を停止することを発表した。今回の改訂により、本剤に非感受性のSARS-CoV-2変異型が国内に占める割合が90%以下の場合に限り、使用が許可されることとなる。本改訂に基づき、エバシェルドはFDAから追って通知がない限り、米国での使用が許可されない。

日本における片頭痛オンライン診療の現状

 2020年3月以降、COVID-19パンデミックによりオンライン診療の必要性が高まっている。日本では2022年4月に、ほとんどの疾患に対するオンライン診療が正式に開始された。長野・こむぎの森 頭痛クリニックの勝木 将人氏は、オンライン診療のみで治療を行った日本人頭痛患者の初の症例集積研究となる、初診から3ヵ月間の治療成績を報告した。その結果、オンライン診療のみで治療を行った3ヵ月の時点で、Headache Impact Test-6(HIT-6)スコア、1ヵ月当たりの頭痛日数(MHD)の有意な改善が認められた。著者は、オンライン診療は頭痛治療におけるアンメットニーズを解決するために普及することが期待されると、本報告をまとめている。Cureus誌2022年11月3日号の報告。

BA.4/5対応ワクチンの中和抗体価とT細胞応答/NEJM

 2022年8月末に米国食品医薬品局(FDA)が緊急使用許可し、その後、日本の厚生労働省でも特例承認されたモデルナ製とファイザー製のオミクロン株BA.4/5対応2価ワクチンについて、米国・ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのAi-ris Y. Collier氏らの研究グループが、これらのワクチンの追加接種における免疫原性について検証した。その結果、追加接種によって中和抗体価は著しく上昇するが、T細胞応答は実質的に増大しないことが示され、過去の抗原曝露による免疫の刷り込みの影響が示唆された。本結果は、NEJM誌オンライン版2023年1月11日号のCORRESPONDENCEに掲載された。

世界初「NASH治療用アプリ」の効果を臨床試験で確認/東大

 肥満を背景に発症する非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、国内に200万人程度(予備軍は推定1,000万人以上)存在すると考えられているが、確立された治療法がなく、減量のための栄養指導や医師からの運動の励行など、個々の施設の取り組みにとどまっているのが現状である。そこで、東京大学医学部附属病院検査部の佐藤 雅哉氏らの研究グループは、疾患治療用プログラム医療機器の開発を手がけるCureAppと共同開発した「NASH治療用アプリ」を用いた第II相試験を実施し、その有用性が認められた。本研究結果は、American Journal of Gastroenterology誌オンライン版2023年1月20日号に掲載された。

mobocertinib、EGFR exon20挿入NSCLCに中国で承認/武田

 武田薬品工業は、2023年1月13日、プラチナベース化学療法で進行したEGFR exon20挿入変異陽性(exon20 ins)の進行非小細胞肺がん(NSCLC)治療に対するmobocertinibの適応を、中国国家食品薬品監督管理局(NMPA)が承認したと発表。  mobocertinibは、exon20挿入変異を標的として設計された経口TKIで、NMPAのブレークスルーセラピーとして審査された。

腎移植後のコロナワクチン3回目接種、抗体陽性率は71%/名大

 大きな手術後の患者に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンを接種した場合、抗体価にどのような変化があるのだろうか。この疑問に藤枝 久美子氏(名古屋大学大学院医学系研究科腎臓内科学)らの研究グループは、腎移植後の患者における新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するワクチン2回接種後から3回接種後の抗体価の変化を調査した。その結果、3回目のワクチン接種により抗体獲得率が上昇し、腎移植後の方におけるワクチン追加接種の重要性が示された。

不眠症におけるレンボレキサント長期治療中止後の影響

 不眠症に対する長期的な薬物療法を中止すると、リバウンドや禁断症状が出現し、最適でない治療につながる可能性がある。琉球大学の高江洲 義和氏らは、レンボレキサントの第III相臨床試験の事後分析を行い、不眠症治療におけるレンボレキサント長期治療中止後の影響を評価した。その結果、レンボレキサントは反跳性不眠リスクが低く、6~12ヵ月後の長期治療後に突然中止した場合でも、その有効性が維持されることを報告した。Clinical and Translational Science誌オンライン版2022年12月23日号の報告。

