ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:129

南アジア新生児の重症市中感染症、原因と罹患状況/Lancet

 年間50万人以上の新生児が、重症細菌感染症が疑われる病態(possible serious bacterial infections:pSBI)により死亡しているが、その原因はほとんど知られていないという。バングラデシュ・Dhaka Shishu HospitalのSamir K. Saha氏らは、南アジアの新生児における市中感染症の罹患状況を、原因病原体別に調査するコホート研究「ANISA試験」を行い、Lancet誌2018年7月14日号で報告した。

出生前生化学的検査、母親の心血管リスクを識別か/BMJ

 世界中で多くの女性が、トリソミーおよび先天異常に関して、出生前の生化学的スクリーニングを受けている。カナダ・トロント大学のJoel G. Ray氏らは、出生前の生化学的スクリーニングで異常な結果を認めた女性は、心血管疾患のリスクが高い可能性があることを示した。出生前の生化学的スクリーニングの異常値は、妊娠高血圧腎症の高リスクと関連し、妊娠高血圧腎症は心血管疾患と関連するが、出生前の生化学的スクリーニングと母親の心血管疾患やそのサブタイプのリスクについて検証した試験は、これまでなかったという。BMJ誌2018年7月11日号掲載の報告。

心房細動の遠隔モニタリング検診は有効か/JAMA

 心房細動(AF)検出のための自己装着型のウエアラブル心電図(ECG)パッチを用いた遠隔モニタリングの効果と、そのような任意型検診(opportunistic screening)に類する検出戦略(積極的モニタリング)と臨床的帰結との関連を調べる検討が、米国・Scripps Translational Science InstituteのSteven R. Steinhubl氏らにより行われた。その結果、AF高リスクの高齢者におけるAF診断率は、試験登録後即時に開始した即時モニタリング群が、4ヵ月遅れて実施したdelayedモニタリング群と比べて高率であった。また、1年時点の評価で両モニタリング群を統合した積極的モニタリング群のほうが、非モニタリング群と比べてAF診断率は高く、抗凝固薬治療を開始した割合も高かった。医療サービスの利用率も高かったという。JAMA誌2018年7月10日号掲載の報告。

軽症急性脳卒中、アルテプラーゼ vs.アスピリン/JAMA

 後遺障害を伴わない軽症の急性虚血性脳卒中患者において、アルテプラーゼはアスピリンと比較し、90日後の機能予後良好とはならない可能性が明らかにされた。米国・シンシナティ大学のPooja Khatri氏らが「PRISMS試験(Potential of rtPA for Ischemic Strokes With Mild Symptoms trial)」の結果を報告した。ただし著者は、「本試験は非常に早期に終了となっているため、決定的な結論を下すことはできず、追加研究が必要である」とまとめている。急性虚血性脳卒中患者の半数以上は、軽度の神経障害(National Institutes of Health Stroke Scale[NIHSS]スコア0~5点)を有している。アルテプラーゼに関するこれまでの主な臨床試験では、NIHSSスコアが低い患者を組み入れてはいたが、明らかな機能障害がない患者はほとんど登録されていなかった。JAMA誌2018年7月10日号掲載の報告。

アロマターゼ阻害薬関連関節痛、鍼治療で軽減か?/JAMA

 アロマターゼ阻害薬関連関節痛を有する閉経後早期乳がん患者において、鍼治療は、偽治療または待機リスト入りとした対照(waitlist control)と比較して、6週時の関節痛を有意に改善した。ただし、観察された改善が臨床的に意義のあるものかは確実ではないという。米国・コロンビア大学医療センターのDawn L. Hershman氏らが、アロマターゼ阻害薬関連関節痛に対する鍼治療の有効性を検証した無作為化試験の結果を報告した。筋骨格系症状は、アロマターゼ阻害薬の有害事象で最も多く、治療中断に至ることが少なくない。これまで複数の小規模研究で、鍼治療がアロマターゼ阻害薬関連関節症状を改善する可能性があることが示唆されていたが、いずれも単一施設で実施され症例数が少なく盲検化されていなかった。JAMA誌2018年7月10日号掲載の報告。

