医療一般|page:110

新たなRSウイルスワクチン、高齢者と乳児の双方で効果を発揮

 ファイザー社が開発したRS(呼吸器合胞体)ウイルスワクチンは、高齢者と乳児の双方でRSウイルス感染症を安全かつ効果的に予防するという2件の臨床試験の結果が報告された。ファイザー社は、同ワクチンの高齢者に対する接種が5月までに、妊婦に対する接種が8月までに米食品医薬品(FDA)により承認されるものと見ている。これらの臨床試験の結果は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」に4月5日掲載された。  RSウイルスに感染しても、通常は風邪様の症状が現れる程度だ。しかし米国では、1歳未満の子どもの気管支炎と肺炎の最も一般的な原因ウイルスがRSウイルスである。また、このウイルスは高齢者、特に健康状態が不良な人にリスクをもたらす。米疾病対策センター(CDC)によると、毎年、5万8,000〜8万人の5歳未満の子ども、および6万〜16万人の高齢者がRSウイルス感染症で入院し、さらに6,000〜1万人の高齢者が同感染症により死亡しているという。

うつ病に対する遠隔医療介入の有用性~メタ解析

 うつ病患者の抑うつ症状、QOL、仕事や社会的機能に対する遠隔医療介入の治療効果を明らかにするため、台湾・亜洲大学のYin-Hwa Shih氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、遠隔医療介入はうつ病患者の抑うつ症状の軽減やQOL向上に効果的であることが報告された。Annals of Medicine誌2023年12月号の報告。  2021年3月までに公表された文献を、6つの電子データベース(MEDLINE、PubMed、PsycINFO、Scopus、Embase、CINAHL)でシステマティックに検索した。各文献のリファレンスリストは手動で検索した。対象は、うつ病と診断された患者の遠隔医療介入の治療効果を調査したランダム化比較試験。質的評価には、Joanna Briggs Instituteのチェックリストを用いた。

AIは専門スタッフよりも心疾患の検出能力が高い?

 人工知能(AI)の心エコー画像解析能力は、専門スタッフ(超音波検査士)より高いことを示唆するデータが報告された。米シダーズ・サイナイ医療センター、シュミット心臓研究所のDavid Ouyang氏らの研究によるもので、詳細は「Nature」に4月5日掲載された。  この研究では、3,495件の経胸壁心エコー検査の画像データを用いて、AIと超音波検査士のそれぞれが左室駆出率を評価。その評価結果を心臓専門医が見比べて、どちらの方が優れているかを検討した。心臓専門医は、評価結果のレポートがAIによるものか超音波検査士によるものかを知らされていなかった。この研究は、心臓病学領域で初のAI画像診断に関する、盲検化された無作為化比較試験だという。

リチウム濃度の高い水道水を摂取した母親の子どもは自閉症リスクが高い

 リチウム含有量が多い地域の水道水を摂取していた妊婦では、含有量が少ない地域の水道水を摂取していた妊婦と比べて、子どもが自閉症(ASD)になる確率が高いとする研究結果が報告された。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)David Geffen School of Medicine神経学教授のBeate Ritz氏らが実施したこの研究は、「JAMA Pediatrics」に4月3日掲載された。  リチウムはアルカリ金属元素に分類される元素で、地殻内部に広範に分布している。リチウムには精神安定作用があることから、うつ病や双極性障害の治療に用いられることもある。しかし、妊娠中の女性に対する使用については、流産や子どもに先天性の異常が生じるリスクが否定できないことから、統一見解が得られていない。

早期の転移性セミノーマ患者に対してはリンパ節切除が第一選択肢に?

 精巣がん患者のうち、初期の転移性セミノーマ患者では、化学療法や放射線療法は必要ではなく、後腹膜(腹膜の外側と腹壁の間の腔)にあるリンパ節の切除〔後腹膜リンパ節郭清術(RPLND)〕だけで十分であるという研究結果が報告された。研究論文の筆頭著者である、米南カリフォルニア大学ケック医学校の泌尿器科腫瘍医Siamak Daneshmand氏は、「試験対象者の大多数がRPLNDのみで治癒し、従来の化学療法や放射線療法に付随する毒性を回避できることが本研究で示された。われわれは、セミノーマに対するこの手術が、近い将来、治療ガイドラインに組み込まれることを確信している」と話している。研究の詳細は、「Journal of Clinical Oncology」に3月13日掲載された。

ワクチン接種者はコロナ後遺症リスクが4割以上低い可能性

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の急性期以降にさまざまな症状が遷延する、「コロナ後遺症」と呼ばれる状態(post-COVID-19 condition;PCC)のリスクに関連する因子が報告された。女性や喫煙者、急性期に入院を要した人などはリスクが高く、反対にワクチン接種によってリスクが大幅に抑制されている可能性が示された。英イースト・アングリア大学のVassilios Vassiliou氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Internal Medicine」に3月23日掲載された。

腎臓のリスクを上げない飲酒量は?

