ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:340

新規髄膜炎ワクチンMenACWYは乳児にも忍溶性が高い

全米で青少年に推奨される髄膜炎の予防ワクチンは四価複合ワクチン(血清A、C、W、Y)だが、乳児期における免疫原性が十分ではない。この点を改良した新規四価複合ワクチンMenACWYに関して、オックスフォード大学ワクチングループが行った乳児期の免疫原性に関するフェーズ2(無作為化非盲検コントロール試験)の結果が、JAMA誌2008年1月9日号で公表されている。

オピオイド鎮痛薬の処方増大と処方格差の実態

1990年代後半に全米で推進された質改善の動きによって起きたことの一つに、オピオイド鎮痛薬の処方増が挙げられている。しかしそれに関して、救急部門において疼痛治療のためのオピオイド処方が増えたのか、またオピオイド処方をめぐる人種・民族間の格差に関する状況は明らかにされていなかった。そこでカリフォルニア大学疫学・バイオ統計学部のMark J. Pletcher氏らが調査を実施。JAMA誌2008年1月2日号で報告した。

最重症肺炎患児に対するアンピシリン+ゲンタマイシンの有効性を確認

種々のバクテリアによって引き起こされる最重症市中肺炎は死亡率が高く、クロラムフェニコールの注射が標準治療とされるが厳格な検証はなされていない。Rai Asghar氏(パキスタン、ラワルピンディ総合病院)らは、医療資源が乏しい状況において最重症市中肺炎に罹患した生後2~59ヵ月の患児に対しては、アンピシリン+ゲンタマイシンがクロラムフェニコールよりも有効なことを明らかにした。BMJ誌2008年1月12日号(オンライン版1月8日号)掲載の報告。

手洗い、マスクは、呼吸器系ウイルス感染の拡大防止に有効

 鳥インフルエンザや重症急性呼吸器症候群(SARS)などのウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)に対する社会的な関心が高まっている。Cochrane Vaccines Field所属の研究者である Tom Jefferson氏(イタリア、アレッサンドリア)らは、呼吸器系ウイルスの拡大を防止する物理的介入法の効果に関するエビデンスを系統的にレビューし、パンデミックへの備えとしての手洗いやマスクの着用など簡便で低コストの方法の有用性を明らかにした。BMJ誌2008年1月12日号(オンライン版2007年11月27日号)掲載の報告。

入院を要する新生児疾患を同定する簡便なアルゴリズムを確立

新生児期(生後28日間)の死亡数は全世界で毎年400万人にのぼると推定され、その約75%は生後1週間以内に死亡している。ミレニアム開発目標4(2015年までに5歳未満児の死亡率を1990年の1/3に減少させる)を達成するには、低~中所得国の新生児死亡率を低減する必要がある。Young Infants Clinical Signs Study Groupは、臨床症状や徴候から入院を要する重篤な新生児疾患を検出する簡便なアルゴリズムを開発、Lancet誌2008年1月12日号で報告した。

ICU患者に対し、鎮静中断による毎日の自発覚醒法+自発呼吸法が有効

ICUに収容された重症患者に対し機械的人工換気を施行する際は、ほとんどの場合大量の鎮静薬を要するが、これらの併用により多くの合併症が引き起こされるため、鎮静および機械的人工換気の低減に向けさまざまなアプローチが試行されている。Timothy D. Girard氏(アメリカ、バンダービルト大学健康サービス研究センター)らは、鎮静中断による毎日の自発覚醒法(SAT)と自発呼吸法(SBT)の併用が、鎮静とSBTによる通常ケアに比べ患者のアウトカムを改善することを明らかにした。Lancet誌2008年1月12日号掲載の報告。

敗血症に対するヒドロコルチゾン療法は無効

敗血症性ショックに対するステロイド療法であるヒドロコルチゾン投与(コルチコステロイド治療)の有益性はこれまでも論議されてきたが、CORTICUS研究グループ(Corticosteroid Therapy of Septic Shock)が多施設共同無作為二重盲検プラセボ対照試験の結果、本剤投与は生存率や回復を改善しないと報告した。NEJM誌2008年1月10日号に掲載された。

入院患者心停止への除細動の遅れは日常茶飯事

心肺蘇生法に関する国際ガイドラインでは、院内で心室性不整脈による心停止が起きた場合、2分以内に除細動を行うことを推奨している。しかしこれまで、その現場レベルの実証データは、ほとんど報告されていない。本研究は米国心臓協会(AHA)が、米国内の医療機関の実態について報告したもので、処置の遅れはどれぐらいあるのか、処置の遅れと生存率との関係について報告している。NEJM誌2008年1月3日号より。

抗精神病薬副作用の体重増加や代謝異常に有効なのは?

精神病患者の高脂血症、代謝異常などの共存症発症は、抗精神病薬に共通する副作用の体重増加が関連しているといわれる。中国湖南省にある中南大学湘雅第二医院メンタルヘルス部門のRen-Rong Wu氏らは、抗精神病薬による体重増加や代謝異常に対して、生活習慣への介入単独、+メトホルミン投与もしくはメトホルミン単独投与それぞれの有効性について、同院患者を対象に無作為化試験を実施。JAMA誌2008年1月9日号にて報告した。

テストステロン補充療法がメタボを促進?

