ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:167

中枢性睡眠時無呼吸、経静脈的神経刺激デバイスが有用/Lancet

 経静脈的神経刺激デバイスは、中枢性睡眠時無呼吸の重症度を軽減し、忍容性も良好であることが、米国・Advocate Heart InstituteのMaria Rosa Costanzo氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌2016年9月3日号(オンライン版2016年9月1日号)に掲載された。中枢性睡眠時無呼吸は、呼吸調節中枢からの神経細胞アウトプットの一時的な遮断によって発症し、呼吸刺激の喪失や気流停止を来す。心血管や脳血管疾患など広範な疾患にみられ、酸化ストレスを増強して基礎疾患の進展を促し、不良な転帰をもたらす可能性が示唆されている。remedeシステムと呼ばれる神経刺激療法は、横隔膜を収縮させる神経を経静脈的に刺激して正常呼吸に近づける埋め込み型デバイスである。

重症/最重症COPD、3剤配合吸入薬の臨床効果/Lancet

 重症/最重症の慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療において、吸入コルチコステロイド(ICS)+長時間作用型β2受容体刺激薬(LABA)+長時間作用型ムスカリン受容体拮抗薬(LAMA)の配合薬の吸入療法は、ICS+LABAよりも良好な臨床ベネフィットをもたらすことが、英国・マンチェスター大学のDave Singh氏らが実施したTRILOGY試験で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌2016年9月3日号(オンライン版2016年9月1日号)に掲載された。GOLDガイドラインは、COPDの増悪歴のある患者には、LAMAまたはICS+LABAを推奨しているが、これらを行っても多くの患者が増悪を来すため、実臨床ではICS+LABA+LAMAの3剤併用療法へと治療が強化されることが多い。このレジメンを簡便化した、プロピオン酸ベクロメタゾン(BDP)+フマル酸フォルモテロール(FF)+グリコピロニウム臭化物(GB)の配合薬の開発が進められている。

がん患者の損傷リスクは診断の全過程で予防対策を/BMJ

 がん患者では、医原性損傷(iatrogenic injuries)および非医原性損傷(non-iatrogenic injuries)のリスクが、診断後だけでなく、診断前から上昇しており、診断の全過程を通じて予防対策を講じる必要があることが、スウェーデン・カロリンスカ研究所のQing Shen氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌オンライン版2016年8月31日号に掲載された。大腸がん、前立腺がん、乳がんの患者では、医原性損傷による死亡の増加を認め、がん患者における非医原性損傷のリスク上昇も知られている。これまでに、がんの診断後や治療後の損傷のリスクは検討されているが、診断前のリスクの評価は行われておらず、本試験はがんの診断的検査による医学的合併症の疾病負担を総合的に検討した初めての研究だという。

コントロール不良の重症喘息にbenralizumabは有用/Lancet

 好酸球増多を伴うコントロール不良な重症喘息の治療において、benralizumabは患者アウトカムを改善する可能性があることが、米国・ウェイクフォレスト大学のEugene R Bleecker氏らが実施したSIROCCO試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2016年9月2日号に掲載された。重症喘息の増悪は生命を脅かし、QOLを低下させる。好酸球増多は、喘息の重症度の悪化や肺機能の低下をもたらし、喘息増悪の頻度を上昇させる。benralizumabは、インターロイキン(IL)-5受容体αに対するモノクローナル抗体であり、抗体依存性細胞介在性細胞傷害作用(ADCC)によって好酸球を抑制するという。

妊娠前の飲酒、週14杯未満までは受胎能に影響しない?/BMJ

 週14杯未満のアルコール摂取は、受胎能に明らかな影響はないようである。ビールとワインで受胎確率に差はないことも確認された。デンマーク・オーフス大学病院のEllen M Mikkelsen氏らが、どの程度のアルコール摂取が女性の受胎確率に影響を及ぼすかを検証した前向きコホート研究の結果を報告した。これまでは、少量~中等量のアルコール摂取は受胎能低下と関連することが報告されており、妊娠を希望する女性はアルコール摂取を控えるよう推奨されていた。ただし今回の結果について著者は、「受胎後、最初の数週間、胎児はアルコールに対してとくに脆弱であるため、妊娠を積極的に望む女性は、妊娠が否定されるまで妊娠可能期間のアルコール摂取は控えるべきである」とまとめている。BMJ誌オンライン版2016年8月31日号掲載の報告。

