日本初かつ唯一の医療用まつ毛育毛剤が発売

提供元:ケアネット

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公開日:2014/10/17

 

 2014年10月15日、睫毛貧毛症治療薬「グラッシュビスタ外用液剤0.03%5mL(一般名:ビマトプロスト)」の発売記者発表会が都内にて行われた。
 アラガン・ジャパン株式会社と塩野義製薬株式会社の担当者、および東京ミッドタウン皮膚科形成外科Noage(ノアージュ)院長 今泉 明子氏により製品概要が紹介された。

 本剤は、アラガン・ジャパン株式会社が医療用医薬品として製造販売承認を受けた、国内初かつ唯一の睫毛貧毛症治療薬で、9月29日に発売された。共同販売契約を締結している塩野義製薬株式会社は10月20日より発売を開始する。

睫毛貧毛症とは

 睫毛貧毛症とは、睫毛が不足または不十分な状態であることを特徴とする疾患である。原因は多岐にわたるが、加齢などの特発性要因、アトピー性皮膚炎などの眼周囲の皮膚炎や感染症、自己免疫疾患、抗がん剤などの薬剤により誘発されて生じる。

 これまで、日本国内では適応を有する医療用医薬品はなく、個人輸入などによって未承認の薬剤を購入して使用することがあった。

承認を取得した睫毛育毛剤

 グラッシュビスタは保険適用外医薬品となるが、医師の処方箋が必要な医療用医薬品である。価格は各医療機関で設定できる。

 有効成分であるビマトプロスト(Prostaglandin F2α誘導体)が睫毛の毛包に作用し、毛周期における成長期を延長することにより、睫毛の成長を促進する。その結果、睫毛の長さ、太さ、濃さを改善すると考えられている。
 ただし、発毛可能な毛包が存在しない場合は、本来の効果が得られない。

 なお、このビマトプロストは緑内障・高眼圧症治療薬の開発中に、有害事象として睫毛の成長が報告されたことから、睫毛貧毛症治療薬として着目、開発された。

臨床試験
●国内第III相試験デザイン
 方法:多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験
 対象:特発性睫毛貧毛症患者(173例)
 評価:GEA-J評価(日本人用画像数値化付き総合的睫毛評価スケール)による睫毛の全般的な「際立ち度」、デジタル画像による長さ・太さ・色の濃さの解析、9項目の睫毛満足度質問票(ESQ-9)

●有効性(4ヵ月時点)
 GEA-J評価:1段階以上の改善の割合は、ビマトプロスト群77.3%、プラセボ群17.6%(p<0.01)

 デジタル画像解析:長さ/太さ/濃さの変化量は、ビマトプロスト群1.62mm/0.35mm2/-12.02(明度単位)、プラセボ群-0.04mm/-0.03mm2/1.38(明度単位)(各々p<0.001)
 ※明度単位は0(黒)から225(白)のグレイスケールで判定し、負の変化はベースラインよりも色が濃いことを示す。

 ESQ-9:長さ/ボリューム/全般の満足度は、ビマトプロスト群58.0%/46.6%/55.7%、プラセボ群18.8%/18.8%/22.4%

 なお、抗がん剤による睫毛貧毛症患者においても同様に、プラセボ群に対する有効性が認められた。

●安全性
 上記の試験において、安全性評価対象87例中14例(16.1%)に副作用が認められた。主な副作用は結膜充血、眼脂、皮膚色素過剰であった。

使用方法
 1日1回就寝前に、片目ごとに上睫毛の生え際に1滴を塗布する。塗布の際には、添付の専用ブラシ(アプリケーター)を用いる。一度使用したブラシは廃棄する(左右の目に1本ずつ使用する)。

 上睫毛の生え際以外に薬液がついた場合は、メラニンの増加によりまぶたが黒ずむことがあるため、すぐに拭き取るか洗い流す。

国内承認品の重要性

 今泉氏らは、睫毛貧乏症治療においてこれまで承認を得ている薬剤はなく、インターネットなどで販売されている未承認の医薬品が個人輸入されている実態を紹介した。しかし、医師の指導に基づかない不適切な使用や、模造品による有害事象の危険性があることを指摘した。

 そのうえで、グラッシュビスタが厚生労働省より製造販売承認を取得したことで、承認基準による有効性と安全性の確認、安全性管理、品質管理、医薬品副作用被害救済制度の対象となることなどのメリットを挙げ、今後は睫毛貧毛症の患者さんに安心して治療に臨んでもらえると強調した。

(ケアネット 森 幸子)