脳神経外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:29

日本人慢性片頭痛患者におけるフレマネズマブの有効性と安全性

 慢性片頭痛(CM)患者に対し、抗CGRPモノクローナル抗体製剤フレマネズマブによる治療は有効であり、効果発現が早く、忍容性が良好であることが臨床試験で示されている。近畿大学の西郷 和真氏らは、日本人CM患者におけるフレマネズマブの有効性および安全性を評価するため、2つの臨床試験(Japanese and Korean CM Phase 2b/3、HALO CM Phase 3)のサブグループ解析を実施した。著者らは、「サブグループ解析の限界にもかかわらず一貫した結果が得られており、日本人CM患者に対するフレマネズマブの有効性および忍容性が裏付けられた」と報告している。Journal of Pain Research誌2023年4月20日号の報告。

認知度の低い重症筋無力症の啓発にむけて/アルジェニクスジャパン

 6月は「重症筋無力症」の啓発月間とされている。この疾患の社会的認知度を高めるために、アルジェニクスジャパンは、6月7日にメディア向けセミナーを都内で開催した。  セミナーでは、専門医による疾患解説のほか、医療者、患者、患者会、タレントの渡辺 満里奈氏によるトークセッションや同社が疾患啓発に制作したマンガ動画などが紹介された。同社は、全身型重症筋無力症治療薬の抗FcRn抗体フラグメント製剤エフガルチギモド アルファ(商品名:ウィフガート)を製造販売している。 

急性期脳梗塞へのtirofiban、アスピリンより優れた改善/NEJM

 大・中脳血管の閉塞を伴わない急性期脳梗塞患者の治療において、糖蛋白IIb/IIIa受容体阻害薬tirofibanは低用量アスピリンと比較して、非常に優れたアウトカム(修正Rankin尺度[mRS]スコア0または1)が達成される可能性が高く、安全性には大きな差はないことが、中国・陸軍軍医大学のWenjie Zi氏らが実施した「RESCUE BT2試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2023年6月1日号に掲載された。  RESCUE BT2試験は、中国の117施設で実施された二重盲検ダブルダミー無作為化試験であり、2020年10月~2022年6月の期間に参加者のスクリーニングが行われた(中国国家自然科学基金の助成を受けた)。

血圧管理ケアバンドル、脳内出血の機能的アウトカムを改善/Lancet

 脳内出血の症状発現から数時間以内に、高血糖、発熱、血液凝固障害の管理アルゴリズムとの組み合わせで早期に集中的に降圧治療を行うケアバンドルは、通常ケアと比較して、機能的アウトカムを有意に改善し、重篤な有害事象が少ないことが、中国・四川大学のLu Ma氏らが実施した「INTERACT3試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年5月25日号で報告された。  INTERACT3試験は、早期に集中的に血圧を下げるプロトコールと、高血糖、発熱、血液凝固障害の管理アルゴリズムを組み込んだ目標指向型ケアバンドルの有効性の評価を目的に、10ヵ国(低・中所得国9、高所得国1)の121病院で実施された実践的なエンドポイント盲検stepped wedgeクラスター無作為化試験であり、2017年5月27日~2021年7月8日に参加施設の無作為化が、2017年12月12日~2021年12月31日に患者のスクリーニングが行われた(英国保健省などの助成を受けた)。

広範囲虚血患者に対する経皮的脳血栓回収術の有効性が示された(解説:高梨成彦氏)

本研究はこれまで治療適応外とされていた広範囲虚血患者でも、経皮的脳血栓回収術によって予後が改善することを示したものである。先のRESCUE-Japan LIMIT(Yoshimura S, et al. N Engl J Med. 2022;386:1303-1313.)の結果を補強するもので、同じくISC2023において中国から報告されたANGEL-ASPECTSでも同様の結果が示された。今後はASPECTSの低い=虚血コアの大きな患者に対しても血栓回収術の適応が拡大されることになるだろう。研究対象となっているのはCT検査においてASPECTS 5点以下、または潅流CTかMRI拡散強調画像をRAPIDで評価して虚血コアが50mL以上である症例である。90日後のmRSが0~2であった患者の割合は内科治療群が7.0%であったのに対して血管内治療群では20.0%にも達している。興味深いことに、さらに広範な虚血を来した患者についても解析が行われており、70mL、100mL、150mLでも血管内治療群で予後が良好であった。

