医療一般|page:168

長期的な体重変化とその後の認知症リスク

 中高年期の体重減少は、その後の認知症リスクの上昇と関連しているといわれている。しかし、多くの研究では、身体的フレイル(PF)の潜在的な影響について検討が不十分であり、フォローアップ期間が限られているか、対照が最適化されていないなどの問題がある。中国・浙江大学のJie Shen氏らは、米国の中年期成人および高齢者の体重変化と認知症リスクとの長期的および時間的な関係を調査するため、検討を行った。その結果、中年期成人および高齢者の認知症リスクと体重減少との関連が認められた。この関連は、PFの状態とは無関係であり、最近の体重減少だけでなく、10年以上前の体重減少との関連が確認された。The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism誌オンライン版2022年4月14日号の報告。

米国における双極性障害の治療パターン

 双極性障害は慢性的かつ複雑な疾患であるため、治療が困難なケースも少なくない。米国・テキサス工科大学のRakesh Jain氏らは、双極性障害患者に対する治療パターンを明らかにするため、レトロスペクティブ研究を実施した。その結果、抗うつ薬やベンゾジアゼピンは、フロントライン治療としての使用はガイドラインで推奨されていないにもかかわらず、双極性障害に対し高頻度で処方されていることが明らかとなった。本結果は、双極性障害のケアにおける異質性を強調しており、多くの臨床医がエビデンスに基づく双極性障害治療を実践していないことを示唆している。Advances in Therapy誌オンライン版2022年4月6日号の報告。

進行/転移TN乳がんの1次治療、PD-L1発現によらずDato-DXd+デュルバルマブが奏効(BEGONIA)/ESMO BREAST 2022

 進行/転移トリプルネガティブ(TN)乳がんの1次治療として、トポイソメラーゼI阻害薬を含むTROP2抗体薬物複合体datopotamab deruxtecan(Dato-DXd)が、PD-L1発現の有無によらず高い奏効率を示し、安全性プロファイルも管理可能であったことがBEGONIA試験で示された。英国・Queen Mary University of LondonのPeter Schmid氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2022、2022年5月3~5日)で報告した。

イルミナ、包括的がんゲノムプロファイリングテストを申請

 イルミナは、2022年5月10日、厚生労働省にTruSight Oncology Comprehensiveパネルシステムの製造販売承認申請を行った。  同パネルシステムは、固形悪性腫瘍患者のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍サンプルから抽出した核酸を検体として、NextSeq 550Dxシステムを用いたターゲットシーケンスにより517遺伝子の変異を検出する包括的がんゲノムプロファイリング検査キット。  DNAからは塩基変異、多塩基変異、挿入、欠失および遺伝子増幅を、RNAからは遺伝子融合およびスプライスバリアントを検出する。コンパニオン診断薬(CDx)についても、順次追加される予定。

抗精神病薬の多剤併用から単剤療法に切り替え後の再発率と精神症状への影響

 抗精神病薬の多剤併用療法について、支持するエビデンスはほとんどなく、安全性や副作用に対する懸念が存在する。それにもかかわらず、多剤併用療法は、統合失調症の長期入院患者に対し一般的に行われている。オランダ・マーストリヒト大学のMushde Shakir氏らは、第1世代抗精神病薬(FGA)および第2世代抗精神病薬(SGA)の併用療法からいずれかの単剤療法への切り替えが及ぼす、再発率および精神症状への影響を検討した。その結果、統合失調症の長期入院患者においてFGAとSGAの併用療法から単剤療法へ切り替えた場合、再発率は増加することなく、逆に減少することが示唆された。Schizophrenia Research誌オンライン版2022年4月6日号の報告。

