ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:75

高齢患者の術後の記憶力低下、CABG vs.PCI/JAMA

 冠動脈バイパス術(CABG)または経皮的冠動脈インターベンション(PCI)による冠動脈血行再建術を受けた患者では、記憶力低下に関して、術式の違いによる差はないが、off-pump CABGはPCIと比較して、記憶力低下の割合が有意に高いことが、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のElizabeth L. Whitlock氏らの調査で示された。JAMA誌2021年5月18日号掲載の報告。  研究グループは、CABGはPCIに比べ記憶力低下率が高いとの仮説を立て、これを検証する目的で後ろ向きコホート研究を行った(米国国立老化研究所などの助成による)。

ziltivekimab、中等~重度CKDでhs-CRP値を抑制/Lancet

 残存炎症リスクを有する中等度~重度の慢性腎臓病(CKD)の患者において、インターロイキン(IL)-6リガンドを標的とする完全ヒト型モノクローナル抗体ziltivekimabはプラセボと比較して、炎症マーカーである高感度C反応性蛋白(hs-CRP)値を有意に抑制することが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のPaul M. Ridker氏らが実施した「RESCUE試験」で示された。Lancet誌オンライン版2021年5月17日号掲載の報告。  本研究は、米国の40施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第II相試験であり、2019年6月~2020年1月の期間に患者登録が行われた(Novo Nordiskの助成による)。

PCI後のDAPT終了後、クロピドグレル単剤が有効/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)として薬剤溶出ステント(DES)留置術を施行され、6~18ヵ月の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を受けた後、抗血小板薬単剤による長期の維持療法を要する患者において、クロピドグレルはアスピリンと比較して、死亡や血栓性疾患、出血を含む複合エンドポイントのリスクが低いことが、韓国・ソウル大学病院のBon-Kwon Koo氏らが実施した「HOST-EXAM試験」で示された。Lancet誌オンライン版2021年5月16日号掲載の報告。

術中左心耳閉鎖術併用で、脳卒中/塞栓症リスクが低減/NEJM

 多くが経口抗凝固薬の投与を受けている心房細動の患者集団において、冠動脈バイパス術や弁置換術などの心臓手術の術中に左心耳閉鎖術を併用すると、これを併用しない場合と比較して、虚血性脳卒中/全身性塞栓症のリスクが低下することが、カナダ・ハミルトン総合病院のRichard P. Whitlock氏らが実施した「LAAOS III試験」で示された。NEJM誌オンライン版2021年5月15日号掲載の報告。  本研究は、心臓手術時の脳卒中予防における左心耳閉鎖術の有効性と安全性の検証を目的とする無作為化試験であり、2012年7月~2018年10月の期間に、27ヵ国105施設で患者登録が行われた(カナダ健康研究所などの助成による)。

中等症~重症喘息、3剤併用vs.2剤併用/JAMA

 中等症~重症の小児(6~18歳)および成人喘息患者において、吸入ステロイド薬(ICS)と長時間作用型β2刺激薬(LABA)に長時間作用型抗コリン薬(LAMA)を併用する3剤併用療法は、2剤併用療法(ICS+LABA)と比較して重度増悪の減少ならびに喘息コントロールの中等度改善と有意に関連し、QOLや死亡に差は認められなかった。カナダ・マックマスター大学のLisa H. Y. Kim氏らが、システマティックレビューとメタ解析の結果を報告した。中等症~重症の喘息患者に対する3剤併用療法の有益性と有害性は、これまで不明であった。JAMA誌オンライン版2021年5月19日号掲載の報告。

