医療一般|page:161

日本人労働者の睡眠負債がプレゼンティズムや心理的苦痛に及ぼす影響

 健康上の問題を抱えながら仕事や業務に携わる状態を表すプレゼンティズム(presenteeism)は、生産性の低下やメンタルヘルスの問題による欠勤のリスク指標である。北海道医療大学の高野 裕太氏らは、睡眠負債、ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ぼけ)、不眠症状がプレゼンティズムや心理的苦痛に及ぼす影響を調査した。その結果、不眠症状は、睡眠負債や社会的時差ぼけよりも、プレゼンティズムや心理的苦痛に大きな影響を及ぼしていることが明らかとなった。プレゼンティズムや心理的苦痛に対し、睡眠負債もまた独立した影響を及ぼしているが、社会的時差ぼけの影響は認められなかった。BioPsychoSocial Medicine誌2022年6月3日号の報告。

「エアコン28℃設定」にこだわらないで!医師が患者に伝えたい熱中症対策

 日本救急医学会は熱中症予防の注意喚起を行うべく6月28日に緊急記者会見を実施した。今回、熱中症および低体温症に関する委員会の委員長を務める横堀 將司氏(日本医科大学大学院医学研究科 救急医学分野教授)らが2020年に発刊された「新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症予防に関する提言」に記された5つの提言を踏まえ、適切なエアコンの温度設定の考え方などについて情報提供した。  人間の身体が暑さに慣れるのには数日から約2週間を要する。これを暑熱順化と言うが、身体が暑さに慣れる前に猛暑日が到来すると暑熱順化できていない人々の熱中症リスクが高まる。今年は6月27日に関東甲信・東海・九州南部で梅雨明けが宣言され、しばらく猛暑日が続くと言われ、横堀氏は「身体が暑さに慣れていない今が一番危険」だと話した。

熱中症の経験ありは35.7%、毎年経験は2.7%/アイスタット

 2022年の夏は、例年になく長く、猛暑になるとの予報がでている。そして、夏季に懸念される健康被害の代表として「熱中症」がある。厚生労働省から新型コロナウイルス感染症予防のマスクの着脱も夏を前に発表されたが、まだ時期早々という社会的な雰囲気からか浸透していない。実際、熱中症の経験や今夏のマスク着用の考え、熱中症の予防などについて、一般の人はどのよう考えているのだろうか。株式会社アイスタットは、6月13日にアンケートを実施した。アンケートは、セルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の全国の会員20~69歳の有職者300人が対象。

ガイドライン無料化を医師の3割が希望/1,000人アンケート

 診療の標準・均てん化とエビデンスに根ざした診療を普及させるために、さまざまな診療ガイドラインや診療の手引き、取り扱い規約などが作成され、日々の活用されている。今春の学術集会でも新しいガイドラインの発表や改訂などが行なわれた。  実際、日常診療でガイドラインはどの程度活用され、医療者が望むガイドラインとはどのようなものなのか、今回医師会員1,000人にアンケートを行なった。  アンケートは、5月26日にCareNet.comはWEBアンケートで会員医師1000名にその現況を調査。アンケートでは、0~19床と20床以上に分け、6つの質問に対して回答を募集した。

高齢者の多疾患罹患とうつ病に関する性差

 これまでの研究では、多疾患罹患はうつ病リスクが高いといわれている。しかし、うつ病と多疾患罹患との関連において、性差を調査した研究はほとんどなかった。韓国・乙支大学校のSeoYeon Hwang氏らは、男女間でうつ病と多疾患罹患の関連に違いがあるかを調査した。その結果、韓国の高齢者において、多疾患罹患とうつ病との関連に性差が認められたとし、多疾患罹患の高齢者におけるうつ病の軽減には、性別ごとの適切なケアを提供する必要があることを報告した。Epidemiology and Health誌オンライン版2022年5月24日号の報告。

多発性骨髄腫に対する二重特異性抗体薬teclistamabの有用性(MajesTEC-1)/ASCO2022

 再発難治の多発性骨髄腫(RR/MM)に対してBCMAとCD3に対する二重特異性抗体薬teclistamabの有用性を見た第I/II相MajesTEC-1試験。昨年のASH2021(米国血液学会)で発表された本試験の最新データを、米国エモリー大学のAjay K. Nooka氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で発表し、同日にNEJM誌に掲載された。

