日本語でわかる最新の海外医学論文|page:1095

高齢心不全患者へのNt-BNPを指標にした集中治療のアウトカムは?

高齢の心不全患者に対し、N末端脳型ナトリウム利尿ペプチド(Nt-BNP)値を指標にした集中治療を行っても、症状による治療を行った場合と、アウトカムは同等であることがわかった。これまでに、Nt-BNP値による治療がアウトカムを改善することを示す研究結果があるものの、そうした研究は小規模で、若い患者を対象にしていた。これは、スイスBasel病院のMatthias Pfisterer氏らの研究で明らかになったもので、JAMA誌2009年1月28日号で発表した。

サンドスタチンLARが消化器腫瘍の増殖を抑制することを確認

ノバルティス ファーマ株式会社は5日、サンドスタチンLAR (一般名:酢酸オクトレオチド)が、中腸の転移性神経内分泌腫瘍(NET)患者に対し抗腫瘍効果を示したという試験の中間データを、1月13日に2009年米国臨床腫瘍学会消化器癌シンポジウム(2009 Gastrointestinal Cancer Symposium of the American Society of Clinical Oncology)で発表した。

住宅ラドン対策の費用対効果:イギリス

肺がんの原因として最も多いのはタバコだが、次いで世界的に多いのがラドン曝露によるものである。患者の多くは家で曝露していることから、公費を投入してのラドン対策を施行している国は多い。WHOでも対策を勧告しているラドンは、大気中にごく普通に存在する天然ガスで、外気中では拡散しているため曝露リスクが低いが、屋内、特に一般住宅や小規模ビルなど気密性の高い空間ほど高濃度となる。そこで防床シートなどの対策実施の基準は測定濃度でという国が多く、イギリスも例外ではなく、全住宅に公費補助の対策が行われている。しかしオックスフォード大学保健経済学調査センターのAlastair Gray氏は、補助対象の基準の検証がきちんとなされいないと指摘、「濃度だけでなく喫煙リスクも含めた疫学的データから費用対効果を検証し対策を講じるべき」と調査を実施した。BMJ誌2009年1月24日号(オンライン版2009年1月6日号)掲載より。

創傷感染予防としての抗生剤塗布は局所でなければ意味がない

簡単な皮膚科手術後の創傷感染予防として行う抗生剤クロラムフェニコール軟膏(商品名:クロロマイセチン軟膏)単回塗布の有効性を証明することを目的に、ジェームズ・クック大学(オーストラリア・クイーンズランド)Mackay Base病院のClare F Heal氏らによって行われた、前向き無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果が、BMJ誌2009年1月24日号(オンライン版2009年1月15日号)に掲載されている。イギリス、オーストラリアでは塗布は一般的だが、アメリカではほとんど行われていないことを踏まえての試験。

FDA諮問委員会がプラスグレルの承認を勧告

第一三共株式会社と米イーライリリー・アンド・カンパニーは4日、米国食品医薬品庁(FDA)の心・腎疾患諮問委員会が、経皮的冠動脈形成術(PCI)として知られる動脈拡張術を受けている急性冠症候群(ACS)患者の治療薬として抗血小板剤プラスグレルの承認を勧告することを、3日(現地時間)投票により決定したと発表した。

壮年期心筋梗塞患者におけるクロピドグレル治療の予後決定因子が明らかに

心筋梗塞発症後にクロピドグレル(商品名:プラビックス)治療を受けている壮年患者のうち、CYP2C19*2遺伝子に変異が見られる場合は予後不良であることが、フランス・パリ第6大学Pitie-Salpetriere病院のJean-Philippe Collet氏らの検討で明らかとなった。クロピドグレルと低用量アスピリンの併用は、急性冠症候群(ACS)やステント留置術後の虚血性イベントの再発予防において、経口抗血小板療法の中心となっている。しかし、クロピドグレルが無効な症例も多く、その原因の究明が進められている。Lancet誌2009年1月24日号(オンライン版2008年12月23日号)掲載の報告。

