精神科/心療内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:145

女性への暴力に関する論文への精神医学的なコメント(解説:岡村毅氏)

21世紀に入ってから行われた主に国家規模の調査を世界中で集めてWHOにより分析された論文である。15歳から49歳の女性のうち、4人に1人以上がパートナーからの暴力(性的・身体的)を経験し、7人に1人以上は直近の過去1年で暴力を経験している。21世紀も5分の1が過ぎたが、相変わらず人間は暴力的だ。ウクライナの戦争などを見ても19世紀から大して変わっていないように見える。アクセス可能な方は論文のFigure 4をぜひご覧いただきたい。濃い赤は過去1年の女性への暴力が多い国であるが、アフガニスタン、南スーダン、コンゴ民主共和国、東ティモール、パプアニューギニアなどは言うまでもなく最近の紛争地域である。

アルツハイマー病治療薬aducanumabのFDA承認に対する世論調査

 FDAによるアルツハイマー病治療薬aducanumabの承認については、専門家の間でさまざまな意見が出されているが、このことに関する世論については、ほとんど知られていない。米国・ジョンズホプキンス大学School of Public HealthのMichael J. DiStefano氏らは、米国成人を対象に、aducanumabのFDA承認に対する世論調査を実施した。Journal of the American Geriatrics Society誌オンライン版2022年2月7日号の報告。  対象は、35歳以上の米国成人。aducanumabの承認に関する意見、FDAに対する批判因子の特定、政策対応に関する意見(メディケアおよびメディケイドサービスセンターによる全国的な補償範囲決定に関連する対応など)を調査した。調査には、全国世論調査センターAmeriSpeakパネルから得られた確率ベースのサンプルを用いて、オンライン(英語およびスペイン語)で調査した。パネルおよび調査デザインの選択確率は、人口統計による人口分布と期待反応率の違いにより算出した。選択確率と無回答を調整するため、survey weightを用いて分析した。

新型コロナウイルス感染症のメンタルヘルス関連の後遺症(解説:岡村毅氏)

新型コロナウイルス感染症の後遺症としてメンタルヘルス関連の症状は多い。この論文によると精神疾患の診断を受ける可能性は約1.5倍に、精神疾患に対する処方を受ける可能性は約1.9倍に増える。さらに、新型コロナウイルス感染症で入院した人に限ると、精神疾患の診断を受ける可能性は約3.4倍に、精神疾患に対する処方を受ける可能性は約5.0倍に増えるとのことだ。認知機能低下も約1.8倍に増えている点も注目したい。本研究では、新型コロナウイルスに感染した米国の退役軍人15万人強(平均年齢63歳、男性が90%)でコホートをつくり、これを新型コロナウイルスに感染していない同時代の退役軍人の対照群と比較している。さらに、この時代に生きる人は世界的パンデミックを体験しているが、われわれ皆がそうであるように人生観・世界観に大いに影響を受けている。そこでその影響を除くべく、新型コロナウイルス出現前の時代でも対照群をつくっている。さらにさらに、インフルエンザでの入院とも比較するという、用意周到なデザインである。

抗CGRP抗体フレマネズマブの使用継続による効果の変化

 片頭痛の予防的治療の主な目的は、発作頻度の減少、重症度の軽減、期間の改善、片頭痛関連障害の軽減などである。これまでの片頭痛予防薬では、投与を継続するたびに、次の投与を行う前に臨床症状の再発または悪化が認められる減弱効果が報告されている。米国・The Headache Center of Southern CaliforniaのAndrew M. Blumenfeld氏らは、片頭痛予防に対する抗CGRP抗体フレマネズマブの四半期ごとまたは月1回投与において、継続投与により有効性の減弱効果が認められるかについて、検討を行った。Headache誌2020年11月号の報告。

若者がADHD治療薬の使用を中止する理由

 注意欠如多動症(ADHD)は、成人期まで継続する可能性のある神経発達障害である。ADHD治療薬は、継続的に使用することが重要であるにもかかわらず、若者の多くは成人期にやめてしまうことが少なくない。そのため、成人期よりADHD治療薬を再開することもあり、中止が時期尚早であった可能性が示唆されている。英国・エクセター大学のDaniel Titheradge氏らは、若者がADHD治療薬を中止してしまう理由について、調査を行った。Child: Care, Health and Development誌オンライン版2022年1月31日号の報告。

