医療一般|page:97

カナダ政府がタバコ1本1本に健康被害警告の表示を義務化

 カナダ政府でメンタルヘルス・依存症担当大臣兼保健副大臣を務めるCarolyn Bennett氏は、世界禁煙デーに当たる5月31日に、カナダでは間もなく、紙巻きタバコ1本1本への健康被害警告の表示が義務付けられるようになると発表した。このような警告表示の義務化に踏み切るのは、世界でカナダが初めての国となる。  Bennett氏は、「この思い切った措置により、タバコ製品を使用する誰もが健康被害に関する警告を目にすることになる。こうした警告は、パッケージにともに表示される最新画像とともに、喫煙がもたらす健康被害について、リアルで衝撃的な注意を喚起することになるだろう」と述べる。同氏はさらに、「われわれは今後も、より多くの人が喫煙をやめ、また、若者がタバコを吸うことなく健康的な生活を送るのに役立つことは、何であれするつもりだ」と話した。

認知症リスクが高まるHbA1c値は?

 高血糖状態が続くと、アルツハイマー型認知症の原因となる「アミロイドβ」が溜まりやすくなり、認知症発症リスクが高まるとされる。糖尿病患者が認知症リスクを減らすために目標とすべき血糖コントロールはどの程度か。オーストラリア・National Centre for Healthy AgeingのChris Moran氏らの研究がJAMA neurology誌2023年6月1日号に掲載された。  1996年1月1日~2015年9月30日の期間中、50歳以上の2型糖尿病を有するKaiser Permanente Northern California統合医療システムの会員を対象とした。期間中のHbA1c測定が2回未満、ベースライン時の認知症有病者、追跡期間3年未満の者は除外した。データは2020年2月~2023年1月に解析された。

境界性パーソナリティ障害の自殺リスクに対する薬物療法の比較

 境界性パーソナリティ障害(BPD)患者では、自殺行動が臨床上の重大な懸念事項となるが、自殺リスクの低下に有効な薬物療法は依然として明らかになっていない。東フィンランド大学のJohannes Lieslehto氏らは、スウェーデンのBPD患者における自殺企図または自殺既遂の予防に対する、さまざまな薬物療法の有効性について比較検討を行った。その結果、BPD患者の自殺行動のリスク低下と関連が認められた唯一の薬物療法は、注意欠如・多動症(ADHD)治療薬であることが示され、逆に、ベンゾジアゼピンの使用は自殺リスク上昇との関連が示唆された。著者らは、BPD患者において、ベンゾジアゼピンは注意して使用する必要があると報告している。JAMA Network Open誌2023年6月1日号の報告。

COVID-19緊急事態は過ぎたが依然として対策意識の維持・向上を―AHAニュース

 世界保健機関(WHO)と米国政府の公式見解によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はもはや緊急事態には当たらないという。これは大きな変化ではあるが、誰もがパンデミックを意に介さずに行動できるようになったわけではないと、多くの専門家が指摘している。その1人、米ミシガン大学のPreeti Malani氏は、「誰にとってもリスクがなくなったわけではない。ただ、3年以上前に緊急事態宣言が発出された時とは、大きく状況が変化した」と語る。  WHOが2020年1月30日に初めて「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した時点で、COVID-19による死亡者はわずか213人しか判明していなかった。しかしその後、その数は世界中で700万人近くに増加した。WHOは今年5月5日に、緊急事態の終了を宣言し、5月11日には米国で公衆衛生上の緊急事態宣言が解除された。これに伴い、COVID-19のモニタリング体制や検査・ワクチン接種費用の公費負担も終了しつつある。とはいえ、COVID-19のウイルスが消え去ったわけではなく、WHOのMaria Van Kerkhove氏も、「緊急事態は終了したがCOVID-19の流行はまだ終わっていない」と、警戒の継続を呼びかけている。

