日本語でわかる最新の海外医学論文|page:1115

「歯周病」の認知は高まるも「糖尿病との関わり」への理解は低い

サンスター株式会社が行った35歳から59歳の男女932人を対象とする「歯周病に関する意識調査(インターネットリサーチ)」によると、歯周病の認知はこの20年間で9%から99%と飛躍的に向上したことがわかった。その一方で、近年明らかになった「全身病との関わり」は、「糖尿病」(19.7%)、「心疾患・脳卒中」(15.4%)、早産と肺炎との関わりについては1割未満にしか理解されていないという。

急性心筋梗塞の再灌流障害に関するシクロスポリンの作用

細胞内のミトコンドリア防御作用を有するシクロスポリンが、心筋梗塞の再灌流時に起こる致死的心筋障害を減らすことは、実験的に示されている。フランス・Hopital Arnaud de VilleneuveのChristophe Piot氏らは小規模ながら、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)前にシクロスポリンを投与することで、梗塞範囲を抑えられるかどうかを検証。NEJM誌2008年7月31日号に結果が掲載された。

胃癌手術でリンパ節拡大郭清を行っても生存率は改善しない

治療可能な胃癌に対して、2群リンパ節郭清を伴う胃切除術は、東アジアにおける標準治療である。しかし、2群郭清に加えて大動脈周囲リンパ節郭清(PAND)を行う3群郭清(拡大郭清)が、生存率を改善するかどうかは論争の的となっている。国立がんセンター中央病院の笹子三津留氏ら日本臨床腫瘍研究グループが、国内で大規模な比較試験を行った結果、3群郭清は生存率改善につながらないと報告した。NEJM誌2008年7月31日号より。日本胃癌学会の胃癌治療ガイドライン速報でも取り上げられた報告。

家族歴のある大腸癌患者の再発と死亡リスクは低い

一親等親族に大腸癌患者がいた場合、大腸癌発症リスクは増大するが、癌再発と生存に家族歴がどう影響するか明らかではない。米国・ハーバード大学医学部ダナ・ファーバー癌研究所のJennifer A. Chan氏らは、「ステージIIIの大腸癌患者に大腸癌の家族歴がある場合は、再発と死亡は有意に減少する」と報告した。JAMA誌2008年6月4日号より。

fetuin-A高値は糖尿病発症と関連

肝分泌タンパク質のfetuin-Aは、インスリン受容体と結合してインスリン活性を阻害する。これまでの研究で、fetuin-A高値とインスリン抵抗性との関連は指摘されていたが、2型糖尿病との関係は不明だった。米国・カリフォルニア大学医学部のJoachim H. Ix氏らは、高齢者において、fetuin-A高値の者が糖尿病を有するどうか検証。「高齢者では、fetuin-Aと糖尿病発症は相関する」と報告した。JAMA誌2008年7月9日号より。

好意的賛同を得られるバイオバンク運営のキーは?

保健医療と医学に対する信用の失墜は、医学研究にとって厳しい影響を及ぼす。しかし、最近の国際的な調査によれば、少なくとも80%の人々は、医学研究の発展のために生体試料を提供することに好意的であるとされる。とりわけ、いち早くバイオバンク法が整備されたスウェーデン人の意識はより高いとされるが、ウプサラ大学(スウェーデン)のLinus Johnsson氏らのグループは、採取したサンプルの保存と研究目的での使用について、スウェーデンではどれぐらいの患者が拒絶または使用目的を制限しているのか、またそれがバイオバンク研究にとって脅威となるのかどうかを検討した。BMJ誌2008年7月10日号より。

赤身肉の大量摂取は血圧上昇を招く

1981年に提示された「iron-heart」仮説では、男性と女性(閉経前)と冠疾患リスクの差は、鉄分蓄積量の差によって説明できるとされたが、その後の研究からその裏づけとなる結果は、得られていない。ロンドン大学疫学・公衆衛生部門Ioanna Tzoulaki氏らの研究グループは、食事による鉄分(総鉄、ならびにヘム鉄、非ヘム鉄)の摂取、サプリメントなどによる補足的な鉄分摂取、さらに赤身肉の摂取と血圧との関連を調査する横断的疫学研究を行った。BMJ誌2008年7月15日号より。

抗レトロウイルス治療が有効でも、HIVはパートナーに感染する

有効な治療が行われていれば、異性間性交渉によるHIV感染リスクは低いがまったくないとはいえず、男性の同性間性交渉における感染リスクは曝露を繰り返す間に高くなることが、数学的モデルによる解析で判明した。Swiss Federal Commission for HIV/AIDSのコンセンサスでは、有効な抗レトロウイルス療法によって血漿HIV RNAが検出されなくなった症例(<40コピー/mL)からは性交によるHIV感染はないとされていたが、これを覆す知見が得られたことになる。オーストラリアNew South Wales大学、国立HIV疫学・臨床研究センターのDavid P Wilson氏がLancet誌2008年7月26日号で報告した。

