神経内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:48

日本人片頭痛患者における併存疾患

 大阪・富永病院の菊井 祥二氏らは、日本における片頭痛とさまざまな精神的および身体的な併存疾患との関連を調査した。その結果、片頭痛患者では、そうでない人と比較し、精神的および身体的な併存疾患の有病率が高く、これまで日本では報告されていなかった新たな関連性も確認された。本研究結果は、片頭痛患者のケア、臨床診療、アウトカムを複雑にする可能性のある併存疾患に関する知見として役立つであろうとしている。BMJ Open誌2022年11月30日号の報告。  対象は18歳以上の日本在住者。国民健康調査2017年に回答した日本人サンプルのうち3万1人のデータを用いて、横断的研究を実施した。片頭痛患者378例および非片頭痛患者2万5,209例を特定した。1:4の傾向スコアマッチング後、非片頭痛患者を1,512例に絞り込んだ。片頭痛患者と非片頭痛患者における併存疾患の有病率および傾向スコアをマッチさせた有病率のOR(POR)は、精神的および身体的な併存疾患ごとに評価を行った。1ヵ月当たりの頭痛日数が15日未満の片頭痛患者と15日以上の片頭痛患者についても検討を行った。

lecanemab、FDAがアルツハイマー病治療薬として迅速承認/エーザイ・バイオジェン

 エーザイとバイオジェン・インクは2023年1月7日付のプレスリリースで、可溶性(プロトフィブリル)および不溶性アミロイドβ(Aβ)凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体lecanemabについて、米国食品医薬品局(FDA)がアルツハイマー病の治療薬として、迅速承認したことを発表した。  本承認は、lecanemabがADの特徴である脳内に蓄積したAβプラークの減少効果を示した臨床第II相試験(201試験)の結果に基づくもので、エーザイでは最近発表した大規模なグローバル臨床第III相検証試験であるClarity AD試験のデータを用い、フル承認に向けた生物製剤承認一部変更申請(sBLA)をFDAに対して速やかに行うとしている。

交代勤務や夜勤と将来の認知症リスク~メタ解析

 交代勤務や夜勤が認知症リスクと関連しているかについては、相反するエビデンスが報告されている。中国・First Clinical Medical College of Shaanxi University of Traditional Chinese MedicineのZhen-Zhi Wang氏らは、交代勤務や夜勤と認知症との潜在的な関連性を明らかにするため、関連文献をシステマティックに検索し、メタ解析を実施した。その結果、夜勤は認知症のリスク因子である可能性が示唆された。Frontiers in Neurology誌2022年11月7日号の報告。  交代勤務や夜勤と認知症との関連を調査するため、2022年1月1日までに公表された文献をPubMed、Embase、Web of Scienceよりシステマティックに検索した。独立した2人の研究者により、検索した文献、抽出データの適格性がレビューされた。PRISMAガイドラインに従ってシステマティック評価およびメタ解析を実施した。メタ解析には、Stata 16.0を用いた。

片頭痛と認知症との関連~コホート研究

 片頭痛と認知症は、いずれも公衆衛生上の主要な問題と関連しているが、両疾患の関係を理解するためには、多くの知見が必要とされる。デンマーク・コペンハーゲン大学のS. Islamoska氏らは、片頭痛と認知症との関連を明らかにするためコホート研究を実施し、さまざまな視点より評価を行った。その結果、認知症発症リスクの上昇は、片頭痛の診断と関連しているが、片頭痛の治療薬使用とは関連していないことが示された。

コロナ死亡例、脳を含む広範囲に長期ウイルスが存在/Nature

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死亡者の体内には、呼吸器をはじめ非呼吸器、脳に至るまで広く長期に渡ってSARS-CoV-2が存在していることが、新たな研究で判明した。米国国立衛生研究所(NIH)のSydney R. Stein氏らによる本研究結果は、Nature誌オンライン版2022年12月14日号に掲載された。  COVID-19は、重症の感染時に多臓器不全を引き起こすことが知られており、一部の患者には罹患後症状と呼ばれる症状が長く続く。しかし、呼吸器以外の感染負荷やウイルスが消失するまでの時間、とくに脳においては十分に解明されていない。  研究者らは、COVID-19の感染後に死亡した44例の患者の完全剖検を行い、うち11例の患者の中枢神経系を広範囲に採取し、感染から症状発現後7ヵ月以上までの、脳を含む人体全体のSARS-CoV-2の分布、複製、細胞型特異性のマッピングと定量分析を行った。組織および症例間のSARS-CoV-2 RNAレベルを定量的、統計的に比較するために、呼吸器系および非呼吸器系組織の観点から結果を分析した。

