ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:240

腎同種移植片拒絶反応の未知の表現型を同定、高い移植片喪失リスク示す/Lancet

 フランス国立保健医学研究所(INSERM)のCarmen Lefaucheur氏らの研究グループは、腎同種移植片の拒絶反応の未知の表現型として、「抗体関連型血管性拒絶反応(antibody-mediated vascular rejection:ABMR/V+)」を同定したことを、Lancet誌2013年1月26日号(オンライン版2012年11月23日号)で報告した。このタイプの拒絶反応は全体の約2割を占め、移植片喪失リスクが既知のタイプの拒絶反応に比べて高いこともわかった。現在の国際分類では2つの急性拒絶反応の表現型(T細胞関連型拒絶反応、抗体関連型急性拒絶反応)が示されているが、表現型とアウトカムの臨床的関連は複雑なため、その同定は困難であり、見逃されている表現型が治療に直接悪影響を及ぼしている可能性があるという。

経口マルチキナーゼ阻害薬レゴラフェニブ、難治性GISTの予後を改善:GRID試験/Lancet

 標準治療で病勢が進行した切除不能または転移性消化管間質腫瘍(GIST)の治療において、レゴラフェニブ(承認申請中)はプラセボに比し無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することが、米国ダナファーバーがん研究所のGeorge D Demetri氏らの検討で示された。これまでに、GISTに対する有効性が証明された薬剤としてイマチニブとスニチニブがあるが、転移性GISTのほとんどは最終的にこれらの薬剤に抵抗性となり、致死的な病勢の進行をきたす。レゴラフェニブは新規の経口マルチキナーゼ阻害薬で、腫瘍の血管新生(VEGFR1-3、TEK)、発がん(KIT、RET、RAF1、BRAF、BRAFV600E)、腫瘍の微小環境(PDGFR、FGFR)の調整に関与するプロテインキナーゼの活性を遮断するという。Lancet誌2013年1月26日号(オンライン版2012年11月22日号)掲載の報告。

月1回のペギネサチド、週1~3回のエポエチンに非劣性/NEJM

 貧血を伴う血液透析患者に対し、赤血球造血刺激因子製剤(ESA製剤)のペギネサチド(本邦未承認)の月1回投与が、エポエチン週1~3回の投与と同程度の効果であることが明らかにされた。米国・Hofstra North Shore–LIJ School of MedicineのSteven Fishbaneらが第3相オープンラベル無作為化試験「EMERAL1、2」を行った結果、報告した。NEJM誌2013年1月24日号掲載より。

妊娠中のH1N1インフルエンザワクチン接種、発症リスクを7割減/NEJM

 妊娠中の2009インフルエンザA(H1N1)ウイルス感染症パンデミックの罹患は、胎児死亡リスクを約2倍増大する一方、妊娠中に同ワクチンを投与した人では、インフルエンザを発症した人の割合は約7割少なかったことが報告された。ノルウェーのNorwegian Institute of Public HealthのSiri E. Haberg氏らが、H1N1ウイルスが流行した2009~2010年に妊娠中だった女性12万人弱について行った試験で明らかにしたもので、NEJM誌2013年1月24日号(オンライン版2013年1月16日号)で発表した。2009パンデミックでは、ワクチン接種後に胎児死亡が散発的に報告されたことで、妊婦へのワクチン接種の安全性について懸念が持ち上がっていた。

地域でのケア移行、改善介入で不必要な入院が減少/JAMA

 米国メディケア患者は治療移行の間に、不必要な再入院など害悪をもたらす過失に見舞われているという。Colorado Foundation for Medical CareのJane Brock氏らケア移行プロジェクトチームは、ケア移行改善の介入によってメディケア診療報酬支払対象患者の再入院や入院が低減するのかを検証した。JAMA誌2013年1月23日号の掲載報告。

全米小児病院の再入院率、疾病や病院間で有意な差/JAMA

 米国・ボストン小児病院のJay G. Berry氏らが、全米の小児病院急性期部門の再入院率を調査した結果、予定外の30日再入院率は6.5%であったことが報告された。再入院率は、患者が入院の間、および退院後に受ける治療の質のインジケーターとして利用される。本調査の再入院率も、疾病や病院間で有意差がみられ、著者は「本病院の質的改善活動に役立つであろう」とまとめている。JAMA誌2013年1月23日号掲載の報告より。

間欠自己導尿カテーテル、タイプ別に比較した尿路感染症リスクの発生/BMJ

 在宅患者にとって、間欠自己導尿カテーテルのタイプは、親水性、ゲルリザーバー、非コートタイプのいずれでも、症候性のカテーテル関連尿路感染症のリスクはほとんど差がないことを、英国・National Clinical Guideline CentreのSarah L Bermingham氏らがシステマティックレビューによるメタ解析を行い報告した。尿道カテーテルを利用している人の罹病状態や死亡の原因の先頭に立つのがカテーテル関連尿路感染症である。感染リスクは留置カテーテル処置患者で最も高く、膀胱管理には間欠導尿が好ましいオプション処置とされているが、これまで、その材質や方法論について、有効性と費用対効果の系統的比較は行われていなかった。BMJ誌2013年1月13日号(オンライン版2013年1月8日号)の掲載報告。