マクロファージは裏切り者!?肺がんの増殖を促進か/大阪大

 大阪大学大学院医学系研究科の石井 優氏らの研究グループは、肺胞マクロファージが、細胞の増殖および分化の調節、神経細胞の生存など、さまざまな生物活性を有するサイトカイン「アクチビンA」を介して、肺がんの増殖を促進させる悪循環を形成していることを初めて明らかにした。肺胞マクロファージは、正常の肺では最も数の多い免疫細胞の1つで、肺機能の維持に重要な役割を果たしていると考えられている。一方、肺がん細胞と肺胞マクロファージとの詳細な関係については、これまでほとんど解明されていなかった。本研究結果はNature Communications誌2023年1月17日号に掲載された。

双極性障害患者の概日活動リズムと日常的な光曝露との関係~APPLEコホート横断分析

 概日活動リズムの乱れは、双極性障害の主な特徴の1つである。藤田医科大学の江崎 悠一氏らは、日常生活における光曝露が双極性障害患者の概日活動リズムの乱れと関連しているかを調査した。その結果、双極性障害の概日活動リズムに対し、日中の光曝露は良い影響をもたらし、夜間の光曝露は悪影響を及ぼすことが確認された。Journal of Affective Disorders誌2023年2月15日号の報告。  日常生活における光曝露と双極性障害の病状との関連を調査したコホート研究「APPLEコホートスタディ」に参加した双極性障害外来患者194例を対象に、横断研究を行った。対象患者の身体活動および日中の照度は、連続7日間にわたりアクチグラフを用いて測定した。夜間の寝室照度の測定には、ポータブル照度計を用いた。概日活動リズムのパラメータは、コサイナー法およびノンパラメトリックな概日リズム解析を用いて算出した。

対側乳がんリスク、生殖細胞変異で違いは?/JCO

 乳がん女性における対側乳がんリスクは年間0.5%と推定され、生殖細胞変異の有無、人種/民族、診断時年齢、閉経状態が大きく影響する。今回、米国・Mayo ClinicのSiddhartha Yadav氏らが、ATM、BRCA1、BRCA2、CHEK2、PALB2の生殖細胞系列病的変異を有する女性における対側乳がんリスクを推定したところ、BRCA1、BRCA2、CHEK2、PALB2の変異を有する女性でリスクがかなり高いことがわかった。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年1月9日号に掲載。

KRAS G12C陽性肺がんの大規模な臨床ゲノムプロファイル:LC-SCRUM-Asia研究より/Lung Cancer

  ターゲット治療薬の開発で、肺がん領域でも注目されているKRAS G12C変異。2022年末、アジア人KRAS G12C陽性非小細胞肺がん(NSCLC)のリアルワールド解析が発表された。  KRAS G12Cは、白色人種のNSCLCでは約14%に発現するとの報告があるが、アジア人ではどの程度なのか。また、同集団に対する免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の有効性が報告されているが、アジア人患者でも効果は示されるのか。

日本におけるレビー小体型認知症患者・介護者の治療ニーズ

 レビー小体型認知症(DLB)に対する治療戦略を考えるうえで、患者の治療ニーズを把握することは不可欠である。近畿大学の橋本 衛氏らは、DLB患者とその介護者における治療ニーズおよびこれらの治療ニーズを主治医がどの程度理解しているかを調査するため、横断的観察研究を実施した。その結果、DLB患者およびその介護者の治療ニーズのばらつきは大きく、主治医は専門知識を有しているにもかかわらず、DLBのさまざまな臨床症状のために、患者やその介護者にとって最優先の治療ニーズを理解することが困難であることが明らかとなった。著者らは、主治医には自律神経症状や睡眠関連障害により注意を払った治療が求められるとしている。Alzheimer's Research & Therapy誌2022年12月15日号の報告。