開発進む、新たな結核菌ワクチン/NEJM

 結核を発症させやすく、世界的な感染症による死亡の主因となっている近年の結核菌(Mycobacterium tuberculosis)に対する、開発中のワクチン「H4:IC31」の第II相試験の結果が発表された。南アフリカ共和国結核ワクチンイニシアチブ(SATVI)のElisa Nemes氏らによる検討で、伝播率の高い環境においてワクチン接種の効果を示す所見が得られたという。著者は「今回の結果は、新規ワクチン候補の臨床的開発を示すものといえるだろう」と述べている。H4:IC31はサブユニットワクチンの候補で、前臨床モデルでは結核発症への防御効果が示された。また観察研究において、カルメット-ゲラン菌(BCG)の初回ワクチン接種が、結核感染への部分的防御効果がある可能性が示唆されていた。NEJM誌2018年7月12日号掲載の報告。

2017ACC/AHA高血圧GL導入で、米中の患者が激増/BMJ

 2017米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)高血圧ガイドラインが、米国と中国で採択された場合の影響を調べた結果、両国ともに高血圧症とされる人の数および治療対象者の数は激増し、米中45~75歳の半数超が高血圧症患者と呼ばれることになるとの見込みが、米国・テキサス大学サウスウェスタン医療センターのRohan Khera氏らにより示された。高血圧症患者は米国で26.8%増、中国では45.1%増、新規の治療推奨対象者は米国750万人、中国5,530万人、また、新規の治療強化対象者は米国1,390万人、中国3,000万人と試算されるという。2017ACC/AHA高血圧ガイドラインでは、高血圧症定義の血圧値が、現行の140/90mmHgから130/80mmHgに改訂された。BMJ誌2018年7月11日号掲載の報告。

コンゴで新たにエボラが流行、疫学的特色は?/Lancet

 コンゴ民主共和国・保健省のOly Ilunga Kalenga氏らThe Ebola Outbreak Epidemiology Teamは、2018年5月8日に同国北西部のEquateur Province(赤道州)で発生が報告されたエボラウイルス性疾患のアウトブレイクについて疫学的調査を行った。その結果、「現在も継続中のコンゴ民主共和国におけるエボラウイルスアウトブレイクは、以前のアウトブレイクと疫学的特色が似ている。早期の検出、速やかな患者の隔離、接触者の追跡およびワクチンプログラムの継続で、アウトブレイクをきちんとコントロールすることが必要である。予想される症例数は、疫学的状況が変化しなければ現状の対応能力を上回ることはない」と報告し、「情報は予備的なものであるが、継続調査および今回のアウトブレイク対応への基本的ガイドである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2018年6月29日号掲載の報告。

HPV検査の子宮頸部前がん病変の検出能/JAMA

 北米では、子宮頸がんのスクリーニングにおける細胞診検査と比較した、ヒトパピローマウイルス(HPV)検査の相対的な有効性に関する情報は十分でないという。カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のGina Suzanne Ogilvie氏らは、HPV検査陰性の女性は細胞診検査陰性の女性に比べ、48ヵ月時点で診断されたGrade3以上の子宮頸部上皮内腫瘍(CIN3+)およびGrade2以上のCIN(CIN2+)の割合が低かったことを、JAMA誌2018年7月3日号で報告した。

天然痘の治療薬登場か/NEJM

 1980年、天然痘の撲滅が宣言されたが、天然痘ウイルス(VARV)は依然として存在する。米国・SIGA Technologies社のDouglas W. Grosenbach氏らは、天然痘の治療薬として経口tecovirimatの検討を行い、2つの動物モデルにおける有効性と、ヒトでの安全性を確認したことを、NEJM誌2018年7月5日号で報告した。天然痘に対する有効な治療はないため、tecovirimatの開発が進められている。天然痘が自然に発症する状況での臨床試験は実施できないことから、有効性と安全性を評価する他の開発法が必要とされていた。