熱ショックタンパク90阻害薬pimitespib 、GISTに承認/大鵬

 大鵬薬品は 2022年6月20日、経口HSP(Heat Shock Protein)90阻害薬pimitespib(製品名:ジェセリ)について、「がん化学療法後に増悪した消化管間質腫瘍」の効能・効果での製造販売承認取得を発表した。  同剤は、大鵬薬品が創製した化合物で、HSP90を阻害することによりがんの増殖や生存などに関与するKIT、PDGFRA、HER2やEGFRなどのタンパクを不安定化し、減少させることで抗腫瘍効果を示す。  今回の承認は、標準治療薬に不応または不耐と判断されたGIST患者を対象に、同剤とプラセボの有効性および安全性を比較した第III相臨床試験(CHAPTER-GIST-301試験)の結果に基づいたものである。同試験においてpimitespibは主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、有害事象は管理可能であった。試験の結果は、Annals of Oncologyに掲載された。

転移のある去勢抵抗性前立腺がんに対するPSMA標的治療薬ルテチウム-177はPFSを延長(TheraP)/ASCO2022

 転移を有するドセタキセル既治療の去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)に対し、前立腺特異的膜抗原(PSMA)を標的としたルテチウム177(Lu-PSMA-617)は、カバジタキセルと比較して無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することが、米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)において、オーストラリア・Peter MacCallum Cancer CentreのMichael Hofman氏から発表された。  今回は、オーストラリアで実施されたオープンラベルの無作為化比較第II相TheraP試験の生存に関する解析結果である。

思春期ADHDにおける物質使用障害の性差

 性差が精神疾患の病因および経過に重大な影響を及ぼすことは、脳解剖学、脳活動パターン研究、神経化学などのエビデンスで示されている。しかし、メンタルヘルス分野での性差に関する研究は十分ではない。スペイン・Universidad Cardenal Herrera-CEUのFrancisca Castellano-Garcia氏らは、物質使用障害(SUD)、有病率、薬物療法、メンタルヘルスの観点から、注意欠如多動症(ADHD)と診断された13~18歳の思春期患者における性差について検討を行った。その結果、思春期のADHDにおいて女性は男性よりも診断・治療が十分でない可能性があり、将来のさまざまな問題を予防するためにも、とくに思春期女性に対するADHDの早期診断は重要であることが示唆された。Brain Sciences誌2022年5月2日号の報告。

感染2年後も55%がlong COVID~武漢の縦断コホート研究

 COVID-19の流行が続く中、COVID-19から回復した人のかなりの割合が、複数の臓器やシステムに長期的な影響を受けていることを示すエビデンスが増えている。初期にCOVID-19が流行した中国において、2年にわたって既感染者の健康状態を調べた研究結果がLancet Respiratory Medicine誌オンライン版2022年5月11日号に掲載された。  2020年1月7日~5月29日にCOVID-19によってJin Yin-tan Hospital(中国・武漢)に入退院した人を対象に縦断コホート研究を実施。症状発現後6ヵ月(2020年6月16日~9月3日)、12ヵ月(2020年12月16日~2021年2月7日)、2年(2021年11月16日~2022年1月10日)時点の健康状態を、6分間歩行距離(6MWD)検査、臨床検査、退院後の症状、メンタルヘルス、健康関連QOL、職場復帰、医療利用に関する一連の質問票を使用して測定した。各インタビュー時には肺機能検査と胸部画像診断を行った。

転移を有する無症状の結腸がんに対する化学療法前の原発巣切除の効果/ASCO2022

 転移巣切除不能で原発巣切除可能なStage IVの結腸がん患者に対し、化学療法実施前に原発巣を切除しても、全生存期間(OS)の延長は認められないことが無作為化比較試験の結果から示された。ドイツ・ハイデルベルグ大学のNuh N. Rahbari氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2022)で報告した。  切除不能の遠隔臓器転移を有するStage IV大腸がんで、原発巣に起因する症状がない症例において、化学療法前の原発巣切除が生存率をさらに高めるかは、議論の余地が残る。同試験は、化学療法前の原発巣切除の効果を、化学療法のみと比較する多施設共同無作為化試験として実施された。

