医療一般|page:68

統合失調症外来患者におけるアリピプラゾール月1回製剤治療のフォローアップ結果

 統合失調症治療における重要な目標は、症状、心理社会的機能、ウェルビーイングなどのさまざまな問題を寛解状態に導くことである。米国・ザッカーヒルサイド病院のChristoph U. Correll氏らは、ドイツの75施設で実施されたアリピプラゾール月1回製剤を用いた6ヵ月間の非介入研究に登録された安定期統合失調症の外来患者を対象に、臨床アウトカムデータの事後分析を実施した。Schizophrenia(Heidelberg、Germany)誌2023年11月8日号の報告。  主要アウトカムは次の3つ。(1)症状寛解(横断的Andreasenらの基準:BPRSにおける陽性・陰性主要症状が軽度以下)(2)機能的寛解(GAFスコア70超)(3)24週目のウェルビーイングの寛解(WHO-5スコア13以上)。登録患者242例中、完全なデータを有する194例(80.2%)を分析した。

脳小血管病発症前のメトホルミン服用、予後を改善/新潟大

 糖尿病治療で多用されているメトホルミンに神経保護作用がある可能性が示唆されている。この可能性に関し、新潟大学脳研究所脳神経内科学分野の秋山 夏葵氏らの研究グループは、国立循環器病研究センターと共同で研究を行った。その結果、メトホルミンによる脳小血管病に対する神経保護効果が明らかとなった。Journal of the Neurological Sciences誌オンライン版2023年11月29日号からの報告。

肥満手術で造血器腫瘍リスクが長期にわたって低下

 肥満が2型糖尿病や心血管疾患などの重篤な合併症と関連することは知られているが、肥満が悪性腫瘍の危険因子であることも明らかになってきた。肥満患者へ肥満手術を行うことでがんの発症リスクが低下するとされるが、新たな研究により、肥満手術が造血器腫瘍のリスクを低下させることが示された。スウェーデン・ヨーテボリ大学のKajsa Sjoholm氏らによる本研究の結果は、Lancet Healthy Longevity誌2023年10月号に掲載された。  本試験では、前向き対照Swedish Obese Subjects研究で、肥満手術を受けた人と通常の治療を受けた人の全死亡率を比較した。参加者はスウェーデン全土で募集され、組み入れ基準は年齢37~60歳、検査前または検査時のBMIが男性34、女性38以上であった。主なアウトカムは造血器腫瘍の発生率と死亡率で、悪性リンパ腫、骨髄腫、骨髄増殖性新生物、急性および慢性白血病を含む造血器腫瘍のイベントは、Swedish Cancer Registryから収集した。

内臓脂肪はアルツハイマー病の発症リスクを高める?

 腹部を中心とした内臓の周りに脂肪が多くついている中高年は、後年、アルツハイマー病を発症するリスクの高いことが、新たな研究で示唆された。研究では、表面からは見えないこの脂肪(内臓脂肪)が脳の変化に関係しており、その変化は、アルツハイマー病の最初期の症状である記憶障害が生じる最長で15年前に現れ始めることが示されたという。米ワシントン大学医学部マリンクロット放射線医学研究所のMahsa Dolatshahi氏らによるこの研究結果は、北米放射線学会年次総会(RSNA 2023、11月26~30日、米シカゴ)で発表された。

小児期の不十分なケアや過保護が成人後の糖尿病に関連

 子どもの頃に両親から十分なケアを受けていなかったり、過保護な環境で育てられたりすることと、成人期の糖尿病リスクとの関連を示唆する研究結果が報告された。九州大学大学院医学研究院衛生・公衆衛生学分野の柴田舞欧氏らが、久山町研究参加者のデータを横断的に解析した結果であり、詳細は「BMC Endocrine Disorders」に10月12日掲載された。  十分でないケアまたは過保護といった「不適切な養育」が、成人後の肥満などと関連のあることが既に報告されている。ただし、不適切な養育と糖尿病の関連の有無はよく分かっていない。柴田氏らはこの点について、日本を代表する地域住民対象疫学研究である「久山町研究」のデータを用いて検討した。

