脳神経外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:57

認知症患者とその介護者に対する遠隔医療介入効果~メタ解析

 遠隔医療機器を用いた医療介入は、COVID-19パンデミックにより必要性が高まっていることや、テクノロジーを通じ、医療提供者、患者、その家族のインフラおよび快適性が向上したことから、世界中で標準的な医療行為になりつつある。しかし、認知症患者の家族に対する遠隔医療介入の有効性はよくわかっていない。そのため、単なる便利なツールというだけでなく、エビデンスベースの遠隔医療介入を開発していくための調査が求められている。台湾・高雄医学大学のIta Daryanti Saragih氏らは、認知症患者およびその介護者に対する遠隔医療の心理教育的および行動的な介入の影響と有効性を調査する目的で、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、遠隔医療介入は、認知症患者のうつ病を軽減するとともに、介護者の知覚能力を向上させることが示唆された。Journal of Nursing Scholarship誌オンライン版2022年6月29日号の報告。

片頭痛の有病率や割合を日本人で調査

 片頭痛は、反復性の頭痛発作で特徴付けられる慢性疾患であるにもかかわらず、日本におけるその疫学や治療状況に関して、最近の研究は十分に行われていない。埼玉精神神経センターの坂井 文彦氏らは、日本における片頭痛の有病率および治療状況を明らかにするため、健康保険協会員を対象に、レセプトデータおよび片頭痛・頭痛に関するオンライン調査のデータを用いて実態調査を行った。その結果、日本人片頭痛患者の80%が医療機関での治療を受けておらず、苦痛を感じながら日常生活を続けていることが明らかとなった。著者らは、革新的な治療アプローチが利用可能になることに併せ、片頭痛は単なる頭痛ではなく、診断や治療が必要な疾患であることを啓発していく必要があるとしている。The Journal of Headache and Pain誌2022年6月23日号の報告。

認知症有病率の日本のコミュニティにおける20年間の推移

 認知症患者数は世界的に増加しており、とくに世界で最も高齢化が進む日本において、その傾向は顕著である。認知症高齢者の増加は、予防が必要な医学的および社会経済的な問題であるが、実情について十分に把握できているとはいえない。愛媛県・平成病院の清水 秀明氏らは、1997~2016年に4回実施した愛媛県中山町における認知症サブタイプ横断研究の結果を解析し、認知症有病率の経年的傾向について報告した。その結果、認知症の有病率は、人口の高齢化以上に増加しており、高齢化だけでない因子が関与している可能性が示唆された。著者らは、認知症高齢者の増加を食い止めるためには、認知症発症率、死亡率、予後の経年的傾向や認知症の増進・予防に関連する因子の解明および予防戦略の策定が必要であるとしている。Psychogeriatrics誌オンライン版2022年6月26日号の報告。

急性期虚血性脳卒中へのtenecteplase、標準治療となる可能性/Lancet

 カナダの標準的な血栓溶解療法の基準を満たす急性期虚血性脳卒中の患者において、tenecteplase静注療法は、修正Rankinスケール(mRS)で評価した身体機能に関してアルテプラーゼ静注療法に対し非劣性で、安全性にも差はなく、アルテプラーゼに代わる妥当な選択肢であることが、カナダ・カルガリー大学のBijoy K. Menon氏らが実施した「AcT試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2022年6月29日号に掲載された。  AcT試験は、急性期虚血性脳卒中における、血栓溶解療法による再灌流の達成に関して、tenecteplaseの標準治療に対する非劣性の検証を目的とする、医師主導の実践的なレジストリ連動型非盲検無作為化対照比較試験であり、2019年12月~2022年1月の期間に、カナダの22ヵ所の脳卒中施設で参加者の登録が行われた(カナダ保健研究機構[CIHR]などの助成を受けた)。

無症候性内頚動脈狭窄症に対する内科治療の高い発症抑制効果が確認された(解説:高梨成彦氏)

本研究では内科治療を適用されたNASCET 70~99%の無症候性高度頸動脈狭窄症患者において、同側脳卒中の発症率が5年間で4.7%と、過去の報告よりも低く抑えられたことが報告された。観察期間中のスタチンと降圧薬のアドヒアランスはそれぞれ70.7%、88.5%と高い水準に保たれており、血中LDLコレステロール濃度と血圧は正常範囲内に管理されていた。近年の進歩した内科治療によって脳卒中の発症率が低く抑えられたと考えられる。この結果を踏まえると、無症候性頸動脈狭窄症については発見時の狭窄度だけを根拠に血行再建術を適用することはできないだろう。本研究ではNASCET 90%以上の狭窄をhigh-grade stenosisと分類して狭窄度の進行を観察している。そして同側脳卒中を発症した患者のうち24.1%が観察中にhigh-grade stenosisに進行した患者で、12.8%は閉塞を来した患者であった。

