ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:338

急性冠症候群後のクロピドグレル投与中止は短期リスクを増大

不安定狭心症のイベント再発防止に使われる抗血小板薬クロピドグレルの投与中止が患者の短期リスクを増大させるかどうかはわかっていない。アメリカ・デンバー退役軍人病院P. Michael Ho氏らのグループは、全米の急性冠症候群(ACS)患者を対象に、クロピドグレル投与中止後の有害事象発生率の評価を行った。JAMA誌2008年2月6日号より。

認知症発症後の生存期間は4.5年――イングランド/ウェールズの場合

Jing Xie氏(ケンブリッジ大学公衆衛生/プライマリ・ケア科、イギリス)によれば、認知症は死亡リスクを増大させるが、イングランド/ウェールズ地方における認知症患者の生存期間は明らかにされていない。同氏らの研究グループは、認知症発症後の生存期間を推計し、さまざまな背景因子ごとに解析を行った。その結果、フォローアップ期間14年における認知症発症後の推計生存期間中央値は4.5年であり、性別、発症年齢、機能障害が生存期間に有意な影響を及ぼした。BMJ誌2008年2月2日号(オンライン版2008年1月10日号)掲載の報告。

新生児治療室における医原病の実態

入院患者では医原病が重要な問題との認識が高まっているが、高リスク新生児治療室における医原病の疫学データはほとんどないという。Isabelle Ligi氏(地中海大学La Conception病院新生児科、マルセイユ、フランス)らが実施したプロスペクティブなコホート研究の結果、新生児では医原病の発生頻度が高く、重症例も多いことが明らかとなった。Lancet誌2008年2月2日号掲載の報告。

救急外来受診例の約半数に深部静脈血栓リスク。予防は不十分

救急外来を受診後入院例で、外科的治療の適応となった患者の6割以上、内科的治療適応例の4割以上が、深部静脈血栓(DVT)のリスクを有しているが、それらのうち深部静脈塞栓(DVE)の予防措置を受けていたのは50.2%だった──とする国際的横断研究の結果がLancet誌2008年2月2日号に掲載された。研究の名称はENDORSE(Epidemiologic International Day for the Evaluation of Patients at Risk for Venous Thromboembolism in the Acute Hospital Care Setting)。King’s College Hospital(英国)のAlexander T Cohen氏らによる論文である。

ワールドカップ・サッカー期間中の心血管イベントは普段の2倍以上だった

自国チームが出場するサッカーの試合観戦に期待と不安を抱いて臨むのは皆同じ。2006年6月9日から7月9日にかけてドイツで開催された国際サッカー連盟(FIFA)主催のサッカー・ワールドカップは、情動ストレスと心血管イベント発生率との因果関係を調べる絶好の機会となった。ドイツ・ミュンヘンにあるMedizinische Klinik und Poliklinik IのUte Wilbert-Lampen氏らによる研究報告は、NEJM誌2008年1月31日号に掲載されている。

腹部大動脈瘤に対する血管内治療と開腹手術の長期比較は一長一短

腹部大動脈瘤の血管内治療は開腹手術より、周術期における死亡率と罹患率が低いことは、すでに無作為化試験で示されているが、より長期の生存率では両者に違いはない。これまで長期にわたる住民ベースの大規模な比較調査も行われていなかった。そこでベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのMarc L. Schermerhorn氏らが、腹部大動脈瘤の治療をメディケアで受給した患者集団を最長4年余にわたって追跡した。NEJM誌2008年1月31日号より。

薬剤溶出性ステント、パクリタキセル vs シロリムス、有意差なし:SORT OUT II

薬剤溶出性ステントの承認は比較的小規模の治験結果に基づいているが、実際の診療においては幅広い患者を対象に使われる。本研究は、Gentofte大学病院(デンマーク)Anders M. Galloe氏らによって、先頭を走るシロリムス(免疫抑制剤)溶出性ステントとパクリタキセル(抗癌剤)溶出性ステントの2つの入手可能な薬剤溶出性ステントを用いて行われたSORT OUT IIの結果報告。診療実態に沿って、主要な症状の予防効果に重点が置かれた。JAMA誌2008年1月30日号より。

嚢胞性線維症患者への悪影響は間接喫煙曝露と遺伝子変異が相互に連関

嚢胞性線維症(CF)は白人に高頻度でみられる単一遺伝子疾患だが、Johns Hopkins医科大学遺伝学部門のJ. Michael Collaco氏らは、本疾患をめぐる遺伝子-環境の相互連関を調べることで疾患変異の洞察を試みた。具体的に間接喫煙曝露とCF患者の肺機能やその他転帰との関連性、また間接喫煙曝露と肺疾患重症度との社会経済学的側面からみた関連性、肺機能に影響を与える間接喫煙曝露は特異的な遺伝子-環境なのかを検証。JAMA誌2008年1月30日号で結果が掲載された。

神経因性疼痛に対する弱オピオイドと合成カンナビノイドの鎮痛効果

カンナビノイドは何世紀にもわたり鎮痛薬として用いられてきたが、これを支持するエビデンスは少なく、向精神薬は副作用のため慢性疼痛患者では治療量を使用できないことが多い。それゆえ、神経因性疼痛は治療選択肢が少なく治療が困難である。ロイヤルビクトリア病院疼痛管理部(ニューカッスル、イギリス)のB. Frank氏らは、慢性神経因性疼痛患者においては弱オピオイドであるジヒドロコデインが、合成カンナビノイドであるナビロンよりも鎮痛効果が優れることを明らかにした。BMJ誌2008年1月26日号(オンライン版1月8日付)掲載の報告。

アスピリン抵抗性は心血管系死亡のリスク?

