医療一般|page:144

性への関心と健康や寿命は関係があるのか/国内前向き研究

 性的関心が薄れることは、健康や寿命に関係するのであろうか。山形大学の櫻田 香氏らの研究グループは、性的関心の欠如と全死因死亡率との関連性について、山形県における前向き観察研究を行った。この研究は、山形県内の40歳以上の被験者2万969人を対象に行ったもので、性的関心を持たなかった男性では、全死亡率およびがん死亡率が有意に上昇した。PLoS One誌2022年12月14日号の報告。

統合失調症患者の味覚障害

 精神疾患患者では、味覚障害が認められることが少なくない。これまでの研究では、統合失調症患者において症状とグルタミン酸ナトリウム(MSG)の味覚障害との間に関連がある可能性が示唆されている。ポーランド・Pomeranian Medical UniversityのMichal Wronski氏らは、MSGの味覚レベルが症状の重症度と関連しているかを検討した。Brain Sciences誌2022年11月9日号の報告。  対象は、妄想型統合失調症と診断(ISD-10)された患者200例。MSGまたは水を含む3つの液体サンプルを舌下投与することにより、MSG検出閾値を評価した。MSGのサンプルには、サンプルごとに異なる濃度を用いた。被験者に、どのサンプルがMSGを含有しているかを示してもらい、味の強さや不快感(快適、不快、どちらでもない)を評価させた。

高い目的意識は長生きにつながる?

 人生に明確な目的意識を持つことで、全死亡リスクを低下させられる可能性のあることが、1万3,000人以上の米国人を8年にわたって追跡した研究から明らかになった。この傾向は、男性よりも女性でやや強かったものの、性別や人種/民族による有意差は認められなかったという。米ボストン大学公衆衛生大学院の芝孝一郎氏らが実施したこの研究の詳細は、「Preventive Medicine」11月号に掲載された。  この研究は、50歳超の米国成人を対象にした健康と退職に関する研究(Health and Retirement Study)の参加者1万3,159人のデータを用いて、目的意識と全死亡リスクとの関連を検討したもの。目的意識の高さについては、試験開始時(2006〜2008年)に評価スケールを用いて参加者に自己報告してもらった「人生の目的」に基づき評価した。また、参加者を研究開始時から8年間追跡して全死亡リスクについて検討した。

冬が近づくと多くの人が抑うつ状態になりやすくなる―AHAニュース

 冬になると木々の葉が落ち、気温が下がり、太陽が弱々しくなる。これを季節の移り変わりとして楽しむ人もいるが、一方で冬季に季節性情動障害(SAD)と呼ばれるうつ病の一種を経験する人も少なくない。「その症状は一般的なうつ病とほとんど変わらない」と米ニューヨーク大学(NYU)グロスマン医学部のThea Gallagher氏は解説する。同氏によると、「両者の唯一の違いは、SADの発症が季節と関連していること。通常は日光が弱まり気温が低下して、身体活動が少なくなりがちな秋から冬に症状が現れ、春には消失する。しかし、毎年ほぼ同じ時期に再発しやすい」とのことだ。

EGFR陽性肺がんオシメルチニブ1次治療の有用性、35ヵ月のリアルワールド追跡(OSI-FACT)/日本肺癌学会

 EGFR変異陽性肺がんの1次治療においてオシメルチニブはスタンダードだが、同レジメンを大規模に観察したリアルワールドデータはない。第63回日本肺癌学会学術集会では、愛知県がんセンターの大矢由子氏により、同治療の有効性と安全性をリアルワールドで評価したOSI-FACT試験の追跡結果が発表された。  対象は、2018年8月〜2019年12月にHanshin Oncology critical Problem Evaluate group(HOPE)を中心に登録された、EGFR変異陽性NSCLC患者538例。これらの患者を後ろ向きに解析した。データカットオフは2022年2月28日で、追跡期間中央値は35.0ヵ月である。

コロナウイルスの生存率が高い食品は…野菜or肉or魚?

