日本発エビデンス|page:93

ICUの肥満パラドックス、該当する患者は?

 一般集団においては肥満が死亡率の増加と関連しているが、危篤状態の患者では、BMIが高いほど死亡率が低いという逆説的相関がみられる。これは「肥満パラドックス」と呼ばれているが、どのようなサブグループが最も影響されるのかは不明である。東京大学臨床疫学・経済学分野の笹渕 裕介氏らは、ICU入室患者について人口呼吸器の装着有無で比較することにより、肥満が低死亡率と関連するかどうかを検討した。その結果、人工呼吸器あり群ではBMIが高いと死亡率が低かったが、人工呼吸器なし群では逆J字型の関連が認められた。また両群とも低体重患者の死亡率が高かった。Respiratory care誌オンライン版2015年2月17日号に掲載。

再発乳がんの予後にKi-67の変動が関連

 乳がんは原発巣と再発部位でバイオマーカーの状態に変化がみられる。しかし、その臨床的意義は、とくに乳房温存術後の同側乳房内再発(IBTR)患者において、明らかになっていない。日本乳癌学会の共同研究グループでは、原発巣とIBTRのバイオマーカー(ER、HER2、Ki-67)を比較し、その変動が、再発後の予後に影響するかどうか検討した。その結果、Ki-67が増加もしくはIBTRで高値のままだと、IBTR後の予後が悪いことが示唆された。European journal of surgical oncology誌オンライン版2015年2月7日号に掲載。

進行胃がん、c-MET陽性だと予後不良

 国立がん研究センター東病院の布施 望氏らは、標準化学療法を受けた進行胃がん患者において、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)、上皮成長因子受容体(EGFR)、およびc-METの発現状況が独立した予後予測因子であるかどうかを検討した。その結果、c-METが陽性の場合に予後不良であることが示唆された。著者らは「これらのデータは今後、進行胃がんに対する治療薬剤の臨床試験のベースとして利用できる」としている。Gastric Cancer誌オンライン版2015年2月15日号に掲載。

血液透析患者は「肉・魚・野菜」をバランスよく

 血液透析患者の実際の食事パターンと臨床転帰との関連性については、ほとんど知られていない。九州大学の鶴屋 和彦氏らは、わが国の血液透析患者における食事パターンを特定し、臨床転帰との関連を調べた。その結果、肉・魚・野菜のバランスが悪い食事(肉・魚に比べて野菜の摂取量がかなり多い)は重大な臨床転帰と関連していた。この結果から著者らは「血液透析患者は食物摂取の制限だけではなく、この3群についてバランスのよい食事をするように努力すべきであることを示している」と指摘した。PLoS One誌2015年1月21日号に掲載。

夫の喫煙で乳がんリスクが増大~高山スタディ

 乳がんに対する喫煙の影響はいまだ不明である。岐阜大学の和田 恵子氏らは、日本における集団ベースの前向き研究(高山スタディ)において、本人または夫の喫煙状況と乳がん発症率の関連を検討した。その結果、夫からの受動喫煙が乳がんの潜在的な危険因子であることが示唆された。Cancer science誌オンライン版2015年1月23日号に掲載。

日本人のイソフラボン摂取と胃がんの関係

 大豆イソフラボン摂取による胃がんの進行阻害を示唆する実験的研究がいくつかあるが、先行の疫学的研究ではこれと矛盾する結果が出ている。岐阜大学の和田 恵子氏らは、わが国の集団ベースの前向きコホート研究(高山スタディ)で、塩分摂取量を含むいくつかのライフスタイル因子を考慮したうえで、大豆やイソフラボンの摂取量と胃がん発症率の関連を検討した。その結果、大豆イソフラボン(主に非発酵大豆食品)の高摂取が胃がんの予防につながる可能性が示唆された。International journal of cancer誌オンライン版2015年1月14日号に掲載。

重症うつ病と双極性障害の関係:徳島大

 重症うつ病は、双極性障害(BD)へと診断が変わるリスク因子の可能性がある。また精神病性うつ病(PD)は、BDと一貫した関連が認められる。徳島大学の中村 公哉氏らは、重症うつ病を有し初回入院した患者の、BDのリスクと精神病性特徴を調べ、重症うつ病診断の安定性、およびPDと非PDとの違い、さらに電気痙攣療法(ECT)の効果について検討した。Acta Neuropsychiatrica誌オンライン版2014年12月22日号の掲載報告。

重度アルツハイマー病に心理社会的介入は有効か:東北大

 重度アルツハイマー病に対する心理社会的介入は有効なのか。東北大学の目黒 謙一氏らは、重度アルツハイマー病患者に対する薬物療法に心理社会的介入を併用した際の効果を明らかにするため、介護老人保健施設入所患者を対象に前向き介入試験を実施した。その結果、意欲改善やリハビリテーションのスムーズな導入、および転倒事故の減少がみられたという。著者は、「心理社会的介入の併用治療アプローチは、重度の患者に対しても有用な効果を示した。ただし、より大規模なコホートを用いて再検証する必要がある」と述べている。BMC Neurology誌オンライン版2014年12月17日号の掲載報告。

うつ病のリスク遺伝子判明:藤田保健衛生大

 藤田保健衛生大学の島崎 愛夕氏らは、大うつ病性障害(MDD)のリスク遺伝子を明らかにするため、遺伝子と外的環境との相互作用を考慮に入れた解析を実施した。その結果、双極性障害(BD)に関連する一塩基多型(rs7296288、DHH下流の12q13.1領域)とMDDのうつ症状との間の有意な関連を報告した。PLoS One誌2014年12月17日号の掲載報告。

日本人統合失調症、暴力行為の危険因子は:千葉大

統合失調症患者の暴力行為に関連する広範な危険因子について、多くの研究が行われている。しかし、さまざまな社会的・文化的背景に関係する危険因子は不明なままである。千葉大学の今井 淳司氏らは、精神科救急により入院した日本人統合失調症患者における暴力行為に関連する因子を調査し、他の集団研究で見つかった因子との比較を行った。Schizophrenia research誌2014年12月号の報告。

イソフラボンは潰瘍性大腸炎のリスクか~日本人での検討

 先行研究により、エストロゲンが潰瘍性大腸炎の発症に関与することが示唆されている。イソフラボンは17β-エストラジオールと構造が似ていることから、食事におけるイソフラボン摂取が潰瘍性大腸炎発症に影響する可能性がある。そこで、潰瘍性大腸炎について多施設共同・症例対照研究を行っているThe Japanese Case-Control Study Group for Ulcerative Colitisは、前病段階におけるイソフラボン摂取と潰瘍性大腸炎リスクについて検討を行った。その結果、日常の食事におけるイソフラボンの摂取が、とくに女性における潰瘍性大腸炎リスク上昇と関連することが示唆された。この結果を受けて、著者らは「本知見を確認するため、プロスペクティブなコホート研究の実施が望ましい」と指摘している。PloS one誌2014年10月14日号の掲載報告。