非ST上昇型急性冠症候群への早期侵襲的治療、15年追跡結果/Lancet

 非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)に対する早期侵襲的治療は、非侵襲的治療と比較して死亡または心筋梗塞の発生を平均18ヵ月、虚血性心疾患による再入院を37ヵ月延長させた。NSTE-ACSへの早期侵襲的治療は死亡または心筋梗塞の発生率を減少させることがFRISC-II試験で初めて示されたが、今回、スウェーデン・ウプサラ大学のLars Wallentin氏らは、早期侵襲的治療の長期的な有益性について評価すべく、残存寿命の観点からFRISC-II試験の15年間の追跡調査におけるすべての心血管イベントについて解析した。結果を踏まえて著者は、「ほとんどのNSTE-ACS患者において、早期侵襲的治療は優先すべき治療選択肢であることが裏付けられた」とまとめている。Lancet誌オンライン版2016年8月25日号掲載の報告。

新規抗好酸球抗体薬、重症喘息を約6割まで減少/Lancet

 血中好酸球数が300/μL以上で、吸入ステロイド薬と長時間作用性β2刺激薬を併用(ICS+LABA)投与してもコントロール不良な重度喘息の患者に対し、開発中の抗好酸球モノクローナル抗体benralizumab(抗IL-5受容体抗体)は、喘息増悪の年間発生リスクを約6割に減少することが報告された。米国・Wake Forest School of MedicineのJ. Mark FitzGerald氏らが行った第III相プラセボ対照無作為化二重盲検試験「CALIMA」の結果で、Lancet誌オンライン版2016年9月5日号で発表された。

心房細動はすべての心血管リスク増大と関連/BMJ

 心房細動は、死亡リスクを増大し、心血管および腎疾患のリスク増大と関連することが、104のコホート試験、被験者総数約970万人を対象にしたメタ解析により、明らかにされた。英国・オックスフォード大学のAyodele Odutayo氏らが行い、BMJ誌オンライン版2016年9月6日号で発表した。これまでの試験結果から、心房細動は全死因死亡や脳卒中リスクを増大することは知られていたが、脳卒中に限らず、広く心血管イベントのリスクを増大するかは不明であった。今回の結果を踏まえて著者は、「心房細動患者では、脳卒中に限らず広範なアウトカムを減じる介入が必要であることが示された」とまとめている。

エドキサバンは電気的除細動時の抗凝固療法として有用/Lancet

 エドキサバンは、心房細動(AF)患者への電気的除細動施行時の抗凝固療法として、エノキサパリン+ワルファリンと同等の高度な安全性と有効性を発揮することが、ドイツ・St Vincenz病院のAndreas Goette氏らが実施したENSURE-AF試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2016年8月30日号に掲載された。経口第Xa因子阻害薬エドキサバンは、AF患者の抗凝固療法において、エノキサパリン+ワルファリンと比較して、脳卒中や全身性塞栓症の予防効果が非劣性で、出血は少ないことが知られている。一方、AFへの電気的除細動の試験の事後解析では、非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)の良好な安全性プロファイルが示されているが、エドキサバンの安全性データは十分ではないという。

第Xa因子阻害薬の中和薬、急性大出血の79%を止血/NEJM

 第Xa因子阻害薬に関連する急性大出血において、andexanet alfaは抗第Xa因子活性を大幅に低減し、高い止血効果をもたらすことが、カナダ・マクマスター大学のStuart J. Connolly氏らが実施したANNEXA-4試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2016年8月30日号に掲載された。第Xa因子阻害薬は、心房細動患者の静脈血栓塞栓症の治療や予防および脳卒中の予防に有効であるが、大出血や致死的出血のリスクがある。andexanet alfaは、遺伝子組換えヒト第Xa因子デコイ蛋白で、第Xa因子阻害薬の作用を特異的に、直接かつ間接に中和する。

