ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:89

FHホモ接合体のevinacumab併用、LDL-Cを40%低下/NEJM

 最大用量の脂質低下療法を受けているホモ接合型家族性高コレステロール血症(FH)の患者において、evinacumabを併用することでLDLコレステロール(LDL-C)値がベースラインよりも大幅に低下したのに対し、プラセボではLDL-C値がわずかに上昇し、24週の時点で群間差が49.0ポイントに達したとの研究結果が、南アフリカ共和国・ウィットウォータースランド大学のFrederick J. Raal氏らによって報告された。「ELIPSE HoFH試験」と呼ばれるこの研究の成果は、NEJM誌2020年8月20日号に掲載された。ホモ接合型FHは、LDL-C値の異常な上昇によって引き起こされる早発性の心血管疾患を特徴とする。この疾患は、LDL受容体活性が実質的に消失する遺伝子変異(null-null型)または障害される遺伝子変異(non-null型)と関連している。また、アンジオポエチン様3(ANGPTL3)をコードする遺伝子の機能喪失型変異は、低脂血症や、アテローム性動脈硬化性心血管疾患への防御と関連している。ANGPTL3に対するモノクローナル抗体であるevinacumabは、ホモ接合型FH患者にとって有益である可能性が示されていた。

早期乳がんの放射線療法による長期予後、術中vs.術後外来/BMJ

 早期乳がん患者において、乳房温存手術(乳腺腫瘍摘出術)と併せて行う術中放射線療法(TARGIT-IORT)は、術後全乳房外部放射線療法(EBRT)に代わる有効な放射線療法であることが示された。長期のがん抑制効果はEBRTに引けを取らないものであり、一方で非乳がん死亡率は低かった。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのJayant S. Vaidya氏らによる無作為化試験「TARGIT-A試験」の結果で、本試験の早期結果においては、TARGIT-IORTの利点として通院頻度が少なく済むこと、QOLの改善、副作用が少ないことなどが示されていた。結果を踏まえて著者は、「乳房温存手術が予定されている場合、適格患者とTARGIT-IORTについて話をすべきであろう」と提言している。BMJ誌2020年8月19日号掲載の報告。

予期せぬ体重減少、がん精査をすべき?/BMJ

 プライマリケアで予期せぬ体重減少を呈した成人のがんリスクは2%以下で、英国の現行ガイドラインに基づく検査対象とはならないことが明らかにされた。英国・オックスフォード大学のBrian D. Nicholson氏らによる、予期せぬ体重減少のがん予測を定量化することを目的とした診断精度研究の結果で、著者は、「しかしながら、50歳以上の男性喫煙者および臨床所見を有する患者では、がんリスクを考慮すると、侵襲的な検査受診を紹介する必要がある」と述べている。報告では、特定のがん部位と関連する典型的な臨床所見は、予期せぬ体重減少が生じた際は複数のがん種のマーカーとなることも明らかにされた。BMJ誌2020年8月13日号掲載の報告。

うつ病を伴う糖尿病患者、医療従事者のケアで代謝指標が改善/JAMA

 うつ病を合併した糖尿病患者に対する共同ケア(collaborative care)は、通常ケアと比較して24ヵ月時点のうつ症状および循環代謝指標の複合評価を、統計学的に有意に改善することが認められた。米国・エモリー大学のMohammed K. Ali氏らが、インドにおけるうつ病を合併した糖尿病患者を対象とする実用的な無作為化非盲検臨床試験「INDEPENDENT試験」の結果を報告した。メンタルヘルス疾患を合併している患者は増加しており、糖尿病ではとくにケアが断片化しているとアウトカムが悪化する。低中所得国では、財政や医療従事者の不足などが障壁となって効果的なケアが阻まれ、ますます複数の慢性疾患を有する患者が増加し、回避可能にもかかわらず不良なアウトカムにつながっている。そのため、メンタルヘルスケアの導入を増加させアウトカムを改善するために有効で実現可能な統合ケアが求められていた。JAMA誌2020年8月18日号掲載の報告。

