日本語でわかる最新の海外医学論文|page:1114

安定冠動脈疾患患者へのPCI追加によるQOL改善効力は3年

慢性冠動脈疾患の治療法に関する臨床試験「COURAGE」では、最適薬物療法に経皮的冠動脈介入(PCI)を加えても、死亡率や心筋梗塞発生率の改善につながらなかった。しかし、最適薬物療法+PCIがQOLを改善できるかどうかを検証していた、同試験メンバーのWilliam S. Weintraub氏(米国・Christiana Care Health System)らは、「PCI追加によって、治療初期にはよりQOLが改善されるが、3年後には差がなくなる」と報告した。NEJM誌2008年8月14日号より。

うつ病やPTSDが深刻なネパールの元少年兵

戦争や武力紛争で、戦闘への参加を強いられた少年兵経験者には、特別の精神保健的な介入が必要とされるが、徴兵されなかった一般の少年との精神保健面の違いに関する研究は十分ではない。エモリー大学(米国・ジョージア州アトランタ市)のBrandon A. Kohrt氏らはネパールにおける調査の結果、「元少年兵の精神保健面の問題は、徴兵されなかった少年に比べて、より重症である」と報告した。JAMA誌2008年8月13日号より。

心的外傷を負ったインドネシアの小児に対する精神保健介入

武力紛争に巻き込まれた中・低所得層の児童に対する、精神保健面の介入の有効性は明らかではない。貧困と不安定な政治状況では、対処は困難である。宗教紛争で住民に多数の犠牲者が出たインドネシア・ポソ県で活動するオランダのNGO「Health Net TPO」のWietse A. Tol氏らは、紛争で心的外傷を負った小児のために、学校ベースの介入を試み、その成果を報告した。JAMA誌2008年8月13日号より。

実際の認知症の有病率はもっと高い?

DSM-IVの認知症判定規準は実際の有病率を過小評価する可能性があり、特にこの緊急の公衆衛生学的問題に対する認識が低い地域でその傾向が強いことが、低~中所得国で実施された横断的研究で明らかとなった。認知症有病率は開発途上地域のほうが先進地域よりも低いとされてきたが、世界的な高齢化が急速に進むなか、65歳以上の高齢者の2/3が暮らす低~中所得国では認知症の急増が懸念されている。キューバHavana医科大学のJuan J Llibre Rodriguez氏が、Lancet誌2008年8月9日号(オンライン版2008年7月25日号)で報告した。

熱性けいれん児の長期的死亡率の実態とは

熱性けいれんをきたした小児では、長期的な死亡率は上昇しないが複合型熱性けいれん発症後は一時的に死亡率が上がることが、デンマークで実施された長期にわたる大規模なコホート研究で明らかとなった。熱性けいれんは5歳未満の小児の2~5%にみられる。神経学的な疾患が基盤にあるてんかん児では発症頻度が高いとされるが、死亡率などの詳細はほとんど知られていないという。Aarhus大学公衆衛生研究所総合診療科のMogens Vestergaard氏が、Lancet誌2008年8月9日号で報告した。

慢性リンパ性白血病とモノクローナルB細胞リンパ球増加症の関係

慢性リンパ性白血病(CLL)の診断には、血中CLL表現型細胞数が1立方mm当たり5,000個以上必要であり、CLL表現型細胞が少なく無症候性の患者は、モノクローナルB細胞リンパ球増加症(MBL)とされる。MBLとCLLの関係を調べた、英国・リーズ教育病院のAndy C. Rawstron氏らは、「CLL表現型MBLとリンパ球増加症の患者で、治療を必要とするCLLの発現率は年間1.1%」と報告した。NEJM誌2008年8月7日号より。

広範囲薬剤耐性結核には包括的治療が有効

すべての抗菌剤が効かないとされる広範囲薬剤耐性結核(XDR-TB)は、資源に乏しく結核に悩まされている国など世界45ヵ国で報告されている。そのうちの一つ、ペルーにおける広範囲薬剤耐性結核患者に対する外来治療による管理と転帰を調査した米国・ハーバード大学医学部のCarole D. Mitnick氏らは、4~7剤併用と包括的な外来治療が有効であることを報告した。NEJM誌2008年8月7日号より。

近年の婦人科がん医療の進歩:最近の学会報告から がん医療セミナー 「もっと知って欲しい女性のがん」より

 2008年8月10日、NP法人キャンサーネットジャパン、NPO法人ブーゲンビリア、卵巣がん体験者の会スマイリー、NPO法人女性特有のガンサポートグループオレンジティの4団体が主催する婦人科腫瘍啓発セミナーが開催された。セミナーでの、埼玉医大国際医療センター包括的がんセンター婦人腫瘍科、藤原恵一氏の講演の様子をレポートする。

閉経後女性へのホルモン治療は経皮剤で

閉経後女性へのホルモン治療は胆嚢疾患(胆石症、胆嚢炎、胆嚢切除術)のリスクを増大することが、無作為化試験や観察研究によって明らかになっている。オックスフォード大学疫学部門のBette Liu氏らは、ホルモン剤には経皮剤と経口剤のタイプがあり、肝臓で初回通過代謝する経口剤よりも通過しない経皮剤のほうが、疾患リスクを減らすことができるのではないかと、両者の比較を行った。BMJ誌2008年7月10日号より。

体重超過への「間違った安心感」が蔓延している:イギリス

体重に関する自己認識と、医療従事者が用いる定義は対応しないことが多い。その問題に関して10年ほど前までは、摂食障害へのリスクから若い女性について重点が置かれていたが、現在は体重超過・肥満の人々の間に関心が向けられるようになっている。これらの人々は体重超過であるとの認識ができていないと指摘されているからだが、ロンドン大学疫学公衆衛生部門、癌研究英国健康行動調査センターのF Johnson氏らの調査によって、「体重増の認識はあるが体重増への問題認識が薄れている」ことが明らかにされた。BMJ誌2008年7月10日号掲載より。

高齢者の肺炎に対するインフルエンザワクチンの効果は予想よりも低い

インフルエンザ流行時期の高齢者肺炎に対するインフルエンザワクチンの効果は予想よりも低い可能性があることが、地域住民をベースとした調査で明らかとなった。肺炎は高齢者のインフルエンザ感染における最も頻度の高い合併症であり、それゆえインフルエンザワクチンは肺炎の予防に有効な可能性がある。しかし、これまでに報告されたワクチンの有効性を示唆する検討には根本的なバイアスが含まれるため信頼性は高くないという。米国シアトル市のGroup Health Center for Health StudiesのMichael L Jackson氏が、Lancet誌2008年8月2日号で報告した。

重度の早期関節リウマチに対するエタネルセプト+MTX併用の有用性を確認

重度の早期関節リウマチ(RA)に対するエタネルセプト(商品名:エンブレル)+メトトレキサート(商品名:リウマトレックスなど)併用療法は、治療開始1年で早期RAの治療目標を十分に達成しうる優れた治療法であることが、国際的な無作為化試験(COMET試験)で明らかとなった。近年、新たな治療法の登場でRAの予後は改善したが、患者の多くは実質的に身体機能障害や就業不能に陥らざるをえず、長期的な予後の改善を可能とする強力かつ安全な治療法が求められていた。イギリスLeeds大学Leeds分子医学研究所のPaul Emery氏が、Lancet誌2008年8月2日号(オンライン版2008年7月16日号)で報告した。