非責任病変へのPCI追加、FFRガイドvs.血管造影ガイド/NEJM

 多枝病変を有するST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において、梗塞関連病変へのPCI成功後の非責任病変の完全血行再建は、冠血流予備量比(FFR)ガイド下と血管造影ガイド下で有益性に差は認められなかった。フランス・パリ大学のEtienne Puymirat氏らが、Flow Evaluation to Guide Revascularization in Multivessel ST-Elevation Myocardial Infarction(FLOWER-MI)試験の結果を報告した。ただし、イベント発生率が予想より低く統計学的検出力が計画より低下したため、著者は、「FFRガイド下治療の有意な効果は認められなかったが、主要評価項目のハザード比の95%信頼区間(CI)が0.78~2.23と非常に広く、これはFFRガイド下治療により相対的に22%リスクが低下または123%リスクが上昇することを表しており、今回の結果を結論付ける解釈はできない」との見解を示している。非責任病変へのPCI追加による完全血行再建が、責任病変単独治療より優れているが、FFRガイド下治療が血管造影ガイド治療より優れているかどうかは不明であった。NEJM誌オンライン版2021年5月16日号掲載の報告。

脳底動脈閉塞、血管内治療vs.内科的治療/NEJM

 脳底動脈閉塞による脳梗塞患者において、血管内治療と内科的治療は良好な機能的アウトカムに有意差は認められなかったことが、オランダ・St. Antonius HospitalのLucianne C M Langezaal氏らが7ヵ国23施設300例を対象に実施した評価者盲検無作為化比較試験の結果で示された。なお、この結果について著者は、「主要評価項目の信頼区間が広いことから、血管内治療の実質的な有益性を排除するものではないと考えられる」と指摘し、「脳底動脈閉塞に対する血管内治療の有効性と安全性を判断するためには、より大規模な試験が必要である」とまとめている。NEJM誌2021年5月20日号掲載の報告。

厳格降圧vs.標準降圧:SPRINT最終報告/NEJM

 糖尿病や脳卒中の既往がない心血管イベント高リスク患者では、収縮期血圧目標を120mmHg未満とする厳格降圧が同目標を140mmHg未満とする標準降圧より、無作為割り付けされた治療を受けている期間と試験終了後の両方で、主要有害心血管イベントおよび全死因死亡の発生を有意に低下させることを、米国・アラバマ大学バーミングハム校のCora E. Lewis氏らがSPRINT試験の最終報告として示した。ただし、低血圧等の有害事象の発現率は、厳格降圧群で高かった。NEJM誌2021年5月20日号掲載の報告。

看護師1人当たりの患者数最小化で、患者転帰が改善/Lancet

 看護師1人当たりの患者数を最小化する施策により、死亡率、再入院率、在院日数が改善され、その結果として支出せずに済んだ費用は、看護師の増員に要した費用の2倍以上に達したことが、米国・ペンシルベニア大学のMatthew D. McHugh氏らが実施した「RN4CAST-Australia試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年5月11日号で報告された。  研究グループは、2016年にオーストラリア・クイーンズランド州で制定された最小看護師-患者比率に関する施策が看護師の人員配置や患者転帰に及ぼす影響の評価および、同施策が人員配置と患者アウトカムに関連があるかを検討する目的で、前向きパネル調査を行った(オーストラリア・クイーンズランド州保健局などの助成による)。  クイーンズランド州の最小看護師-患者比率施策(午前と午後の勤務では1対4を超えない、夜間勤務では1対7を超えない)の対象となった病院(介入病院:27施設)と、退院患者が類似するがこの施策の対象ではない病院(対照病院:28施設)を、施策の導入前(ベースライン)と導入から2年の時点で比較した。

tezepelumab、コントロール不良の重症喘息患者に有効/NEJM

 コントロール不良の重症喘息成人/思春期患者の治療において、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)のヒト型モノクローナル抗体であるtezepelumabはプラセボと比較して、喘息の増悪が少なく、肺機能や喘息コントロール、健康関連QOLの改善効果が良好であることが、英国・Royal Brompton HospitalのAndrew Menzies-Gow氏らが実施した「NAVIGATOR試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2021年5月13日号で報告された。  本研究は、18ヵ国297施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2017年11月~2020年9月の期間に行われた(AstraZenecaとAmgenの助成による)。  対象は、年齢12~80歳で喘息と診断され、スクリーニングの12ヵ月以上前の期間に、中~高用量の吸入グルココルチコイドの投与を受け、インフォームドコンセントの3ヵ月以上前の期間に、経口グルココルチコイドの有無を問わず、少なくとも1剤の長期管理薬の投与を受けていた患者であった。

