日本発エビデンス|page:91

海藻摂取と甲状腺がん発症に関連認めず

 ヨウ素の過剰摂取は甲状腺がんのリスク因子と考えられている。わが国では主に海藻からヨウ素を摂取し、その量は世界的にみても多い。国内のこれまでの疫学的研究では、海藻を毎日摂取すると閉経後女性で甲状腺がんリスクが4倍高くなり、それ以外では関連がなかったと報告している。今回、JACC研究(the Japan collaborative cohort study)※グループは、1988~2009年に追跡したJACC研究で、日本女性の海藻摂取頻度と甲状腺がんリスクとの関連を調査した。その結果、閉経前後にかかわらず、海藻摂取と甲状腺がん発症率との関連は認められなかった。European journal of cancer prevention誌オンライン版2015年5月14日号に掲載。

長期血圧変動性とCKD発症リスク~日本人5万人の調査

 非糖尿病者における長期血圧変動性が、他の血圧パラメータ(平均血圧、血圧への累積曝露など)と代謝プロファイルの変化に関係なく、慢性腎臓病(CKD)の新規発症リスクと関連しているかどうかは、いまだ不明である。今回、米国・ノースウェスタン大学の矢野裕一朗氏らは、糖尿病およびCKDではない中高年の日本人約5万人の調査データから、3年間の長期血圧変動性が、追跡期間中の血圧の曝露(平均もしくは累積)や代謝プロファイルの変化に関係なく、CKDの新規発症リスクと関連していたことを報告した。Hypertension誌オンライン版2015年5月18日号に掲載。

慢性疼痛は健康状態だけでなく経済的損失にも関与~日本人のデータ

 日本人の10~20%は慢性疼痛を有しており、慢性疼痛は健康状態の悪化と関連することが知られている。大阪大学大学院 医学系研究科医療経済産業政策学寄附講座 教授の田倉 智之氏らは、日本人において慢性疼痛が及ぼす経済的影響について調査した。結果、慢性疼痛は健康状態のみならず労働生産性、日常生活活動障害、医療資源の使用および経済的負担と有意に関連していることを明らかにし、「治療率の向上と集学的なアプローチが生活の質を改善し経済的負担を減らす可能性がある」と報告した。Journal of Orthopaedic Science誌オンライン版2015年5月12日号の掲載報告。

呼称変更から12年、統合失調症への偏見は軽減されたのか:東京大学

 わが国では2002年、統合失調症に対するスティグマを軽減するため、精神分裂病から統合失調症へと呼称変更が行われた。しかし、その長期的な影響はあまり知られていない。東京大学の小池 進介氏らは、呼称変更から12年でどのような影響があったかを調査した。Social psychiatry and psychiatric epidemiology誌オンライン版2015年5月7日号の報告。

統合失調症患者の自殺企図、家族でも気づかない:東邦大学

 未治療の統合失調症では多くの場合、周囲の人たちは、患者の精神症状や自殺企図の可能性を認識できていない。東邦大学の山口 大樹氏らは、致死的な自殺企図を経験した未治療の統合失調症患者において、主観的な経験と観察された行動との間に矛盾があるかを質的パイロット研究により調査した。Annals of general psychiatry誌オンライン版2015年4月15日号の報告。

若者の新型うつ病へのアプローチとなりうるか

 日本では、とくに若者の間で「新型うつ病」や「ひきこもり(6ヵ月以上持続している重度の社会的なひきこもり)」と表現される新たな精神医学的事象が報告されてきている。信頼ゲームと呼ばれる経済ゲームが現実社会における対人関係の評価に利用できることから、早稲田大学高等研究所の渡部 幹氏らは、大学生を対象に予備的研究を行った。その結果、信頼行動が精神医学的評価スケールと関連していることを報告した。著者は、「新型うつ病やひきこもり等の人々における経済ゲームの妥当性が研究されるべきである」とまとめている。PLoS One誌オンライン版2015年4月2日号の掲載報告。

コーヒー摂取量と死亡リスク~日本人9万人の前向き研究

これまで、コーヒー摂取と死亡・主要死因別死亡との関連を検討した前向きコホート研究はほとんどなかったが、今回、わが国における前向き大規模コホート研究(JPHC Study※)により、習慣的なコーヒーの摂取が全死亡および心疾患、脳血管疾患および呼吸器疾患による死亡リスクを減らす可能性が示唆された。The American journal of clinical nutrition誌2015年5月号(オンライン版2015年3月11日号)に掲載。