体脂肪量が死亡と強い正の相関/BMJ

 身体組成は直接的な評価が困難であるため、大規模な疫学研究では身体組成と死亡との関連は明らかにされていない。米国・ハーバードT.H. Chan公衆衛生大学院のDong Hoon Lee氏らは、身体計測予測式を用いた検討を行い、BMIと死亡との関連は、除脂肪量(lean body mass[除脂肪体重])および脂肪量(fat mass)という2つの身体組成と死亡との関係によって規定されることを示した。研究の成果は、BMJ誌2018年7月3日号に掲載された。多くの疫学研究により、BMIと死亡には、予想とは異なりJ字型またはU字型の関連が報告されており、肥満パラドックスと呼ばれる。このパラドックスは、BMIへの除脂肪体重や体脂肪量の寄与が、正当に評価されないことにより引き起こされている可能性もあるという。

重度血小板数低下の妊婦は妊娠合併症に注意/NEJM

 米国・オクラホマ大学健康科学センターのJessica A. Reese氏らが、妊婦約7,400例の血小板数を解析した結果、調査したすべての妊婦において、妊娠経過中に平均血小板数は減少し、この減少は妊娠初期(妊娠0~13週)に始まっていたが、妊娠関連合併症を有する妊婦でさえ重度の血小板減少はまれであることが明らかになったという。著者は、「血小板数が10万/mm3未満の妊婦では、妊娠または妊娠合併症以外の原因を調べなければならない」と提言している。合併症のない妊婦で血小板数が15万/mm3未満の場合、他の原因が確認されなければ妊娠性血小板減少症とされ、妊娠中毒症などの妊娠関連合併症を有する妊婦では、血小板数がさらに低下する可能性があるが、妊娠中の血小板減少症の発現頻度や重症度については明らかになっていなかった。NEJM誌2018年7月5日号掲載の報告。

実臨床で安全性が高いDOACは?/BMJ

 英国・ノッティンガム大学のYana Vinogradova氏らは、プライマリケアにおいて、直接経口抗凝固薬(DOAC)と出血・虚血性脳卒中・静脈血栓塞栓症・全死因死亡リスクの関連を、ワルファリンと比較検証する前向きコホート研究を行い、概してアピキサバンが最も安全で大出血・頭蓋内出血・消化管出血のリスクが減少したのに対して、リバーロキサバンと低用量アピキサバンは全死因死亡リスクの上昇と関連していたことを明らかにした。これまで、無作為化比較試験でワルファリンに対するDOACの非劣性が示されていたが、実臨床での観察試験はほとんどが心房細動患者を対象としていた。BMJ誌2018年7月4日号掲載の報告。

既治療の進行肝細胞がん、cabozantinibがOS、PFSを延長/NEJM

 ソラフェニブ既治療の進行肝細胞がんの患者において、cabozantinibによる治療はプラセボと比べて、全生存期間および無増悪生存期間の延長が認められたことが、米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのGhassan K. Abou-Alfa氏らによる第III相無作為化二重盲検試験の結果、示された。ただし有害事象の発現頻度は、cabozantinib群がプラセボ群の約2倍にみられた。cabozantinibは、肝細胞がんの進行や進行細胞がんの標準初回治療であるソラフェニブに対する耐性発現に関与するチロシンキナーゼ(血管内皮増殖因子受容体1、2、3、MET、AXLなど)を阻害する。研究グループは、既治療の進行肝細胞がん患者を対象に、cabozantinibとプラセボを比較した。NEJM誌2018年7月5日号掲載の報告。

CVリスク患者の術前運動耐容能評価にご用心/Lancet

 心臓以外の大手術前に行う運動耐容能の評価には、主観的評価は用いるべきではないことが、カナダ・Li Ka Shing Knowledge InstituteのDuminda N. Wijeysundera氏らによる国際共同前向きコホート試験の結果、示された。運動耐容能は大手術リスクアセスメントの重要な項目の1つであるが、それに対する医師の臨床上の主観的評価は必ずしも正確ではない。研究グループは、術前の主観的評価と、死亡や合併症を予測する代替フィットネスマーカー(心肺運動負荷試験[CPET:cardiopulmonary exercise testing]、DASI:Duke Activity Status Index、NT pro-BNP)を比較する検討を行った。Lancet誌オンライン版2018年6月30日号掲載の報告。

