医療一般|page:160

降圧薬使用とアルツハイマー病との関連~メタ解析

 高血圧は認知症のリスク因子として知られているが、高血圧患者のアルツハイマー病リスク軽減に対する降圧薬使用の影響についてのエビデンスは、決定的であるとは言えない。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン薬学部のM. Adesuyan氏らは、認知機能が正常な高血圧症の成人患者における降圧薬使用とアルツハイマー病発症率との関連を調査した。その結果、降圧薬の使用とアルツハイマー病発症率低下との関連が認められた。とくに、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の使用は、降圧薬の中でも最大のベネフィットをもたらす可能性が示唆された。このことから著者らは、降圧が認知機能保護の唯一のメカニズムではない可能性があり、認知機能に対するアンジオテンシンIIの影響についてさらなる調査が求められるとしている。The Journal of Prevention of Alzheimer's Disease誌2022年号の報告。

トリグリセライドの新基準と適切なコントロール法/日本動脈硬化学会

 今年7月に発刊された『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』。今回の改訂点の1つとして「随時(非空腹時)のトリグリセライド(TG)の基準値」が設定された。これらの基準をもとに動脈硬化性疾患のリスクとしての高TG血症を確認するが、TG値の低下だけではイベントを減らせないため、高TG血症の原因となる生活習慣を改善させ適切な治療介入により動脈硬化を抑制するという観点から複合的に行う必要がある。今回、日本動脈硬化学会プレスセミナーにおいて、増田 大作氏(りんくう総合医療センター循環器内科部長)が「高トリグリセライド血症とその治療」と題し、日本人疫学に基づいたTGの適切なコントロール法について解説した。

IO+Chemoへのベバシズマブ add onの成績(APPLE)/日本肺癌学会

 非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療はIO+化学療法にパラダイムシフトしている。 ベバシズマブは化学療法の効果を増強することが報告されているだけでなく、VEGF阻害に伴う免疫抑制の解除による免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の効果増強も期待されている。  そのような中、NSCLCおいて、ICIであるアテゾリズマブ・化学療法併用へのベバシズマブの追加効果を評価するAPPLE試験が行われている。第63回 日本肺癌学会学術集会では、APPLE試験の初回解析結果を九州大学病院の白石祥理氏が発表した。

MCIやアルツハイマー病患者でみられる嗅覚識別能力の低下

 金城大学の吉武 将司氏らは、地域在住高齢者において、軽度認知障害(MCI)およびアルツハイマー病(AD)の嗅覚同定能力を調査し、識別困難なにおいの特定を試みた。その結果、MCIやADの高齢者は認知機能が正常な高齢者と比較し、嗅覚同定能力の低下が認められた。このことから著者らは、認知症患者に対し嗅覚刺激に関連する治療介入を行う前に、嗅覚の評価を行うことが重要であるとしている。Journal of Physical Therapy Science誌2022年11月号の報告。  対象は、MCI高齢者(MCI群)12例、AD高齢者(AD群)17例、どちらでもない高齢者(対照群)30例。嗅覚同定能力は、においスティック(OSIT-J)による検査を用いて評価し、スコアの群間比較および群間差を調査した。次に、各においに対する正答率の群間比較を行い、識別困難なにおいの特定を試みた。

短腸症候群患者の声は社会に届いているか/武田

 社会にはなかなか認知されていない希少疾病や難病も多く「短腸症候群」もその1つである。本症は指定難病ではないが、小児から成人まで患者層は幅広く、患者のQOLにも大きな負担をもたらしている。武田薬品工業は「短腸症候群(SBS)を知っていますか?」をテーマにメディアセミナーを開催した。  セミナーでは、前半でSBSの病態や診療と治療について説明するとともに、後半では患者のリアルな声が届けられた。  はじめに「短腸症候群の特徴」をテーマに千葉 正博氏(昭和大学薬学部臨床薬学講座臨床栄養代謝学部門 教授/同病院外科学講座小児外科学部門兼担)が、疾患概要を説明した。  SBSとは「生まれつき、あるいは生活する中で腸が通常より短くなった方々」とされ、 明確な学術的な定義がない。通常、小腸は成人で約6m(小児で約2m)ほどあるが、わが国では(1)小腸の75%以上切除、(2)成人1.5m未満(小児75cm未満)、(3)静脈栄養から離脱困難のうち1つでも該当する患者をSBSと診断している。