脳卒中後の回復の鍵は運動

 脳卒中後の回復には、運動が重要である可能性を示すデータが報告された。脳卒中発症後の6カ月間に運動量を増やして継続していた患者は、そうでない患者よりも機能的転帰が良好だったという。ヨーテボリ大学(スウェーデン)のDongni Buvarp氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に5月1日掲載された。同氏は、「脳卒中の重症度にかかわりなく、運動量を増やすことでメリットを得ることができる」と話している。  この研究は、2014年10月~2019年6月に、スウェーデンの35の医療機関が参加して実施された、抗うつ薬の有効性を検証した臨床研究のデータを用いて行われた。研究参加者は脳卒中発症後2~15日に登録された18歳以上の患者1,367人〔年齢中央値72歳(四分位範囲65~79)、男性62%〕。主要評価項目は、運動量の経時的な変化であり、副次的に6カ月後の機能回復の程度(mRSスコア)が評価された。

母親の認知症歴が子供の認知症リスクに影響

 両親の認知症歴は、子供の認知症リスクを上昇させるともいわれているが、その結果に一貫性は見られていない。韓国・Sungkyunkwan University School of MedicineのDae Jong Oh氏らは、両親の認知症歴と子供の認知症リスクに関して、認知症サブタイプおよび性別の影響を調査するため、本検討を行った。その結果、母親の認知症歴は、男女ともに子供の認知症およびアルツハイマー病(AD)リスクとの関連が認められた。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2023年5月10日号の報告。  8ヵ国、9件の人口ベースコホート研究より抽出された高齢者1万7,194人のデータを用いて、横断的研究を実施した。対象研究では、認知症の診断のため、対面診断、身体検査、神経学的検査、神経心理学的評価が実施された。父親および母親の認知症歴と子供の認知症、認知症サブタイプのリスクとの関連を評価した。

心房細動を伴う脳梗塞、DOAC投与は早期か後期か/NEJM

 急性脳梗塞を発症した心房細動患者における直接経口抗凝固薬(DOAC)の、至適な投与開始時期は明らかにされていない。スイス・バーゼル大学のUrs Fischer氏らは、「ELAN試験」において、DOACの早期投与と後期投与を比較した。その結果、両群のアウトカムの発生に大きな差はなかったものの、早期に投与を開始しても過度なリスクの増加はないとことが示唆された。NEJM誌オンライン版2023年5月24日号掲載の報告。  ELAN試験は、日本を含む15ヵ国103施設が参加した医師主導の非盲検無作為化試験であり、2017年11月~2022年9月の期間に患者の登録が行われた(スイス国立科学財団などの助成を受けた)。

世界初となる子宮内の胎児の脳外科手術に成功

 世界で初めて、胎児の脳の血管奇形であるガレン静脈奇形(vein of Galen malformation;VOGM)に対する手術が子宮内で行われ、成功したことが明らかになった。VOGMを持って生まれた新生児は、死に至る危険性もある。専門家らは、今回の手術成功を賞賛するも、まだ成功例は一例のみであり、胎児の脳外科手術が良い治療戦略なのかどうかについては、さらなる研究が必要としている。米ボストン小児病院脳血管外科インターベンションセンターのDarren Orbach氏らによるこの研究の詳細は、「Stroke」に5月4日掲載された。

他の抗CGRP抗体への切り替えが有効な片頭痛患者の特徴は

 カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を介したモノクローナル抗体(mAb)は、片頭痛治療に有効な治療薬として承認されている。特定のmAbで治療反応が得られなかった患者に対し、別のmAbへ切り替えることで、ある程度の有効性が得られることが示唆されている。イタリア・フィレンツェ大学のLuigi Francesco Iannone氏らは、抗CGRP/リガンドmAbで治療反応が得られなかった患者における抗CGRP/受容体mAbへの切り替えによる治療効果、およびその逆における効果を評価した。その結果、特定の抗CGRP mAbで効果が不十分であった場合、他の抗CGRP mAbへの切り替えは臨床上の重要なオプションである可能性が示唆された。Cephalalgia誌2023年4月号の報告。