乳がん、大腸がん検診、予防効果を得るまで約10年を要する/BMJ

 マンモグラフィによる乳がん検診や、便潜血検査による大腸がん検診では、受診者1,000人当たり1例の死亡を予防するのに約10年を要することが、米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校のSei J Lee氏らの検討で示された。欧米のガイドラインでは、がん検診はより健康的でより高齢の集団を対象とするよう推奨されているが、検診による害に対しベネフィットを得るには時間を要する。乳がんや大腸がんの検診が生存ベネフィットをもたらすのに要する時間差はこれまで明らかでなかった。BMJ誌2013年1月13日号(オンライン版1月8日号)掲載の報告。

ピロリ菌除菌、4剤逐次投与が3剤併用投与よりも良好/Lancet

 プロトンポンプ阻害薬(PPI)と抗菌薬を用いたピロリ菌(Helicobacter pylori)の1st-line治療では、標準的な3剤併用投与よりも、4剤の逐次投与のほうが除菌率が有意に良好なことが、国立台湾大学病院のJyh-Ming Liou氏ら「Taiwan Helicobacter Consortium」の検討で示された。ピロリ菌は消化性潰瘍や胃がんの主要原因だが、多くの国では標準的な3剤併用投与の除菌率は80%に満たないという。除菌率の向上のために、投与期間の延長、4剤併用レジメン、レボフロキサシンなど新規抗菌薬の導入などの治療戦略が提案されてきた。Lancet誌2013年1月19日号(オンライン版2012年11月16日号)掲載の報告。

産業化の進展で精神疾患疑い例倍増、失業、離婚、自殺も増加/Lancet

 台湾(人口約2,300万人)では、1990~2010年までの20年間に、産業化の進展にともなって「頻度の高い精神障害(common mental disorder:CMD)」の疑い例が倍増し、並行して全国的に失業率、離婚率、自殺率が増加したことが、台湾・中央研究院(Academia Sinica)のTiffany Szu-Ting Fu氏らの調査で示された。マクロ社会の変動は精神的健康に影響を及ぼす可能性がある。CMDは、一般集団におけるほとんどの非精神病性障害、うつ状態、不安障害を含む広範な診断カテゴリーで、WHOによればうつ状態は2020年までに、障害調整生存年(DALY)の主要因になると予測されるという。Lancet誌2013年1月19日号(オンライン版2012年11月12日号)掲載の報告。

HIV初感染への48週間抗レトロウイルス療法の効果は?/NEJM

 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)初感染(primary HIV infection)に対し、48週間の抗レトロウイルス療法(ART)は、従前より示唆されていたように疾患進行を遅らせることが明らかにされた。英国・Imperial College LondonのSarah Fidler氏らが、約370人の患者について行った無作為化試験「Short Pulse Anti-Retroviral Therapy at Seroconversion」(SPARTAC)の結果、報告した。これまで、HIV初感染に対する短期ART療法について疾患進行を遅延しうる可能性が言われていたが、十分な評価は行われていなかった。NEJM誌2013年1月17日号掲載より。

重症血友病Aに対する第VIII因子製剤投与のインヒビター抗体発生リスク/NEJM

 未治療の重症血友病A患児に対する第VIII因子製剤投与のインヒビター(阻害)抗体発生リスクについて調べた結果、全長遺伝子組換え型製剤間で発現リスクの有意な違い(第二世代製剤が第三世代に比べ約1.6倍増大)が示されたことが報告された。一方で、血漿由来製剤と遺伝子組換え製剤、製剤中のフォン・ヴィレブランド因子の含有量、製剤間の切り替えによる同発生リスクの増大はいずれも認められなかったという。オランダ・ユトレヒト大学メディカルセンターのSamantha C. Gouw氏らが患児600人弱について調べた結果で、NEJM誌2013年1月17日号で発表した。これまで未治療の重症血友病A患児に対する第VIII因子製剤の、種類や製剤間の切り替えなどと、臨床的に重要なインヒビター抗体発現リスクとの関連は明らかではなかった。

膝OA患者へのビタミンD3 vs.プラセボ、2年間投与の効果は?/JAMA

 米国・タフツメディカルセンターのTimothy McAlindon氏らは、症候性変形性膝関節症(膝OA)患者に対して2年間にわたり、十分量のビタミンD3サプリメントとプラセボとを投与し比較検討した無作為化試験の結果、サプリメント群はプラセボ群と比較して、膝の痛みの程度や軟骨減少について、低下はみられなかったことを報告した。膝OAには効果的な内科的治療法はないが、一部の試験でビタミンDが、軟骨や関節周辺骨の障害の、進行を防ぐ可能性があることが示唆されていた。JAMA誌2013年1月9日号掲載より。