ペニシリンアレルギー、MRSAやC. difficileリスク増大と関連/BMJ

 「ペニシリンアレルギー」の記録はMRSAおよびC. difficileのリスク増大と関連しており、その背景にβラクタム系代替抗菌薬の使用増加が関与していることを、米国・マサチューセッツ総合病院のKimberly G. Blumenthal氏らが明らかにした。ペニシリンアレルギーは、薬物アレルギーでは最もよくみられ、患者の約10%を占めると報告されている。アレルギーに関する記録は処方行動に影響を及ぼすが、「ペニシリンアレルギー」と記録にあっても、必ずしもアレルギーすなわち、即時型過敏反応とは限らない。先行研究では、特定の抗菌薬の使用がMRSAおよびC. difficileのリスクを増大していることが判明しており、研究グループは、ペニシリンアレルギーとMRSAおよびC. difficile発生の関連を調べた。BMJ誌2018年6月27日号掲載の報告。

抗血小板療法を受けていない集団の大出血リスクは?/JAMA

 抗血小板療法を受けていない集団における、大出血および非致死的大出血の推定年間発生リスクを、ニュージーランド・オークランド大学のVanessa Selak氏らが算出した。同国のプライマリケア受診患者を対象とした前向きコホート研究の結果で、著者は「今回の結果を、心血管疾患(CVD)1次予防のための集団レベルのガイドラインに示すことができるだろう」と述べている。アスピリン治療開始の決定には、同治療によるベネフィットと有害性を考慮する必要がある。最も重大な有害性は大出血であるが、至適な地域集団における出血リスクのデータは不十分であった。JAMA誌2018年6月26日号掲載の報告。

肥満の2型糖尿病に、デュアルアゴニストが有効/Lancet

 開発中の糖尿病治療薬MEDI0382は、過体重・肥満の2型糖尿病患者に、臨床的に意味のある血糖値の低下と体重減少をもたらすことが、英国・MedImmune社のPhilip Ambery氏らの検討で示された。過体重・肥満の2型糖尿病患者の管理では、減量が重要となるが、臨床的に意味のある体重減少を達成した糖尿病治療薬は少ない。MEDI0382は、GLP-1とグルカゴン受容体のデュアルアゴニストであり、2型糖尿病と肥満の治療薬として開発が進められている。Lancet誌オンライン版2018年6月22日号掲載の報告。

転移のある大腸がんの3次治療、新たなVEGFR阻害薬が有効/JAMA

 転移を有する大腸がんの3次治療の選択肢は少ない。中国・同済大学上海東病院のJin Li氏らは、2ライン以上の化学療法を施行後に病勢が進行した転移を有する大腸がんの治療において、経口血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)阻害薬fruquintinibが、プラセボに比べ全生存(OS)期間を統計学的に有意に延長することを示した(FRESCO試験)。研究の成果は、JAMA誌2018年6月26日号に掲載された。fruquintinibは、高い選択性を持つVEGFR-1、-2、-3の低分子阻害薬であり、腫瘍の増殖と関連する血管新生を抑制する。

クローズドループシステムの人工膵臓、入院中の2型DMに有用/NEJM

 非集中治療下の2型糖尿病(DM)患者において、クローズドループ型インスリン注入システム、いわゆる人工膵臓の使用は、従来のインスリン療法と比較して、低血糖リスクは上昇せず血糖コントロールを有意に改善することを、スイス・ベルン大学のLia Bally氏らが、非盲検無作為化試験で明らかにした。DM患者は、入院すると急性疾患に対する代謝反応の変動、食事摂取の量やタイミングの変化、薬物性の一時的なインスリン感受性の急速な変化などによって、血糖コントロールの目標達成が難しくなることがある。クローズドループ型インスリン注入システムは、1型DM患者において血糖コントロールを改善できるという報告が増えていた。NEJM誌オンライン版2018年6月25日号掲載の報告。