医療一般|page:95

ワクチン別、デルタ/オミクロン期の重症化抑制効果/BMJ

 米国退役軍人の集団において、デルタ株およびオミクロン株の優勢期で、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染して30日以内の人を対象に、ワクチン接種の回数や種類と、入院や死亡などの重症アウトカムとの関連性を調べた後ろ向きコホート研究が、米国・Lieutenant Colonel Charles S. Kettles VA Medical CenterのAmy S. B. Bohnert氏らにより実施された。本研究の結果、ワクチンの種類にかかわらず、未接種者よりも接種者のほうが重症化率や死亡率の低下が認められた。また、mRNAワクチンに関しては、ファイザー製よりもモデルナ製のほうが高い効果が得られることが示唆された。BMJ誌2023年5月23日号に掲載の報告。

減量効果が大きいのは?時間制限食vs.カロリー制限食

 摂取カロリーを制限しない時間制限食は、人気のある減量法となっているが、その有効性のエビデンスは限られている。とくに、長期の影響については明らかになっていない。そこで、米国・イリノイ大学シカゴ校のShuhao Lin氏らは無作為化比較試験を実施し、時間制限食の効果について、カロリー制限食や食事制限なしと比較した。その結果、時間制限食とカロリー制限食はいずれも体重を減少させたが、両者に有意差は認められなかった。本研究結果は、Annals of Internal Medicine誌オンライン版2023年6月27日号で報告された。

2型糖尿病の運動療法に最適な時間帯は?

 運動を午後の時間帯に行っている2型糖尿病患者は血糖コントロールがより良好になる可能性を示す、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のJingyi Qian氏らの研究結果が、「Diabetes Care」に5月25日掲載された。ただし研究者らは、この結果のみでは午後の運動を推奨することはできないと述べている。  この研究は、運動を行う時間帯を変えるという介入によって、血糖管理状態が変化するか否かを検証可能なデザインでは行われていない。それでも、午後に運動することで血糖コントロールがより良好になる機序についてQian氏は、「運動による血糖管理状態への影響は、絶食状態で行うよりも食後に行った方が大きい可能性があり、午後に運動をしている人の多くが食後に運動をしているのではないか。それに対して朝に運動をしている人は、運動をしてから朝食を食べることが多いと考えられる」との推論を述べている。とはいえ、「午後に運動をする時間を取れないからといって運動をすべきでないという意味ではない」とし、「時間帯や場所にとらわれず、運動をできるタイミングですべきだ」と同氏は推奨する。

脳卒中後の血糖管理が認知機能低下抑止の鍵となる可能性

 脳卒中を発症後に血糖値が高い状態で推移していると、認知機能の低下が速くなる可能性が報告された。一方、血圧やLDL-コレステロール(LDL-C)が高いことに関しては、そのような関連は認められないという。米ミシガン大学のDeborah Levine氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に5月17日掲載された。  Levine氏によると、「脳卒中の発症後は認知症のリスクが最大50倍増加するが、これまで、脳卒中の再発を防ぐこと以外に、そのリスクを抑制する治療アプローチはなかった」という。そのような状況で明らかになった今回の研究結果は、「脳卒中後に血糖値の高い状態が続いていることが、認知機能の低下を速めることを示唆しており、糖尿病に該当するか否かにかかわりなく、脳卒中後の慢性高血糖が認知機能低下を抑制するための潜在的な治療標的である可能性を示唆している」と話している。

医師によるうつ病の重症度評価と患者本人の苦痛の乖離に、幼少期の逆境体験などが関与

 医師が臨床的に評価した重症度よりも強い苦痛を感じているうつ病患者には、幼少期の逆境体験や自閉症傾向などが多く見られるとする、国立精神・神経医療研究センターの山田理沙氏、功刀浩氏(現在の所属は帝京大学医学部精神神経科学講座)らの研究結果が、「Clinical Psychopharmacology and Neuroscience」に5月30日掲載された。著者らは、「うつ病の重症度評価において、患者の主観的な苦痛の強さを把握することが、より重要なケースが存在する」と述べている。  近年、患者中心の医療の重要性が認識されるようになり、精神科医療でも治療計画の決定などに患者本人の関与が推奨されるようになってきた。これに伴い、うつ病の重症度についても、医師が評価スケールなどを用いて判定した結果と、患者への質問票による評価結果が一致しないケースのあることが分かってきた。ただ、そのような評価の不一致に関連する因子はまだ明らかにされていない。