HIV感染例の平均余命が改善、高所得国の併用抗レトロウイルス療法施行例

 併用抗レトロウイルス療法(CART)を受けているHIV感染例の平均余命は1996年から2005年の間に延長しており、高所得国における20歳時の平均生存例数は一般人口の約2/3であることが、国際的なコホート研究(ART-CC)で明らかにされた。CARTはHIV感染例の生存率およびQOLを有意に改善するが、一般集団レベルにおける余命への影響は明確でなかったという。カナダBritish Columbia Centre for Excellence in HIV/AIDS のRobert Hogg氏がLancet誌2008年7月26日号で報告した。

ソラフェニブは進行性肝細胞癌患者の生存期間を延長する

進行性の肝細胞癌患者に有効な全身療法はないが、これまでの予備試験の結果、分子標的薬のソラフェニブ(商品名:ネクサバール、本年1月承認で国内では腎癌のみ適応)が、肝細胞癌にも有効である可能性が示されている。本論は、スペイン・バルセロナ大学のJosep M. Llovet氏らによる報告で、ソラフェニブの国際共同第III相臨床試験SHARPの結果。「ソラフェニブは生存期間を延長する」と報告されている。NEJM誌2008年7月24日号より。

薬剤耐性HIV-1にraltegravirと至適基礎療法の併用が有効

既存の抗レトロウイルス薬に感受性または耐性を示す活性ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)に対しても、HIV-1インテグレース阻害剤のraltegravir(MK-0518)は活性を示す。raltegravirの国際的第III相臨床試験BENCHMRKにおいて、抗レトロウイルス療法に失敗し治療の選択肢が限られた3クラス薬剤耐性HIV-1感染患者に、raltegravirを至適基礎療法と併用することで良好なウイルス抑制効果があることが報告された。ニューヨーク州立大学Roy T. Steigbigel氏らによる報告は、NEJM誌2008年7月24日号にて掲載された。

外国生まれの米国居住者における結核感染状況

アメリカでは結核対策の強化によって感染者が減少している。しかし、外国生まれの米国居住者の患者数は、2006年における全米の患者数の57%を占めていた。現行の対策では、入国者における高い結核感染率と潜在的な結核感染症への対処が不十分だとして、米国疾病管理予防センター(CDC)のKevin P. Cain氏らが、入国者集団の感染状況およびスクリーニング法を評価。JAMA誌2008年7月23日号に結果が掲載された。

うつ病治療に伴う女性の性機能障害にもバイアグラが有効

抗うつ薬の選択的・非選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SRI)治療に関連する一般的な副作用として性機能障害があり、しばしば抗うつ薬による治療を早期に中断せざるを得ない要因ともなっている。これまでSRIによる性機能障害に、シルデナフィル(商品名:バイアグラ)が有効なことは知られていたが、米国ニューメキシコ大学医学部のH. George Nurnberg氏らは、女性にも同様に効果があると報告した。JAMA誌2008年7月23日号より。

企業人のメンタルヘルスを考える 「ワーク・ライフバランス チャリティ健康セミナー」を開催

年間の自殺者が3万人を越え、自殺対策基本法の制定(2006年6月)、自殺総合対策大綱の策定(2007年6月)など、自殺対策・予防が大きな社会問題となっているが、 1)社会や企業などの各種団体の担当者や管理者への啓蒙活動 2)セミナー参加者の心と身体の健康つくりへの貢献 3)自殺予防に関する団体の支援(研修会の収益の寄付など) 4)官、民、学の枠を超えた連携基盤を構築することを目的に、今秋、軽井沢でセミナーが開催される。現代日本で増え続けるメンタル関連疾患を社会全体で理解するため、各界の有名講師が集まるとともに、セミナーの収益はすべて日本いのちの電話連盟など自殺予防の活動を行っている民間団体に寄付される。 ワーク・ライフバランス チャリティ健康セミナー(第1回) ●日 時:2008年(平成20年)10月9・10日(木、金) ●会 場:万平ホテル(長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢旧軽井沢925)●主 催:ワーク・ライフバランス チャリティ健康セミナー ●詳細・問い合わせはホームページをご覧くださいhttp://www.occn.zaq.ne.jp/cuakf809/ ●お問い合わせ先:〒168-0081 東京都杉並区宮前3-8-3-105(有)ケイ・マーケティング・コミュニケーションズ  河村久美子 (kumik@yk9.so-net.ne.jp)Phone:03-3247-6248 / Fax:03-3247-6271

末梢静脈カテーテルの交換はルーチンに行う必要はない

末梢静脈カテーテルの交換はルーチンに行うべきか、それとも臨床適応となった場合にだけ行えばよいか。CDC(疾病予防管理センター)では感染対策の観点から72~96時間ごとに変えるべきとしているが、そのエビデンスは乏しく、また近年、ルーチンに変えるほうが静脈炎の発症率が高いといった報告もある。そうしたなか王立ブリスベーン&ウーマンズ病院(オーストラリア)臨床看護センターのJoan Webster氏らは、静脈炎発症率とコストの面で検討を行い、「臨床適応の場合だけ行えばいいようだ」と報告した。BMJ誌オンライン版2008年7月8日号より。

プライマリ・ケアにおける急性腰痛症は回復に時間がかかる

オーストラリアの開業医によって管理される急性腰痛症患者の予後を評価する研究が、ジョージ国際健康研究所筋骨格部門(オーストラリア)のNicholas Henschkeらによって行われた。「診療ガイドラインにあるほど予後良好ではない」と報告されている。BMJ誌オンライン版2008年7月7日号より。