日本発エビデンス|page:90

レーザー虹彩切開術後のプラトー虹彩、日本人では約20%

 長崎県・溝口眼科の溝口 尚則氏は、日本人の原発閉塞隅角症(PAC)および原発閉塞隅角緑内障(PACG)患者におけるプラトー虹彩の有病率、ならびにプラトー虹彩を有する患者の生体パラメーターを明らかにすることを目的として、超音波生体顕微鏡(UBM)を用いて分析する横断的観察研究を行った。その結果、レーザー虹彩切開術(LPI)後のPACおよびPACG患者におけるプラトー虹彩有病率は約20%であること、一方でプラトー虹彩の有無で前眼部に形態学的な違いは認められなかったことなどを報告した。Clinical Ophthalmology誌オンライン版2015年6月29日号の掲載報告。

高血圧への肥満の影響、30年で著しく増加

 わが国ではこの数十年にわたって、過体重者(BMI:25.0~29.9)と肥満者(同:30.0以上)の割合が増加している。福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター 永井 雅人氏らは、1980~2010年における4つの全国調査を用い、過体重および肥満の高血圧症への影響の経年動向を調べた結果、その影響は有意に増加したことが示された。過体重者および肥満者が増加しないよう、早急に対処する必要性を示唆している。Hypertension Research誌オンライン版2015年7月16日号に掲載。

アトピーに伴う網膜剥離、近年は減少傾向に

 アトピー性皮膚炎(AD)の眼合併症には眼瞼炎、角結膜炎、円錐角膜、虹彩炎、白内障、網膜剥離などがあるが、なかでも網膜剥離は若年者に及ぼす影響が大きい。三重大学の佐宗 幹夫氏らは過去20年におけるAD合併網膜剥離について調査した。その結果、最近10年間でAD合併網膜剥離の患者数は顕著に減少していることを明らかにした。著者は「ADに伴う網膜剥離を予防するためには皮膚炎の管理が重要であることが示唆される」とまとめている。Clinical Ophthalmology誌オンライン版2015年6月23日号の掲載報告。

再生不良性貧血、遺伝子解析による予後予測は可能か/NEJM

 再生不良性貧血における体細胞変異と臨床転帰の関連やクローン性造血の発現状況の詳細が、京都大学大学院の吉里哲一氏らによる次世代シーケンサーを用いた検討で示された。後天性再生不良性貧血は、造血細胞や造血前駆細胞が免疫系によって破壊されることで発症し、汎血球減少を来す。造血幹細胞移植により治癒の可能性があり、免疫抑制療法が有効であるが、生存期間の改善に伴い患者の約15%が遅発性の骨髄異形成症候群(MDS)や急性骨髄性白血病(AML)を発症するという。NEJM誌2015年7月2日号掲載の報告。

レビー小体型認知症、認知機能と脳萎縮の関連:大阪市立大学

 レビー小体型認知症(DLB)患者における側頭葉内側萎縮(MTA)と認知機能障害との関係はいまだ明らかにされていない。大阪市立大学の田川 亮氏らは、これらの関係について、MRIを用いて検討した。その結果、MTAは記憶や言語に関する認知機能障害と関連している可能性を報告した。Geriatr Psychiatry Neurology誌オンライン版2015年6月11日号の掲載報告。  対象は、DLBと診断された37例で、1.5 Tesla MRIスキャナーにより検査した。すべてのMRIデータは、MRIスキャンで得られる画像上でMTAの程度を定量化できるvoxel-based specific regional analysis system for Alzheimer disease(VSRAD)の新型ソフトウエアを用いて分析した。関心体積(VOI)の標的は嗅内皮質、海馬、扁桃体の全領域とした。MTAの程度は標的VOI上の平均positive Zスコア(数値が高いほどMTAが重度)により評価した。認知機能障害の有無について、Mini-Mental State Examination(MMSE)および改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R:MMSEと比べ記憶と言語の評価に有効である)を用いて評価した。

胃がん切除予定例のピロリ除菌はいつすべき?

 マーストリヒト・アジア太平洋コンセンサスガイドラインでは、胃がんの既往のある患者へのHelicobacter pyloriの除菌を強く推奨している。がん研有明病院の本多 通孝氏らは、胃切除術を受ける患者への適切な除菌のタイミングを検討するため、オープンラベル単一施設無作為化比較試験を実施した。その結果、術前群と術後群で除菌成功率が同等であり、著者らは、「胃切除を予定している胃がん患者は、予定されている再建術式に関係なく、術前の除菌は必要ない」と結論している。Journal of the American College of Surgeons誌オンライン版2015年4月8日号に掲載。