重症度や地域、剤形によって患者の治療選好性が異なる?中等症~重症乾癬

 2023年6月5日、ブリストル マイヤーズ スクイブは、日本における「乾癬」の治療選好に関する、離散選択実験(Discrete choice experiment:以下、DCE)手法を用いた観察研究の結果を発表した。本研究の結果から、乾癬患者が治療を選択するうえで、有効性と同じく治療費や投与方法も重要な要素であることが、自治医科大学医学部 皮膚科学講座 小宮根 真弓氏らによって示された。結果は、2月20日付でJournal of Dermatology誌に掲載された。  皮膚の炎症性疾患である中等症~重症乾癬の治療は、ここ十数年で大きな進展を遂げてきた。その転機は、2010年に生物学的製剤の使用が初めて承認されたことにあり、最も患者数の多い尋常性乾癬では現在11製剤が臨床で使用されている。加えて最近は、経口剤の選択肢も増えている。乾癬治療の基本となる外用剤だけでなく、経口剤や生物学的製剤などのさまざまな選択肢の中から、患者に最適な治療法を選ぶことが重要だ。

リアルワールドエビデンス、高カリウム血症が心腎疾患患者の転帰におよぼす影響/AZ

 AstraZeneca(英国、CEO:Pascal Soriot氏)は、同社のリアルワールドエビデンス(RWE)に基づくZORA研究(以下、本研究)の解析から、高カリウム血症を発症している患者において、レニン‐アンジオテンシン‐アルドステロン系阻害薬(RAASi)の投与量減量または中止による影響が示されたと発表した。  イタリアのミラノで開催された欧州腎臓学会(ERA)2023総会で発表された本研究の解析の1つより、慢性腎臓病(CKD)および/または心不全(HF)を患う心腎疾患患者におけるRAASi治療の継続を提案する複数のガイドラインがある一方で、米国および日本の臨床現場では、高カリウム血症発症後にRAASi治療の中止が依然行われていることが示された。また、RAASi治療を中止した患者のうち、6ヵ月以内に再開した割合は、米国では10~15%、日本では6~8%で、RAASi治療を再開した少ない患者の中で、米国および日本ともにその17~37%の患者において投与量が25%を超えて減量されていた。

中年のコーヒーや紅茶の摂取と将来の認知症リスク~HUNT研究

 認知症予防に対するコーヒーおよび紅茶の摂取の可能性について調査した研究結果は、現状では一貫性が得られていない。ノルウェー科学技術大学のDenise Abbel氏らは、中年成人を対象に紅茶または各種コーヒーの摂取とその後の認知症リスクとの関連およびこの関連に性別、ApoE4が及ぼす影響を調査するため、本研究を実施した。その結果、コーヒー摂取の習慣とその後の認知症リスクとの関連に対し、摂取するコーヒーの種類が影響を及ぼしている可能性が示唆された。Nutrients誌2023年5月25日号の報告。

患者からの「心付け」、角が立たない断り方は?/医師1,000人アンケート

 患者さんがお世話になった医師に診療対価のほかに金銭や物品などを渡すという慣習に対して、受け取りたくない/受け取ることができない医師が断り方に苦慮するという話を聞く。そこで、CareNet.comでは、患者さんやそのご家族からの感謝の気持ちとして、診療対価のほかに「お礼(心付け)」を受け取った経験や、申し出を断る言葉や方法に関するアンケートを実施した。その結果、内科系・外科系診療科を問わず80%超の医師がお礼を受け取った経験があるが、もはや過去の慣習と考えている医師が多く、さらに、何とかして渡したい患者vs.受け取りたくない医師のやり取りも明らかになった(2023年6月2日22日実施)。