心房細動後1年以内のリズムコントロールで心血管転帰良好/BMJ

 心房細動の診断から1年以内の患者では、リズムコントロール治療の早期開始により、レートコントロールに比べ有害心血管イベントのリスクが有意に低下したが、この関連性は心房細動を発症して1年以上経過した患者では認められなかった。韓国・延世大学校医科大学のDaehoon Kim氏らが、長期観察コホート研究の結果を報告した。心房細動患者の予後に対するレートコントロールとリズムコントロールの効果の比較については結論が得られておらず、最近発表されたEAST-AFNET 4試験では、発症後1年以内の心房細動患者の場合、リズムコントロール治療は通常治療より有害心血管イベントのリスクが低いことが示されていた。BMJ誌2021年5月11日号掲載の報告。

新型コロナワクチン戦略、65歳未満は1回目接種優先が有益/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンは、PfizerのBNT162b2およびModernaのmRNA-1273共に2回接種が標準となっているが、米国・メイヨー・クリニックのSantiago Romero-Brufau氏らは、エージェント・ベース・モデリングによるシミュレーションの結果、65歳未満の人々には1回目の接種を優先して行い2回目の接種を遅らせるワクチン接種戦略が、有益であることを明らかにした。同戦略で1日当たりのワクチン接種率が人口の0.1~0.3%で死亡率は最大20%低下し、1回接種のワクチン有効率が80%以上になる可能性があるという。BMJ誌2021年5月12日号掲載の報告。

特発性肺線維症に抗菌薬は無効/JAMA

 特発性肺線維症(IPF)成人患者において、通常治療にコトリモキサゾール(ST合剤)またはドキシサイクリンを追加しても、通常治療単独と比較して呼吸器関連入院または全死因死亡までの期間に有意な改善は認められないことが、米国・New York Presbyterian Hospital/Weill Cornell MedicineのFernando J. Martinez氏らによる実用的な無作為化非盲検臨床試験「CleanUP-IPF試験」で示された。IPFは、肺微生物叢の変化が病勢進行と関連しており、線維化を伴う間質性肺疾患患者においてST合剤がアウトカムを改善することや、ドキシサイクリンはIPF患者の予後を改善し、メタロプロテアーゼを阻害することが予備的研究で示唆されていた。今回の結果を受けて著者は、「IPFの基礎にある病態に対する抗菌薬治療は支持されない」とまとめている。JAMA誌2021年5月11日号掲載の報告。

Novavax製ワクチン、南ア変異株に効果/NEJM

 米国・Novavax製の遺伝子組み換えSARS-CoV-2ナノ粒子ワクチン「NVX-CoV2373」は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防に有効であり、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)陰性者において、より高い効果が認められた。NVX-CoV2373接種後の感染例の多くは、南アフリカ(B.1.351)変異株が原因であった。NovavaxのVivek Shinde氏らが、南アフリカで実施したNVX-CoV2373ワクチンの無作為化プラセボ対照第IIa/b相試験の結果を報告した。SARS-CoV-2変異株の出現が、COVID-19感染制御の進展を脅かしている。NVX-CoV2373ワクチンは、健康成人を対象とした第I/II相試験において安全性が確認されるとともに、強力な中和抗体産生と抗原特異的多機能CD4陽性T細胞反応との関連が示されていた。NEJM誌2021年5月5日号掲載の報告。

閉経後の卵巣がんスクリーニング、死亡率低下せず/Lancet

 閉経後の女性を対象とした年1回の卵巣・卵管がんスクリーニングの実施は、同疾患での死亡率低下が期待できず推奨できないことが示された。卵巣がんは、発見時には大半が進行がんと診断される、依然として予後不良の疾患である。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのUsha Menon氏らは、同国の卵巣がん検診の共同研究(UKCTOCS)を行い、集団スクリーニングが卵巣がん死を低下するかどうかを調べた。結果は、StageIII/IVの発生率は、スクリーニングを実施しない場合に比べ低下したものの、がん死の低下は有意ではなかったという。Lancet誌オンライン版2021年5月12日号掲載の報告。