CDK4/6阻害薬+ETで増悪したHR+/HER2-転移乳がん、パルボシクリブ継続投与は有効か(PACE)/SABCS2022

 CDK4/6阻害薬+内分泌療法(ET)による治療で増悪した、ホルモン受容体陽性/HER2陰性(HR+/HER2-)転移乳がん(MBC)患者において、CDK4/6阻害薬を継続投与すべきかは明らかでない。増悪後、フルベストラントへの変更を伴うパルボシクリブの継続が、フルベストラント単独への変更よりも転帰を改善するかどうかを前向きに評価し、パルボシクリブ・フルベストラント・アベルマブの3剤投与の活性を探る第II相PACE試験の結果を、米国・ダナ・ファーバーがん研究所のErica L. Mayer氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2022)で発表した。 ・対象:CDK4/6阻害薬+ETで増悪したHR+/HER2-MBC患者(MBCに対するETが≦2ライン/化学療法が0~1ライン、フルベストラント治療歴なし) ・試験群 フルベストラント+パルボシクリブ群(F+P群):フルベストラント 500mg+パルボシクリブ 125mg 111例 フルベストラント+パルボシクリブ+アベルマブ群(F+P+A群):フルベストラント 500mg+パルボシクリブ 125mg+アベルマブ 10mg/kg 54例 ・対照群(F群):フルベストラント 500mg 55例 ・評価項目:

統合失調症に対する高用量ルラシドンの有効性

 福島県立医科大学の三浦 至氏らは、急性増悪期の統合失調症患者を対象に、ルラシドン80mg/日の有効性および安全性を検討した。その結果、ルラシドン40mg/日で治療した急性期統合失調症患者において、用量を80mg/日に増量した場合でも忍容性は良好であった。また、ルラシドン80mg/日への増量では、40mg/日を継続した場合と比較し、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)サブスケールスコアのより大きな改善が認められた。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2022年11月9日号の報告。

超過死亡1,483万人、コロナ死の約3倍/Nature

 2020〜21年における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行による超過死亡数は、全世界で約1,483万人にのぼることが、世界保健機構(WHO)のWilliam Msemburi氏らのグループの推計で明らかになった。この推計値は、同期間中に報告されたCOVID-19を原因とした死亡(COVID-19死)件数の約3倍に相当する。Nature誌オンライン版12月14日掲載の報告。  2021年12月31日現在、WHOに報告されたCOVID-19の確定数は、全世界で2億8,700万人を超え、そのうち約542万人が死亡している。しかし、検査の利用しやすさ、診断能力、COVID-19死の認定方法に一貫性がないといった要因により、COVID-19が世界人口に及ぼす影響の評価には困難が伴う。そこでMsemburi氏らは、人命損失について世界規模で定量化するため、超過死亡者数を推定した。超過死亡数にはCOVID-19死の総数、必要な医療の中断などの間接的な影響による死亡の両方が含まれる。

コロナ感染後の手術、間隔が長いほど術後の心血管疾患リスク減

 SARS-CoV-2感染から手術までの間隔が長くなるほど、術後の主要心血管イベント複合転帰のリスクが低くなることを、米国・ヴァンダービルト大学医療センターのJohn M. Bryant氏らが単一施設の後ろ向きコホート研究によって明らかにした。JAMA Netw Open誌2022年12月14日号掲載の報告。  これまで、複数の研究によってSARS-CoV-2感染と手術後の死亡率増加の関連が報告されているが、手術までの期間と死亡率の関連性についてはまだ不十分であった。そこで研究グループは、SARS-CoV-2感染から手術までの期間が短いほど、術後の心血管イベントの発生率が上がると仮説を立て、手術後30日以内の心血管イベントリスクを評価することにした。