抗TIGIT抗体tiragolumab+アテゾリズマブによるPD-L1高発現非小細胞肺がん1次治療の中間解析(SKYSCRAPER-01)/ロシュ

 ロシュは2022年5月11日、 PD-L1高発現の局所進行または転移のある非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療で抗TIGIT抗体tiragolumab+アテゾリズマブとアテゾリズマブ単剤を比較する第III相SKYSCRAPER-01試験の結果を発表した。 抗TIGIT抗体tiragolumabとアテゾリズマブの忍容性は良好 SKYSCRAPER-01試験の中間解析の結果、主要評価項目である無増悪生存期間を達成できなかった。もう1つの主要評価項目である全生存期間は未成熟であり、次回分析まで研究が継続される。双方の評価項目とも数値は改善している。抗TIGIT抗体tiragolumabとアテゾリズマブの忍容性は良好であり、tiragolumabを追加による新たな安全性シグナルは確認されていない。

HR+/HER2-早期乳がんへの術前HER3-DXdが有望(SOLTI TOT-HER3)/ESMO BREAST 2022

 未治療のホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+/HER2−)早期乳がん患者に対する、HER3を標的とした抗体薬物複合体(ADC)patritumab deruxtecan(HER3-DXd)の術前単回投与が、病理学的完全奏効(pCR)の予測スコアとして開発されたCelTILスコアの有意な増加と関連し、奏効率が45%であることが示された。スペイン・Hospital Clinic of BarcelonaのAleix Prat氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2022、2022年5月3~5日)で多施設共同前向きSOLTI TOT-HER3試験(part A)の最終結果を報告した。

T-DXdの効果、HER2発現だけでなく腫瘍内の空間的分布も影響(DAISY)/ESMO BREAST 2022

 転移乳がんへのトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の有効性を評価したDAISY試験における探索的評価項目のトランスレーショナル解析から、T-DXdの抗腫瘍効果は腫瘍細胞のHER2発現量だけでなく、空間的分布にも影響されることが示唆された。フランス・Gustave RoussyのMaria Fernanda Mosele氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2022、2022年5月3~5日)で報告した。

統合失調症患者の併存疾患~リアルワールドデータ分析

 米国において統合失調症の影響は320万人超に及ぶとされる。しかし、統合失調症の併存疾患パターンは、リアルワールドでシステマティックに検証されていない。米国・ハーバード大学のChenyue Lu氏らはこの課題を解決するため、米国の健康保険データセットの8,600万例の患者コホートを用いた観察研究を実施した。その結果、統合失調症患者の既知の併存疾患だけでなく、これまであまり知られていなかった併存疾患パターンも特定された。Translational Psychiatry誌2022年4月11日号の報告。

高リスク早期乳がんへの術後アベマシクリブ、HR0.68でiDFS改善(monarchE Cohort 1)/ESMO BREAST 2022

 日本および欧州(EMA)での承認の対象である、腋窩リンパ節転移個数や腫瘍径といった臨床現場で判定しやすい特徴により定義された再発リスクの高いホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+/HER2−)早期乳がん患者に対して、術後薬物療法としてのCDK4/6阻害薬アベマシクリブと内分泌療法併用のベネフィットが示された。ドイツ・Evang. Kliniken Essen-MitteのMattea Reinisch氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2022、2022年5月3~5日)でmonarchE試験Cohort 1の有効性データを報告した。 [monarchE試験 Cohort 1] ・対象:HR+/HER2−の初発乳がん、遠隔転移なし・腋窩リンパ節転移陽性の症例(閉経状況問わず)、術前/術後の化学療法は許容 ・Cohort 1(全体の91%):腋窩リンパ節転移(pALN)陽性が4個以上またはpALN1~3個かつGrade3の病変または腫瘍径≧5cm ・試験群:アベマシクリブ150mg×2/日+標準的術後内分泌療法。アベマシクリブは最長2年間投与(アベマシクリブ+ET群:2,555例) ・対照群:標準的術後内分泌療法(タモキシフェン、アロマターゼ阻害薬、LH-RHアゴニストなど。薬剤は主治医選択)(ET群:2,565例)

オミクロン株BA.2などについて更新、COVID-19診療の手引き7.2版/厚労省

 5月9日、厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第7.2版」を公開し、全国の自治体や関係機関に通知を行った。  今版の主な改訂点は以下の通り。 【1 病原体・疫学】 ・オミクロン株のBA.2系統について更新 ・懸念される変異株の表を更新 ・COVID-19死亡者数の図を更新 ・国内発生状況でオミクロン株のBA.2系統への置き換わりについて更新 ・海外発生状況で世界の流行株(主にオミクロン株)と今後の公衆衛生措置などを更新