アスピリンによる抗血小板作用が通常ほど見られない「アスピリン抵抗性」の存在が知られているが、20試験2,930例を解析したところ、心血管系疾患患者の28%に「抵抗性」が見られ、それらの患者では「非抵抗性」患者に比べ心血管系イベントリスク、死亡ともにオッズ比が有意に増加しているとの報告がBMJ誌2008年1月26号に掲載された(オンライン版1月17日付)。University Health Network(カナダ)のGeorge Krasopoulos氏らが報告した。

第X凝固因子阻害剤idraparinuxの心房細動患者塞栓症抑制への有用性認められず:Amadeus試験

抗トロンビン作用を有する抗凝固剤ximelagatranの臨床応用が見送られ、非弁膜性心房細動患者の脳塞栓症を抑制しうる新薬の登場が期待されているが、第X凝固因子阻害剤であるidraparinuxは、安全性の面でワルファリンに劣るようだ。Lancet誌2008年1月26日号に掲載された、無作為化非盲検化試験Amadeusでは塞栓予防作用はワルファリンと同等ながら、出血リスクは有意に増加していた。

経口避妊薬は、市販後50年で約10万人の卵巣癌死を予防

経口避妊薬の使用により卵巣癌の発生率が低下することが知られている。卵巣癌は若年女性では少なく、加齢とともに増加するため、発生率低下の公衆衛生面への影響は使用中止後のリスク低下効果の持続時間に依存するという。Collaborative Group on Epidemiological Studies of Ovarian Cancerの研究グループは45の疫学研究のデータを解析、経口避妊薬は市販後約50年の間に約20万人の女性の卵巣癌罹患を予防し、約10万人が卵巣癌による死亡から救われたと推計している。Lancet誌2008年1月26日号掲載の報告。

適応外使用にはベアメタルステントよりは薬剤溶出性ステント

最近、薬剤溶出性ステントの適応外使用と有害事象発生率増加の関係を示唆する報告が見られたが、従来のベアメタルステントとの比較はなかった。そこでピッツバーグ大学心臓血管学部門のOscar C. Marroquin氏らは、ベアメタルステントと薬剤溶出性ステントの適応外使用を受けた患者の1年後を比較。死亡または心筋梗塞のリスクに差はないが、血行再建術の再施行率は有意に低いとして、適応外使用には薬剤溶出性ステントを使うことを支持すると結論付けている。NEJM誌2008年1月24日号より。

多枝冠動脈疾患には依然としてCABGがステントより有利

 多枝冠動脈疾患の競合的な治療法として、冠動脈バイパス術(CABG)と冠動脈ステント留置術はこれまでにも多くの比較研究が行われてきたが、薬剤溶出性ステントが登場してからは、CABGとの比較研究はほとんど耳にしなくなった。ニューヨーク州立大学オールバニー校公衆衛生部門のEdward L. Hannan氏らによる本研究は、CABGと薬剤溶出性ステント留置術を受けた患者の有害転帰を追跡調査したもので、CABGは依然として薬剤溶出性ステント処置より死亡率が低いだけでなく、心筋梗塞発生率や血行再建術の再施行リスクも低いと報告している。NEJM誌2008年1月24日号より。

NPPA遺伝子変異型の降圧剤への効果と関連性

 高血圧治療は近年優れた薬剤の登場でコントロールが可能となってきているが、ミネソタ大学薬理学のAmy I. Lynch氏らは「患者個々の遺伝子特性に合わせた治療が可能となれば、心血管疾患(CVD)罹患率および死亡率をもっと低下することができるのではないか」と考えた。その可能性をALLHAT(Antihypertensive and Lipid-Lowering Treatment to Prevent Heart Attack Trial)の高血圧患者のデータを利用し解析。JAMA誌2008年1月23日号に結果が掲載された。

前立腺癌への放射線+ホルモン治療のリスクを調査

進行性前立腺癌に対しては、放射線治療(RT)+ホルモン治療(アンドロゲン抑制治療:AST)がスタンダードになっている。しかし一方で、大規模患者コホート試験によって、ASTによる心血管イベント増大の可能性が示されている。そこでブリガム&ウーマンズ病院/ダナ・ファーバー研究所(アメリカ、マサチューセッツ州ボストン)癌放射線部門のAnthony V. D’Amico氏らは、RT単独治療とRT+AST(6ヵ月)治療とで、心血管イベントと全死亡率との関連性を調査した。JAMA誌2008年1月23日号に掲載。

現行転倒予防介入のエビデンスは乏しい

高齢者にとって転倒は深刻な健康問題である。最近では転倒による死亡および罹患率の高まりから多因子リスク評価と介入による転倒予防プログラム戦略が提示されている。 ワーウィック大学(イギリス)医科大学校臨床試験部門のS Gates氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析によりそれら既存戦略の効果のエビデンスを検討。結果がBMJ誌オンライン版2007年12月18日付け、本誌2008年1月19日号で報告されている。