CAR-T liso-cel、再発・難治性大細胞型B細胞リンパ腫の2次治療に承認/BMS

ブリストル・マイヤーズ スクイブは、2022年12月20日、CD19を標的とするCAR-T細胞療法リソカブタゲン マラルユーセル(liso-cel、製品名:ブレヤンジ)について、自家造血幹細胞移植への適応の有無にかかわらず、再発・難治性の大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)の2次治療として、再生医療等製品製造販売承認事項一部変更承認を取得した。  今回の承認は、自家造血幹細胞移植適応患者を対象とした国際共同第III相試験(JCAR017-BCM-003試験)、自家造血幹細胞移植非適応患者を対象とした海外第II相試験(017006試験)および国際共同第II相試験(JCAR017-BCM-001試験)コホート2を含む、1次治療後の再発・難治性のアグレッシブB細胞非ホジキンリンパ腫患者を対象とした臨床試験の成績に基づいている。

不眠症に対する認知行動療法アプリの有効性

 サスメド株式会社の渡邉 陽介氏らは、同社が開発した不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)のスマートフォン用アプリについて、有効性および安全性を検証するため国内第III相シャム対照多施設共同動的割り付けランダム化二重盲検比較試験を実施した。その結果、不眠症治療に対するスマートフォンベースのCBT-Iシステムの有効性が確認された。Sleep誌オンライン版2022年11月10日号の報告。  不眠症患者175例を、スマートフォンベースのCBT-Iアプリ使用群(アクティブ群、87例)と、本アプリから治療アルゴリズムなどの治療の機能を除いたアプリを使用する群(シャム群、88例)にランダムに割り付け、CBT-Iアプリの有効性および安全性を評価した。主要評価項目は、ベースラインから治療8週間後のアテネ不眠尺度(AIS)の変化量とした。

新型コロナは季節性インフルと同等となるか/COVID-19対策アドバイザリーボード

 第110回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードが、12月14日に開催された。その中で「新型コロナウイルス感染症の特徴と中・長期的リスクの考え方」が、押谷 仁氏(東北大学大学院微生物学講座 教授)らのグループより報告された。  本レポートは、「I.リスク評価の基本的考え方」「II. COVID-19 のリスク評価」「III.COVID-19 パンデミックは季節性インフルエンザのような感染症になるのか」の3つに分かれて報告されている。

12~20歳のmRNAコロナワクチン接種後の心筋炎をメタ解析、男性が9割

 12~20歳の若年者へのCOVID-19 mRNAワクチン接種後の心筋炎に関連する臨床的特徴および早期転帰を評価するため、米国The Abigail Wexner Research and Heart Center、 Nationwide Children’s Hospitalの安原 潤氏ら日米研究グループにより、系統的レビューとメタ解析が行われた。本研究の結果、ワクチン接種後の心筋炎発生率は男性のほうが女性よりも高く、15.6%の患者に左室収縮障害があったが、重度の左室収縮障害(LVEF<35%)は1.3%にとどまり、若年者のワクチン関連心筋炎の早期転帰がおおむね良好であることが明らかとなった。JAMA Pediatrics誌オンライン版2022年12月5日号に掲載の報告。

ニボルマブのNSCLCネオアジュバント、日本人でも有効(CheckMate 816)/日本肺癌学会

 ニボルマブの非小細胞肺がん(NSCLC)に対する術前補助療法(ネオアジュバント)は、日本人でもグローバルと同様の良好な結果を示した。  この結果はニボルマブのNSCLCネオアジュバントの第III相試験CheckMate 816の日本人サブセットの解析によるもので、第63回日本肺癌学会学術集会で近畿大学の光冨 徹哉氏が発表した。

コロナ重症化率と致死率、どの程度低下したのか/COVID-19対策アドバイザリーボード

 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けについて議論が進んでいる。その判断には、病原性(重篤性)と感染力、それらによる国民への影響を考慮する必要があるが、病原性(重篤性)の参考となる重症化率と致死率について、12月21日に開催された新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで報告された。重症化率・致死率ともに昨年夏から大きく低下しており、病原性が低いとされるオミクロン株が流行株の主体となっていること、多くの人が自然感染あるいはワクチンによる免疫を獲得したことが要因と考えられている。