 アルコールと疾患に関して過去のコホート研究では、アルコール摂取とタンパク尿と糸球体濾過量(GFR)低下を特徴とする慢性腎臓病との間に相反する関連性が報告されている。ただ、大量飲酒が腎臓に及ぼす影響を評価した研究は少なく、これまで一定の見解が得られていなかった。そこで山本 陵平氏(大阪大学 キャンパスライフ健康支援・相談センター)らの研究グループは、これまでに報告された疫学研究の結果を統合し、アルコール摂取量と腎臓病リスクの関係を解析した。その結果、1日60g程度(日本酒約3合)以上のアルコール摂取はタンパク尿リスクとなることを明らかにした。Nutrients誌2023年3月25日号に掲載。

術前デュルバルマブ・NAC併用+術後デュルバルマブによるNSCLCのEFS延長(AEGEAN)/AACR2023

 デュルバルマブを用いた術前・後レジメンが早期非小細胞肺がん(NSCLC)の無イベント生存期間(EFS)を有意に延長した。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのJohn V. Heymatch氏が、米国がん研究協会年次総会(AACR 2023)で発表した、術前化学療法とデュルバルマブの術前後補助療法の組み合わせを評価する第III相AEGEAN試験の結果である。

ミトコンドリアはアルツハイマー病の予防や治療の新たな扉を開くか

 アルツハイマー病リスクが高い人の特定は、予後や早期介入に重要である。縦断的な疫学研究では、脳の不均一性と加齢による認知機能低下が観察されている。また、脳の回復力は、予想以上の認知機能として説明されてきた。この「回復力(resilience)」の構造は遺伝的要因や年齢などの個人的特性と相関することが示唆されている。さらに、アルツハイマー病の病因とミトコンドリアの関連がこれまでのエビデンスで確認されているが、遺伝学的指標(とくにミトコンドリア関連遺伝子座)を通じて脳の回復力を評価することは難しかった。

モノクローナル抗体薬で新型コロナによる入院や死亡のリスクが39%低下

 モノクローナル抗体薬は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療において有効なツールであったようだ。米ピッツバーグ大学医療センター(UPMC)のKevin Kip氏らが、UPMCのCOVID-19患者データベースを分析したところ、検査での陽性判定から2日以内にモノクローナル抗体薬による治療を開始した患者では、同薬による治療を受けなかった患者と比べて入院や死亡のリスクが39%低下していたことが明らかになった。この研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に4月4日掲載された。

静脈を動脈の代用として下肢切断を回避

 米ペンシルベニア州ハーミテージ市のCynthia Elfordさん(63歳)は、1型糖尿病が原因で左脚を失った。日焼けした足の親指がその後黒っぽく変色し、切断を余儀なくされたのだ。そして彼女は、右脚も同じ状態になりつつあると言われていた。  手足に血液を送る動脈が狭くなる末梢動脈疾患(PAD)があると、下肢の切断を要する状態になりやすい。治癒を促す血流があまりにも少ないと、小さな傷などでも壊死してしまうことがあるためだ。しかし、侵襲性が極めて低い"LimFlow"と呼ばれるシステムを用いた実験段階の治療法のおかげで、Elfordさんは今のところ右脚を切断することなく過ごしている。この治療法は、虚血状態にある脚に新鮮な血液を送るために、静脈を動脈にかえるというものだ。LimFlowの安全性と有効性について調べる目的で実施された臨床研究では、治療を受けた患者の76%が下肢切断を回避できたという。この結果は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」3月30日号に発表された。

心臓の形が健康にとって重要な可能性

 心臓の形を評価することが、心疾患の発症リスクの予測に役立つ可能性があることが明らかになった。形が真球に近いほど、そのリスクが高いと考えられるという。米スタンフォード大学のShoa Clarke氏らの研究によるもので、詳細は「Med」に3月29日掲載された。  心臓の状態を評価する際、現在は収縮機能や心腔の大きさなどの指標を参考にすることが多い。今回の研究から、それらの指標とともに、心臓の真球度(直径の乱れの少なさ)も優れた指標である可能性が示された。ただしClarke氏は、「心臓の形が真球に近いこと自体は恐らく疾患ハイリスクの原因ではなく、真球度は何らかの疾患のマーカーと言える。より真球に近い心臓の人は、心筋症や心筋に関連している機能障害を持っている可能性がある。治療方針の決定のために参照する情報のリストに、心臓の真球度を組み込むことの有用性の有無を検討するだけの価値があるのではないか」と語っている。

コロナ5類化、もう不要だと思う感染対策は?/医師1,000人アンケート

 5月8日より、新型コロナウイルス感染症が「5類感染症」に移行となり、今後の感染対策は個人の判断に委ねられるものが増える。今後も必要、または、もう不要だと思う感染対策、5類移行に伴い懸念していること、新型コロナが収束したと思える状況などについて、会員医師1,000人を対象に『新型コロナ5類移行に伴う感染対策、まだ必要・やめてもよいと思うものアンケート』を4月10日に実施した。なお、本アンケートは、東京iCDC(東京感染症対策センター)リスコミチームによって実施された都民アンケート調査1)を参考に作成した。

