中等度~重度うつ病に対するpsilocybin vs.エスシタロプラム/NEJM 英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのRobin Carhart-Harris氏らは、6週間の第II相無作為化二重盲検比較試験の結果、中等度~重度大うつ病性障害に対しpsilocybinは選択的セロトニン再取り込み阻害薬のエスシタロプラムと比較して、6週時のQIDS-SR-16うつ症状スコアの変化に基づく抗うつ作用に有意差はないことを明らかにした。psilocybinおよびその代謝物のシロシンは催幻覚物質で、その作用は主に5-HT2A受容体アゴニスト作用による。これまでに、治療抵抗性うつ病患者を対象とした小規模な非盲検試験ではpsilocybinの抗うつ症状改善効果が報告されていた。しかし、確立された既存のうつ病治療薬とpsilocybinの直接比較は行われていなかった。著者は今回の結果に基づき、「psilocybinと既存の抗うつ薬を比較検証する、より大規模で長期的な試験が必要である」とまとめている。NEJM誌2021年4月15日号掲載の報告。
日本における認知症専門チームに対する金銭的インセンティブの効果 これまで、急性期治療環境下における認知症治療の質は批判的にみられていた。2016年に日本において、急性期病院の認知症専門家チームによる認知症ケアに対する金銭的インセンティブが導入された。筑波大学の森田 光治良氏らは、この金銭的インセンティブが、短期的な結果(院内死亡率および30日間の再入院)に対して有用であったかを調査した。International Journal of Geriatric Psychiatry誌オンライン版2021年3月17日号の報告。
統合失調症患者におけるアセナピンとブレクスピプラゾールの治療継続率 東京・車庫前こころのクリニックの井上 雄一氏らは、アセナピンとブレクスピプラゾールの治療継続率の比較およびブレクスピプラゾールの臨床効果に影響を及ぼす因子を特定するため、検討を行った。Brain and Behavior誌オンライン版2021年3月13日号の報告。 実臨床下で、アセナピン(73例)またはブレクスピプラゾール(136例)を処方した統合失調症患者を対象に、レトロスペクティブ研究を行った。 主な結果は以下のとおり。
産後うつ病や不安神経症のリスク因子 うつ病や不安神経症は、産後頻繁に発生する疾患であり、早期発見と早期治療が必要とされる。産後うつ病のリスク因子に関するエビデンスは、早期発見につながる可能性はあるものの、決定的なものはこれまでなかった。オランダ・University of TwenteのAngarath I van der Zee-van den Berg氏らは、妊娠前、妊娠中、妊娠後の産後うつ病および不安症のリスク因子の特定を試みた。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2021年3月4日号の報告。 ポストアップ研究の介入群1,406例より母親のデータを取得した。
難治性片頭痛に対する抗CGRPモノクローナル抗体の効果 スペイン・Hospital Universitari Vall d'HebronのMarta Torres-Ferrus氏らは、難治性片頭痛患者に対する抗CGRPモノクローナル抗体の効果について、評価を行った。Journal of Neurology誌オンライン版2021年3月27日号の報告。 対象は、1ヵ月間に8日以上の頭痛が認められ、3回以上予防薬を服用しなかった片頭痛患者。人口統計学的、医学的情報および片頭痛の病歴を収集した。ベースライン時および12週間後に電子頭痛日誌を用いて患者報告アンケートを実施し、1ヵ月間の頭痛日数、1ヵ月間の片頭痛日数、痛みの強さ(0~3の数値回答)、鎮痛薬の使用に回答した。患者は、改善頻度に応じて、治療反応50%以上、75%以上、100%に分類された。
急性期精神科病棟における音楽療法と鎮静薬使用との関係 音楽療法は、患者の興奮状態を落ち着かせる手助けとなるだけでなく、全体的な頓服薬の投与を減少させる可能性がある。米国・SUNY Upstate Medical UniversityのTrevor Scudamore氏らは、精神科病棟での興奮のマネジメントにおいて薬理学的な介入の補助または代替として音楽療法が有効であるか、その実現可能性について、検討を行った。BMC Psychiatry誌2021年3月6日号の報告。 対象は172例。試験期間は、音楽なしの3ヵ月間と音楽のde-escalation(段階的縮小)オプションのある3ヵ月間で構成された6ヵ月間。音楽療法期間中、患者は好みのジャンルを選択し、最大30分間ワイヤレスヘッドホンの提供が行われた。興奮および不安症状に対して投与された頓服薬(経口、舌下、筋注)の数は、薬局の記録より収集した。患者および看護師より、音楽介入に関する自己報告調査を収集した。
無常と中道:認知症の人に処方され過ぎる中枢神経作動薬(解説:岡村毅氏)-1377 たとえば90歳の軽度認知症の人から、何もかもが昔と違う、うつになってしまった、「薬をください」と切々と訴えられることがある。そして家族もまた「元気になる薬をください」「専門医でしょ」と訴えたりする。とはいえ病的な「うつ」ではない。医学や精神科への高い期待や信頼を感じる一方で、安直に薬など出しては本人を不幸にしてしまうので、なかなかつらい局面である。さて本論文は、米国のメディケアのデータベースから、認知症をもつ地域在住の高齢者の14%が、中枢神経作動薬の多剤併用状態であるという報告だ。薬剤としては「抗うつ薬」「抗精神病薬」「ベンゾジアゼピン受容体作動薬(睡眠薬、抗不安薬)」の順で多かった。組み合わせとしては「抗うつ薬」「抗てんかん薬」「抗精神病薬」の組み合わせが多かった。
うつ病患者の睡眠に対する運動の影響~メタ解析 不眠症は、うつ病の発症、経過、再発を予測する因子である。しかし、うつ病における不眠症治療オプションに関するシステマティックレビューは十分に行われていなかった。スイス・バーゼル大学のGavin Brupbacher氏らは、うつ病患者の睡眠に対する運動療法の影響を調査するため、メタ解析を実施した。Sleep Medicine Reviews誌オンライン版2021年1月23日号の報告。 7,725件をスクリーニングし、13種類の治療にランダム化された17研究(1,645例)を定量的合成に含めた。
乳児への栄養方法とその期間が母親の産後うつ病に及ぼす影響~JECS研究 母乳による育児は、世界中で推奨されている。母乳育児と産後うつ病との関係を調査した研究はいくつか行われているが、矛盾した結果が得られている。富山大学の島尾 萌子氏らは、生後1~6ヵ月の乳児への栄養方法が母親の産後うつ病に及ぼす影響、産後うつ病に対する授乳中の母親が行ったことの影響について調査を行った。Journal of Affective Disorders誌2021年4月15日号の報告。 JECS(子どもの健康と環境に関する全国調査)に参加した親子のデータを分析した。対象は、産後1ヵ月で抑うつ症状を呈さなかった母親7万1,448人。調査には、自己記入式質問票を用いた。
不妊症女性のうつ病有病率~メタ解析 不妊症に悩む女性におけるうつ病などのメンタルヘルスの問題は、男性よりも深刻な健康上の問題である。うつ病は、個人の健康に悪影響を及ぼし、生活の質を低下させる可能性がある疾患である。イラン・Shahid Beheshti University of Medical SciencesのZahra Kiani氏らは、不妊症の治療反応に対するうつ病の影響を考慮したうえでシステマティックレビューおよびメタ解析を実施し、不妊症女性におけるうつ病有病率を調査した。Fertility Research and Practice誌2021年3月4日号の報告。