ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:78

HCVワクチン第I/II相試験、慢性感染への予防効果認めず/NEJM

 C型肝炎ウイルス(HCV)に対する2種の遺伝子組み換えワクチンを接種するワクチンレジメン戦略について、重篤な有害事象は起きずレジメンの安全性は確認され、HCV特異的T細胞反応とHCV RNAピーク値の低下は認められたことが示された。一方で、HCVの慢性感染に対する予防効果は認められなかった。米国・ニューメキシコ大学のKimberly Page氏らが、第I/II相無作為化プラセボ対照試験の結果を報告した。HCV感染症に対しては、現在、安全で有効な治療法があるが、注射器で薬物を使用するHCV感染者がHCVの治療を求めることはまれであるという研究が示されており、HCV感染症を撲滅する取り組みにおいては、HCVの慢性感染を予防する安全で有効なワクチンが重要な要素になる。試験の結果を踏まえて著者は、「世界的な制御を成功させるには、HCV感染症予防のための他の戦略、スクリーニングおよび治療に加えて、予防的なワクチンが必要になるだろう」と述べている。NEJM誌2021年2月11日号掲載の報告。

肥満症へのセマグルチド皮下注、平均体重変化率14.9%減/NEJM

 過体重または肥満の成人に対し、GLP-1受容体作動薬セマグルチド2.4mgの週1回皮下投与とライフスタイルへの介入は、持続的で臨床的意義のある体重の減少と関連することが示された。英国・リバプール大学のJohn P. H. Wilding氏らが、アジアや欧州、北米、南米の16ヵ国129ヵ所の医療機関を通じて、1,961例を対象に行った無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果を報告した。肥満は世界的な健康課題で薬物治療のオプションは少ないが、今回の試験では、68週後の体重は平均約14.9%減少し、86%の被験者で体重が5%以上減少したことが報告された。NEJM誌オンライン版2021年2月10日号掲載の報告。

COVID-19関連小児多系統炎症性症候群、IVIG+ステロイドが有効/JAMA

 小児多系統炎症性症候群(MIS-C)の初期治療は、免疫グロブリン静注療法(IVIG)とメチルプレドニゾロンの併用療法がIVIG単独と比較し有効であることが、フランス国内のサーベイランスシステムのデータを用いた後ろ向きコホート研究の結果で明らかとなった。同国・パリ大学のNaim Ouldali氏らが報告した。MIS-Cは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の感染に関連する最も重症の小児疾患で、死に至る可能性もあるが、最適な治療戦略はわかっていない。JAMA誌オンライン版2021年2月1日号掲載の報告。

精製穀物の摂取量と死亡・心血管リスクが相関/BMJ

 精製した穀物の取り過ぎは、死亡および主要心血管イベントのリスク増加と関連することが、低・中所得国を含む世界21ヵ国で実施された前向きコホート研究「Prospective Urban Rural Epidemiology(PURE)研究」の結果、明らかとなった。インド・St John's Research InstituteのSumathi Swaminathan氏らが報告した。これまで、全粒穀物について、摂取量が多いほど死亡および心血管疾患のリスクは低下することが知られていたが、精製穀物との明確な関連は観察されていなかった。著者は今回の結果から、「世界的に、精製穀物の消費量減少を検討する必要がある」とまとめている。BMJ誌2021年2月3日号掲載の報告。

HPVワクチン接種と33の重篤な有害事象に関連なし、韓国/BMJ

 韓国のヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種を受けた11~14歳の女子において、コホート分析では33種の重篤な有害事象のうち片頭痛との関連が示唆されたものの、コホート分析と自己対照リスク間隔分析(self-controlled risk interval[SCRI] analysis)の双方でワクチン接種との関連が認められた有害事象はないことが、同国・成均館大学校のDongwon Yoon氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2021年1月29日号に掲載された。HPVワクチン接種後の重篤な有害事象は、このワクチンの接種に対する大きな懸念と障壁の1つとなっている。HPVワクチンの安全性に関する実臨床のエビデンスは、西欧では確立しているが、アジアのエビデンスは十分ではないという。

