内在性制御性T細胞、腎移植後の免疫抑制療法の減少を可能に/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2020/11/06

 

 内在性制御性T細胞(nTreg)の自家移植は、腎移植を受け免疫抑制された患者においても安全で実施可能である。ドイツ・シャリテ大学のAndy Roemhild氏らが、単施設における医師主導型nTreg用量漸増第I/IIa相臨床試験「ONEnTreg13試験」の結果を報告した。前臨床研究では、nTregが固形臓器移植後または移植片対宿主病(GVHD)後の移植片拒絶反応を遅延または防止し、in vivoにおいて養子移入後、生物学的薬剤や先進治療製剤による自己免疫や好ましくない免疫原性を制御する力があることが示されている。しかし、nTregによる養子細胞治療を広く実施するには、容易で堅実な製造方法、過剰な免疫抑制のリスク、標準治療薬との相互作用、安全性と有効性をモニタリングするバイオマーカーなど、実装に関連するさまざまな課題があった。BMJ誌2020年10月21日号掲載の報告。

腎移植2週間前に採取した末梢血よりnTreg細胞を作製し、移植7日後に投与

 ONEnTreg13試験は、多施設共同研究「ONE Study」の参加施設であるドイツ(ベルリン)のシャリテ大学病院にて実施された。対象は生体腎移植のレシピエント11例である。

 腎臓移植2週間前に採取した40~50mLの末梢血からCD4+CD25+FoxP3+nTreg細胞を作製し、腎移植7日後に1回投与量0.5、1.0、または2.5~3.0×106個/体重kgのいずれかを静脈内投与した。その後48週まで、3剤併用免疫抑制療法から低用量タクロリムス単剤療法へ段階的な漸減を実施した。

 主要な臨床および安全性の評価項目は、60週時点での複合エンドポイントとし、さらに3年間追跡調査を行った。評価には、生検により確認された急性拒絶反応の発生、nTreg注入関連有害事象、過剰免疫抑制などを含めた。副次評価項目は、移植腎機能とした。

 結果について、安全域とバイオマーカーを確立するためにONEnTreg13試験の前に同施設で実施したONErgt11-CHA試験の9例(参照群)と比較した。

nTreg療法は、忍容性が良好で単剤免疫抑制療法を実現

 全患者で、十分な量と純度、機能を備えたnTreg細胞を作製することができた。3つのnTreg用量漸増群のいずれにおいても、用量制限毒性は確認されなかった。

 nTreg群と参照群で、3年同種移植片生着率は100%であり、臨床および安全性プロファイルは類似していた。nTreg群では11例中8例(73%)が単剤による安定した免疫抑制療法を達成したが、参照群では標準的な2剤または3剤併用による免疫抑制療法は継続されたままであった(p=0.002)。作用機序としては、従来のT細胞活性化が低下し、nTregは生体内でポリクローナルからオリゴクローナルT細胞受容体レパートリーにシフトした。

 著者は、症例数が少ないことを研究の限界として挙げたうえで、「今回の結果は、Tregの有効性のさらなる評価を支持するものであり、移植やあらゆる免疫疾患における次世代nTreg療法の開発の基礎となる」とまとめている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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