 2019年冬、中国・武漢で新型コロナウイルス感染症が初めて発生し、その起源も生きた哺乳類が売られていた「海鮮市場」と研究報告もまとめられている1)。以来、新型コロナウイルス(以下、SARS-CoV-2)と食品との関連性については懸念が続いているが、SARS-CoV-2の食品での生存率と除去に関する研究はほとんど存在していない。そこで、韓国・中央大学校のSoontag Jung氏らがSARS-CoV-2の生存に最適な保管温度や素材を調査するために、レタス、チキン、サーモンにSARS-CoV-2を付着させ、温度や湿度を変化させて検証した。その結果、SARS-CoV-2の生存率は、保管温度と食品に依存しており、室温ではレタスとチキン上での生存率が低いことが明らかになった。Food Microbiology誌オンライン版2022年10月27日号掲載の報告。

脳の強化にはベリー類などの食品が良い可能性

 ベリー類やお茶をたくさん摂取すれば、加齢に伴う認知機能の低下速度を遅らせることができるかもしれない。米ラッシュ大学医療センターのThomas Holland氏らが、900人以上の成人を対象に実施した研究で、抗酸化物質のフラボノール類を含む食品や飲料は、高齢者の脳に有益な影響をもたらすことが示された。フラボノール類は、ベリー類などの果物や緑色の葉物野菜、茶、ワインなどに含まれている。この研究結果は、「Neurology」に11月22日掲載された。  この研究でHolland氏らは、認知症がない60〜100歳の研究参加者961人(平均年齢81歳)のデータを収集した。平均6.9年にわたる追跡期間中に、これらの参加者は年に1回の頻度で食事に関する質問票に回答しており、1日当たりのフラボノール類の摂取量に応じて5群に分けられた。参加者のフラボノール類の1日当たりの平均摂取量は、最も多い群で15mg(葉物野菜で約1カップ分に相当)、最も少ない群で5mgだった。認知機能については、参加者に対して1年に1回の頻度で実施された19種類の認知機能検査の結果を基に、包括的な認知機能スコアを算出した。

COVID-19後遺症患者の多くがスティグマを経験

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患後症状(以下、後遺症)が生じた人は、長期にわたって、倦怠感やブレインフォグ、息切れなどの症状と闘っている。しかし、後遺症患者を悩ませているのはそのような症状だけではないようだ。後遺症患者の約95%が少なくとも1種類のスティグマ(偏見や差別)を経験したことがあり、4人に3人は、そうしたスティグマをかなりの頻度で経験していることが、新たな研究から明らかになった。英ブライトン・アンド・サセックス・メディカルスクールのMarija Pantelic氏らが実施したこの研究の詳細は、「PLOS ONE」に11月23日掲載された。

アルツハイマー病薬の臨床試験で2例目の死亡例

 臨床試験で脳のアミロイドβを除去する抗体薬lecanemab(レカネマブ)の投与を受けていた初期段階のアルツハイマー病の65歳の女性が、重度の脳出血により死亡したことが、「ScienceInsider」に11月27日報告された。Lecanemabに関連して生じた可能性のある2例目の脳出血死であり、この薬剤の安全性に対する疑問が浮上している。  報告によると、この女性は脳卒中に脳腫脹や脳出血を併発していた。Lecanemabの投与に伴う脳腫脹や脳出血は、別の投与例でも確認されている。女性を治療した米ノースウェスタン大学医療センターの医師らによると、強力な血栓溶解薬である組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)を投与した直後、女性は脳の外層全体に相当量の出血を来したという。女性の夫は、「医師が薬剤を投与したとたん、妻の体に火がついたかのようになった。妻は悲鳴を上げ、8人がかりで押さえつけなければならないほどだった。本当に恐ろしい状況だった」と同誌に語っている。症例報告によれば、女性は数日後に死亡したという。

心臓に良いとされるサプリのコレステロール低下作用は否定的/JACC

 心臓に良いとされているサプリメント(サプリ)のコレステロール低下作用を検討した結果、いずれも見るべきものはなく、中には負の影響を示すものもあったとする報告が、米国心臓協会(AHA)学術集会(Scientific Sessions 2022、11月5~7日、米シカゴ/バーチャル開催)で発表されるとともに、「Journal of the American College of Cardiology(JACC)」に論文が同時掲載された。米クリーブランド・クリニックのLuke Laffin氏らの研究によるもの。  心血管疾患のリスク抑制には、血清脂質値の改善〔LDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪の低下、HDL(善玉)コレステロールの上昇〕が重要であり、その手段として医師からは、主としてスタチンと呼ばれる薬剤が処方される。一方、処方箋のいらないサプリメントの中にも心臓に良いとされているものがある。ただし、それらの血清脂質改善作用は明らかでない。そこでLaffin氏らは、それら6種類のサプリの脂質改善作用をスタチンの一種であるロスバスタチンと比較するという、前向き無作為化単盲検比較試験を実施した。