非虚血性心不全への予防的ICDは有益か?/NEJM

 冠動脈疾患に起因しない症候性収縮期心不全患者への予防的植込み型電気除細動器(ICD)の施行は、通常ケアと比較して、長期的な全死因死亡の低下には結び付かないことが明らかにされた。デンマーク・コペンハーゲン大学のLars Kphiber氏らが、556例を対象に行った無作為化試験の結果で、NEJM誌オンライン版2016年8月27日号で発表した。同患者への予防的ICDについては、これまでサブグループ解析によるエビデンスが主であった。

DES vs.BMS、留置から6年時点のアウトカム/NEJM

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)で使用する留置ステントの長期有効性について、薬剤溶出ステント(DES)vs.ベアメタルステント(BMS)を検討した結果、追跡6年時点の複合エンドポイント(全死因死亡・非致死的自然発症心筋梗塞)の発生について有意差は認められなかった。一方で、血行再建術の再施行率は、DES群の有意な減少が認められたという。ノルウェー・トロムソ大学のK.H. Bonaa氏らが同国でPCIを受けた9,013例について行った無作為化試験の結果、明らかにした。NEJM誌オンライン版2016年8月30日号掲載の報告。

冠動脈疾患疑い、非侵襲的検査が不要な血管造影を減らす/JAMA

 冠動脈疾患が疑われる患者において、英国立医療技術評価機構(NICE)ガイドラインに基づく治療方針より心血管磁気共鳴(CMR)検査を用いた治療のほうが、12ヵ月以内の不必要な血管造影を減らせることが明らかとなった。CMR検査と心筋血流シンチグラフィ(MPS)検査とで統計的有意差はなく、主要有害心血管イベント(MACE)の発生率も差はなかった。英国・リーズ大学のJohn P. Greenwood氏らが、Clinical Evaluation of Magnetic Resonance Imaging in Coronary Heart Disease 2(CE-MARC2)試験の結果、報告した。冠動脈疾患が疑われる患者に対しては、非侵襲的画像診断の利用や推奨が拡大しているにもかかわらず、診断初期には侵襲的血管造影が一般的に用いられている。現在のガイドラインで推奨されている異なる画像診断の有効性を比較する大規模試験はこれまでなかった。JAMA誌オンライン版2016年8月29日号掲載の報告。

非STEMIの死亡率は10年間で改善、その要因とは/JAMA

 イングランドおよびウェールズにおいて、非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)で入院した患者の全死亡率は2003年から2013年に改善していることが確認された。この改善は、冠動脈侵襲的治療の実施と有意に関連しており、ベースラインの臨床リスク減少や薬物療法の増加とはまったく関連していなかったという。英国・リーズ大学のMarlous Hall氏らが、Myocardial Ischaemia National Audit Project(MINAP)のデータを用いたコホート研究の結果、報告した。急性冠症候群後の死亡率は世界的に低下しているが、この低下がガイドラインで推奨されたNSTEMIの治療とどの程度関連しているかは不明であった。JAMA誌オンライン版2016年8月30日号掲載の報告。

ステント留置後のプラスグレル投与、血小板機能検査は必要か/Lancet

 急性冠症候群(ACS)で冠動脈ステント留置術後の75歳以上ハイリスク患者に対してP2Y受容体拮抗薬プラスグレル(商品名:エフィエント)を投与する際、5mg/日投与後に血小板機能検査によるモニタリングを実施し用量調整を行っても、同検査をせずに5mg/日を投与し続ける場合と比べ、1年後までの心血管イベント発生率は変わらないことが明らかにされた。フランス・モンペリエ大学のGuillaume Cayla氏らが、877例を対象に行ったエンドポイント盲検化による非盲検無作為化比較試験「ANTARCTIC」試験の結果、明らかにしLancet誌オンライン版2016年8月28日号で発表した。

