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「G-CSF適正使用ガイドライン 2022年版」海外ガイドラインの模倣ではなく、科学的な手法を徹底/日本癌治療学会

 がん薬物療法はさまざまな有害事象を伴うが、好中球減少は多くの薬剤で頻発する有害事象であり、時に重篤な感染症を引き起こし死に至ることもある。好中球減少と同時に発熱が生じる「発熱性好中球減少症(FN:Febrile Neutropenia)」を防ぐために使用されるのがG-CSF製剤である。  G-CSF製剤の適正使用に関しては、1994年にASCO(米国臨床腫瘍学会)がガイドラインを作成し、以来、改訂を重ねて、世界中で参照されている。2013年に刊行された「G-CSF適正使用ガイドライン第1版」は、ASCOのガイドラインと歩調を合わせる形で作成され、FNのリスクが高い場合には、G-CSFの「予防投与」を行うことが強く推奨された。

無症状・軽症コロナ患者、約1年後もIgG抗体を維持

 新型コロナウイルスに感染した無症状または軽症の小児と成人の患者では、感染から約1年後の時点においても、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質受容体結合ドメイン(S-RBD)に対する免疫グロブリンG(IgG)抗体価は維持されており、特に3歳未満の児の抗体価は18歳以上の成人より有意に高いとする研究結果を、パドヴァ大学(イタリア)のCostanza Di Chiara氏らが「JAMA Network Open」に7月13日発表した。  Chiara氏らは、2020年4月から2021年8月の間に登録された、新型コロナウイルス感染が確認された小児および18歳以上の成人患者を追跡し、S-RBD IgG抗体価を測定する単一施設の前向きコホート研究を実施した。新型コロナウイルスの家族間感染を起こした計252家庭を対象として、3歳未満、3~5歳、6~11歳、12~17歳、18歳以上の年齢層に分け、感染から1~4カ月時点、5~10カ月時点、10カ月以上経過した時点の複数回にわたり血清学的な追跡調査を行った。解析にはχ2検定、フィッシャー正確検定、対応のない両側t検定などを用いた。

認知症における抗精神病薬処方を合理化するための介入

 認知症介護施設の入居者に対する不適切な抗精神病薬投与は問題となっている。この問題に対処するため、施設スタッフの教育やトレーニング、アカデミック・ディテーリング、新たな入居者評価ツールで構成された「認知症に対する抗精神病薬処方の合理化(RAPID:Rationalising Antipsychotic Prescribing in Dementia)」による複合介入が開発された。アイルランド・ユニバーシティ・カレッジ・コークのKieran A. Walsh氏らは、認知症介護施設の環境下におけるRAPID複合介入の利用可能性および受容性を評価するため、本研究を実施した。また、向精神薬の処方、転倒、行動症状に関連する傾向についても併せて評価した。その結果、RAPID複合介入は広く利用可能であり、関係者の受容性も良好である可能性が示唆された。著者らは、今後の大規模研究で評価する前に、実装改善のためのプロトコール変更やさらなる調査が必要であるとしている。Exploratory Research in Clinical and Social Pharmacy誌2022年10月10日号の報告。

ファイザーBA.4/5対応2価ワクチンの第II/III相試験、1ヵ月後データ

 米国・Pfizerは11月4日付のプレスリリースで、同社のオミクロン株BA.4/5対応の新型コロナウイルス2価ワクチンについて、追加接種から1ヵ月後の第II/III相試験データを発表した。30μgの追加接種により、同社の起源株に対する1価ワクチンよりも強固な中和免疫反応が得られたことが確認され、安全性および忍容性プロファイルは両ワクチン間で同様だった。  今回の第II/III相試験では、同社のBA.4/5対応2価ワクチンの4回目の追加接種(30μg)について、接種前と接種から1ヵ月後の血清を採取して評価した。SARS-CoV-2感染の既往がある人とない人を均等に層別化し、18~55歳(n=38)および55歳以上(n=36)のサブセットを設定した。また、同社の起源株に対応した1価ワクチン30μgを4回目接種として投与された55歳以上(n=40)を対照群として、同様に均等な層別化をしながら無作為に抽出した。2価ワクチンを接種した被験者は、前回の追加接種が約10〜11ヵ月前であったのに対し、1価ワクチンを接種した被験者は、前回の追加接種が約7ヵ月前であったが、この差にもかかわらず、4回目接種前の抗体価は両者でほぼ同様だった。