救急科の安全性、医療従事者と患者への調査

 医療従事者と患者の双方が救急科(ED)の安全性を疑問視している実態が、欧州救急医学会(EUSEM)が実施した国際調査により明らかになった。医療従事者に対する調査の結果はEnte Ospedaliero Cantonale(スイス)のRoberta Petrino氏らにより「European Journal of Emergency Medicine」に5月24日発表され、また、EUSEM会長のJames Connolly氏が執筆した付随論評が同誌に5月26日掲載された。  医療従事者に対する調査では、世界101カ国のED医療従事者1,256人(医師1,045人、看護師199人、救急医療隊員や薬剤師など12人)から寄せられた回答が分析された。その結果、「患者数は、安全な医療を提供できるEDのキャパシティーを超えている」に対し、「時々当てはまる」と「常に/たいてい当てはまる」と答えた者の割合がそれぞれ32.02%と59.92%と合わせて90%を超えており、EDの抱える問題として過密さが浮き彫りになった。EDの過密さは、損害や死亡の実質的なリスク増加を伴うことが、過去の研究で報告されている。また、調査からは、繁忙時のEDスタッフの数が十分だと感じている調査参加者の割合は、医師で22.4%、看護師で20.7%にとどまり、人手不足も大きな問題であることが示された。

早期膵臓がんの低侵襲切除術は治療選択肢として有望

 早期膵臓がんに対する、腹腔鏡下またはロボット支援下でがんを切除する侵襲性の低い「低侵襲膵体尾部切除術(以下、低侵襲切除術)」では、開腹してがんを切除する「開腹膵体尾部切除術(以下、開腹切除術)」と同程度の手術成績が得られ、手術後の患者の回復も早いことが、新たな臨床試験で示された。Fondazione Poliambulanza(イタリア)のMohammad Abu Hilal氏らによるこの試験の結果は、米国臨床腫瘍学会(ASCO 2023、6月2~6日、米シカゴ)で発表された。Hilal氏は、「この種のものとしては初となる今回の臨床試験において、切除可能な膵臓がんの治療で低侵襲切除術は、開腹切除術に代わる安全かつ有効で効率的なアプローチになり得ることが確認された」と説明している。

薬剤師による運動介入でフレイル予防

 処方薬を受け取りに薬局を訪れた慢性疾患のある高齢者に対して、薬剤師が運動に関する簡単な情報提供を行うことが、フレイルの予防につながる可能性が報告された。一般社団法人大阪ファルマプラン社会薬学研究所の廣田憲威氏(研究時点の所属は武庫川女子大学薬学部臨床薬学研究室)らによる研究によるもので、詳細は「BMC Geriatrics」に4月7日掲載された。  フレイルはストレスに対する耐性が低下した状態で、介護リスクの高い「要介護予備群」。介護が必要な状態になってからの回復は困難なことが多いが、フレイル段階であれば、運動や食事の習慣を改善することで元の状態に戻ることができるため、早期介入が重要とされる。他方、地域の薬局には近年、調剤業務にとどまらず、地域住民の健康を支える機能が求められるようになってきた。フレイル予防に関しても、薬局での栄養評価などの試みの報告がなされてきている。ただし、運動介入の報告はまだない。今回の廣田氏らの研究は、以上を背景とするもの。

脳卒中既往のある心不全患者の心血管リスク、HFrEFとHFpEFで検討

 左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)と左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)の患者における脳卒中既往と心血管イベント(心血管死/心不全入院/脳卒中/心筋梗塞)発生率を調べたところ、左室駆出率にかかわらず、脳卒中既往のある患者はない患者に比べて心血管イベントリスクが高いことが示された。英国・グラスゴー大学のMingming Yang氏らが、European Heart Journal誌オンライン版2023年6月26日号で報告。  本研究は、HFrEFとHFpEFの患者が登録されていた7つの臨床試験のメタ解析である。

ペムブロリズマブ+ラムシルマブの非小細胞肺がん術前補助療法(EAST ENERGY)/ASCO2023

 切除可能なPD-L1陽性StageIB~IIIAの非小細胞肺がん(NSCLC)に対する術前補助療法として、ペムブロリズマブとラムシルマブの併用療法が有効であることが、多施設共同の単群第II相試験であるEAST ENERGY試験の結果から示唆された。国立がん研究センター東病院の青景圭樹氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。  免疫チェックポイント阻害薬(ICI)+化学療法は、切除可能NSCLC患者に対する標準的な術前補助療法の1つにとして認識されている。しかし、プラチナ製剤不適格患者に対する、この薬剤の組み合わせは十分に検証されていない。一方、ICIと血管新生阻害薬の併用は、進行期NSCLCにおいて有効性と安全性が報告されている。