レンバチニブ+ペムブロリズマブの腎がん1次治療、4年超でも生存改善を維持(CLEAR)/ASCO2023

 進行期腎細胞がんの1次治療における、レンバチニブ・ペムブロリズマブ併用療法の生存期間延長効果は、長期追跡期間を経ても維持されていたというデータが、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)において、米国・Texas OncologyのThomas E. Hutson氏より発表された。  国際共同非盲検第III相CLEAR試験(KEYNOTE-581)試験の追跡期間中央値4年超の最終結果報告である。

近年の流行性耳下腺炎のアウトブレイクは免疫減弱が原因

 免疫減弱モデルが、流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふくかぜ)ワクチン接種率が高い国で近年観察されたアウトブレイク再燃と強く合致しているとの研究結果が、「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」1月9日号に掲載された。  米ジョージア大学Odum School of EcologyのDeven V. Gokhale氏らは、流行性耳下腺炎ワクチン接種率の高い複数の国での同疾患のアウトブレイク再燃を踏まえ、この傾向の促進因子として、2つのワクチン効果不全のメカニズムを提示した。それらは、(1)免疫の段階的な減弱、(2)ワクチン免疫を回避する新規ウイルス遺伝子型の登場、である。米国の、年齢構造化した疫学、人口統計学的属性、およびワクチン接種に関する時系列データを基に、伝播メカニズムモデルを用いて尤度に基づく仮説検定を実施した。

オンコタイプDX乳がん再発スコアプログラム、9月に保険適用へ/エグザクトサイエンス

 エグザクトサイエンスは、「オンコタイプDX乳がん再発スコアプログラム」の保険適用について、中央社会保険医療協議会が2023年7月5日付けで了承したことを発表した。9月1日に保険収載される見込みという。  オンコタイプDX乳がん再発スコアプログラムは、オンコタイプDX乳がん再発スコア検査および日本向けに開発されたソフトウエアを組み合わせたプログラム医療機器。

既存の保険証の有効期限の延長も必要/日医

 日本医師会常任理事の釜萢 敏氏が、7月5日の定例記者会見で、新型コロナウイルス感染症の現在の感染状況について報告し、「現状は第9波に入ったと判断するのが妥当」との見解を示した。  「4月上旬から、緩やかではあるけれども新規感染者が増えているという状況が今日までずっと続いていて、今後も夏に向けて引き続き感染者が増える恐れがある。幸いに全国的には医療の逼迫はまだそれほど多くはなく、救急搬送困難事例は少し増えてはいるがまだそれほどではない」と述べた一方で、感染者が増加している沖縄県の状況について危機感を示した

IL-6R阻害薬、irAE改善効果とICIの効果への影響

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、広範ながん種において生存率の向上をもたらし、使用が拡大している。しかし、ICIによって生じる免疫関連有害事象(irAE)が治療の中断・中止の原因となるため、その管理が重要である。irAEに対する標準治療は副腎皮質ステロイドであるが、高用量かつ長期間の使用は、抗腫瘍免疫の減弱や有害事象の原因となる可能性がある。そこで、米国・Laura and Isaac Perlmutter Cancer CenterのFaisal Fa'ak氏らは、後ろ向き研究によりIL-6受容体(IL-6R)阻害薬のirAEに対する有効性と、ICIの抗腫瘍効果への影響を検討した。その結果、IL-6R阻害薬は、ICIの抗腫瘍効果を減弱せずにirAEを改善することが示唆された。本研究結果は、Journal for ImmunoTherapy of Cancer誌2023年6月11日号で報告された。

新型コロナ、軽症でも精子に長期ダメージ

 欧州ヒト生殖医学会(European Society of Human Reproduction and Embryology:ESHRE)第39回年次総会で発表された新たな知見によると、COVID-19に感染した男性は、3ヵ月以上が経過しても精子の濃度が低下し、泳ぐことのできる精子も減少していたという。同学会が2023年6月26日付のプレスリリースで発表した。  スペイン・IERA財団の生殖専門家であるRocio Nunez-Calonge氏は、COVID-19感染後、平均100日が経過しても精子の質と濃度に改善はみられなかった、と述べた。