進行前立腺癌の新たな標準治療が確立された:SPCG-7/SFUO-3試験

進行前立腺癌の治療では、内分泌療法に放射線療法を追加すると、内分泌療法単独に比べ前立腺癌による死亡率が半減し、全死亡率も有意に低下することが、北欧で実施された無作為化第III相試験(SPCG-7/SFUO-3試験)で示された。高リスクの前立腺癌では、内分泌療法と放射線療法の併用が有効なことを示唆する報告がいくつかあるが、その効果は確立されていなかった。スウェーデンUmea大学のAnders Widmark氏が、Lancet誌2009年1月24日号(オンライン版2008年12月16日号)で報告した。

就学前小児の上気道ウイルス感染による喘鳴:吸入薬(高用量)による予防的治療

上気道ウイルス感染による喘鳴発作は、就学前児童においてはよく見られるが、至適管理方法は確認されていない。モントリオール大学(カナダ)小児科部門臨床調査部門Francine M. Ducharme氏らは、特に至適管理のエビデンスがあいまいな中等症~重度の、反復性の上気道ウイルス感染による喘鳴に対し、予防的治療としての高用量フルチカゾン(商品名:フルタイド)の有効性と安全性を検討した。結果、有効性は確認できたが成長抑制が確認され、臨床に取り入れるべきではないとの結論を報告している。NEJM誌2009年1月22日号掲載より。

就学前小児の上気道ウイルス感染による喘鳴:発作時の経口薬治療

上気道ウイルス感染による喘鳴発作は、就学前児童においてはよく見られ、短期間の経口プレドニゾロン剤投与が広く行われているが、軽症~中等症には有効ではないと結論する無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果が報告された。英国レスター大学小児保健部門のJayachandran Panickar氏らによる報告で、NEJM誌2009年1月22日号にて掲載された。

左心室拡張機能障害が大きいほど、運動強度が減少

安静時左心室拡張機能障害の程度が大きいほど、運動強度が減少することがわかった。また、安静時や運動後の左心室充満圧が高いことも、運動強度の減少につながるという。これは、米国Mayo ClinicのJasmine Grewal氏らが、3,000人近くについてドップラー心エコー検査を行い、明らかにしたもの。JAMA誌2009年1月21日号で発表した。

そのまま食べられる栄養治療食品に、るい痩予防効果:ニジェール

西アフリカ内陸部にあるニジェールで、そのまま食べられる栄養治療食品(Ready-to-use therapeutic foods:RUTF)を、子どもたちに3ヵ月配布したところ、8ヵ月間で、いわゆる痩せ過ぎである「るい痩」と診断される子供が、3~5割減少したことがわかった。これは、米国Harvard大学のSheila Isanaka氏らが行った研究で明らかにしたもので、JAMA誌2009年1月21日号で発表した。これまで、RUTFのるい痩予防効果については、住民ベースでの研究はなかったという。

抗うつ薬の効果には差があるのか?

抗うつ薬の効果に差があるのか?この問いに関する科学的根拠はこれまで乏しかったが、1月29日号のLancet誌(オンライン版)に発表されたメタアナリシスによると、12の抗うつ薬の中でミルタザピン(承認申請中)、エスシタロプラム(開発中)、ベンラファキシン(日本未発売)、セルトラリン(日本での発売名:ジェイゾロフト)の順で有効率が高いという結果となることがわかった。

新生児退院前のパルスオキシメトリー検査は臨床効果も費用効果もある

新生児退院前にパルスオキシメトリー検査を実施することは、動脈管依存性先天性心疾患の早期発見に有効であることが、スウェーデンQueen Silvia小児病院小児心臓病科のAnne de-Wahl Granelli氏らによる前向きスクリーニング研究の結果として報告された。費用対効果についても優れているとのエビデンスが報告されている。BMJ誌1月17日号2009年(オンライン版1月8日号)掲載より。

医薬品価格が高すぎて治療を受けられない現実明らかに、低~中所得国

低~中所得国では、先発および後発(ジェネリック)医薬品の価格が国際基準価格に比べかなり高価なことが、A Cameron氏ら世界保健機構(WHO)と国際保健医療活動団体(HAI)の共同研究で明らかとなった。健康関連の支出のうち医薬品が占める割合は、経済協力開発機構(OECD)加盟国の18%に対し開発途上国では20~60%にも達するという。途上国人口の90%が医薬品を自己負担で購入しており、その結果として医薬品は適正価格よりも高価となり、国家予算の大きな負担となっている。Lancet誌2009年1月17日号(オンライン版2008年12月1日号)掲載の報告。