冠動脈疾患患者への降圧治療、Jカーブリスクに留意が必要/Lancet

 安定冠動脈疾患で降圧治療を受ける患者において、収縮期血圧120mmHg未満、拡張期血圧70mmHg未満と、それぞれ140mmHg以上、80mmHg以上で、死亡を含む有害心血管イベント発生リスクが増大するという「Jカーブ」を描くことが確認された。フランス・パリ第7大学のEmmanuelle Vidal-Petiot氏らが、45ヵ国、約2万3,000人を対象に行った前向きコホート研究の結果、明らかにした。至適降圧目標についてはなお議論の的であり、とくに冠動脈疾患患者では、拡張期血圧が低すぎる場合に心筋の血流低下が起きることが懸念されている。結果を踏まえて著者は、「所見は、冠動脈疾患患者に対する降圧治療は注意深く行うべきことを示すものだった」とまとめている。Lancet誌オンライン版2016年8月26日号掲載の報告。

プライマリケアでの高リスク処方を減らすには/BMJ

 プライマリケアでの高リスク処方減少に、どのような介入が有効か。英国・ダンディー大学のBruce Guthrie氏らは、教育的介入とフィードバックを行う介入、さらにフィードバックに行動変容を促す介入を加えた3つの方法を比較するクラスター無作為化試験を行った。結果、教育的介入では有意な減少効果はみられなかったが、フィードバックを加味した2つの介入は教育的介入との比較で12~14%減少し、高リスク処方減少に有効であることが認められたという。医療やアウトカムの質の向上や安全対策では、審査とフィードバックを行う介入が有効であることが示されているが、処方安全の観点ではエビデンスはほとんどなかった。また、これまでのフィードバック試験では、方法論的に限界があった。BMJ誌オンライン版2016年8月18日号掲載の報告。

再発/転移上咽頭がん、GEM+CDDPが有用/Lancet

 再発または転移上咽頭がんに対し、ゲムシタビン+シスプラチンはフルオロウラシル+シスプラチンと比較して、無増悪生存期間を有意に延長することが報告された。中国・中山大学がんセンターのLi Zhang氏らが第III相多施設共同無作為化非盲検試験の結果を、Lancet誌オンライン版2016年8月23日号で発表した。試験は中国国内22施設で、ECOG PSが0または1、臓器機能正常、RECISTガイドラインver1.1で測定可能病変を有する患者を対象に行われたもの。再発または転移上咽頭がんの転帰は不良であり、1次治療の化学療法は確立されていない。今回の結果を踏まえて著者は、「本検討の患者集団においてゲムシタビン+シスプラチンは、1次治療の治療オプションであることが確認された」とまとめている。

早期乳がんの遺伝子診断で過剰な術後化療を回避/NEJM

 遺伝子診断の導入により、臨床リスクが高い乳がん患者の半数近くが、術後の化学療法は不要と判定され、毒性を伴う化学療法による過剰治療の回避につながる可能性があることが、ポルトガル・Champalimaud臨床センターのFatima Cardoso氏らが行ったMINDACT試験で示された。研究の成果はNEJM誌2016年8月25日号に掲載された。早期乳がん患者への術後補助療法の適用は、腫瘍および患者の特性に基づく臨床リスクで決定される。これらの特性を判定する診断ツールのアルゴリズムは、個々の患者の腫瘍の生物学的特性を考慮していないため、多くの患者が過剰治療となり、効果のない治療による毒性のリスクに曝されている可能性があるという。70遺伝子シグニチャー検査(MammaPrint)は、早期乳がん女性の臨床アウトカムの予測を改善することが示されている。

顔面移植術後の長期アウトカムは?/Lancet

 顔面移植では術前の十分な手術可否の検討と、術後の長期的なサポートプログラムが必要であることを、フランス・パリ第5大学のLaurent Lantieri氏らが単施設において前向きに追跡した結果、報告した。顔面移植は2005年以降に30件以上が実施されているが、これまでに長期追跡の報告論文はなかった。Lancet誌オンライン版2016年8月24日号掲載の報告。