食道切除術の術後感染予防、アンピシリン・スルバクタムvs.セファゾリン~日本の全国データ

 セファゾリン(CEZ)は食道切除術における感染予防として広く使用されている。一方、アンピシリン・スルバクタム(ABPC/SBT)は好気性および嫌気性の口腔内細菌をターゲットとしていることから、一部の病院で好んで使用されている。そこで、国際医療福祉大学の平野 佑樹氏らが、食道切除術の術後感染予防における短期アウトカムを2剤で比較したところ、ABPC/SBTがCEZより術後短期アウトカムを有意に改善することが示された。Annals of Surgery誌オンライン版2023年12月15日号に掲載。

食物アレルギーの小児患者へ安全・有効な経口免疫療法/国立成育医療研究センター

 小児の食物アレルギーの2大原因である卵と牛乳。この2つの食物が摂取できるようにさまざまな治療が行われている。国立成育医療研究センター アレルギーセンターの宮地 裕美子氏らの研究グループは、鶏卵もしくは牛乳の食物アレルギーがある子供(4~18歳)に対し、食物経口負荷試験の閾値をもとに5つの方法(A~E群)で経口免疫療法を行い、それぞれの方法の安全性と有効性について電子カルテデータを用いて分析した。  その結果、閾値の1/100量から開始、1/10量で維持する方法が従来の方法よりも2回目の食物経口負荷試験の閾値上昇人数の割合が高く、重篤なアレルギー症状であるアナフィラキシー症状が出現することなく、症状が出現しても軽微なものに限られているということがわかった。Clinical & Experimental Allergy誌2023年12月号からの報告。

認知症の評価に視覚活用、アイトラッキングシステムとは

 早期認知症発見のためのアイトラッキング技術を用いた「汎用タブレット型アイトラッキング式認知機能評価アプリ」の神経心理検査用プログラム『ミレボ』が2023年10月に日本で初めて医療機器製造販売承認を取得した。発売は24年春を予定している。この医療機器は日本抗加齢協会が主催する第1回ヘルスケアベンチャー大賞最終審査会(2019年開催)で大賞を取った武田 朱公氏(大阪大学大学院医学系研究科 臨床遺伝子治療学)の技術開発を基盤として同第5回大賞(10月27日開催)を受賞した高村 健太郎氏(株式会社アイ・ブレインサイエンス)らが産業化に成功したもの。

猫を飼うと統合失調症になるのは本当か

 猫の飼育は、統合失調症関連障害および精神病症状様体験(PLE)のリスク修飾因子であるといわれている。この可能性についてオーストラリア・クイーンズランド大学脳研究所のJohn J McGrath氏らの研究グループは、猫の飼育と統合失調症関連の転帰との関係を報告した文献の系統的レビューおよびメタ解析を行った。その結果、猫の飼育(猫への曝露)は広義の統合失調症関連障害のリスク増加との関連を支持するものであった。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2023年12月2日号の報告。

治療抵抗性うつ病患者の自殺リスクに対する衝動性の影響~FACE-DR研究

 自殺は重大な問題である。うつ病患者ではとくに自殺発生率が高いことから、うつ病は自殺関連リスク因子の1つとされている。重度のうつ病患者における自殺企図は、衝動性や制御不能などの症状と関連していると考えられる。しかし、治療抵抗性うつ病における衝動性と自殺リスクとの関連を具体的に調査したデータは、ほとんどない。フランス・トゥールーズ大学病院のJuliette Salles氏らは、治療抵抗性うつ病患者の自殺リスクに対する衝動性の影響を再検討するため、本研究を実施した。その結果、治療抵抗性うつ病患者における衝動性は、自尊心、抑うつ症状、不安への間接的な影響と関連し、自殺リスクに影響を及ぼしている可能性が示唆された。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2023年11月20日号の報告。

錠剤サイズのデバイスで心拍数などをモニタリングする研究が前進

 新たな「ハイテク錠剤」によって体内でバイタルサインのモニタリングを安全に行えることが、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院の消化器内科医で米マサチューセッツ工科大学(MIT)機械工学分野のGiovanni Traverso氏らの研究で示された。この研究結果は、「Device」11月17日号に発表された。  このバイタル・モニタリング・ピル(以下、VMピル)は、呼吸や心拍に伴う体内のわずかな振動を追跡することで機能するデバイスだ。もし、VMピルを飲み込んだ人の呼吸が止まれば、VMピルはそれを検知することができる。そのため、VMピルからオピオイド過剰摂取のリスクがある患者の情報をリアルタイムで得られる可能性もあるという。