移動式脳卒中ユニット、3ヵ月後の全般的障害を改善/JAMA

 急性期虚血性脳卒中患者の救急搬送では、移動式脳卒中ユニット(MSU)の出動は従来の救急車と比較して、修正Rankinスケール(mRS)で評価した3ヵ月後の全般的障害の状態が有意に良好であることが、ドイツ・シャリテ大学病院ベルリンのMartin Ebinger氏らが実施したB_PROUD試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2021年2月2日号に掲載された。急性期虚血性脳卒中における血栓溶解療法の効果は時間依存的であることが知られている。MSUは、CTスキャナーを装備し、病院到着前に血栓溶解療法が行えるよう設計された救急車であり、治療開始までの時間を短縮し、血栓溶解療法の施行率を増加させ、入院前のトリアージを改善すると報告されているが、脳卒中発症後の機能的アウトカムに及ぼすMSUの潜在的な効果は明らかではないという。

中高年の心血管死亡率、景気動向との関連は?/JAMA

 米国の中高年層において、郡レベルの経済的繁栄の相対的増加と、心血管死亡率のわずかだが相対的減少とは有意に関連していることが示された。米国・ペンシルベニア大学のSameed Ahmed M. Khatana氏らが、2010~17年の死亡率に関する後ろ向き研究で明らかにした。米国における非高齢成人の心血管死亡率は、過去10年間でその低下が停滞しており、一部の集団では増加している。この背景には所得格差の拡大があると考えられているが、心血管死亡率と景気動向が関連するかどうかはこれまで不明であった。JAMA誌2021年2月2日号掲載の報告。

アジスロマイシン、COVID-19入院患者への効果は?/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者において、アジスロマイシンによる治療は生存期間および臨床転帰(侵襲的人工呼吸器装着または死亡)を改善しなかったことが、無作為化非盲検対照プラットフォーム試験「RECOVERY試験」の結果、明らかとなった。英国・オックスフォード大学のPeter W. Horby氏ら「RECOVERY試験」共同研究グループが報告した。アジスロマイシンは免疫調節作用を有していることから、COVID-19に対する治療として提案されてきたが、これまでの無作為化試験では、COVID-19の治療におけるマクロライド系抗菌薬の臨床的有益性は示されていなかった。結果を踏まえて著者は、「COVID-19入院患者に対するアジスロマイシンの使用は、明らかに抗菌薬の適応である患者に制限されるべきである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2021年2月2日号掲載の報告。

スタチンの「不必要な」無作為化試験、中国で2千件超/BMJ

 中国で、冠動脈疾患に対するスタチン使用が臨床ガイドラインで強く推奨され始めた翌年以降に、スタチンの効果を検証するとして実施された不必要な(redundant)無作為化比較試験は2,000件超で、これら試験の被験者で対照群に割り付けられ、スタチンを服用しなかった被験者で発生した主要有害心イベント(MACE)は3,000例以上で、うち死亡が約600例だった。米国・ジョンズ・ホプキンズ大学のYuanxi Jia氏らが、2019年までに発表された冠動脈疾患に対するスタチンの無作為化比較試験を再調査し、明らかにした。不必要な臨床試験は資源を浪費し、とくにプラセボ対照試験の設定では、効果的な治療が受けられない患者に害を及ぼす可能性がある。科学出版物の最大の生産国となっている中国本土での臨床試験については、その必要性が深刻な課題になっていることが懸念されていた。今回の結果を踏まえて著者は、「患者を保護するため不必要な臨床試験を改める早急な改革が必要だ」とまとめている。BMJ誌2021年2月2日号掲載の報告。

中国製COVID-19ワクチン、アジュバント併用で免疫反応増大/Lancet

 中国のバイオテクノロジー企業Clover Biopharmaceuticalsが開発中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン「SCB-2019」について、免疫増強剤(AS03またはCpG/Alum)の配合投与(アジュバントワクチン)により、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対する強力な液性免疫および細胞性免疫が認められ、高い中和抗体価も得られたことが示された。西オーストラリア大学のPeter Richmond氏らによる第I相無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果で、著者は、「いずれのアジュバントワクチンとも忍容性は良好であり、さらなる臨床開発に適する」と述べている。SARS-CoV-2ワクチンの開発加速の一手段として、アジュバントワクチンの検討が進められている。著者らは、2つの異なるアジュバントを組み合わせたスパイクタンパク質安定化三量体(S-Trimer)を含有する、タンパク質サブユニットワクチン候補SCB-2019の用量設定とアジュバントの正当性を検証した。Lancet誌オンライン版2021年1月29日号掲載の報告。