女性の心房細動患者はアブレーション治療関連の有害事象が多い

 心房細動の治療法の一つに、血管カテーテルを用いたアブレーションと呼ばれる方法があるが、この処置に伴う有害事象の発生率に性差があることが報告された。女性患者で発生率が高いという。米イェール大学のJames Freeman氏らの研究によるもので、詳細は「Heart」に9月14日掲載された。  心房細動は不整脈の一種で、米国人の15~20%が発症すると考えられている。動悸や息切れなどの症状が現れることがあり、また、それらの症状が現れない場合にも脳梗塞のリスクが上昇する。薬物療法としては、脳梗塞予防のための抗凝固薬と、不整脈に対して抗不整脈薬が使用される。  一方、カテーテルアブレーション治療は、不整脈を起こしている電気信号の発生箇所を、高周波エネルギーで焼灼したり凍結させたりする治療法。過去10年の間にこのアブレーション治療の安全性は向上してきている。例えば、より正確な場所をアブレーションするために電気信号の把握に加えて超音波で確認したり、穿孔を防ぐためにカテーテルに加わった力を術者が感じ取れるような機器が開発されたり、周術期の抗凝固薬の投与量をより適切に調節できるようになった。また、女性と男性の解剖学的な違い(女性の心臓が小さいことの手技への影響など)の理解も深まった。

SNSで健康情報を共有する前に自問すべき5つのポイント―AHAニュース

 健康に関する情報を求めてSNSなどのソーシャルメディアを利用する人が増えているが、それとともに誤った情報が増加し、その影響が深刻化している。専門家は、誤った医療情報を淘汰するために、情報投稿者には投稿前に踏むべきステップがあると指摘している。  新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する不正確な情報が氾濫したことを受けて、米公衆衛生局は昨年、「健康関連の誤情報に立ち向かう(Confronting Health Misinformation)」というタイトルの勧告を発表した。22ページに及ぶこのレポートの中で、ソーシャルメディアでは情報の正確さよりも他者の関心を引くことが優先され、虚偽の情報が共有される確率は真実の情報が共有される確率よりも70%高いという研究結果が取り上げられている。

身長に影響する約1万2,000個の遺伝子多型を特定

 通常、子どもの身長がどの程度伸びるかは、両親の身長に基づき予測される。こうした中、約540万人を対象とした世界最大規模のゲノム解析から、身長の高さには1万2,000個を超える塩基配列の変化(遺伝子のバリアント)が影響していることが明らかになった。クイーンズランド大学(オーストラリア)分子生物学研究所のLoic Yengo氏らによるこの研究結果は、「Nature」に10月12日発表された。  Yengo氏らは、538万80人を対象にしたゲノムワイド関連解析(GWAS)のデータを分析した。解析の対象となった参加者の大半(75.8%)はヨーロッパ系であり、そのほかは、東アジア系が8.8%、ヒスパニック系が8.5%、アフリカ系が5.5%、南アジア系が1.4%だった。Yengo氏によると、本研究において非ヨーロッパ系の人々の占める割合は、通常のGWASの研究よりは多いが、それでもヨーロッパ系の人々に偏っており、このことは以前から問題になっているのだという。同氏はこの点について、「より多様な遺伝子データの収集に向けたイニシアチブが、全世界で増えつつある。全ての人口集団に遺伝子研究のベネフィットがもたらされる機会を広げることが重要だからだ」と説明している。

がん患者の自殺リスクは診断直後が特に高い―全国がん登録データの解析

 がん診断後には、自殺や自殺以外の外因死(病気以外での死亡)、心血管死のリスクが有意に高く、特に診断後1カ月間の自殺リスクは一般人口の4倍以上に上るというデータが報告された。国立がん研究センターがん対策研究所と東京大学大学院医学系研究科ストレス防御・心身医学の栗栖健氏、藤森麻衣子氏らの研究結果であり、「Cancer Medicine」に8月8日、論文が掲載された。  国内では2016年に全国がん登録事業がスタートし、現在はがんと診断された全ての患者のデータが収集され、がんの実態把握や治療・サポート体制の改善に生かされている。栗栖氏、藤森氏らはこのデータを用いて、がんと診断された後の自殺リスクなどを検討した。解析対象は、2016年の年始から年末までの1年間に、がんと診断された患者107万876人であり、死亡後にがんと診断された患者や年齢・性別が不明の患者、居住地が国外の患者などは除外されている。

日本人統合失調症患者における認知機能と社会機能との関係

 統合失調症患者の活動性低下、就労困難、予後不良には、社会機能障害が関連していると考えられる。統合失調症患者の社会機能には、注意力や処理速度などの認知機能が関連しているが、認知機能と社会機能との関連はあまりよくわかっていない。そのため、社会機能に影響を及ぼす因子を明らかにすることは、統合失調症の治療戦略を考えるうえで重要である。金沢医科大学の嶋田 貴充氏らは、統合失調症患者の社会機能に影響を及ぼす因子をレトロスペクティブに分析し、統合失調症患者の認知機能と社会機能との間に有意な相関が認められたことを報告した。Journal of Clinical Medicine Research誌2022年9月号の報告。