片頭痛治療薬抗CGRP抗体の比較~メタ解析

 抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)抗体は、新しい片頭痛予防薬である。また、米国においてCGRP受容体拮抗薬であるatogepantが片頭痛予防薬として承認された。中国・首都医科大学のWenfang Sun氏らは、将来の臨床試験の参考となるよう、さまざまな用量の抗CGRPモノクローナル抗体およびatogepantを含む片頭痛治療に対する有効性および安全性を評価するため、ネットワークメタ解析を実施した。その結果、すべての抗CGRP薬は片頭痛予防に効果的であり、とくにフレマネズマブ225mg/月、エレヌマブ140mg/月、atogepant 60mg/日は、副作用リスクが低く、効果的な介入であることが示唆された。The Clinical Journal of Pain誌オンライン版2023年6月2日号の報告。

百寿者は腸内ウイルス叢の多様性が高い

 100歳まで生きるための鍵は、腸内に生息するウイルスの多様性かもしれない。日本人を含む百寿者の腸内細菌叢(マイクロバイオーム)とウイルス叢(バイローム)の解析から、その可能性が浮かび上がった。米ブロード研究所のRamnik Xavier氏らの研究によるもので、詳細は「Nature Microbiology」に5月15日掲載された。同氏は、「マイクロバイオームとバイロームの相互作用を示したこの研究結果は、人の加齢とともに腸内の微生物の生態がどのように変化するのかを教えてくれるかもしれない。明らかになったデータは、腸内生態系が健康を左右する仕組みを解明するための重要な出発点となる」と語っている。

de novo StageIV乳がんの初期薬物療法、サブタイプ・薬剤別の効果(JCOG1017副次的解析)/日本乳癌学会

 治療歴のない(de novo)StageIV乳がんに対する初期薬物療法の効果は術後再発乳がんより良好とされるが、その効果について詳細なデータはない。今回、JCOG1017(薬物療法非抵抗性StageIV乳がんに対する原発巣切除の意義に関するランダム化比較試験)の副次的解析として、de novo StageIV乳がんに対する初期薬物療法の効果と効果予測因子を検討した結果、サブタイプにより治療効果が異なり、とくにPgR、HER2発現の有無および内臓転移の状況が影響している可能性が示唆された。岡山大学の枝園 忠彦氏が第31回日本乳癌学会学術総会で発表した。

既治療のKRAS G12C変異大腸がんに対するソトラシブ+パニツムマブ+FOLFIRIの安全性と有効性(CodeBreaK 101)/ASCO2023

 既治療の転移のあるKRAS G12C変異陽性の大腸がん(mCRC)に、ソトラシブとパニツムマブ、FOLFIRIレジメンの併用が有効である可能性が明らかとなった。CodeBreaK 101サブプロトコールHの結果として、米国・MDアンダーソンがんセンターのDavid S. Hong氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。  CodeBreaK 101サブプロトコールHは、多施設共同のオープンラベル第Ib相試験。今回は、用量探索コホート(6例)と拡大コホート(40例)を合わせた全体成績が解析された。

アリピプラゾール含有グミ製剤でアドヒアランスは向上するか

 精神疾患の治療を成功させるためには、服薬アドヒアランスを良好に保つことが重要である。医薬品のオーダーメイドは、アドヒアランスが不十分な患者に対し、個々の患者ニーズを満たす剤形を提供可能とする。静岡県立大学の河本 小百合氏らは、市販されているアリピプラゾール(ARP)製剤を用いて、ARP含有グミ製剤の調製を試みた。Chemical & Pharmaceutical Bulletin誌2023年号の報告。  健康対照者10人(平均年齢:23.7±1.2歳)を対象に、味覚検査を実施し、ARP含有グミ製剤の味を調査した。ココア味とフルーツ味の2種類のグミ(ARP:6.0mg、グミ:3.5g)を用いて、味覚テストを実施した。全体的なおいしさの評価には、100mmビジュアルアナログスケール(VAS)を用いた。ARP含有グミ製剤の嗜好性と5段階評価スケールを用いて評価した受容性のVASスコアの分析には、ROC曲線分析を用いた。