IDH2変異の再発・難治AMLに対するenasidenibの効果(IDHENTIFY)/ASCO2022

 IDH2変異(R172K変異)を有する再発・難治性の急性骨髄性白血病(AML)に対して、IDH2阻害薬enasidenibの投与は、従来の治療レジメンに比べて全生存期間(OS)が延長することが第III相試験(IDHENTIFY試験)の追加解析によって示された。フランス・Gustave RoussyのStephane De Botton氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2022)で報告した。  AML患者の8~19%がIDH2変異を有し、IDH2遺伝子変異にはR140Q変異(約75%)とR172K変異(約25%)があることが知られている。IDHENTIFY試験では、IDH2変異陽性の再発・難治性AML患者に対してenasidenib投与と支持療法を行っても、従来の治療レジメンに比べてOSの延長を認めなかった。今回は、対象患者をR140Q変異陽性(R140サブグループ)とR172K変異陽性(R172サブグループ)に分けて、enasidenibの効果について検討した。

コロナの血栓塞栓症予防および抗凝固療法の診療指針Ver.4.0発刊/日本静脈学会

 6月13日に日本静脈学会は『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)における血栓症予防および抗凝固療法の診療指針 Ver.4.0』を発刊した。今回の改訂点は、コロナに罹患した際の国内での血栓症の合併頻度や予防的抗凝固療法の実態を調査したCLOT-COVID研究のエビデンスが追加されたこと。また、今回より日本循環器学会が参加している。  本指針は、日本静脈学会、肺塞栓症研究会、日本血管外科学会、日本脈管学会の4学会合同で、出血リスクの高い日本人を考慮し、中等症II、重症例に限って選択的に保険適用のある低用量未分画ヘパリンを推奨するために、昨年1月にVer.1.0が発表された。

筋肉量減少に、睡眠の満足感・夕食時刻・朝食の有無が関連/日本抗加齢医学会

 加齢とともに減少する筋肉量がどのような生活習慣と関連するのか、東海大学の増田 由美氏らが比較的健康な成人男子を調査し解析した結果、睡眠の満足感との有意な関連が示された。睡眠時間との関連は有意ではなかったという。さらに、60歳未満では20時までの夕食摂取、60歳以上では毎日の朝食摂取が筋肉量の維持に効果的であることが示唆された。第22回日本抗加齢医学会総会(6月17~19日)で発表した。

生後6ヵ月以上へのモデルナ製とファイザー製コロナワクチンを承認/FDA

 米国食品医薬品局(FDA)は2022年6月17日付のプレスリリースで、生後6ヵ月以上の小児に対して、モデルナ製とファイザー製の新型コロナワクチンについて緊急使用許可(EUA)したことを発表した。5歳未満への新型コロナワクチンの接種が許可されたのはこれが世界初となる。  モデルナ製ワクチン(商品名:スパイクバックス)は、米国でこれまで18歳以上の成人のみに使用が許可されていたが、今回の承認で、生後6ヵ月以上のすべての小児に対して使用が可能となり、それぞれの年齢層に合わせた用量を、初回シリーズとして1ヵ月間隔で2回投与する。年齢層別の1回の用量は、生後6ヵ月~5歳では25μg(0.25mL)、6~11歳では50μg(0.5mL)、12~17歳では100μg(0.5mL)となっている。また、免疫不全のある小児については、2回目の少なくとも1ヵ月後に3回目を投与することができる。

精神疾患患者の認知症リスク

 統合失調症、双極性障害、うつ病などの重度の精神疾患は認知症と関連しているといわれているが、これらの関連を直接比較した研究はあまり行われていない。台湾・台北栄民総医院のYing-Jay Liou氏らは、重度の精神疾患と認知症リスクとの関連を明らかにするため、台湾全民健康保険データベースを用いてレトロスペクティブに分析を行った。その結果、重度の精神疾患患者は対照群と比較し、アルツハイマー病および血管性認知症リスクが高いことが示唆されたとし、中年および高齢の精神疾患患者では、認知機能の変化を綿密にモニタリングする必要があることを報告した。European Archives of Psychiatry and Clinical Neuroscience誌オンライン版2022年4月26日号の報告。