医療者も実は…?糖尿病のスティグマを見直す/日糖協の活動

 近い将来、「糖尿病」という病名は使用されなくなるかもしれない。  日本糖尿病協会(以下、日糖協)は、都内開催のセミナーにて、「『糖尿病』という言葉を変える必要がある」と問題意識を明らかにした。現在、日糖協では「糖尿病にまつわる“ことば”を見直すプロジェクト」を推進しており、病名変更もその一環だ。  日糖協理事の山田 祐一郎氏(関西電力病院 副院長)は、「言葉を変える目的は、糖尿病に関するスティグマ(偏見)を減らすことにある。単なる言葉の入れ替えでは意味がない。医療従事者と糖尿病のある方とのコミュニケーションを変えることが重要だ」と述べた。

BA.4/5対応2価ワクチン後、年齢別の副反応発生状況/CDC

 12歳以上における、ファイザー社およびモデルナ社の2価ワクチンによるブースター接種後の安全性データを、米国疾病予防管理センター(CDC)のAnne M. Hause氏らがMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)11月4日号に報告した。  米国食品医薬品局(FDA)は2022年8月31日に、12歳以上へのBNT162b2(ファイザー)および18歳以上へのmRNA-1273(モデルナ)COVID-19ワクチンの2価製剤を承認。これらのワクチンにはSARS-CoV-2のオリジナル株およびBA.4/BA.5のスパイクタンパク質をコード化したmRNAが含まれる。10月23日までの間に、約2,260万回の2価ブースターワクチンが投与されている。今回、同期間中の2価ワクチン接種者における、v-safe(スマートフォンを用いたアクティブサーベイランスシステム。接種後1週間の局所および全身反応と健康への影響が報告される)およびVAERS(CDCとFDAが管理する、ワクチン接種後の有害事象をモニタリングするパッシブサーベイランスシステム)に報告された事象および健康影響評価のレビューが行われた。

生後6ヵ月からCOVID-19ワクチン接種推奨を提言/日本小児科学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)第8波が到来しつつある今、第7波で起こった小児へのCOVID-19感染の増加、重症化や今冬のインフルエンザの同時流行を憂慮し、日本小児科学会(会長:岡明[埼玉県立小児医療センター])の予防接種・感染症対策委員会は、同学会のホームページで「生後6ヵ月以上5歳未満の小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方」を発表した。

乳がん治療におけるタキサン3剤の末梢神経障害を比較

 乳がん治療におけるnab-パクリタキセル、パクリタキセル、ドセタキセルによる化学療法誘発性末梢神経障害の患者報告を比較したコホート研究の結果を、中国・Chinese Academy of Medical Sciences and Peking Union Medical CollegeのHongnan Mo氏らが報告した。化学療法誘発性末梢神経障害はnab-パクリタキセル群よりパクリタキセル群およびドセタキセル群で有意に少なく、nab-パクリタキセルでは主に感覚神経障害である手足のしびれ、パクリタキセルおよびドセタキセルでは主に運動神経障害および自律神経障害が報告された。また、感覚神経障害よりも運動神経障害のほうが早く報告されていた。JAMA Network Open誌2022年11月2日号に掲載。

遺伝子変異がパーキンソン病の生存期間予測に有用

 パーキンソン病における遺伝子変異が、患者の生存期間に関連することが報告された。ソルボンヌ大学パリ脳研究所(フランス)のAymeric Lanore氏らが、欧州神経学会(EAN2022、6月25~28日、オーストリア・ウィーン)で発表したもの。  Lanore氏らは、多施設コホートのパーキンソン患者を対象に、SNCA、LRRK2、PRKN、GBA変異を有する患者の生存期間を、いずれの変異もない患者(対照群)と比較。対象とした2,037人中、890人が追跡期間中に死亡した。

高齢化率世界一の日本のコロナ禍超過死亡率が低いのは?/東京慈恵医大

 新型コロナウイルス感染症流行前の60歳平均余命が、コロナ禍超過死亡率と強く相関していたことを、東京慈恵会医科大学分子疫学研究部の浦島 充佳氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2022年10月19日掲載の報告。  新型コロナウイルス感染症は高齢者において死亡リスクがとくに高いため、世界一の高齢者大国である日本ではコロナの流行によって死亡率が高くなることが予想されていたが、実際には死亡率の増加が最も少ない国の1つである。