低・中所得国は、がん手術後の転帰が不良/Lancet

 がん患者の80%が手術を必要とするが、術後の早期の転帰に関する低~中所得国(LMIC)の比較データはほとんどないという。英国・エディンバラ大学のEwen M. Harrison氏らGlobalSurg Collaborative and NIHR Global Health Research Unit on Global Surgeryの研究グループは、とくに疾患の病期や合併症が術後の死亡に及ぼす影響に着目して、世界の病院のデータを用いて乳がん、大腸がん、胃がんの術後転帰を比較した。その結果、(1)LMICでは術後の死亡率が高いが、これは病期が進行した患者が多いことだけでは十分に説明できない、(2)術後合併症からの患者救済能力(capacity to rescue)は、有意義な介入のための明確な機会をもたらす、(3)術後の早期死亡は、一般的な合併症の検出と介入を目指した、周術期の治療体制の強化に重点を置いた施策によって抑制される可能性があることなどが示された。Lancet誌2021年1月21日号掲載の報告。

代謝改善手術、2型糖尿病で長期効果が明らかに/Lancet

 2型糖尿病患者の長期管理において、代謝改善手術(metabolic surgery)は従来の内科的治療と比較して、10年時の糖尿病寛解率が高く、糖尿病関連合併症も少ないことが、イタリア・Fondazione Policlinico Universitario Agostino Gemelli IRCCSのGeltrude Mingrone氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌2021年1月23日号に掲載された。従来の肥満減量手術(bariatric surgery)の観察研究では、糖尿病の寛解が長期に持続する可能性が示唆されているが、これらの知見を2型糖尿病の広範な患者集団に外挿することは困難だという。また、これまでに、2型糖尿病への代謝改善手術の無作為化対照比較試験で、5年を超えるデータは得られていなかった。

漿液性卵巣がん、Wee1阻害薬追加でPFS延長/Lancet

 high-grade漿液性卵巣がんの治療において、Wee1阻害薬adavosertib(AZD1775、MK1775)とゲムシタビンの併用はゲムシタビン単独と比較して、無増悪生存(PFS)期間を有意に延長させることが、カナダ・プリンセスマーガレットがんセンターのStephanie Lheureux氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌2021年1月23日号で報告された。Wee1キナーゼは、細胞周期のG2/M期チェックポイントの重要な制御因子で、G2/M期チェックポイントは損傷したDNAの有糸分裂への進入を防止する。high-grade漿液性卵巣がんは、TP53遺伝子変異の発現頻度が高く複製ストレスが高度ながんであり、TP53遺伝子変異はS期およびG2期チェックポイントへの依存性を増大させる。adavosertibは、Wee1を阻害することでG2期チェックポイント脱出を誘導することから、TP53遺伝子変異を有する腫瘍に有効と考えられている。adavosertib+ゲムシタビン療法は、前臨床試験で相乗効果を示し、早期の臨床試験では有望な抗腫瘍活性が確認されている。

悪性胸膜中皮腫の1次治療、ニボルマブ+イピリムマブがOS改善/Lancet

 未治療の切除不能な悪性胸膜中皮腫(MPM)の治療において、ニボルマブ+イピリムマブ療法は標準的化学療法と比較して、全生存(OS)期間を4ヵ月延長し、安全性プロファイルは同程度であることが、オランダ・ライデン大学医療センターのPaul Baas氏らが行った「CheckMate 743試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2021年1月30日号で報告された。MPMの承認済みの全身化学療法レジメンは、生存に関する有益性は中等度であり、転帰は不良だという。ニボルマブ+イピリムマブ療法は、非小細胞肺がんの1次治療を含む他の腫瘍で臨床的有益性が示されている。

TNF阻害薬効果不十分のRA、トシリズマブvs.リツキシマブ/Lancet

 TNF阻害薬で効果不十分の関節リウマチ患者において、RNAシークエンシングに基づく滑膜組織の層別化は病理組織学的分類と比較して臨床効果とより強く関連しており、滑膜組織のB細胞が低発現または存在しない場合は、リツキシマブよりトシリズマブが有効であることを、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のFrances Humby氏らが、多施設共同無作為化非盲検第IV相比較試験「rituximab vs tocilizumab in anti-TNF inadequate responder patients with rheumatoid arthritis:R4RA試験」の16週間の解析結果、報告した。生物学的製剤は関節リウマチの臨床経過を大きく変えたが、40%の患者は十分な効果を得られないことが示唆されており、その機序はいまだ明らかになっていない。

