日本発エビデンス|page:109

日本人女性の統合失調症発症に関連する遺伝子が明らかに

 日本人女性の統合失調症発症に、ITGA8遺伝子ミスセンス突然変異が関与している可能性があることが明らかにされた。神戸大学大学院のIrwan Supriyanto氏らが、京都の遺伝子データベース「KEGG」で報告された情報と統合失調症患者との関連を調べ報告した。Progress in Neuro-Psychopharmacology and Biological Psychiatry誌オンライン版2012年11月12日号の掲載報告。

睡眠時間が短いと脂質異常症のリスクも高まる―日本の男性労働者を対象とした研究―

 日本の都市部で働く男性の短い睡眠時間がコレステロール値の上昇と関連することが、京都大学 外山善朗氏らによる地域ベースの研究で明らかになった。著者は睡眠時無呼吸、睡眠時間、脂質プロファイルの関連性について検討し、呼吸障害指数(RDI)がトリグリセリド値(TG)と正の相関があることを示したうえで、「睡眠時無呼吸や睡眠時間を改善することが、脂質プロファイルや心血管系への影響を改善する可能性がある」と結論づけた。Chest誌オンライン版2012年10月15日号掲載の報告。

日本人でも喫煙により寿命が○年縮まる

これまでに、日本では「喫煙関連ハザードの低さ」が報告されたことがある。しかし、今回、日本人も他国と同様、若いうちから喫煙を始めて、継続している人は寿命が10年程度縮まることが明らかになった。また本研究では、35歳より前に禁煙することで、多くのリスク上昇を回避できることも報告された。放射線影響研究所 坂田 律氏らが前向きコホート研究の結果、BMJ 誌2012年10月25日付で報告した。

統合失調症のドパミンD2/3レセプター占有率治療域、高齢患者は若年患者よりも低値

若年統合失調症患者ではPET(陽電子断層撮影法)を用いた研究により、線条体ドパミンD2/3レセプター占有率を指標とした治療域は65~80%が適切であることが確認されている。慶應義塾大学の内田裕之氏らは、これまで検討されていなかった高齢統合失調症患者における同治療域の検討を行った。The American journal of geriatric psychiatry誌オンライン版2012年10月31日号の掲載報告。

レベチラセタム、部分てんかん患者に対する1年間の使用結果レビュー:聖隷浜松病院

 本邦で2010年9月に承認された新規抗てんかん薬レベチラセタムについて、聖隷浜松病院の山添氏らが臨床での有効性と安全性を評価した結果、「部分てんかんに対して忍容性が良好であり、補助的療法として有効であった」ことを報告した。Brain Nerve 誌オンライン版2012年10月号の報告。  レベチラセタム(LEV)の日本発売以降の約1年間(2010年10月~2011年8月)の聖隷浜松病院のデータベースを用いて、有効性と安全性について後ろ向きに検討した。16歳以上の患者132例のデータのうち、部分てんかん112例、全般てんかん19例についてレビューを行った。

CKD患者の血圧管理:ARBで降圧不十分な場合、増量か?併用か?

 CKD患者の血圧管理においてARB単剤で降圧目標130/80mmHg未満に到達することは難しい。今回、熊本大学の光山氏らは、日本人対象の無作為化比較試験のサブ解析の結果、ARB単剤で降圧不十分時にARBを増量するより、Ca拮抗薬を併用したほうが心血管系イベントや死亡といったリスクを回避しやすいことを示唆した(Kidney International誌オンライン版10月10日号掲載報告)。

【ポール・ヤンセン賞受賞】夜間における抗精神病薬関連のQT延長リスク

 2012年10月18~20日に第22回日本臨床精神神経薬理学会・第42回日本神経精神薬理学会合同年会が宇都宮で開催された。同学会において、日本臨床精神神経薬理学会2012年ポール・ヤンセン賞が発表され、新潟大学 渡邉氏の「夜間における抗精神病薬に関連したQT間隔延長リスクの増加―24時間ホルター心電図記録を用いた研究から―」と、名古屋市立大学 渡辺氏の「うつ病に対するミルタザピンと他の抗うつ薬の比較―コクランレビュ―」が受賞した。今回は、新潟大学 渡邉氏らの報告を紹介する。

特定の抗うつ薬使用で脳内ヘモグロビン濃度が増加!:名古屋大学

 近年、日本の研究者たちは脳活動の変化に基づいて精神疾患を診断するために、近赤外分光法(NIRS)を用いた研究を行ってきた。NIRSとは、近赤外光を生体外から照射し、組織内を透過した光を分析することにより、組織血液中におけるヘモグロビンの状態を調べる方法である。しかし、NIRS測定における向精神薬の影響については明らかになっていない。名古屋大学 幸村氏らはNIRSを用いて健常者の前頭前野活性に対する抗うつ薬の鎮静効果を評価した。その結果、ミルタザピンの投与によりヘモグロビン濃度の増加が認められたことを報告した。Psychopharmacology (Berl)誌オンライン版2012年10月5日号の掲載。