低ホスファターゼ症治療薬として日本で世界初の承認を取得

 2015年7月6日、米国・アレクシオン ファーマスーティカルズ(Nasdaq:ALXN)は、日本の厚生労働省が、生命を脅かすきわめてまれな代謝性疾患である低ホスファターゼ症(HPP)に対する治療薬として、ストレンジック(一般名:アスホターゼ アルファ)の使用に関する新薬承認申請(NDA)を承認したことを発表した。骨を標的とした酵素補充療法であるストレンジックは、HPPの治療薬として世界に先駆けて日本で初めての承認となる。

魚をよく食べるほど、うつ病予防に:日医大

 うつ病は、職場の心理社会的因子によって影響されることから、レジリエンス(逆境に直面してストレスに対処する能力)を高めることがうつ病の予防に重要と考えられる。長鎖n-3系多価不飽和脂肪酸(LC n-3 PUFA)を多く含む魚の摂取がうつ病を予防することが示唆されているが、日本医科大学多摩永山病院の吉川 栄省氏らは、横断研究を行い、魚の摂取がうつ病に対するレジリエンスと関連している可能性があることを明らかにした。「今後、うつ病へのレジリエンスに対するLC n-3 PUFAの予防的効果を無作為化二重盲検プラセボ対照比較介入試験で、さらに検討する必要がある」とまとめている。Lipids In Health And Disease誌2015年5月26日号の掲載報告。

認知症患者への睡眠薬投与、骨折に注意

 睡眠薬の使用は、高齢患者における転倒や骨折の潜在的な危険因子である。しかし、睡眠薬と骨折発生との関連についてデータがないことから、東京大学医学部附属病院老年病科の田宮 寛之氏らは、認知症の入院患者における睡眠薬と骨折の関連について、全国入院患者データベースを用いた症例対照研究で検討した。その結果、短時間型ベンゾジアゼピン系睡眠薬と超短時間型非ベンゾジアゼピン系睡眠薬により、認知症入院患者の骨折リスクが高まる可能性が示唆された。PLoS One誌2015年6月10日号に掲載。

抗精神病薬、日本人の脂質異常症リスク比較:PMDA

 脂質異常症は非定型抗精神病薬の有害事象としてよく知られているが、各非定型抗精神病薬のリスクを定量的に比較した研究は少ない。医薬品医療機器総合機構(PMDA)の竹内 由則氏らは、連続した疫学調査を用い、日本で承認されている非定型抗精神病薬の使用に関連する脂質異常症のリスクを比較評価した。Drug safety誌オンライン版2015年5月23日号の報告。

乳がん患者は禁煙の重要性を知らされるべき

 乳がん患者における能動喫煙と死亡リスクとの関連について、これまでの報告は一貫していない。宮城県立がんセンターの角川 陽一郎氏らは、女性の乳がん患者において、能動喫煙および受動喫煙と全死因死亡および乳がん特異的死亡リスクとの関連を、閉経状況およびエストロゲン受容体/プロゲステロン受容体(ER / PR)の状態別に検討した。その結果、長期間の能動喫煙は、閉経前の、おそらくホルモン受容体陽性乳がん患者における、全死因死亡および乳がん特異的死亡リスクの増加と関連することが示唆された。著者らは、「乳がん患者は禁煙の重要性を知らされるべき」としている。Cancer science誌オンライン版2015年6月6日号に掲載。

精神疾患患者の作業記憶低下機序が解明か

米国・ピッツバーグ大学/奈良県立医科大学の紀本 創兵氏らは、統合失調症患者における作業記憶低下の分子メカニズムを明らかにするため、グルタミン酸シナプスによる神経伝達制御に関わる初期遺伝子の定量化を試みた。その結果、NARPのメッセンジャーRNA(mRNA)発現量が低下しており、これがパルブアルブミン介在ニューロンへの興奮性入力を低下させ、ガンマアミノ酪酸の合成低下を通して作業記憶低下につながっている可能性を示唆した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2015年6月3日号の掲載報告。

雌との遭遇意欲低下、うつモデルマウス:大阪大学

 大阪大学の吾郷 由希夫氏らは、うつ病を含む精神障害の重要な指標である意欲低下を評価する新たな手段として、雄マウスの雌マウスとの遭遇テストを検討した。その結果、雄マウスのうつ病モデルでは雌マウスとの遭遇を好む傾向が低下すること、この低下はフルボキサミンなどで軽減されることを報告し、本手法が雄マウスの意欲の評価に有用である可能性を報告した。International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2015年5月29日号の掲載報告。

甲状腺がん分子標的治療の適正な対象・開始時期は?

 甲状腺がん治療は手術が第1選択であるが、切除不能な場合の治療選択肢は限られていた。近年、根治切除不能な甲状腺がんに有効な分子標的薬が登場し、期待されている。6月11日、都内で「甲状腺がん-その実態と治療 最前線」と題したプレスセミナー(主催:エーザイ株式会社)が開催され、国立がん研究センター東病院頭頸部内科 科長の田原 信氏が、甲状腺がんの治療の実際、分子標的治療から今後の課題を含めて解説した。