パンデミック下での職場いじめと精神的苦痛や希死念慮の実態―全国オンライン調査

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック下で実施された、職場いじめと労働者のメンタルヘルスの実態に関する調査の結果が報告された。労働者の15%が職場いじめに遭っていたこと、在宅勤務の開始は職場いじめに遭う確率を下げるものの、男性では精神的苦痛や希死念慮の増加につながっていたことなどが明らかになった。神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科の津野香奈美氏らの研究によるもので、詳細は「BMJ Open」に11月2日掲載された。  職場でのいじめは労働者のメンタルヘルスに悪影響を及ぼすことが想定されるが、その実態は明らかになっていない。また、COVID-19パンデミックに伴い人々の生活はそれまでと一変し、特に労働者では雇用環境の悪化や在宅勤務の開始などにより、新たなメンタルヘルスへの負荷が加わったと考えられる。津野氏らはこれらの点について、COVID-19パンデミックの社会・医療への影響を把握するために実施された大規模調査「JACSIS(Japan COVID-19 and Society Internet Survey)研究」のデータを解析し検討した。

餅は胃内で硬くなる!?胃に丸餅10個確認された症例

 毎年、年末になると餅による窒息の注意が喚起されるが、餅の胃内滞留はほとんど知られていない。胃酸が餅を溶かすと誤解されているが、雑煮など温かい汁物の中では柔らかい餅が、胃内の温度では胃液で溶けない程度に硬くなる。そのまま餅が胃内に滞留すると、胃潰瘍や胃穿孔を引き起こす可能性があるので、小児や高齢者以外も注意が必要だ。今回、雑煮の餅を噛まずに飲み込んで胃内に滞留し、腹痛で来院した症例について、名手病院(和歌山県紀の川市)の川西 幸貴氏らがClinical Case Report誌オンライン版2022年12月5日号に報告した。

HR+/HER2+転移乳がん1次治療、ET有無の転帰への影響

 ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陽性(ERBB2+)転移乳がん(MBC)患者における内分泌療法(ET)の位置付けは明確になっていない。フランス・Institut CurieのMarcela Carausu氏らは、HER2陽性患者におけるホルモン受容体の状態やETの1次治療での投与有無と転帰の関連を評価することを目的としてコホート研究を実施。JAMA Network Open誌2022年12月15日号に報告した。  本研究は、フランスの臨床疫学・医療経済(ESME)コホートの臨床データを解析したもので、2008~17年に治療を開始したMBC患者が含まれた。最終フォローアップ日は2020年6月18日。ETによる維持療法と転帰との関連を評価するために、対象患者にはHER2標的療法の第1選択薬に加え、化学療法(CT)±ETあるいはET単独療法が行われた。

降圧薬使用とアルツハイマー病との関連~メタ解析

 高血圧は認知症のリスク因子として知られているが、高血圧患者のアルツハイマー病リスク軽減に対する降圧薬使用の影響についてのエビデンスは、決定的であるとは言えない。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン薬学部のM. Adesuyan氏らは、認知機能が正常な高血圧症の成人患者における降圧薬使用とアルツハイマー病発症率との関連を調査した。その結果、降圧薬の使用とアルツハイマー病発症率低下との関連が認められた。とくに、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の使用は、降圧薬の中でも最大のベネフィットをもたらす可能性が示唆された。このことから著者らは、降圧が認知機能保護の唯一のメカニズムではない可能性があり、認知機能に対するアンジオテンシンIIの影響についてさらなる調査が求められるとしている。The Journal of Prevention of Alzheimer's Disease誌2022年号の報告。

喘息が動脈硬化の進行を促す?

 喘息がアテローム性動脈硬化の進行を促す可能性を示唆するデータが報告された。米ウィスコンシン大学マディソン校のMatthew Tattersall氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に11月23日掲載された。持続型喘息の患者では、頸動脈の動脈硬化が有意に進行していることが確認されたという。ただし、間欠型喘息の患者では、この関係は非有意とのことだ。  喘息とアテローム性動脈硬化の病態にはともに炎症が関与していることから、両者に何らかの相互関係がある可能性が想定される。Tattersall氏らは、アテローム性動脈硬化のリスク評価に頻用されている、超音波検査による頸動脈内膜中膜複合体厚(頸動脈IMT)を指標として、喘息の有無により動脈硬化の進行レベルが異なるか否かを検討した。

女性が運動をするなら朝が最適?