メディケアプランの5つ星評価、加入動機に反映されているのか?/JAMA

 米国のメディケア・メディケイドサービスセンターは、Medicare Advantage(民間保険会社がサービスを代行運営するプラン、通称:メディケアパートC)加入の判断指標とするために、5つ星評価プログラムを実施している。これまで同評価が加入者の判断指標として反映されているのかは調べられていなかったことから、同センターのRachel O. Reid氏らが調査を行った。JAMA誌2013年1月16日号掲載より。

降圧薬2剤併用にNSAIDsを追加併用、30日間は急性腎不全に注意が必要/BMJ

 利尿薬、ACE阻害薬あるいはARB、NSAIDsの組み合わせによる3剤併用制法は、急性腎不全リスクを増大することが、カナダ・Jewish General HospitalのFrancesco Lapi氏らによるコホート内症例対照研究の結果、報告された。リスクは、治療開始から30日間が最も強かったという。著者は、「降圧薬は心血管系にベネフィットをもたらすが、NSAIDsを同時併用する場合は十分に注意をしなければならない」と結論している。BMJ誌2013年1月12日号(オンライン版2012年12月18日号)掲載報告より。

無作為化試験の報告データは、試験で得られた全データのごく一部/BMJ

 米国・カリフォルニア大学医学部のDavid L Schriger氏らは、無作為化試験における連続アウトカムの割合について調査した。臨床研究報告は、高度に選択されたデータサブセットが発表され、ジャーナルの読者に対して全部のデータセットはめったに示されない。Schriger氏らは断面研究の手法にて調査を行い、その結果、無作為化試験の連続主要アウトカムは、獲得したデータのごくわずか(<5%)しか示されていないことが確認されたという。BMJ誌2013年1月12日号(オンライン版2012年12月18日号)掲載の報告。

エビデンスに基づく鎌状ヘモグロビン保有新生児の推定数が明らかに

 2010年の世界の鎌状ヘモグロビン(HbS)保有患児数は、ヘテロ接合型(AS)が約547万6,000人、ホモ接合型(SS)は約31万2,000人と推算されることが、英国オックスフォード大学のFrederic B Piel氏らの検討で示された。保健医療資源の効率的な割り当てを行うには信頼性の高い罹患数の予測値を要する。鎌状赤血球症の原因であるHbSは、最も高頻度にみられるヘモグロビンの病的な遺伝子変異であり、臨床的に重要な構造的ヘモグロビン異常だが、罹患数予測値は明らかではなく、AS型およびSS型の新生児の正確な数も不明だったという。Lancet誌2013年1月12日号(オンライン版2012年10月25日号)掲載の報告。

喫煙女性の死亡率は非喫煙女性の約3倍、寿命は11年短い:Million Women Study/Lancet

 英国の中高年女性喫煙者の死亡原因の3分の2が喫煙に起因し、喫煙女性の死亡率は非喫煙女性の約3倍で、寿命は10年以上短いことが、英国・オックスフォード大学のKirstin Pirie氏らが実施したMillion Women Studyで示された。喫煙はいまだに予防可能な主要死因であり、英国や米国で1940年頃に生まれた女性は、成人以降の生涯を通じて多量の喫煙をした最初の世代である。それゆえ、21世紀のいまこそが、長期の喫煙や禁煙が英国人女性の死亡率に及ぼす影響を直接的に観察可能な時だという。Lancet誌2013年1月12日号(オンライン版2012年10月)掲載の報告。

過多月経に対するレボノルゲストレル-IUS vs. 従来薬物療法/NEJM

 過多月経の治療について、レボノルゲストレル放出子宮内避妊システム(商品名:ミレーナ)(以下、レボノルゲストレル-IUS)は、トラネキサム酸などの従来薬物療法よりも、長期的な改善幅が有意に高かったことが示された。英国・ノッティンガム大学のJanesh Gupta氏らが、600人弱の女性を対象とした無作為化試験の結果、報告したもので、「重度の月経出血によるQOLへの影響を低減する効果が高かった」と結論している。過多月経はよくある問題症状だが、これまで有効な治療に関するエビデンスは限られていたという。NEJM誌2013年1月10日号掲載報告より。

上部消化管出血への輸血、ヘモグロビン値7g/dL未満の制限輸血で死亡リスク半減/NEJM

 急性上部消化管出血への輸血戦略では、ヘモグロビン値7g/dL未満で輸血をする「制限輸血」のほうが、同値9g/dL未満での輸血戦略よりも、死亡リスクが約半減するなどアウトカムが良好であることが明らかにされた。スペイン・Hospital de Sant PauのCandid Villanueva氏らが900人超について行った無作為化試験の結果、報告したもので、NEJM誌2013年1月3日号で発表した。急性消化管出血への輸血について、ヘモグロビン値を基準に実施を判断する治療法については議論が分かれていた。