尋常性ざ瘡へのisotretinoin、自殺・精神疾患リスクと関連せず

 isotretinoinは、海外では重症の尋常性ざ瘡(にきび)に対して用いられており、本邦では未承認であるが自由診療での処方やインターネット販売で入手が可能である。isotretinoinは、尋常性ざ瘡に対する有効性が示されている一方、自殺やうつ病などさまざまな精神疾患との関連が報告されている。しかし、isotretinoinと精神疾患の関連について、文献によって相反する結果が報告されており、議論の的となっている。そこで、シンガポール国立大学のNicole Kye Wen Tan氏らは、両者の関連を明らかにすることを目的として、システマティック・レビューおよびメタ解析を実施した。その結果、住民レベルではisotretinoin使用と自殺などとの関連はみられず、治療2~4年時点の自殺企図のリスクを低下させる可能性が示された。

身体活動と閉経前の乳がんリスクの関連、19研究のプール解析/JCO

 余暇の身体活動が閉経「後」の乳がんリスクを予防するという強いエビデンスはあるが、閉経「前」の乳がんリスクとの関連は明らかではない。今回、英国・The Institute of Cancer ResearchのIain R. Timmins氏らが19のコホート研究を含む大規模なプール解析を実施した結果、身体活動レベルが高いと閉経前乳がんリスクが低いことが示された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年12月11日号に掲載。  本研究では、閉経前女性54万7,601人、乳がん患者1万231例を含む19のコホート研究の自己申告による余暇の身体活動の個人データを統合した。多変量Cox回帰モデルを用いて、余暇の身体活動と乳がん発症率の関連におけるハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定した。

遺伝子パネル検査、エキスパートパネルへの教育で推奨治療の精度向上/国立がん研究センターほか

 2019年にがん遺伝子パネル検査が保険適用となり、2023年8月までに6万例を超えるがん患者が本検査を受けている。しかし、検査結果に基づく次治療へ到達できる患者の割合は10%未満とされている。また、治験などの研究段階の治療の最新情報を把握することは難しく、各エキスパートパネルの推奨治療にばらつきがあることも報告されている。そこで、国立がん研究センター中央病院・東病院と日本臨床腫瘍学会は、がんゲノム医療拠点病院27施設のエキスパートパネル構成員に対し、エビデンスレベルが低く最新情報の把握が難しい治療に関する情報を共有する教育プログラムを実施した。教育プログラムの前後における、がんゲノム医療拠点病院のエキスパートパネルの推奨治療を評価した結果、教育プログラムによってエキスパートパネルの推奨治療の精度が向上することが明らかになった。また、探索的に実施したAIによる推奨治療の精度検証では、とくにエビデンスレベルの低い治療に関する情報において、AIはがんゲノム医療拠点病院のエキスパートパネルよりも精度が高かった。本研究結果は、国立がん研究センター中央病院の角南 久仁子氏らによって、JAMA Oncology誌オンライン版11月30日号で報告された。

携帯電話依存症と先延ばし癖の関係~メタ解析

 携帯電話依存症は、学生の先延ばし癖に影響を及ぼす重要な因子として、広く研究されている。しかし、携帯電話依存症と先延ばし癖との相関関係とその影響力は、依然として明らかになっていない。中国・上海大学のXiang Zhou氏らは、学生の携帯電話依存症と先延ばし癖との関係、参加者の個人的特性(教育レベル、性別)、測定ツール、社会的状況要因(出版年、文化)の緩和効果を調査するため、メタ解析を実施した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2023年11月17日号の報告。  PubMed、Web of Science、Embase、PsycINFO、China National Knowledge Infrastructure(CNKI)、Wanfang、Weipuよりシステマティックに検索し、適格基準を満たす研究を収集した。メタ解析には、CMA3.0ソフトウェアを用い、緩和効果のテストには、分散メタ解析(ANOVA)を用いた。

