ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:291

2008年の5歳未満の子どもの死亡数、死因:MDG4達成に向けて

2008年の世界193ヵ国における5歳未満の子どもの死亡数は879万5,000人、その死因の68%が感染症であることが、アメリカJohns Hopkins Bloomberg公衆衛生大学院のRobert E Black氏らによる系統的な解析で示された。子どもの死亡率は、社会経済的な発展や子どもへの生存介入が実行された結果として世界的に低下しているが、いまだに毎年880万人が5歳の誕生日を迎えられずに死亡している。ミレニアム開発目標4(MDG4)の目的は、「2015年までに5歳児未満の死亡率を1990年の水準の3分の1に削減する」ことであるが、特に南アジアとサハラ砂漠以南のアフリカ諸国では達成が難しい状況にあり、その改善には子どもの死因に関する最新情報の収集が重要だという。Lancet誌2010年6月5日号(オンライン版2010年5月12日号)掲載の報告。

侵襲性細菌感染症の遺伝子感受性

世界で年間死者500万人に達する結核やマラリアなどの侵襲性細菌感染症で、疾患感受性の個体差が一部で有意にみられることについては、栄養失調やHIV罹患など環境要因によると考えられているものの、実態としては謎のままである。そこで、シンガポール遺伝子研究所感染症疾患部門のChiea C. Khor氏らは、感染症病原体に対するヒト免疫応答に注目した。免疫応答の際には炎症性サイトカインが産生される。その反応が過剰となると(サイトカインシグナル伝達により)、マラリアなどの重症化を招くのではないか。一方でヒト免疫応答には、炎症反応をコントロールするサイトカインシグナル伝達抑制蛋白質CISHが存在し関与することも知られる。Khor氏らは、CISHが疾患感受性と関連しているのではないかと仮定し、検討を行った。NEJM誌2010年6月3日号(オンライン版2010年5月19日号)掲載より。

尿道スリング手術、恥骨後式と経閉鎖孔式どちらが有効?

腹圧性尿失禁の手術療法である尿道スリング手術について、スリングタイプの違い(恥骨後式と経閉鎖孔式)の有効性と合併症に関する大規模な比較検討試験が行われた。結果は両者の有効性は同等で、合併症がそれぞれ異なることが明らかにされている。米国アラバマ大学バーミンガム校のHolly E. Richter氏ら尿失禁治療ネットワークの研究グループによるもので、NEJM誌2010年6月3日号(オンライン版2010年5月17日号)で発表された。

ST上昇型急性心筋梗塞の再潅流、ガイドライン勧告時間外の実施で30日死亡リスクは2倍超

ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)に対し、フィブリン溶解など再潅流治療をガイドライン勧告時間外に実施した場合、30日死亡リスクは、2倍超に増大することがわかった。カナダQuebec Healthcare Assessment AgencyのLaurie Lambert氏らの調べで明らかになったもので、JAMA誌2010年6月2日号で発表した。STEMI患者に対する、迅速な再潅流治療実施の重要性については知られているが、実際の医療現場における、実施までの経過時間とアウトカムとの関係を評価したものはほとんどないという。

高齢者の心不全入院期間2日以上短縮、院内・30日死亡率は低下

 1993~2006年にかけて米国では、高齢者の心不全による入院期間は2日以上短縮し、院内死亡率や30日死亡率も低下していたことが、調査により明らかにされた。一方で、30日再入院率は1割程度増加していた。スペインGregorio Maranon大学病院循環器部門のHector Bueno氏らが、心不全による入院700万件弱について調べたもので、JAMA誌2010年6月2日号で発表した。これまで、心不全による最近の入院日数短縮傾向についての報告はあったが、それに伴う患者のアウトカムについては不明だった。

中国成人の糖尿病診断、HbA1c値を用いるなら6.3%が適切

糖尿病診断のHbA1c値について、中国での最適な基準値を特定することを目的とした多段階階層断面疫学調査が行われた。上海糖尿病センターのYuqian Bao氏らが、中国人成人4,886例のデータを解析した。BMJ誌2010年5月29日号(オンライン版2010年5月17日号)掲載より。結果、欧米で診断基準として使用されている6.5%以上よりも6.3%が優れていることが明らかになったという。なお、日本では5月末の第53回日本糖尿病学会で、診断基準「6.5%以上」(JDS値6.1%以上)で統一を図っていくことが発表されている。