ビスホスホネートの非定形大腿骨骨折リスク、服用中止後速やかに低下/NEJM

 非定型大腿骨骨折リスクは、ビスホスホネートの使用期間とともに上昇するが、使用中止後は速やかに減少することが、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のDennis M. Black氏らによる検討の結果、示された。また、リスクはアジア人のほうが白人よりも高いことや、非定型大腿骨骨折の絶対リスクは、ビスホスホネート使用に伴う大腿骨近位部骨折およびその他の骨折リスクの減少と比べると、非常に低いままであることも明らかにされた。ビスホスホネートは、大腿骨近位部および骨粗鬆症骨折を抑制する効果がある。しかし、非定型大腿骨骨折への懸念からビスホスホネートの使用が大幅に減少しており、大腿骨近位部骨折が増加している可能性が示唆されていた。NEJM誌2020年8月20日号掲載の報告。

SARS-CoV-2変異株、重症度が変化/Lancet

 遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)8領域に382ヌクレオチド欠損(Δ382)を認める新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)変異体の感染者は、症状が軽症であることが明らかにされた。シンガポール・国立感染症センターのBarnaby E. Young氏らによる観察コホート試験の結果で、著者は「観察されたORF8における欠損の臨床的影響は、治療やワクチン開発に影響を与えるものと思われる」と述べている。ORF8領域にΔ382を有するSARS-CoV-2遺伝子変異体は、シンガポールおよびその他の国でも検出されていた。Lancet誌オンライン版2020年8月18日号掲載の報告。

心房細動と超過死亡の関連、45年の長期分析の結果は/BMJ

 心房細動と全死因死亡との関連について、時間的傾向は見いだせないことが、デンマーク・オーフス大学のNicklas Vinter氏らによる検討で明らかにされた。フラミンガム心臓研究(Framingham Heart Study:FHS)の被験者を対象に45年間の関連傾向を分析した結果によるもので、心房細動診断後10年時点での心房細動による平均喪失寿命年数は顕著に改善していたが、心房細動を診断されていない被験者との間には、なお2年間のギャップが残存し続けていることも示された。新規診断の心房細動は死亡ハザード比を増大する。一方で心房細動患者における短期および長期の生存確率が経時的には改善していることが報告されていた。BMJ誌2020年8月11日号掲載の報告。

超低出生体重児輸血戦略、非制限vs.制限/JAMA

 1,000g未満の超低出生体重児において、非制限輸血は制限輸血と比較して、補正年齢24ヵ月時点の死亡または障害発生の確率を抑制しなかった。ドイツ・テュービンゲン大学病院小児科部門のAxel R. Franz氏らが、欧州36施設・1,013例の新生児を対象とした無作為化試験「ETTNO試験」の結果を報告した。超低出生体重児には赤血球輸血治療が行われるが、エビデンスに基づいた輸血閾値は確定されていない。先行研究では、制限輸血を受けた新生児で認知障害の発生率が高いことが示されていた。JAMA誌2020年8月11日号掲載の報告。

高加入度数コンタクトレンズ、小児の近視進行を抑制/JAMA

 近視の小児では、高加入度数の多焦点コンタクトレンズを用いた3年間の治療により、中加入度数の多焦点コンタクトレンズや単焦点コンタクトレンズと比較して、近視の進行が緩徐化され、眼軸長伸展が抑制されることが、米国・オハイオ州立大学のJeffrey J. Walline氏らが行ったBLINK試験で示された。研究の成果はJAMA誌2020年8月11日号に掲載された。2016年の報告では、世界の近視の有病率は、2000年からの50年間に23%から54%に、高度な近視の有病率は3%から10%にまで増加すると推定されている。また、近視は、視力を脅かす合併症(白内障、網膜剥離、緑内障、脈絡膜萎縮症など)と関連するが、その進行を緩徐化することで、これらの合併症のリスクが低減する可能性があるという。

浮腫による蜂窩織炎の再発予防、圧迫療法は有効か/NEJM

 下肢の慢性浮腫による蜂窩織炎がみられる患者の予防治療において、圧迫療法は保存的治療に比べ、蜂窩織炎の再発率が低く、蜂窩織炎による入院も抑制される傾向がみられることが、オーストラリア・Calvary Public Hospital BruceのElizabeth Webb氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年8月13日号に掲載された。下肢慢性浮腫は、蜂窩織炎のリスク因子とされる。蜂窩織炎の再発予防には、下肢の着圧衣類(弾性ストッキングなど)の日常的な使用が推奨されているが、その効果に関する臨床試験のエビデンスは乏しいという。  研究グループは、下肢の蜂窩織炎の予防における圧迫療法の有用性を評価する目的で、単一施設での非盲検無作為化試験を実施した(Calvary Public Hospital Bruceの助成による)。