動物病院での猫の不安を軽減する薬を米FDAが承認

 猫を飼っている人なら、猫を獣医師のもとへ連れていくことが猫と飼い主の双方にとっていかにストレスとなるかを経験的によく知っているだろう。米食品医薬品局(FDA)は11月17日、このような猫の不安を軽減する新薬を承認したことを発表した。FDAは、Bonqatと呼ばれるこの抗不安薬は、「移動中や動物病院での診察時に猫が感じる不安や恐怖を和らげるように設計されている」とニュースリリースで説明している。  Bonqatは、過活動状態にある神経を鎮める薬物であるプレガバリンを含む、初のFDA承認薬だ。FDAの説明によると、同薬は、猫を連れて移動するか、または動物病院で診察を受ける1時間半ほど前に経口投与すればよい。投与は2日間連続で可能である。

遺伝性血管性浮腫治療薬のホームデリバリーでQOL向上を目指す/CSLベーリング

 2023年12月5日、CSLベーリング主催による「遺伝性血管性浮腫(HAE)患者さんのQOL向上をめざして」と題したプレスセミナーが開催された。同セミナーでは、広島市民病院 病院長の秀 道広氏による「HAE病態解明と治療法の進歩について」の講演が行われたほか、NPO法人遺伝性血管性浮腫患者会(HAEJ)理事長の松山 真樹子氏が患者の家族として、日常の苦労やHAE患者の今後の課題を述べた。  また、CSLベーリングは同日付のプレスリリースで、2022年11月に発売されたHAE急性発作発症抑制薬「乾燥濃縮人C1-インアクチベーター(商品名:ベリナート皮下注用2000)」による在宅治療を行っている患者に対して、医薬品配送サービス「CSLホームデリバリー」を2023年12月1日より全国で開始したと発表した。

高リスクHER2+乳がん、術前療法へのアテゾリズマブ追加でpCR改善は(APTneo)/SABCS2023

 HER2陽性高リスク乳がんに対する術前補助療法として、トラスツズマブ(H)+ペルツズマブ(P)+化学療法は標準治療となっている。また、抗HER2療法に対する免疫系の寄与を示すデータが報告され、免疫チェックポイント阻害薬と抗HER2抗体の組み合わせが裏付けられている。イタリア・Fondazione MichelangeloのLuca Gianni氏らは、HP+化学療法へのアテゾリズマブ(±アントラサイクリン)の追加を評価することを目的として、第III相APTneo試験を実施。サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2023)で病理学的完全奏効(pCR)についてのデータを報告した。

コーヒーや炭酸飲料、潰瘍性大腸炎リスクを減少/日本人での研究

 食事は潰瘍性大腸炎リスクに影響する可能性があるが、日本人でのエビデンスは乏しい。今回、日本潰瘍性大腸炎研究グループが、コーヒーやその他のカフェインを含む飲料・食品の摂取、カフェインの総摂取量と潰瘍性大腸炎リスクとの関連を症例対照研究で検討した。その結果、欧米よりコーヒーの摂取量が少ない日本においても、コーヒーやカフェインの摂取が潰瘍性大腸炎リスクの低下と関連することが示された。愛媛大学の田中 景子氏らがJournal of Gastroenterology and Hepatology誌オンライン版2023年12月10日号で報告。

小児の消化管アレルギー患者の約半数は新生児期に発症/国立成育医療研究センター

 新生児、小児では消化管は発達途上であり、アレルギーを発症しやすいことが知られている。一方でわが国には、新生児、乳児の消化管アレルギーについて全国を対象にした疫学研究は行われていなかった。そこで、国立成育医療研究センター研究所 好酸球性消化管疾患研究室の鈴木 啓子氏らの研究グループは、日本で初めて2歳未満の新生児、乳児の消化管アレルギー(食物蛋白誘発胃腸症)に関する全国疫学調査を実施。その結果、新生児、乳児の消化管アレルギーの約半数は生後1ヵ月までの新生児期に発症していることが判明した。Allergology International誌オンライン版2023年10月30日号からの報告。