降圧薬使用とアルツハイマー病との関連~メタ解析

 高血圧は認知症のリスク因子として知られているが、高血圧患者のアルツハイマー病リスク軽減に対する降圧薬使用の影響についてのエビデンスは、決定的であるとは言えない。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン薬学部のM. Adesuyan氏らは、認知機能が正常な高血圧症の成人患者における降圧薬使用とアルツハイマー病発症率との関連を調査した。その結果、降圧薬の使用とアルツハイマー病発症率低下との関連が認められた。とくに、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の使用は、降圧薬の中でも最大のベネフィットをもたらす可能性が示唆された。このことから著者らは、降圧が認知機能保護の唯一のメカニズムではない可能性があり、認知機能に対するアンジオテンシンIIの影響についてさらなる調査が求められるとしている。The Journal of Prevention of Alzheimer's Disease誌2022年号の報告。

MCIやアルツハイマー病患者でみられる嗅覚識別能力の低下

 金城大学の吉武 将司氏らは、地域在住高齢者において、軽度認知障害(MCI)およびアルツハイマー病(AD)の嗅覚同定能力を調査し、識別困難なにおいの特定を試みた。その結果、MCIやADの高齢者は認知機能が正常な高齢者と比較し、嗅覚同定能力の低下が認められた。このことから著者らは、認知症患者に対し嗅覚刺激に関連する治療介入を行う前に、嗅覚の評価を行うことが重要であるとしている。Journal of Physical Therapy Science誌2022年11月号の報告。  対象は、MCI高齢者(MCI群)12例、AD高齢者(AD群)17例、どちらでもない高齢者(対照群)30例。嗅覚同定能力は、においスティック(OSIT-J)による検査を用いて評価し、スコアの群間比較および群間差を調査した。次に、各においに対する正答率の群間比較を行い、識別困難なにおいの特定を試みた。

マインドフルネス・運動は本当に認知機能に有効?/JAMA

 主観的な認知機能低下を自覚する高齢者において、マインドフルネスストレス低減法(MBSR)、運動またはその併用はいずれも、エピソード記憶ならびに遂行機能を改善しなかった。米国・ワシントン大学のEric J. Lenze氏らが、米国の2施設(ワシントン大学セントルイス校、カリフォルニア大学サンディエゴ校)で実施した2×2要因無作為化臨床試験「Mindfulness, Education, and Exercise(MEDEX)試験」の結果を報告した。エピソード記憶と遂行機能は、加齢とともに低下する認知機能の本質的な側面であり、この低下は生活習慣への介入で改善する可能性が示唆されていた。著者は、「今回の知見は、主観的な認知機能低下を自覚する高齢者の認知機能改善のためにこれらの介入を行うことを支持しない」とまとめている。JAMA誌2022年12月13日号掲載の報告。

認知症の根本治療薬により認知症の人は減るか?(解説:岡村毅氏)

人類史に残る論文ではないか。人類はとうとう認知症の進行を遅らせるエビデンスを得たようだ。この領域は日本のエーザイがとてつもない情熱をもって切り開いてきた。またこのレカネバブ論文のラストオーサー(日本人)は、さまざまな不条理にも負けることなく一流の研究を進めてきた。最大限の敬意を表したい。その上で、認知症を専門とする精神科医として、この偉大な一歩を解説しよう。神経学ではなくあくまで精神医学の視点であることを先に言っておく。

認知症リスクと楽器演奏~メタ解析

 高齢者の認知症予防には、余暇の活動が重要であるといわれている。しかし、認知症リスクと楽器の演奏との関連は、あまりわかっていない。国立循環器病研究センターのAhmed Arafa氏らは、高齢者における楽器の演奏と認知症リスクとの関連を調査するため、プロスペクティブコホート研究のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、楽器の演奏と高齢者の認知症リスク低下との関連が確認された。著者らは、高齢者の余暇の活動に、楽器の演奏を推奨することは意義があると報告している。BMC Neurology誌2022年10月27日号の報告。