未治療AML、アザシチジン+ベネトクラクス併用でOS延長/NEJM

 強力な化学療法が適応とならない未治療の急性骨髄性白血病(AML)患者において、アザシチジン+ベネトクラクス併用療法はアザシチジン単独投与と比較して、発熱性好中球減少症の発現率は高かったものの、全生存期間および寛解率の有意な改善を達成したことが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのCourtney D. DiNardo氏らによる多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「VIALE-A試験」で明らかとなった。高齢のAML患者は、メチル化阻害剤による治療でも予後不良であり、第Ib相試験においてアザシチジン+ベネトクラクス併用療法の有効性が示唆されていた。NEJM誌2020年8月13日号掲載の報告。

ズレが2mm以下の舟状骨腰部骨折、ギブス固定vs.外科的固定/Lancet

 手の舟状骨腰部骨折でズレが2mm以下の成人患者では、最初にギプス固定を行い、偽関節が疑われる場合には確認してただちに手術で固定すべきであることが示された。英国・Leicester General HospitalのJoseph J. Dias氏らが、外科的固定とギプス固定の臨床効果を比較検証した実用的な多施設共同無作為化非盲検優越性試験「SWIFFT試験」の結果を報告した。舟状骨骨折は、手根骨骨折の90%を占め、主に若年男性に発生するが、非外科的治療に比べアウトカムを改善するという十分なエビデンスがないにもかかわらず、ただちに外科的固定術を行う治療が増えていた。著者は、「最初にギプス固定を行う治療戦略により、手術のリスクを回避でき、手術は骨癒合に失敗した骨折の修復に制限できる」とまとめている。Lancet誌2020年8月8日号掲載の報告。

HIV患者の多剤耐性結核、ART実施で死亡リスク大幅減/Lancet

 抗レトロウイルス治療(ART)とより効果的な抗結核薬の使用が、HIV陽性の多剤耐性結核患者の死亡率の低下と関連していることが、米国・ペンシルベニア大学のGregory P. Bisson氏らによるメタ解析の結果、明らかにされた。HIV感染症が多剤耐性結核治療中の死亡リスクを増大することは知られているが、これまでARTや抗結核薬の使用が同リスクに影響するのかは不明だった。結果を踏まえて著者は、「これらの治療へのアクセスを強く求めるべきだろう」と述べている。Lancet誌2020年8月8日号掲載の報告。

肺がん死亡率低下、NSCLCとSCLCで異なる傾向/NEJM

 米国の非小細胞肺がん(NSCLC)による住民レベルでみた死亡率は、2013年から2016年にかけて、性別や人種を問わず大幅に低下していることが、米国・国立がん研究所のNadia Howlader氏らによる検討で明らかにされた。低下に寄与しているのは診断後の生存率の大幅な改善によるもので、著者は、「治療の進歩による罹患率の低下、とくに同時期に承認された分子標的治療薬の使用が、観察された死亡率の低下に寄与しているであろうことが示唆される」と分析している。肺がんには、NSCLCや小細胞肺がん(SCLC)など異なるサブタイプがある。米国では肺がん全死亡率は低下しているが、住民レベルでみた肺がんのサブタイプ別の死亡傾向については、死亡届にサブタイプまでの情報は記載されないため不明だった。NEJM誌2020年8月13日号掲載の報告。

ICDの合併症+不適切ショック、皮下vs.経静脈/NEJM

 植込み型除細動器(ICD)の適応があり、ペーシングの適応のない患者において、皮下ICDは従来の経静脈ICDに対し、デバイス関連合併症と不適切ショック作動の発生に関して非劣性であることが、オランダ・アムステルダム大学のReinoud E. Knops氏らが行った「PRAETORIAN試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年8月6日号に掲載された。皮下ICDは、完全に胸腔外に留置することで、経静脈ICDでみられるリード関連合併症(気胸、心穿孔など)を回避するように設計されている。欧米のガイドラインでは、徐脈へのペーシングや心臓再同期療法、抗頻拍ペーシングの適応のない患者における皮下ICDの推奨は、主に観察研究のエビデンスに基づいているという。