多発性骨髄腫患者におけるCOVID-19重症化のリスク因子の検討/ASCO2022

 米国立衛生研究所(NIH)のNational COVID Cohort Collaborative(N3C)データベースを用いた解析により、肺疾患および腎疾患の既往、がん治療などが多発性骨髄腫患者のCOVID-19重症化リスクを高めることが示された。米国・Auburn大学のAmit Kumar Mitra氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2022)で報告した。  高齢者に発症頻度が高い形質細胞腫瘍である多発性骨髄腫は、しばしば免疫不全を呈することから、COVID-19の重症化リスクを高める可能性がある。同研究では、NIHのNational Center for Advancing Translational Sciences(NCATS)が主導する全国一元公開データベースであるN3Cのデータセットを使用し、多発性骨髄腫患者のCOVID-19の重要化や死亡に関連するリスク因子について解析を行った。

切除不能なRAS/BRAFV600E変異大腸がん肝臓転移例への導入療法はトリプレットかダブレットか(CAIRO5)/ASCO2022

 初期診断で切除不能なRAS/BRAFV600E変異肝臓に転移した大腸がん肝転移(CRLM)に対して、トリプレット(FOLFOXIRI)と抗VEGF抗体ベバシズマブの併用療法は、ダブレット(FOLFOX/FOLFIRI)とベバシズマブの併用療法に比べて無増悪生存期間(PFS)や治癒切除(R0/R1)率を改善させることが第III相無作為化試験(CAIRO5試験)から示された。オランダ・University Medical Center UtrechtのCornelis J. A. Punt氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2022)で報告した。  初期診断切除不能とCRLM診断されたが、腫瘍縮小により根治切除が可能になる場合がある。そのような患者に対しては薬物による導入全身薬物療法が用いられる。しかし、適切な全身導入療法を評価した研究はない。CAIRO5試験は、最適な全身導入療法について検討することを目的とした臨床試験である。

日本人双極性障害外来患者の3年間の臨床アウトカムに影響を及ぼす要因~MUSUBI研究

 双極性障害患者の長期的な臨床アウトカムの予測因子に関するエビデンスは限られている。獨協医科大学の菅原 典夫氏らは、日本の精神科クリニックにおける双極性障害の多施設治療調査「MUSUBI研究」に参加した双極性障害患者を対象に、3年間の臨床アウトカムに影響を及ぼす予測因子を特定しようと試みた。その結果、フォローアップ期間中に持続的な寛解が得られる患者は少なく、臨床アウトカムに個々の人口統計学的および臨床的特徴が影響を及ぼしていることが示唆された。Journal of Psychiatric Research誌2022年7月号の報告。

脊髄性筋萎縮症、治療の進歩と新生児スクリーニング

 2022年6月20日、「マススクリーニングが変える脊髄性筋萎縮症(SMA)の未来」と題して、都医学研都民講座が開催され、齋藤 加代子氏(東京女子医科大学 ゲノム診療科 特任教授)から、SMAの概要と治療の進歩、新生児スクリーニングの必要性について、水野 朋子氏(東京医科歯科大学 小児科 助教)から、新生児スクリーニングの現状・課題について講演が行われた。  SMAは、脊髄の運動神経細胞の変性により、全身の筋肉が萎縮し、筋力低下、嚥下障害、呼吸障害などを来す進行性の疾患である。病型は、胎児期に発症する0型、6ヵ月ごろまでに発症するI型、18ヵ月ごろまでに発症するII型、それ以降に発症するIII型、成人期に発症するIV型に分類される(0型とIV型はまれ)。I型は、最重症で進行が速く、気管切開と人工呼吸器なしでは2歳までに90%以上が死亡するとされている。II型は、成長に伴い脊柱変形や関節拘縮がみられるようになり、やがて車いすでの生活を余儀なくされる。比較的軽症なIII型であっても、X脚や外反足などの症状がみられ、転びやすくなり、多くの患者さんで車いすが必要となるケースが多いという。発症年齢は、大部分が小児期であり、生後2ヵ月前後までに20%、2歳未満までに82.7%、16歳未満までに97%が発症することが全国調査の結果から明らかになっており、齋藤氏は、「SMAでは、小児科が診断において重要な役割を担う」と述べた。