高齢者に対するベンゾジアゼピン使用の安全性

 高齢者に対するベンゾジアゼピン(BZD)使用については、とくに長期使用に関して、各ガイドラインで違いが認められる。カナダ・トロント大学のSimon Jc Davies氏らは、高齢者に対する継続的または断続的なBZD使用に関連するリスクの比較を、人口ベースのデータを用いて実施した。Journal of Psychopharmacology誌オンライン版2022年2月1日号の報告。  医療データベースよりBZDの初回使用で抽出されたカナダ・オンタリオ州の66歳以上の成人を対象に、人口ベースのレトロスペクティブコホート研究を実施した。初回使用から180日間の継続的および断続的なBZD使用は、性別、年齢、傾向スコアでマッチ(比率1:2)させ、その後最大360日フォローアップを行った。主要アウトカムは、転倒に伴う入院および救急受診とした。アウトカムのハザード比(HR)は、Cox回帰モデルを用い算出した。

複雑性PTSD診断におけるICD-11導入後の期待

 複雑性PTSDはICD-11で初めて定義された疾患であり、PTSD診断の特徴であるトラウマ的症状に加え、自己組織化の障害(感情調節障害など)が認められる疾患である。デンマーク・オールボー大学のAshild Nestgaard Rod氏らは、複雑性PTSDの診断に対するICD-11の臨床的有用性について、調査を行った。European Journal of Psychotraumatology誌2021年12月9日号の報告。  ICD-11に含まれる国際的なフィールド調査、構成および妥当性の分析をレビューし、診断方法、国際トラウマアンケート(ITQ)、国際トラウマインタビュー(ITI)を調査した。複雑性PTSDと境界性パーソナリティ障害(BPD)の治療、臨床的関連性の違いを明らかにするため、独立した分析を実施した。複雑性PTSD治療への影響は、既存のガイドラインと臨床ニーズを参照し、検討した。

精神科入院患者へのベンゾジアゼピン使用に対するCOVID-19の影響

 オーストラリア・Cumberland HospitalのNancy Zaki氏らは、COVID-19が急性期精神医学においてベンゾジアゼピンの使用増加に影響を及ぼすかについて、検討を行った。Australasian Psychiatry誌オンライン版2022年2月10日号の報告。  2019~20年の2年間にわたり、2つの急性期精神科入院患者ユニットにおけるベンゾジアゼピン使用率を評価した。同時期における経口アトルバスタチン使用率を比較対象として使用した。  主な結果は以下のとおり。 ・2020年の総入院患者数は減少したものの、2020年4月~12月のベンゾジアゼピン使用量は、2019年の同時期と比較し、有意な増加が認められた。 ・パンデミックの制限が緩和された後、使用量はさらにピークを迎えていた。これは、救急でのメンタルヘルス症状および急性期精神科入院の割合の高さによるものであると考えられる。 ・COVID-19による退院制限も、喫煙のさらなる制限につながっていた。  著者らは「COVID-19パンデミックにより、ベンゾジアゼピン使用は増加した。パンデミックが急性の精神医学的症状に及ぼす影響を理解するためには、より多くの研究が求められる」としている。

富とうつ病との関係

 うつ病と収入との関係については、逆相関が認められるといわれている。しかし、富とうつ病との関連はあまりわかっていない。米国・ボストン大学のCatherine K. Ettman氏らは、富とうつ病との関係についてこれまでの文献から何がわかっているかについて調査するため、スコーピングレビューを実施した。Brain and Behavior誌オンライン版2022年2月8日号の報告。  2020年7月19日までの報告を、Medline(PubMed経由)、Embase、PsycINFO、PsycArticles、EconLit、SocINDEXより検索した。抽出された96文献をレビューした。文献の主な特徴は、発行年、サンプルサイズ国、研究デザイン、うつ病の定義、富の定義、富とうつ病の関係であった。詳細なチャートレビューには、32の縦断研究を含めた。  主な結果は以下のとおり。

親密な男性パートナーによる暴力、15~49歳女性の27%が経験/Lancet

 持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット5.2では、「人身売買や性的、その他の種類の搾取など、すべての女性および女児に対する、公共・私的空間におけるあらゆる形態の暴力の排除」がうたわれている。世界保健機関(WHO)のLynnmarie Sardinha氏らは、今回、この目標の達成状況を評価するために、366件の研究のデータを解析し、2018年時点で、年齢15~49歳の女性の4人に1人以上(27%)が、生涯において親密な男性パートナーからの身体的または性的、あるいはその両方の暴力を経験し、7人に1人(13%)は調査の過去1年以内に暴力を受けたと推定されると明らかにした。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2022年2月16日号で報告された。  研究チームは、SDGsのターゲット5.2の達成に向けた各国政府の取り組みの進捗状況を監視する目的で、親密な男性パートナーによる女性への暴力の世界的な発生状況を調査した(英国・国際開発省[DFID、現在は外務・英連邦・開発省に統合]などの助成を受けた)。