フォシーガ、心不全に関する新たなエビデンスをAHA2022で発表/AZ

 アストラゼネカは2022年11月8日のプレスリリースで、第III相DELIVER試験において、フォシーガ(一般名:ダパグリフロジン)によって駆出率が軽度低下または保持された心不全患者の症状の負担感および健康関連の生活の質(QOL)を改善したと発表した。  第III相DELIVER試験の事前に規定された解析結果から、プラセボ群と比較して標準治療にフォシーガを追加した併用療法(フォシーガ群)で、症状負荷、身体的制限およびKCCQ平均スコアによる評価においてQOLが改善した。

新経口薬camizestrant、ER+進行乳がんでフルベストラントに対しPFS延長/AZ

 アストラゼネカは2022年11月8日、次世代経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)であるcamizestrantが、進行乳がんに対して内分泌療法による治療歴があり、エストロゲン受容体(ER)陽性の局所進行または転移乳がんを有する閉経後の患者を対象に、フルベストラント500mgと比較して、75mgおよび150mgの両用量で主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)において、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある延長を示したと発表した。なお、camizestrantの忍容性は良好であり、安全性プロファイルは過去の試験で認められたものと一貫しており、新たな安全性上の懸念は確認されていない。  Camizestrantは、強力で経口投与可能なSERDかつERへの完全拮抗薬であり、ER活性型変異を含む幅広い前臨床モデルで抗がん活性を示している。第I相臨床試験(SERENA-1試験)では、camizestrantの忍容性が良好であり、単剤療法またはCDK4/6阻害剤パルボシクリブとの併用療法として投与したときに有望な抗腫瘍プロファイルを有することが示されている。

統合失調症に対するアリピプラゾールの適切な投与量~メタ解析

 薬理学の基本は、薬物の血中濃度と効果との関係であると考えられるが、多くの臨床医において、血中濃度測定の価値は疑問視されているのが現状である。そのため、治療基準用量の検討が、十分に行われていないことも少なくない。ドイツ・ハイデルベルク大学のXenia M. Hart氏らは、統合失調症および関連障害患者における脳内の受容体をターゲットとする抗精神病薬アリピプラゾールの血中濃度と臨床効果および副作用との関連を評価するため、プロトタイプメタ解析を実施した。その結果、ほとんどの患者において、アリピプラゾール10mgでの開始により血中および脳内の有効濃度に達することが示唆された。Psychopharmacology誌2022年11月号の報告。

ボストン大が危険性の高い新型コロナの実験を実施か

 米ボストン大学で実施された新型コロナウイルスの実験について米国立衛生研究所(NIH)が現在調査中であることについて、メディアの報道が過熱している。一部の報道機関は、研究者らが研究の過程で致死率の高い新型コロナウイルスを作り出したと主張。それに対しボストン大学は、「確証に欠ける誤った研究解釈に基づいた報道内容だ」と反論している。ボストン大学国立新興感染症研究所(NEIDL)所長のRonald Corley氏は同大学が発表した声明文で、「彼らはメッセージをセンセーショナルに表現し、研究の結果や全体的な目的をねじ曲げて報道した」と指摘している。  しかし、そのニュース報道は米司法省の注意を引くところとなった。米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)微生物・感染症部門長のEmily Erbelding氏がSTAT Newsに語ったところによると、ボストン大学の研究グループは、NIHに研究資金を申請する際、研究の方向性を明示しなかった上に、新型コロナウイルスの強化につながる可能性がある実験であることも明らかにしていなかったという。同氏は、「われわれは今後数日間、話し合いの機会を持つことになると思う」とSTAT Newsに話した。  ボストン大学のグループは、新型コロナウイルスの従来株と、その後に流行したオミクロン株のスパイクタンパク質に着目した。オミクロン株は従来株よりも感染力は強いが、全般的に重症化リスクは低いことが明らかになっている。同大学のCorley氏によると、この研究は、ウイルスが細胞に感染する際に用いるスパイクタンパク質が、感染者の重症化の程度に関与しているのかどうかを明らかにすることを重視したものであった。その研究の一部として、研究グループは、オミクロン株のスパイクタンパク質をコードする遺伝子を従来株に組み込んだ、キメラOmi-Sウイルスを作成した。

海外の著名医師が日本に集結、Coronary Week 2022開催について【ご案内】

 2022年12月1日(木)~3日(土)、The 8th International Coronary Congress(ICC2022)をJPタワーホール&カンファレンスにて開催する。本会は初の試みである「Coronary Week 2022」として、第25回日本冠動脈外科学会学術大会および第34回日本冠疾患学会学術集会と同時開催する。現在、以下24名のInternational Facultyの来日が決定している。