無症候性新型コロナ感染、ワクチン完了で発生率86%減/JAMA

 イスラエル・テルアビブの3次医療センター(1ヵ所)に勤務する医療従事者について、新型コロナワクチン「BNT162b2」(Pfizer-BioNTech製)の接種完了者は非接種者と比べて、2回目接種後7日超の症候性および無症候性のSARS-CoV-2感染の発生率が有意に減少したことを、同国Tel Aviv Sourasky Medical CenterのYoel Angel氏らが報告した。なお、結果は観察デザインに基づく調査のため限定的だとしている。症候性SARS-CoV-2感染へのBNT162b2ワクチンの有効性については、無作為化試験で推定値が示されているが、無症候性SARS-CoV-2感染への効果については不明であった。JAMA誌オンライン版2021年5月6日号掲載の報告。

降圧薬で正常血圧者も心血管イベントリスク低下?/Lancet

 降圧薬により収縮期血圧を5mmHg低下させることで、心血管疾患の既往歴の有無を問わず、また血圧が正常値や正常高値であっても、主要心血管イベントのリスクが約10%低下することが、英国・オックスフォード大学のKazem Rahimi氏らBlood Pressure Lowering Treatment Trialists’ Collaboration(BPLTTC)の検討で示された。著者は、「これらの知見により、薬剤による一定程度の降圧治療は、その時点で治療の対象とされない血圧値であっても、主要心血管疾患の1次および2次予防において、治療対象の血圧値の場合と同様に有効であることが示唆される。これは、降圧治療が、主に血圧が平均値よりも高い場合に限定されている実臨床に変革を求めるものであり、降圧薬は、血圧値や心血管疾患の既往歴を問わず、心血管疾患の予防治療の選択肢と捉えるほうがよいことを示唆する」とし、「患者に降圧治療の適応を伝える際は、血圧の低下そのものに焦点を当てるのではなく、心血管リスクの低減の重要性を強調すべきである」と指摘している。Lancet誌2021年5月1日号掲載の報告。

脳梗塞後の上肢運動機能障害、リハ+迷走神経刺激で改善/Lancet

 虚血性脳卒中後の長期にわたる中等度~重度の上肢運動機能障害の治療において、リハビリテーション療法との組み合わせによる迷走神経刺激療法(VNS)は偽(sham)刺激と比較して、Fugl-Meyer Assessment上肢運動項目(FMA-UE)で評価した上肢運動機能障害の改善効果が優れ、新たな治療選択肢となる可能性があることが、英国・グラスゴー大学のJesse Dawson氏らが実施した「VNS-REHAB試験」で示された。Lancet誌2021年4月24日号掲載の報告。  本研究は、英国と米国の19の脳卒中リハビリテーション施設が参加した三重盲検擬似的処置(sham)対照比較試験であり、2017年10月~2019年9月の期間に参加者の無作為化が行われた(米国MicroTransponderの助成による)。

貧血のある透析患者へのバダデュスタット、安全性・有効性は?/NEJM

 貧血を有する透析治療を受けている慢性腎臓病(CKD)患者において、経口投与の低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素(HIF-PH)阻害薬バダデュスタットは、ダルベポエチン アルファと比較して、心血管安全性とヘモグロビン(Hb)値の正常化および維持に関して非劣性であることが示された。ドイツ・シャリテー-ベルリン医科大学のKai-Uwe Eckardt氏らが、2件の第III相無作為化非盲検非劣性試験(被験者計3,923例)の結果を報告した。NEJM誌2021年4月29日号掲載の報告。

糖尿病の発症年齢が若いほど認知症になりやすい?/JAMA

 2型糖尿病の発症年齢が下がるほど、その後の認知症リスクは高くなることが示された。フランス・パリ大学のClaudio Barbiellini Amidei氏らが、英国の前向きコホート研究Whitehall II参加者を対象とした追跡期間中央値31.7年のデータを分析して明らかにした。2型糖尿病については若年発症者が増加する傾向がみられる。これまで2型糖尿病の若年での発症と血管合併症との関連は知られていたが、認知症との関連は不明であった。JAMA誌2021年4月27日号掲載の報告。