日本人高齢者における野菜・果物の摂取と認知症リスク~久山町研究

 これまで、欧米で行われていたプロスペクティブ研究では、野菜や果物の摂取が認知症リスクを低下させることが示唆されている。しかし、アジア人を対象とした疫学的なエビデンスは限られていた。九州大学の木村 安美氏らは、日本人コミュニティにおける野菜や果物およびそれらの栄養素の摂取と認知症発症リスクと認知症サブタイプとの関連について調査を行った。その結果、野菜とその構成栄養素の摂取量が多いほど、日本人高齢者の認知症リスクが低下することを報告した。BMC Geriatrics誌2022年3月28日号の報告。

医療従事者、PPE着用時の皮膚病リスクと低減戦略

 シンガポール・国立皮膚疾患センターのWen Yang Benjamin Ho氏らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにおける最前線の医療従事者を対象に、個人用防護具(PPE)着用と職業性皮膚病(OD)との関連を明らかにする疫学調査を行い、リスク因子と低減戦略を検討した。  対象者416例のうち73.8%がPPE関連OD(PROD)を有したと回答。そのエビデンスベースに基づく推奨事項として、着用から1時間ごとに休憩を予定する、さまざまなPPEを試してみることなどの知見が得られたと報告した。JAAD International誌オンライン版2022年4月8日号掲載の報告。

HER2+乳がん脳転移例、T-DXdで高い頭蓋内奏効率(TUXEDO-1)/ESMO BREAST 2022

 活動性脳転移を有するHER2陽性乳がん患者において、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)で73.3%と高い頭蓋内奏効率が得られたことが、前向き単群第II相試験(TUXEDO-1試験)で示された。オーストリア・ウイーン医科大学のRupert Bartsch氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2022、2022年5月3~5日)で報告した。  HER2CLIMB試験では、活動性の脳転移を有するHER2陽性乳がんへのトラスツズマブ+カペシタビン+tucatinibの投与で、頭蓋内奏効率が47.3%、無増悪生存期間(PFS)中央値が9.5ヵ月だったことが報告されている。  今回のTUXEDO-1試験の対象は、トラスツズマブまたはペルツズマブの投与歴があり、即時の局所治療の適応がないHER2陽性乳がん患者で、新たに診断された脳転移(未治療)または局所治療後に進行した脳転移を有する15例。T-DXd 5.4mg/kgを3週ごとに投与した。主要評価項目はResponse Assessment in Neuro-Oncology(RANO)-BM基準で中央判定された頭蓋内奏効率、副次評価項目は頭蓋外奏効率、PFS、全生存期間、安全性、QOLなどであった。Simonの2段階デザインに基づき15例が登録され(第1段階:6例、第2段階:9例)、15例全例でT-DXdが1回以上投与された。

中年期の生活環境とその後のうつ病との関連

 大阪大学の小川 憲人氏らは、一般集団における生活環境と精神科医によるうつ病診断との縦断的関連について、調査を行った。その結果、子供と一緒に暮らすことで、男性ではうつ病リスクの低下が認められ、うつ病予防における子供の影響が示唆された。Translational Psychiatry誌2022年4月11日号の報告。  1990年、多目的コホート研究(JPHC Study)において、40~59歳の日本人男性および女性1,254人が登録され、生活環境についてのアンケート調査に回答した。その後、2014~15年にメンタルヘルス検診を実施した。うつ病の診断は、十分な経験を積んだ精神科認定医による診察を通じて評価した。