再発・難治ATLLにバレメトスタット発売/第一三共

 第一三共株は、バレメトスタット(製品名:エザルミア)について、2022年12月20日、国内で新発売したと発表。  同剤は、再発又は難治性の成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)患者を対象とした国内第II相臨床試験の結果に基づき、2021年11月に希少疾病用医薬品の指定を受け、2022年9月に「再発又は難治性の成人T細胞白血病リンパ腫」を適応として国内製造販売承認を取得した。

膿疱性乾癬の現状と、新しい治療薬スぺビゴへの期待

 2022年12月8日、日本ベーリンガーインゲルハイムは「膿疱性乾癬(汎発型)(GPP)のアンメットメディカルニーズと新しい治療への期待」をテーマにメディアセミナーを開催した。同セミナーで帝京大学医学部皮膚科学講座の多田 弥生氏は、GPPの現状と同年9月に承認された抗IL-36Rモノクローナル抗体「スペビゴ点滴静注450mg」(一般名:スペソリマブ[遺伝子組換え])の国際共同第II相二重盲検比較試験(Effisayil 1試験)について講演を行った。

日本人うつ病に対する認知機能評価尺度-簡易版の検証

 国立精神・神経医療研究センターの住吉 太幹氏らは、「日本での大うつ病性障害関連の機能的アウトカムに関する前向き観察研究(PERFORM-J)」のデータを用いて、日本人うつ病患者における主観的認知機能を評価するための簡便な指標であるPDQ-D-5(5項目の評価尺度)の有用性を検証した。その結果、日本人うつ病患者に対するPDQ-D-5による評価は、PDQ-D-20(20項目の評価尺度)による評価を適切に反映していることが確認され、簡易版のPDQ-D-5にも、機能的アウトカム、うつ病重症度、QOLのいくつかの尺度との関連が認められた。このことから著者らは、PDQ-D-5は、認知機能に関する主観的な経験を評価するための実行可能かつ臨床的に信頼性のある尺度であり、時間的制限のある診療・相談に適用可能であるとしている。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2022年11月2日号の報告。

第Xa因子阻害剤による出血時の迅速な薬剤特定システムを構築/AZ

 アストラゼネカとSmart119は、12月14日付のプレスリリースで、医療機関と救急隊における第Xa因子阻害剤服用中の出血患者を対象とした情報共有システムを構築し、病院到着時に患者の服用薬剤を特定することで、迅速かつ適切な処置を目指すと発表した。  直接作用型第Xa因子阻害剤を含む抗凝固薬は、非弁膜症性心房細動患者の脳梗塞予防や静脈血栓塞栓症の治療・再発予防を目的として広く使用されている。その一方で、服用中は通常より出血が起こりやすい状態となるため、事故や転倒などのきっかけで、大出血につながるリスクが高くなる。抗凝固薬服用中の患者において大出血が発現した際、抗凝固薬の中和剤を止血処置の一環として投与することで、出血の増大を抑えられる可能性がある。中和剤を適切に使用するためには、患者の服薬情報の把握が必要となるが、現状、救急隊の病院到着時に約30%の患者で、服用薬剤が特定できないと報告されている。

わが国の非小細胞肺がんの遺伝子検査は本当に普及しているのか?(WJOG15421L/REVEAL)/日本肺癌学会

 わが国の肺がん遺伝子検査、初回治療前のマルチ遺伝子検査が十分行われていない可能性が示唆された。  非小細胞肺がんでは、バイオマーカー検査の結果に基づき治療を選択する。近年、RET、KRAS、NTRK遺伝子が検査項目に加えられ、バイオマーカー検査はシングルプレックスからマルチプレックスに移行しつつある。西日本がん研究機構(WJOG)では、わが国の肺がん約1,500例のバイオマーカー検査の実施状況と治療の実態を調査し、肺がん診療の問題点を可視化することを目的とした後ろ向き調査WJOG15421L(REVEAL)試験を実施している。