オミクロン株の感染爆発のファクターを解明/日本大学ほか

 わが国の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第8波の主な感染原因であるオミクロン株。この変異株について、今井 健一氏(日本大学歯学部感染症免疫学講座 教授)らの研究グループは、オミクロン株感染者の唾液中には、宿主細胞の内外に付随していない裸のウイルス(セルフリーウイルス)が、従来株やデルタ株よりも高比率に含まれていることを世界で初めて発見し、JAMA Network Open誌2023年1月9日号に報告した。

統合失調症の脳の老化~ENIGMAコンソーシアム

 統合失調症は、生涯にわたる認知機能低下、加齢に伴う慢性疾患や早期死亡のリスク増加と関連している。英国・バース大学のConstantinos Constantinides氏らは、成人統合失調症患者における重度の脳の老化に関するエビデンスを調査し、ENIGMA Schizophrenia Working Groupによるプロスペクティブメタ解析研究にてそれらと臨床的特徴との関連を評価した。その結果、統合失調症患者における重度の構造的な脳の老化が示唆された。著者らは、統合失調症における脳の老化や介入による影響の臨床的意義に関するさらなる評価には、統合失調症とさまざまな精神的および身体的アウトカムの縦断的研究が役立つであろうと述べている。Molecular Psychiatry誌オンライン版2022年12月9日号の報告。

コロナワクチンの免疫応答、年齢による違い/京大iPS細胞研究所

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するワクチンの個人差・年齢差を検討したところ、65歳以上の高齢者ではワクチン接種後のT細胞応答の立ち上がりが遅い一方、収束は早いという特徴があることを、京都大学iPS細胞研究所の城 憲秀氏らによる共同研究グループが明らかにした。Nature Aging誌 2023年1月12日掲載の報告。  一般に加齢とともに免疫機能が低下することはよく知られているが、T細胞が生体内で刺激を受けた際の応答が加齢によってどのように、またどの程度変化するかは不明であった。そこで研究グループは、ワクチン接種後のT細胞応答や抗体産生、副反応との関連を調査した。

日本人高齢者の日常的な温泉入浴とうつ病との関係~別府レトロスペクティブ研究

 温熱療法は、うつ病など、さまざまな精神疾患のマネジメントに用いられる。九州大学病院別府病院の山崎 聡氏らは、日本人高齢者の温泉入浴とうつ病との関係を検討するため、アンケート調査を実施した。その結果、習慣的な毎日の温泉入浴とうつ病歴の低さとの間に関連があることが確認された。著者らは、温泉の使用が精神疾患や精神障害の症状緩和に有用であるかを明らかにするためにも、うつ病治療としての習慣的な毎日の温泉入浴に関するプロスペクティブ無作為化比較試験が求められるとしている。Complementary Therapies in Medicine誌オンライン版2022年12月13日号の報告。  大分県別府市在住の65歳以上の高齢者1万429人に対して、うつ病の有病率に関するアンケート調査を実施し、回答した219人を対象に長期的な温泉入浴のうつ病予防効果を総合的に評価した。うつ病歴のオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出するため、多変量ロジスティック回帰モデルを用いた。

コロナワクチン後の心筋炎、高濃度の遊離スパイクタンパク検出

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のmRNAワクチン(以下、新型コロナワクチン)接種後、まれに心筋炎を発症することが報告されているが、そのメカニズムは解明されていない。そこで、マサチューセッツ総合病院のLael M. Yonker氏らの研究グループは、青年および若年成人の新型コロナワクチン接種後の血液を分析し、心筋炎発症例の血中では、切断を受けていない全長のスパイクタンパク質が、ワクチン接種により産生された抗スパイク抗体に結合していない“遊離”の状態で、高濃度に存在していたことを発見した。Circulation誌オンライン版1月4日掲載の報告。