コロナ罹患後症状マネジメント第1版発表、暫定版を改訂/厚労省

 厚生労働省は、2021年12月に公開した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(暫定版)」を改訂、新たに「新型コロナウイルス感染症(COVID19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(第1版)」を4月28日に発表し、全国の自治体や関係機関などに周知を行った。  今回の改訂では、神経症状と精神症状はそれぞれ別の章とし、皮膚症状の章を新設したほか、各章が共有の小項目の見出しとなった。また、内容としてかかりつけ医などがどの範囲まで対応し経過観察するのか、どのタイミングで専門医・拠点病院の受診を勧めるのかなどについて、各症状(呼吸器、循環器、嗅覚・味覚、神経、精神、痛み、皮膚ごと、また、小児への対応、さまざまな症状に対するリハビリテーション)について記載を行った。  なお、本別冊(第1版)は、2022年4月現在の情報を基に作成しており、今後の知見に応じて、内容に修正が必要となる場合がある。厚生労働省、国立感染症研究所などのホームページから常に最新の情報を得る必要があるとしている。

神経機能障害を伴う治療抵抗性片頭痛患者に対するフレマネズマブ治療

 既存する片頭痛予防の2~4の薬剤クラスが奏効しなかった反復性および慢性片頭痛成人患者を対象とした、ランダム化プラセボ対照二重盲検比較試験の第IIIb相試験「FOCUS試験」において、カルシトニン遺伝子関連ペプチドを標的とするヒト化モノクローナル抗体フレマネズマブの安全性および有効性は明らかとなっている。今回、オーストリア・ Konventhospital Barmherzige Bruder LinzのChristian Lampl氏らは、FOCUS試験の事後分析として、前兆または同様の神経症状の有無により、フレマネズマブの有効性やQOLに対する影響に違いがあるかを検討した。その結果、フレマネズマブは、関連する神経機能症状を伴う片頭痛患者や既存の片頭痛治療薬2~4の薬剤クラスで効果不十分であった患者に対し、神経症状を呈する日数を減少させ、片頭痛を効果的に予防し、QOLを改善することが示唆された。European Journal of Neurology誌オンライン版2022年3月18日号の報告。

親のスマートフォン依存症が子供に及ぼす影響

 青少年のスマートフォン依存症(ASA)による健康への悪影響に関する懸念は、世界的な問題となっている。中国・蘭州大学のJian Gong氏らは、親のスマートフォン依存症(PSA)がASAに及ぼす影響を調査し、これらの関連に親子関係や親の養育がどのような役割を果たすかについて評価を行った。その結果、親の過度なスマートフォン使用は子供がASAになる傾向を高め、PSAとASAの関連には親子関係や親の養育が重要な役割を果たすことが示唆された。Journal of Affective Disorders誌2022年6月15日号の報告。

新型コロナ自宅死亡例は高齢者が多い/アドバイザリーボード

 4月27日に開催された政府の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで「新型コロナ患者の自宅での死亡事例に関する自治体からの報告について」が公開された。  本報告では、令和4年1月1日~3月31日までの間に自宅で死亡された5態様(例:自宅療養中に死亡、入院調整中などに死亡、死亡後に陽性確認など)の新型コロナウイルス感染症患者について、都道府県を通じ、年齢、基礎疾患、同居の有無、ワクチン接種歴、死亡に至るまでの経過などを調査、集計したもの。

COVID-19患者のリハビリテーション治療とその効果/厚生労働省

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により入院し、体力が落ちた中で患者のリハビリテーションはいつから開始するべきか、またその効果はどうなのだろう。  日本リハビリテーション医学会(理事長:久保 俊一)では、理事長声明を公開し、「COVID-19の入院患者さんは狭い病室内への隔離によって運動量や活動量が低下しやすいために、隔離期間中であっても、発症早期から機能維持を目標とした適切なリハビリテーション治療を可能な限り実施していただきますよう、各医療機関での積極的な取り組みをお願いいたします。また、COVID-19から回復した患者さんを受け入れる後方支援医療機関あるいは介護施設等でのリハビリテーション医療の継続とリハビリテーションマネジメントの実施を決して疎かにされませんようにお願いいたします」と早期からのリハビリテーション導入を推奨している。  また、4月13日に厚生労働省で開催された新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで「COVID-19感染患者に対するリハビリテーション治療」が報告されている。    この報告は、田島 文博氏(日本リハビリテーション医学会副理事長/和歌山県立医科大学リハビリテーション医学講座 教授)が自施設の取り組みも含め発表したものである。