生活習慣指導でGERD症状が改善

 胃食道逆流症(GERD)は生活習慣病と考えられているが、生活習慣の影響と生活習慣への介入の効果については議論されている。川崎医科大学 春間 賢氏らは、GERDと関連する生活習慣因子とプライマリケアによる生活習慣への介入の有効性について、LEGEND studyの事後解析により検討した。その結果、プロトンポンプ阻害薬(PPI)投与中のGERD患者における生活習慣への介入は、逆流症状およびディスペプシア症状とも有意に改善することが認められた。Internal medicine誌2015年4月1日号に掲載。

日本人難治性てんかん、レベチラセタムは有用か

 静岡てんかん・神経医療センターの井上 有史氏らは、日本人の成人難治性部分てんかん発作患者を対象に二重盲検プラセボ対照検証的試験を行い、レベチラセタム追加投与の有効性と安全性を検討した。その結果、主要有効性解析においてレベチラセタム群とプラセボ群の間で有効性に有意差は認められなかったが、探索的解析においてレベチラセタム3,000mg群はプラセボ群に比べ有意な発作減少が確認されたことを報告した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2015年4月8日号の掲載報告。

統合失調症、維持期では用量調節すべきか:慶應義塾大

 抗精神病薬による65%以上のドパミンD 2受容体遮断は、統合失調症患者にとって最適な臨床効果と関連付けられている。しかし最近のデータでは、統合失調症の維持療法において、閾値はより低いことが示唆されている。慶應義塾大学の坪井 貴嗣氏らは、ドパミンD2受容体の持続的な高遮断が、統合失調症の維持治療において必要かどうかを検討した。Schizophrenia research誌2015年5月号の報告。

緑茶で死亡リスクが減る疾患

 日本における大規模集団コホート研究において、緑茶の摂取が全死因および3つの主な死因の死亡リスクを減らす可能性が示唆された。わが国のJPHC Studyにおいて、緑茶の摂取量と原因別死亡率(全死因、がん、心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患、外傷、その他)との関連を調査した結果が、Annals of epidemiology誌オンライン版2015年3月25日号に掲載された。

グルタミン酸受容体阻害薬、気分障害での可能性は

 新規の選択的な代謝性グルタミン酸5(mGlu5)受容体ネガティブアロステリックモジュレータであるDSR-98776について、齧歯目モデル試験の結果、有効な経口抗うつ薬および抗躁薬として作用することが示され、躁うつ病態を呈する幅広い気分障害の治療オプションと成りうることが示された。大日本住友製薬のTaro Kato氏らが報告した。European Journal of Pharmacology誌オンライン版2015年3月28日号の掲載報告。

成人発症精神疾患の背景に自閉スペクトラム症が関連

 国立精神・神経医療研究センターの松尾 淳子氏らは、成人発症精神障害患者における自閉症的特性/症状の存在について検討を行った。その結果、成人発症精神障害患者(大うつ病性障害[MDD]寛解例を除く)の約半数で高レベルの自閉症様特性/症状を有する割合が認められること、双極性障害および統合失調症患者では重症度と関係なく自閉症様特性/症状を認める割合が高かったこと、MDD患者ではうつ症状の重症度と自閉症様特性/症状の発生に関連を認めることなどを報告した。結果を踏まえて著者は、「最適な治療のためには、成人発症精神障害の背景にある自閉症様特性/症状を評価することの重要性が示された。前向きデザインの大規模集団によるさらなる研究が必要である」と述べている。PLoS One誌オンライン版2015年4月2日号の掲載報告。

NIRS、抗うつ効果の予測マーカーとなりうるか:昭和大

 最近の研究で、近赤外分光法(NIRS)が大うつ病性障害(MDD)の診断支援ツールとして臨床使用可能であることが示されている。しかし、認知タスク施行中のNIRSシグナルの変化がうつ病の状態に依存しているのか、あるいはうつ病の特性に依存しているのか、またNIRSにより治療反応の神経学的予測が可能か否かは明らかとなっていない。昭和大学の富岡 大氏らは、うつ病の診断と治療におけるNIRSの使用意義を明らかにするため、MDD患者を対象に、抗うつ薬治療後の機能的神経画像の縦断的研究を行った。その結果、NIRSシグナルの変化がうつ病の疾患特異的マーカーになりうること、および抗うつ薬の効果を予測するバイオマーカーになり得る可能性を示した。PLoS One誌オンライン版2015年3月18日号の掲載報告。

黄砂はスギ花粉症の症状に影響するのか

 黄砂は、スギ花粉のシーズン中における鼻および眼のアレルギー症状に影響を及ぼさないことが、真生会富山病院の扇和 弘氏らによる研究で明らかになった。黄砂は、スギ花粉のシーズン前にくしゃみや鼻水、シーズン後に結膜炎の症状を誘発したが、スギ花粉シーズン中のアレルギー症状に対する悪影響は観察されなかった。Auris nasus larynx誌2014年12月号の報告。