認知症患者に処方される抗精神病薬と併用薬の分析

 さまざまな問題が指摘されているにもかかわらず、抗精神病薬が認知症患者に対し、依然として一般的に処方されている。北里大学の斉藤 善貴氏らは、認知症患者に対する抗精神病薬の処方状況および併用薬の種類を明らかにするため、本検討を行った。その結果、認知症患者への抗精神病薬の処方と関連していた因子は、精神科病院からの紹介、レビー小体型認知症、NMDA受容体拮抗薬の使用、多剤併用、ベンゾジアゼピンの使用であった。著者らは、抗精神病薬の処方の最適化には、正確な診断のための地域の医療機関と専門医療機関の連携強化、併用薬の効果の評価、処方カスケードの解決が必要であるとしている。Dementia and Geriatric Cognitive Disorders誌オンライン版2023年5月26日号の報告。

勃起不全治療用のゲル剤、米FDAがOTC製品として販売承認

 米食品医薬品局(FDA)は6月9日、22歳以上の男性向けの勃起不全治療用ゲル剤MED3000(商品名Eroxon)に対して、処方箋を必要としないOTC製品としての販売を初めて承認した。これにより、勃起不全を抱える男性は、症状の治療に外用ゲル剤を使用するという選択肢を持てるようになる。  同製品を製造する英フューチュラ・メディカル社のCEOであるJames Barder氏は、ニュースリリースの中で、「FDAは、新規医療製品の有効性と安全性を評価する際に、非常に高い基準を設けている。われわれがその基準を満たしたことをうれしく思う」と述べている。

菜食に変えると血清脂質値が良好になる―RCT30件のメタ解析

 無作為化比較試験(RCT)の報告を対象とするメタ解析から、食事を菜食(ベジタリアン食やビーガン食)に変えると、血清脂質値が有意に低下することが分かった。コペンハーゲン大学(デンマーク)のRuth Frikke-Schmidt氏らの研究の結果であり、詳細は「European Heart Journal」に5月24日掲載された。  この研究では、文献データベース(PubMed、Embase)を用いて、1980年~2022年10月に発表された、18歳以上の成人を対象に食習慣を菜食に変更するという介入を行っていたRCTを検索。抽出された30件の研究を統合して、菜食群と一般的な食事(雑食)を続けた群との血清脂質値の差異を検討した。

抗ウイルス薬が処方されていないCOVID-19外来患者のリバウンド

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患時に抗ウイルス薬が投与されなかった患者で、症状がいったん軽快した後に再燃したり、ウイルス量が増加したりすることが少なくないという報告が、「Annals of Internal Medicine」に2月21日掲載された。米ハーバード大学のRinki Deo氏らの研究によるもの。  COVID-19に対する抗ウイルス薬の一つであるニルマトレルビル/リトナビルによる治療後に、症状が再燃(リバウンド)することが報告されている。ただし、抗ウイルス薬を用いていない患者でのCOVID-19の自然経過は十分明らかになっていない。Deo氏らの研究は、非入院COVID-19患者に有効な薬剤探索のための多施設共同プラットフォーム試験「ACTIV-2/A5401」のデータを用いた後方視的研究により、この点を検討した。

乳製品と認知症リスク、チーズとヨーグルトで関連が逆の可能性~大崎コホート

 日本人高齢者における乳製品摂取と認知症発症リスクとの関連について東北大学のYukai Lu氏らが調査したところ、総乳製品摂取量が多いほど認知症発症リスクが低いという用量反応関係は確認できなかったが、相対的に少ない摂取量(第2五分位)で認知症発症リスクが低い可能性が示された。また、乳製品別の摂取頻度と認知症発症リスクの関連については、牛乳では低い摂取頻度(月1~2回)で認知症発症リスクが低い可能性が示された。さらに、ヨーグルトでは毎日摂取すると認知症発症リスクが低い一方、チーズでは毎日摂取するとリスクが高い可能性が示唆された。European Journal of Nutrition誌オンライン版2023年6月19日号に掲載。

シスプラチン不適格尿路上皮がんに対するエンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブの長期追跡結果(EV-103)/ASCO2023

