米国・デューク大学のTerrie E. Moffitt氏らは、成人期注意欠如・多動症(ADHD)と小児期発症神経発達症との関連を明らかにするため、ニュージーランドで1972~1973年に生まれた1,037例について解析を行った。その結果、成人期ADHDの90%が小児期ADHD歴を有していないことを報告した。成人期ADHDは小児期発症神経発達症であるとの仮説が広く知られているが、これまで成人期ADHD患者の小児期に言及した長期前向き試験はなかったという。American Journal of Psychiatry誌オンライン版2015年5月22日号の掲載報告。
研究グループは、1コホートにおいて、成人期に診断されたADHD患者のフォローバック解析を、小児期に診断されたADHD患者のフォローフォワード解析と共に報告した。ニュージーランド、ダニーデンで1972~1973年に出生した1,037例の被験者を同時出生コホートとし、38歳まで追跡調査した(保持率95%)。ADHD症状、臨床的特徴、合併症、神経心理学的欠陥、ゲノムワイド関連研究による多遺伝子リスク、生活障害指標を評価した。データは、被験者、両親、教師、その他の情報提供者、神経心理学的検査の結果、薬歴などから収集した。成人期ADHDは研究アウトカムの評価基準に基づくDSM-5分類により診断し、発症年齢およびcross-settingによる確証は考慮しなかった。
主な結果は以下のとおり。
・予想されたとおり、小児期ADHDは6%に認められ(大部分が男性)、小児期の合併症、神経認知障害、多遺伝子リスク、残された成人期の生活障害と関連した。
・同じく予想どおり、成人期ADHDは3%(性差なし)に認められ、成人期の薬物依存、生活障害および受療との関連が認められた。
・一方、予想に反して、小児期ADHD群と成人期ADHD群は実質的にまったく重複する部分がなかった。すなわち、成人期ADHDの90%が小児期ADHD歴を有していなかった。
・同様に予想に反して、成人期ADHD群では小児期、成人期のいずれにおいても神経心理学的欠陥が認められず、また、小児期ADHD患者の多遺伝子リスクが認められなかった。
以上より、ADHDの臨床像を示す成人が小児期神経発達症を有していない可能性が考えられた。著者らは「もし結果が再現されれば、本疾患の分類体系における位置付けを再考するとともに、研究を行って成人期ADHDの病因を追及すべきと思われる」と指摘している。
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(ケアネット)