アトピー性皮膚炎、抗IL-13抗体薬lebrikizumabが有効/NEJM

 インターロイキン13(IL-13)を標的とするIgG4モノクローナル抗体lebrikizumabは、中等症~重症アトピー性皮膚炎(AD)の成人・青少年患者を対象とした2つの第III相試験において、16週の導入療法期間での有効性が確認された。米国・ジョージ・ワシントン大学のJonathan I. Silverberg氏らがNEJM誌2023年3月23日号で報告した。  研究グループが実施した「ADvocate1試験」と「ADvocate2試験」は、個別にデザインされた52週の国際共同第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験で、いずれも16週の導入療法期間と36週の維持療法期間で構成された。

実臨床におけるアリピプラゾール月1回製剤の評価~REACT研究

 統合失調症患者に対する長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬による治療は、さまざまなベネフィットをもたらす可能性がある。ドイツ・ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターのDaniel Schottle氏らは、実臨床におけるアリピプラゾール月1回製剤(AOM)の有用性を評価するため、ドイツとカナダで実施された2つの非介入研究の結果を分析した。その結果、AOM治療は、性別、年齢、罹病期間、疾患重症度を問わず、幅広い患者に有効な治療法である可能性が示唆された。BMC Psychiatry誌2023年3月14日号の報告。

FDAがオピオイド過剰摂取に対するOTC医薬品を初承認

 米食品医薬品局(FDA)は3月29日、スプレー式の点鼻薬ナロキソン塩酸塩(商品名Narcan)を、処方箋不要のOTC医薬品として初めて承認した。オピオイド過剰摂取の影響を速やかに抑える作用を持つNarcanは、オピオイド過剰摂取の標準治療法とされている。  米国では、薬物の過剰摂取が公衆衛生上の大きな問題となっている。2022年10月までの12カ月間に報告された、違法なフェンタニルなどの合成オピオイドを中心とする薬物の過剰摂取による死亡の発生件数は、10万1,750件以上に上るという。

身体活動が少なすぎ/多すぎの双方がメンタルヘルス不良と関連―日本人での横断研究

 身体活動の量や時間とメンタルヘルスとの間に、U字型の関連があるとする研究結果が報告された。東京医科大学精神医学分野の志村哲祥氏らの研究によるもので、詳細は「Frontiers in Psychology」に1月13日掲載された。  スポーツや運動、または仕事や家事なども含む「身体活動」は、一般的にはメンタルヘルスに良い影響を与えると考えられている。ただし、身体活動が多ければ多いほどメンタルヘルスがより良好になるのかという用量反応関係は不明。多すぎる身体活動がメンタルヘルスの悪化と関連しているとする報告もあるが、検証が十分行われておらず、最適な身体活動レベルも明らかになっていない。志村氏らはこのような状況を背景として、自記式アンケートを用いた日本人成人を対象とする研究を行った。

PCI後の慢性冠症候群患者では高尿酸血症がMACEリスクを高める可能性

 経皮的冠動脈形成術(PCI)後の慢性冠症候群患者では、高尿酸血症が主要心血管イベント(MACE)のリスクを押し上げる可能性を示唆するデータが報告された。自治医科大学附属さいたま医療センター循環器内科の藤田英雄氏らの研究によるもので、詳細は「Frontiers in Cardiovascular Medicine」に1月10日掲載された。  高尿酸血症が心血管疾患の関連因子であることは確かだが、高尿酸血症に併存することの多い肥満や脂質異常症、高血圧などの影響を統計学的に調整すると、両者の関連性が減弱または消失するため、因果関係の有無についてはいまだ議論が続いている。

作り笑いの「笑いヨガ」で糖尿病を改善~日本人でのRCT

 笑いには、ストレス軽減、NK細胞の活性化、アレルギー反応抑制、食後血糖値の上昇抑制などが報告されている。しかし、お笑い番組は人により好みが異なるため、すべての人を笑わせることは難しい。今回、福島県立医科大学の広崎 真弓氏らの無作為化比較研究の結果、作り笑いと深呼吸を組み合わせた「笑いヨガ」で2型糖尿病患者の血糖コントロールが改善されることが示された。Frontiers in Endocrinology誌2023年3月31日号に掲載。

ビタミンD不足で認知症リスク上昇~コホート研究

 ビタミンD活性代謝物は、神経免疫調節や神経保護特性を有する。しかし、ヒドロキシビタミンDの血清レベルの低さと認知症リスク上昇の潜在的な関連については、いまだ議論の的である。イスラエル・ヘブライ大学のDavid Kiderman氏らは、25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)の血清レベルの異なるカットオフ値において、ビタミンD欠乏症と認知症との関連を調査した。その結果、不十分なビタミンDレベルは認知症との関連が認められ、ビタミンDが不足または欠乏している患者においては、より若年で認知症と診断される可能性が示唆された。Journal of Geriatric Psychiatry and Neurology誌オンライン版2023年3月8日号の報告。