 シスプラチン不適格の局所進行または転移を有する尿路上皮がんに(UC)対する1次治療としての、エンホルツマブ・ベドチン(EV)とペムブロリズマブ(Pem)の併用療法のフォローアップに関する報告が、米国・Taussig Cancer InstituteのShilpa Gupta氏から、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)でなされた。  第Ib/II相のEV-103試験における、用量漸増コホートと(5例)と拡大コホートA(40例)合計45例の、追跡期間中央値47ヵ月の解析結果である。

糖尿病の正しい理解と持続性GIP/GLP-1受容体作動薬マンジャロへの期待

 2023年6月8日、日本イーライリリーと田辺三菱製薬は、「2型糖尿病治療におけるアンメットニーズと展望」をテーマに、メディアラウンドテーブルを開催した。  前半では日本イーライリリー 研究開発・メディカルアフェアーズ統括本部の今岡 丈士氏が、イーライリリー・アンド・カンパニー(米国)による世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「マンジャロ皮下注アテオス」(一般名:チルゼパチド、以下「マンジャロ」)の特徴を紹介した。

EGFR陽性NSCLC、EGFR-TKIによる術後補助療法1年延長でOS改善(ICOMPARE)

 EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)を用いた術後補助化学療法により、無病生存期間(DFS)の改善が認められており、最新の研究(ADAURA試験)では全生存期間(OS)の改善も認められているが、治療期間との関係は明らかになっていない。そこで、中国・Beijing Cancer HospitalのChao Lv氏らは、肺腺がん患者に対してEGFR-TKIのicotinibによる術後補助化学療法を1年実施した場合と、2年実施した場合の有効性・安全性を無作為化比較試験により検討した。その結果、icotinibの2年投与は1年投与と比較して、DFSのみならず、OSも改善した。本研究結果は、ESMO Open誌2023年6月20日号で報告された。

双極性障害のラピッドサイクラーと寛解状態の患者における臨床的特徴~MUSUBI研究

 双極性障害は、ラピッドサイクラーの場合より重篤な疾患リスクとなり、寛解状態で進行することで予後が良好となる。関西医科大学の高野 謹嗣氏らは、日本の精神科クリニックにおける双極性障害の多施設治療調査「MUSUBI研究」の大規模サンプルを用いて、双極性障害患者におけるラピッドサイクラーと寛解状態の進行に対する患者背景および処方パターンの影響を検討した。その結果、ラピッドサイクラーと寛解状態の双極性障害患者は、相反する特徴を有し、予後に影響を及ぼす社会的背景および因子には、それぞれ特徴が認められた。著者らは、これらの臨床的な特徴を理解することは、実臨床での双極性障害患者のマネジメントに役立つであろうとしている。Frontiers in Psychiatry誌2023年5月17日号の報告。

ヒドロコルチゾン単体では敗血症性ショックによる死亡リスクは低下せず

 敗血症性ショックの患者に副腎皮質ステロイド(以下、ステロイド)のヒドロコルチゾンを単独投与しても死亡リスクを低下させることはできないが、他のステロイドと併用することで生存率が向上し、昇圧薬を使用せずに済む可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の麻酔科教授であるRomain Pirracchio氏らが実施したこの研究結果は、「NEJM Evidence」に5月22日掲載された。  敗血症とは、感染に対して全身が極端な反応を示し、心臓や肺などの体の重要な臓器に障害が生じる病態をいう。毎年、世界中で約5500万人が敗血症を発症し、1100万人が死亡している。敗血症では早期に気付くことが重要であり、治療としては、感染源のコントロール、抗菌薬の投与、輸液、昇圧薬(血圧を上昇させる働きを持つ薬剤)の投与などが行われる。敗血症のうち、輸液負荷を行っても血圧が危険なレベルに低下した状態が続き、血中乳酸値が高いままの病態を敗血症性ショックと呼ぶ。

腎細胞がん、ニボルマブ+イピリムマブによるアジュバント療法のサブグループ解析(CheckMate 914)/ASCO2023

 未治療の進行期腎細胞がん(RCC)に対するニボルマブ+イピリムマブ療法は、長期にわたる有効性と忍容性が報告されている。一方、術後RCCにおいて同レジメンのアジュバント療法を評価するCheckMate 914試験(PartA)では、無病生存期間(DFS)への恩恵は示されていない。  米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)では、この理由を明らかにするため、CheckMate 914試験(PartA)のサブグループ解析について、米国・メモリアルスローンケタリングがんセンターのRobert J. Motzer氏が発表した。