バレット食道検出の非内視鏡検査、がん診断に有用か/Lancet

 逆流性食道炎患者におけるバレット食道の検出手技として開発された非内視鏡検査手技「Cytosponge-TFF3」は、検出を改善し治療可能な異形成および早期がんの診断につながる可能性があることが、英国・ケンブリッジ大学のRebecca C. Fitzgerald氏らによる、多施設共同による実用的な無作為化試験の結果、示された。Cytosponge-TFF3は、スポンジを内包したひも付きカプセル(Cytosponge)を患者に飲んでもらい、胃に達してカプセルが溶解してスポンジが膨張したところで引き出し、食道全体を拭うようにしてスポンジで採取した細胞を使って、バレット食道マーカーTFF3の検出有無を調べるという検査法。採取は患者が座位のまま10分程度で済むことから、研究グループは、プライマリケアで逆流性食道炎治療を受けている患者にこの検査を行うことで、通常ケアと比較してバレット食道の検出が増加するかを調べる試験を行った。異形成を伴うバレット食道の治療は、腺がん進行を防ぐが、バレット食道の最適な診断戦略は明らかになっていない。Lancet誌2020年8月1日号掲載の報告。

高用量ビタミンD3投与、50歳以上のうつ病発症を予防せず/JAMA

 米国の50歳以上のうつ病のリスクを有する集団において、ビタミンD3の長期投与はプラセボに比べ、うつ病の新規発生や再発を予防せず、長期的な気分の変化を改善しないことが、米国・マサチューセッツ総合病院のOlivia I. Okereke氏らが行った「VITAL-DEP試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2020年8月4日号に掲載された。25-ヒドロキシビタミンDの低値は、人生の後半期におけるうつ病のリスクと関連するが、長期にわたる高用量ビタミンD3投与の大規模試験はほとんど行われていないという。

卵巣腫瘍の悪性度診断に最適な予測モデルは?/BMJ

 卵巣腫瘍で手術または保存療法を受けた患者における診断予測モデルを検証した結果、ADNEXモデルとSRRiskが、腫瘍が良性か悪性かを識別する最適なモデルであることが、ベルギー・ルーヴェン・カトリック大学のBen Van Calster氏らによる検討で明らかにされた。卵巣腫瘍では最適な治療を選択するため、悪性度を予測するモデルが必要になる。既存の予測モデルは手術を受けた患者のデータのみに基づいており、モデルの検証も大半が手術を受けた患者のデータを使用したもので、キャリブレーションや臨床的有用性の評価はほとんど行われていないという。BMJ誌2020年7月30日号掲載の報告。

医師の年収、男性多い職場ほど男女差も大きい/BMJ

 非外科専門医および外科専門医のいずれにおいても、所得の性差を説明しうる因子を詳細に調整した後でさえ、男性医師の割合が高い職場では年収の性差が大きいことが明らかにされた。米国・ランド研究所のChristopher M. Whaley氏らが、医師の職場の男女構成によって医師の所得に男女で違いがあるかを調査した、後ろ向き観察研究の結果を報告した。医師の所得に男女差があることはよく知られているが、医師の職場の多様性と所得の性差との関連はこれまで評価されてこなかったという。BMJ誌2020年7月30日号掲載の報告。  研究グループは、医師専用のオンラインプラットフォームのDoximity、およびIQVIAが提供しているSK&Aデータベースを用い、2014~18年の医師の所得と、職場における男性医師の割合について調査した。

妊娠初期のジカウイルス感染で児の脳・眼の異常が増加/NEJM

 コロンビアでは、2015~16年にジカウイルス感染症(ZVD)のアウトブレイクが発生した。コロンビア・Instituto Nacional de SaludのMartha L. Ospina氏らは、同国内のサーベイランスシステムのデータを用い、ZVDのアウトブレイクが妊娠アウトカムに与えた影響について分析し、乳児/胎児の脳・眼障害有病率はアウトブレイク期間中のほうがアウトブレイク直前や発生後より高く、ジカウイルスRNA検査で陽性が確認された妊婦における乳児/胎児の脳・眼障害有病率は妊娠初期のZVD発症で増加したことを報告した。NEJM誌2020年8月6日号掲載の報告。