日本人高齢者の身体活動強度と認知症リスク

 中等度~強度の身体活動(PA)は、認知症リスクを低減させる可能性があるとされる。しかし、認知症リスクに対するPAの強度の影響について調査した研究は、ほとんどない。筑波大学の永田 康喜氏らは、日本の地域住民の高齢者における認知症疑いの発症率とPAの強度との関連を調査するため、プロスペクティブ研究を実施した。その結果、認知症予防には中等度のPAが有用である可能性が示唆された。Journal of Alzheimer's Disease誌2022年3号の報告。

「エアコン28℃設定」にこだわらないで!医師が患者に伝えたい熱中症対策

 日本救急医学会は熱中症予防の注意喚起を行うべく6月28日に緊急記者会見を実施した。今回、熱中症および低体温症に関する委員会の委員長を務める横堀 將司氏(日本医科大学大学院医学研究科 救急医学分野教授)らが2020年に発刊された「新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症予防に関する提言」に記された5つの提言を踏まえ、適切なエアコンの温度設定の考え方などについて情報提供した。  人間の身体が暑さに慣れるのには数日から約2週間を要する。これを暑熱順化と言うが、身体が暑さに慣れる前に猛暑日が到来すると暑熱順化できていない人々の熱中症リスクが高まる。今年は6月27日に関東甲信・東海・九州南部で梅雨明けが宣言され、しばらく猛暑日が続くと言われ、横堀氏は「身体が暑さに慣れていない今が一番危険」だと話した。

精神疾患患者の認知症リスク

 統合失調症、双極性障害、うつ病などの重度の精神疾患は認知症と関連しているといわれているが、これらの関連を直接比較した研究はあまり行われていない。台湾・台北栄民総医院のYing-Jay Liou氏らは、重度の精神疾患と認知症リスクとの関連を明らかにするため、台湾全民健康保険データベースを用いてレトロスペクティブに分析を行った。その結果、重度の精神疾患患者は対照群と比較し、アルツハイマー病および血管性認知症リスクが高いことが示唆されたとし、中年および高齢の精神疾患患者では、認知機能の変化を綿密にモニタリングする必要があることを報告した。European Archives of Psychiatry and Clinical Neuroscience誌オンライン版2022年4月26日号の報告。

PC使用や自動車運転と認知症リスク~プロスペクティブ研究

 座りがちな行動は、高齢者の認知症リスクと関連しているといわれている。東北大学の竹内 光氏らは、自動車運転やコンピューターの使用が、高齢者の認知症リスクと関連しているかを調査した。その結果、座りがちな行動の種類により将来の認知症リスクは異なり、単純に座っている時間のみで評価するのではなく、さまざまな要因を考慮する必要があることを報告した。Frontiers in Aging Neuroscience誌2022年5月16日号の報告。  対象は欧州の中高年成人を含む縦断的コホート研究の参加者のうち、ベースライン(2006~10年)より5年前に認知症と診断されておらず、ベースラインから5年以内に死亡していなかった人で、2018年までフォローアップし分析した。交絡因子で補正した後、ベースラインで質問票より得られた自動車運転時間および非職業的コンピューター使用時間と、5年後の認知症発症との関連を分析した。自動車運転およびコンピューター使用の時間により、4群(A群:0時間/日、B群:1時間未満/日、1時間/日、C群:2時間/日、3時間/日、D群:4時間以上/日)に分類した。分析にはCox比例ハザードモデルを用いた。

日本食の死亡率や認知症リスクへの影響~大崎コホート研究

 長寿国である日本。その要因として日本人の食生活が影響しているといわれている。しかし、日本食の健康に対するベネフィットは、十分に解明されていない。2007年、宮城県大崎市の日本人住民を対象とした大崎コホート研究において、日本食パターンと心血管疾患による死亡率との関連が世界で初めて発表された。以来、本報告の著者らは、日本食パターンと健康への影響に関するエビデンスを蓄積するため、日本食インデックス(JDI)を開発し、日本食の健康への影響について検討を行ってきた。東北大学の松山 紗奈江氏らは、これまでの6報の論文をレビューし、日本食の健康への影響および将来の研究への影響について議論を深めるため本報告を行った。その結果、日本食パターンを高率で実践している人では、死亡率だけでなく、機能障害や認知症リスクの減少も認められることが確認された。Nutrients誌2022年5月12日号の報告。