男性ホルモンの一種であるテストステロンは、年齢とともに有意に減少することから、テストステロンの補充が老化に対してプラスに働くと考えられている。本論文は、テストステロン濃度が低下した高齢男性に対するテストステロン補充療法の効果に関する臨床試験の報告。運動機能、認知機能、骨密度、体組成、血漿脂質、QOL、安全性が調べられた。JAMA誌2008年1月2日号より。

「EU臨床試験指令」による臨床試験数減少は観察されず:デンマーク

2001年5月、欧州連合(EU)では、臨床試験の透明性やEU内ハーモナイゼーションを目的とする「EU臨床試験指令」が施行され、EU加盟各国では2004年5月までの国内法整備を義務づけられた。このEU臨床試験指令実施前後における臨床試験数の変化をデンマークで検討したところ、「指令」による臨床試験数減少は認められなかったという研究結果が、BMJ誌オンライン版2007年12月6日付に早期掲載(本誌2008年1月5日号収載)された。筆者はデンマーク医薬品局のLouise Berendt氏らである。

活動的な両親の子は活動的に育つ?

小児期の身体活動に影響を及ぼす因子が同定されれば、より優れた介入戦略の開発に役立つ可能性がある。しかし、乳幼児期の因子が後年の身体活動にどう影響するかはほとんど知られていない。Calum Mattocks氏(イギリス、ブリストル大学社会医学)らは、5歳までの乳幼児期の因子が後年の11~12歳時の身体活動と相関するか否かについて検討。妊娠中や乳幼児期の両親の身体活動が11~12歳時の身体活動に影響を及ぼすことなどが明らかとなった。BMJ誌2008年1月5日号(オンライン版2007年11月23日号)掲載の報告。

知的障害者の攻撃的挑発行動に対し抗精神病薬は無効

成人の知的障害者は攻撃的な挑発行動をとることが多いとされる。多くの場合は抗精神病薬による治療が行われるが、これを正当化するエビデンスは存在しない。インペリアル・カレッジ・ロンドンPsychological MedicineのPeter Tyrer氏らは、知的障害者の攻撃的挑発行動の治療として2種類の抗精神病薬をプラセボと比較する無作為化試験を実施。その結果、これらの薬剤にはプラセボを上回る効果はないことが明らかとなった。Lancet誌2008年1月5日号掲載の報告。

小児の重症肺炎は高用量経口アモキシシリンにより家庭で治療可能

開発途上国では、毎年、下部気道の急性感染症により5歳以下の小児が200万人以上の死亡している。WHOのガイドラインでは、重症肺炎は非経口抗生物質による病院での治療が推奨されている。パキスタン医科学研究所小児病院のTabish Hazir氏は、重症肺炎小児の治療において、高用量アモキシシリンを用いた家庭での治療の有用性を確認、Lancet誌2008年1月5日号で報告した。

乳癌患者における癌抑制遺伝子TP53変異とリンパ節転移の関連

 クリーブランドクリニック・ゲノム部門(アメリカ)のAttila Patocs氏らは、以前の研究で腫瘍性胸部上皮細胞とその周囲の間質細胞で高頻度に見出された癌抑制遺伝子TP53の変異に着目。この遺伝子が乳癌の転帰に寄与しているとの仮説を立て、「遺伝性」および「散発性」乳癌患者それぞれにおけるゲノムワイド解析、臨床的・病理学的所見との関連解析を行った。NEJM誌2007年12月20日号に掲載。

STEMI患者へのPCI施行例での偽陽性頻度

救急治療部の医師が心臓カテーテル室を起動させることができるのは、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者への処置を迅速に行う鍵となる戦略である。一方、STEMIが疑われ経皮的冠動脈形成術(PCI)を受けた患者に、“false-positive”(偽陽性)の頻度についてのデータは少ない。Minneapolis Heart Institute Foundation at Abbott Northwestern Hospital(アメリカ)のDavid M. Larson氏らは、STEMIが疑われ心カテ室を起動した患者の患者で有病率、病因と偽陽性の結果を評価した。JAMA誌2007年12月19日号にて掲載。

重症例に対するアンチトロンビンIII投与は無効なばかりか、むしろ有害

アンチトロンビンIII(AT III)の投与は高価な介入法であるが、重症例に対し広く使用されている。これまでに、無作為化および非無作為化試験に関する4つの小規模なメタ解析が報告されているが、死亡率に関して結論に至るエビデンスは得られていない。 Arash Afshari氏(デンマーク、コペンハーゲン大学Juliane Marieセンター麻酔科)らは、重症例におけるAT IIIの有効性および有害性を評価するために、無作為化試験の系統的レビューおよびメタ解析を行った。BMJ誌12月15日号(オンライン版11月23日号)掲載の報告。

プライマリ・ケア看護師が行うセリアック病の新スクリーニング法は有用

セリアック病は麦類の摂取を契機に発症するグルテンに対する腸管アレルギーであるが、症状が非特異的あるいは無症状のためプライマリ・ケアでは診断が困難である。血中の疾患特異的な抗体を検出するアッセイが開発されているが、高価なためスクリーニングの実施が困難で、ベネフィットも不明確との批判がある。 Ilma R. Korponay-Szabo氏(ハンガリー、デブレツェン大学医療・健康科学センター小児科)らは、セリアック病のスクリーニング法としてプライマリ・ケア看護師が実施可能な組織トランスグルタミナーゼ(tTG)に対するIgA抗体の迅速検査法を開発、そのfeasibilityおよび診断精度を評価する試験を実施した。BMJ誌12月15日号(オンライン版12月6日号)掲載の報告。