COVID-19外来患者への中和抗体2剤併用療法は有効か?/JAMA

 軽症~中等症新型コロナウイルス感染症(COVID-19)外来患者において、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の中和抗体であるbamlanivimabとetesevimabの併用療法は、プラセボと比較し11(±4)日目のSARS-CoV-2ウイルス量を有意に減少させることが確認された。米国・ベイラー大学医療センターのRobert L. Gottlieb氏らが、COVID-19外来患者を対象に、bamlanivimab単独療法またはbamlanivimab+etesevimab併用療法の有効性と安全性を検討する無作為化二重盲検プラセボ対照第II/III相試験「BLAZE-1試験」の結果を報告した。すでにBLAZE-1試験第II相コホートの中間解析として、bamlanivimabによるウイルス量減少効果が報告され、この結果に基づき米国では2020年11月より、軽症~中等症COVID-19患者で成人および12歳以上の小児(体重40kg以上)、かつ、重症化または入院するリスクが高い患者に対するbamlanivimabの緊急使用が許可されている。JAMA誌オンライン版2021年1月21日号掲載の報告。

TIA発症後90日脳卒中リスク、時代とともに低下傾向/JAMA

 米国における1948~2017年の一過性脳虚血発作(TIA)の推定罹患率は1.19/1,000人年であり、脳卒中リスクは、TIA罹患者がTIA非発症者との比較において有意に高かった。一方でTIA後90日の脳卒中リスクは時代とともに低下しており、2000~17年では1948~85年に比べ有意に低下していた。TIAとその後の脳卒中リスクとの関連を正確に推定することは予防への取り組みを改善し、脳卒中の負荷を限定的なものとすることに役立つとして、米国・ハーバード大学医学大学院のVasileios-Arsenios Lioutas氏らが、フラミンガム心臓研究の参加者約1万4,000例のデータを解析し明らかにした。JAMA誌2021年1月26日号掲載の報告。

脈拍触知不能後の心臓活動再開率は14%、4分後に再開例も/NEJM

 生命維持措置を停止し脈拍触知不能後に、少なくとも1サイクルの心臓活動の一過性の再開が、心電図・血圧波形の後ろ向き解析で認められた患者は14%で、同様の再開率は、ベッドサイドの医師の前向き観察でわずかに1%確認されるにとどまったことが示された。カナダ・Children’s Hospital of Eastern OntarioのSonny Dhanani氏らが、これまで臓器提供に関して心停止後の脈拍触知不能時間は最短でもどれくらい必要なのか、十分な研究はされていなかったことから、631例を対象に前向き観察試験を実施。試験では、脈拍触知不能後の心臓活動の再開までの最長経過時間は4分20秒だったことも明らかにされた。NEJM誌2021年1月28日号掲載の報告。

COVID-19入院患者、ACEI/ARB継続は転帰に影響しない/JAMA

 入院前にアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の投与を受けていた軽度~中等度の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者では、これらの薬剤を中止した患者と継続した患者とで、30日後の平均生存・退院日数に有意な差はないことが、米国・デューク大学臨床研究所のRenato D. Lopes氏らが実施した「BRACE CORONA試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2021年1月19日号で報告された。アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)は、COVID-19の原因ウイルスである重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の機能的な受容体である。また、RAAS阻害薬(ACEI、ARB)は、ACE2をアップレギュレートすることが、前臨床試験で確認されている。そのためCOVID-19患者におけるACEI、ARBの安全性に対する懸念が高まっているが、これらの薬剤が軽度~中等度のCOVID-19入院患者の臨床転帰に及ぼす影響(改善、中間的、悪化)は知られていないという。

変形性関節症の痛みに、SNRIが有効な可能性/BMJ

 セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)の疼痛や能力障害(disability)に対する効果は小さく、背部痛への臨床的な意義はないものの、変形性関節症への臨床的に意義のある効果は排除できず、ある程度有効な可能性があることが、オーストラリア・シドニー大学のGiovanni E. Ferreira氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2021年1月20日号で報告された。抗うつ薬は、背部痛(神経根症状の有無を問わず)や股関節・膝の変形性関節症の治療に広く用いられており、多くの診療ガイドラインがこれを推奨している。一方、背部痛や股関節・膝の変形性関節症への抗うつ薬の使用を支持するエビデンスは十分でないという。