2型糖尿病でメトホルミン服用患者、ビタミンB12値の管理が強く勧められる

2型糖尿病患者へのメトホルミン長期投与は、ビタミンB12欠乏症のリスクを増大すると、オランダ・Academic Medical Center眼科部門のJolien de Jager氏らが、無作為化プラセボ対照試験を行い明らかにした。「ビタミン12欠乏症は予防可能で、試験の結果は、ビタミンB12値の定期的な測定が強く考慮されなければならないことを示唆するもの」と結論している。BMJ誌2010年5月29日号(オンライン版2010年5月10日号)掲載より。

エボラウイルスに対する実験的治療、マウスに次いでサルでも有効性確認

ボストン大学全米新興感染症研究所のThomas W Geisbert氏らは、致死性のザイールエボラウイルス(ZEBOV)に感染したアカゲサル(マカク属)のモデルを使った実験的治療で、RNA干渉を引き起こすsiRNA(small interfering RNAs)治療が有効であったことを報告した。Lancet誌2010年5月29日号掲載より。同治療の有効性は、マウスを使った実験的治療で確認されていた。siRNA治療は、安定核酸脂質分子(SNALPs)に調製したsiRNAを、ZEBOVのRNAポリメラーゼLたんぱく質をターゲットに投与するというもの。

フィブラート系高脂血症薬、主要心血管イベントリスクを低下:メタ解析

メタ解析の結果、フィブラート系高脂血症薬には、主として冠動脈イベントの予防により主要な心血管イベントリスクを低下すること、心血管イベントのハイリスク患者、脂質異常症を合併する患者で有用である可能性が明らかになった。オーストラリア・シドニー大学・The George Institute for International HealthのMin Jun氏らの報告で、Lancet誌2010年5月29日号(オンライン版2010年5月11日号)に掲載された。心血管リスクのフィブラート系高脂血症薬の有効性に関する知見は一貫していないことから、Jun氏らは、主要な臨床アウトカムの有効性について検討することを目的にシステマティックレビュー、メタ解析を行った。

早産児に、早期CPAPも選択の余地あり

早産児に、生後2時間以内にサーファクタントを投与することで死亡や気管支肺異形成症を低減できることが示されていることから、予防的治療として早期サーファクタント療法が行われるようになっている。しかし超早産児では挿管を必要とする場合もあってCPAP(持続陽圧呼吸療法)が検討されたり、また、より早期のサーファクタント療法群では筋緊張が高頻度にみられたり寝返り動作がなかなかできるようにならないといった報告もある。そこで米国のSUPPORT Study Group of the Eunice Kennedy Shriver NICHD Neonatal Research Networkが、超早産児1,316例を対象に、早期CPAPと早期サーファクタント治療とを比較する多施設共同無作為化試験を行った。NEJM誌2010年5月27日号(オンライン版2010年5月16日号)掲載より。

早産児への酸素飽和度の目標は?

早産児の有害転帰を増加することなく未熟児網膜症を最小限とするには、どれぐらいの酸素投与が適しているのか? 米国のSUPPORT Study Group of the Eunice Kennedy Shriver NICHD Neonatal Research Networkが、超早産児1,316例を対象に行った多施設共同無作為化試験の結果をNEJM誌2010年5月27日号(オンライン版2010年5月16日号)で報告している。これまでの研究で、未熟児網膜症発症率の低下と目標酸素飽和度低値との関連は明らかになっているが、有害転帰と酸素飽和度の関連については明らかでなかった。

RCT論文、「有意差なし」なのにタイトル曲解18%、要約結論曲解58%

無作為化コントール試験(RCT)の論文で、主要アウトカムで統計的有意差がみられなかったにもかかわらず、筆者により内容がゆがめられた曲解表現が使われていた論文タイトルが18%、またアブストラクトの結論部分で曲解表現が使われていたのは58%あったことが報告された。英国オックスフォード大学のIsabelle Boutron氏らが、2006年12月までに発表されていた616のRCT論文について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年5月26日号で発表している。有意差のみられなかった試験結果を報告する際、筆者が意識・無意識にかかわらず、読者に誤解を与えるようなゆがんだ表現を使うことがあることは知られていたが、この点について体系的に評価をした研究はほとんどなかった。

米国過去20年で血圧コントロール割合27.3%→50.1%に

米国では、1988~2008年にかけて、血圧がコントロールされている人の割合が、27.3%から50.1%にまで改善したことが明らかになった。特に1999~2000年から2007~2008年にかけては、同割合は18.6ポイント増加していた。米国サウスカロライナ大学のBrent M. Egan氏らが、4万人超の18歳以上について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年5月26日号で発表した。全米の健康政策「Healthy People 2010」の中で、血圧コントロール率の目標は50%となっていた。