統合失調症患者の認知機能や副作用に影響を及ぼす?「遊離トリヨードサイロニン」

慢性期統合失調症入院患者は、持続的な精神症状と抗精神病薬による副作用に悩まされている。これら精神症状や副作用にはプロラクチン、甲状腺ホルモン、脳由来神経栄養因子(BDNF)など、いくつかのバイオマーカーが関連しているといわれているが、明らかにはなっていない。大分大学 市岡氏らは慢性期統合失調症患者における、精神症状や錐体外路系副作用とホルモン、BDNFとの関係を調査した。Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry誌2012年10月号の報告。

統合失調症患者の認知機能改善にフルボキサミンは有効か?

 統合失調症の認知障害は、心理社会的パフォーマンスに少なからず影響を及ぼす。統合失調症患者における認知機能障害は、小胞体タンパク質であるσ-1受容体に関与しており、σ-1受容体アゴニスト作用を有するフルボキサミンが統合失調症の動物モデルや一部の統合失調症患者で認知機能障害の治療に有効であった例がいくつか報告されている。千葉大学の新津氏らは、統合失調症患者におけるフルボキサミン併用療法のプラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験を行った。J Clin Psychopharmacol誌2012年10月号の報告。

SPECT画像診断による前頭部脳血流評価で、大うつ病高齢者のSSRI有効性を予測

 大分大学医学部精神神経医学講座の花田氏らは、大うつ病性障害(MDD)高齢者のSSRI効果を事前に予測可能か、SSRIに対する反応とSPECT画像診断の結果との関連を評価した。その結果、SSRIに非反応であったMMD高齢者では、主として内側前頭前皮質に低灌流がみられるなど、有意な関連が認められた。著者は「ベースラインでの前頭部の局所脳血流(rCBF)高値が、SSRIの治療効果が期待できる人であることを示す可能性はある」と結論している。Int J Geriatr Psychiatry誌オンライン版2012年9月25日号の掲載報告。

日本人統合失調症患者の脂質プロファイルを検証!:新潟大学

 抗精神病薬服用中の統合失調症患者は脂質異常症を伴うことが多い。しかし、北米や英国の先行研究では、統合失調症患者における抗精神病薬服用による脂質異常症への影響を否定する結果も得られている。新潟大学 渡邉氏らは日本人統合失調症患者における抗精神病薬と脂質異常症との関係を検証した。Gen Hosp Psychiatry誌2012年9月号の報告。

急性期の新たな治療選択となりうるか?非定型抗精神病薬ルラシドン

 現在、国内でも開発が進められている非定型抗精神病薬 ルラシドン。本剤の統合失調症の急性増悪期に対する有効性および安全性を評価した試験結果がPsychopharmacology (Berl)誌オンライン版2012年8月19日号で発表された。大日本住友製薬 小笠氏らは「ルラシドンは統合失調症の急性増悪期に有効であり、体重や脂質代謝への影響も少ない」と報告した。

他SSRI切替、どの程度の効果?:北海道大学

 現在わが国では、うつ病患者に対し複数のSSRIが使用可能である。また、SNRIやNaSSAなど新たな作用機序を有する抗うつ薬も発売され、うつ病の治療選択肢は広がった。うつ病治療においては、寛解を目指すことが求められるが、最初に選択した薬剤で必ずしも寛解を達成できるわけではない。そのような際、第1選択薬のSSRIから同様なセロトニンの再取り込みを阻害作用を有するほかのSSRIへ切り替えることは、臨床的にメリットがあるのだろうか? 北海道大学 井上氏らは未寛解や治療不耐性の大うつ病患者に対し、ほかのSSRIからセルトラリンに切り替えた際の、長期有効性および安全性を検討した。Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry誌2012年8月7日号の報告。

検証!「痛み」と「うつ」関係は?:山口大学

 末梢神経障害による気分障害を伴う神経障害性疼痛はQOLに影響を及ぼす重大な問題である。最近の研究では、大脳辺縁系の脳由来神経栄養因子(BDNF)の欠乏がpain-emotion(痛みの感情)を生じさせることが示唆されている。BDNFは4-メチルカテコール(4-MC)により培養神経細胞で誘発されるが、pain-emotionにおけるBDNFの役割は十分にわかっていない。山口大学 福原氏らは、BDNFが末梢神経障害後の慢性疼痛時に脳やうつ病様症状に対しどのように関与しているかを評価し、脳室内の4-MCが慢性疼痛を防ぎ、抗うつ効果を発揮するかどうかを検討した。その結果、BDNFの強化はうつ病を伴う慢性疼痛の新たな治療戦略となる可能性があることをCell Mol Neurobiol誌2012年8月号にて報告した。