 中年期以降の女性が健康のために運動をするなら、早朝から午前中に行うと良いかもしれない。その方が心血管イベントリスクをより抑制できる可能性を示唆するデータが報告された。ライデン大学医療センター(オランダ)のGali Albalak氏らの研究によるもので、詳細は「European Journal of Preventive Cardiology」に11月14日に掲載された。なお、男性ではこのような傾向は見られないとのことだ。  Albalak氏はこの研究結果の報告に際して、「まず基本的に伝えたいことは、いつ行ったとしても運動にはメリットがあるということだ」と述べ、運動そのものの意義を強調している。実際、公衆衛生に関する大半のガイドラインでは、運動の強度や頻度に関する推奨を掲げているものの、タイミングについては触れていない。Albalak氏らはそのような認識を基盤とした上で、概日リズム(1日24時間周期の生理活動)との関連から、運動を行うタイミングが健康上のメリットに影響を及ぼす可能性があるのではないかと考え、本研究を行った。

冬季うつの改善に運動を

 冬に入り日が短くなると、季節性感情障害(SAD)として知られる冬季うつのために、気分が落ち込みやすくなる人が増加する。例えば、疲れやすい、人生に行き詰まった感じがする、やる気が出ない、炭水化物や甘い物が欲しくなる、といった症状が現れることがある。そのような時は、有酸素運動などを行うと気分を高めるのに役立つかもしれない。米ベイラー医科大学のJames McDeavitt氏らが同大学のサイト内で、冬季うつを改善するためのいくつかのヒントを提供している。  McDeavitt氏はまず、「SADでは、運動を継続するか、場合によっては運動量を増やすことが望ましい」と語る。「有酸素運動を継続的に行うことは気分に良い影響を与える。ただし、必ずしも負荷のかかるジョギングなどである必要はない。ヨガや太極拳、瞑想なども、抑うつ症状の改善に役立つ」とのことだ。同氏は、「SADやうつ病、その他の原因でセロトニンとドーパミンのレベルが低下している状態では、運動を通じて脳内神経伝達物質のレベルを高めるというメリットを得られる」と、症状改善のメカニズムを解説している。

子どもの学習の速さの秘密が脳画像から明らかに?

 子どもはなぜあんなにも早く新しい知識やスキルを習得できるのかと疑問に思ったことはないだろうか。新たな研究で、子どもが新しい情報を処理し、脳内でその情報を学習して蓄積する上でGABA(Gamma Amino Butyric Acid、γ-アミノ酪酸)と呼ばれる脳内の神経伝達物質が非常に重要な役割を果たしていることが示唆された。米ブラウン大学認知言語心理学部教授の渡邊武郎氏らが実施したこの研究の詳細は、「Current Biology」に11月15日掲載された。  効率よく学ぶには、新たに学んだことが脳で迅速に固定化され、その後に学んだものの影響を受けずに保持される必要がある。成人を対象にした研究では、精神を安定させる抑制性の神経伝達物質であるGABAが、新しく学んだ情報の固定化に重要な役割を果たしていることが報告されている。しかし別の研究では、子どもでのGABAによる抑制作用は大人に比べると未成熟であることが示されている。それにもかかわらず、子どもの方が大人よりも効率よく学習できるのはなぜなのか。  このことを調べるために渡邊氏らは、小学生13人(8〜11歳)と成人14人(18〜35歳)を対象に、機能的磁気共鳴スペクトロスコピー(fMRS)を用いて、知覚学習の実施前、実施中、実施後の初期視覚野のGABA濃度を測定し、比較した。

トリグリセライドの新基準と適切なコントロール法/日本動脈硬化学会

 今年7月に発刊された『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』。今回の改訂点の1つとして「随時(非空腹時)のトリグリセライド(TG)の基準値」が設定された。これらの基準をもとに動脈硬化性疾患のリスクとしての高TG血症を確認するが、TG値の低下だけではイベントを減らせないため、高TG血症の原因となる生活習慣を改善させ適切な治療介入により動脈硬化を抑制するという観点から複合的に行う必要がある。今回、日本動脈硬化学会プレスセミナーにおいて、増田 大作氏(りんくう総合医療センター循環器内科部長)が「高トリグリセライド血症とその治療」と題し、日本人疫学に基づいたTGの適切なコントロール法について解説した。

IO+Chemoへのベバシズマブ add onの成績(APPLE)/日本肺癌学会

 非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療はIO+化学療法にパラダイムシフトしている。 ベバシズマブは化学療法の効果を増強することが報告されているだけでなく、VEGF阻害に伴う免疫抑制の解除による免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の効果増強も期待されている。  そのような中、NSCLCおいて、ICIであるアテゾリズマブ・化学療法併用へのベバシズマブの追加効果を評価するAPPLE試験が行われている。第63回 日本肺癌学会学術集会では、APPLE試験の初回解析結果を九州大学病院の白石祥理氏が発表した。