かかりつけ医の抗菌薬処方が、地域に耐性菌を出現・増大

プライマリ・ケア医(かかりつけ医)の抗菌薬処方が、地域に第1選択薬の耐性菌を出現・増加させ、第2選択薬の乱用をもたらしていることが報告された。イギリス・ブリストル大学地域医療部門のCe'ire Costelloe氏らが行ったメタ解析によるもので、BMJ誌2010年5月22日号(オンライン版2010年5月18日号)に掲載された。

足首捻挫時は、安静よりも運動療法

4年に一度のサッカーの祭典W杯が間もなく始まる。そのサッカー選手でも頻度が高い、足首捻挫の治療について、受傷後は安静、アイシング、加圧、固定をするよりも、すぐに運動療法を始めた方が、短期間で機能が快復することが報告された。イギリス・北アイルランドのUlster大学健康科学校健康・リハビリテーション科学研究所のChris M Bleakley氏らが、無作為化試験を行い明らかにした。BMJ誌2010年5月22日号(オンライン版2010年5月10日号)掲載より。

分娩後出血は、ミソプロストールを追加しても改善しない

分娩後出血の治療において、標準的な子宮収縮薬注射に加えミソプロストール(商品名:サイトテック)600μgを舌下投与しても、失血は改善されないことが、WHO(スイス)リプロダクティブヘルス研究部門のMariana Widmer氏らが、アジア、アフリカ、南米諸国の参加のもとに実施した無作為化試験で示された。分娩後出血は世界的に妊婦の罹病および死亡の主原因である。ミソプロストールは子宮収縮作用を持つプロスタグランジンのアナログ製剤であり、経口投与が可能で安定性に優れ、安価であるため治療選択肢として有望視されているという。Lancet誌2010年5月22日号掲載の報告。

超多剤耐性結核患者の予後に、HIV感染は影響するか?

超多剤耐性(XDR)結核患者は、HIV感染の有無にかかわらず予後不良であるが、HIV感染者の予後は以前に比べ改善していることが、南アフリカCape Town大学のKeertan Dheda氏らが行ったコホート試験で明らかとなった。Kwazulu Natal(南アフリカ)のデータによれば、XDR結核に感染している患者のほとんどがHIV感染者であり、致死的な転帰をとることが示唆される。しかし、HIV感染率が高い状況におけるXDR結核の治療効果を評価したデータはほとんどないという。Lancet誌2010年5月22日号(オンライン版2010年5月19日号)掲載の報告。

腹部大動脈瘤の血管内治療 vs. 非介入:動脈瘤関連死亡率は低下も全死因死亡率は同等

腹部大動脈瘤に対する血管内治療は、その技術開発意図だった「開腹手術が身体的に不適応な患者」に対しても長期的にはリスクを高め、コスト高の治療となっていることが、明らかになった。英国血管内治療(EVAR)試験研究グループの報告によるもので、NEJM誌2010年5月20日号(オンライン版2010年4月11日号)で発表された。開腹手術不適応な患者への血管内治療についてこれまで、介入によって死亡率が低下するかどうか非介入群との比較を行った試験データは、ほとんどなかった。

腹部大動脈瘤の血管内治療 vs. 開腹手術:長期転帰に有意差なし

腹部大動脈瘤に対する血管内治療 vs. 開腹手術の長期転帰を比較した大規模無作為化試験の結果、血管内治療の方が手術死亡率は低いが、長期全死亡率、動脈瘤関連死亡率は両群で有意差がないこと、長期的には血管内治療群の方がコスト高であることが明らかになった。英国血管内治療(EVAR)試験研究グループの報告によるもので、NEJM誌2010年5月20日号(オンライン版2010年4月11日号)で発表された。開腹手術は1951年以降、血管内治療は1986年以降行われるようになり、その後両群比較の30日手術死亡率の結果をエビデンスに血管内治療の有益性が支持されてきたが、長期転帰について比較を行った試験データはこれまで、ほとんどなかった。

外傷性脳障害後の1年間、患者の半分以上が大うつ病性障害を発症

外傷性脳障害を負った人の半数以上が、その後1年間に大うつ病性障害(MDD)を発症していることがわかった。なかでも、障害を負った時点やそれ以前にMDD歴のある人が、障害後の発症リスクが高かった。米国ワシントン大学リハビリテーション部門のCharles H. Bombardier氏らが、外傷性脳障害を負った500人超について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年5月19日号で発表した。