医療一般|page:1

大腸がん1次治療のセツキシマブ、RAS/BRAF野生型の左側、男性に有効(DEEPER)/日本臨床腫瘍学会

 DEEPER試験はJACCRO(日本がん臨床試験推進機構)が主導し、RAS野生型切除不能大腸がんの1次治療として、3剤併用化学療法(mFOLFOXIRI)の上乗せとして抗EGFR抗体薬・セツキシマブと抗VEGF抗体薬・ベバシズマブの有用性を比較検討した無作為化第II相試験である。これまでにセツキシマブ併用群はベバシズマブ併用群に比べ、主要評価項目である腫瘍縮小率(DpR)が有意に高かったことが報告されている。2025年3月6~8日に行われた第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)のPresidential Sessionにおいて、聖マリアンナ医科大学 臨床腫瘍学講座の砂川 優氏が、サブグループ解析を含む本試験の最終解析を報告した。

腎細胞がんへのbelzutifan、安全性プロファイルとその管理戦略(LITESPARK統合解析)/日本臨床腫瘍学会

 belzutifanはHIF-2α阻害薬として米国で初めて承認された薬剤であり、日本でも承認申請中である。独自の作用機序を有し、貧血および低酸素症を含む特有の有害事象(AE)プロファイルを示すことが明らかになっている。腎細胞がん患者を対象にbelzutifanの安全性プロファイルを評価することを目的として、4つの臨床試験の事後統合解析が実施され、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのEric Jonasch氏が結果を第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で発表した。  本解析は、既治療の進行淡明細胞型腎細胞がん(RCC)患者を対象とした第I相LITESPARK-001試験、第II相LITESPARK-013試験、第III相LITESPARK-005試験、およびフォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)病関連腫瘍患者を対象とした第II相LITESPARK-004試験から、belzutifan 120mgの1日1回経口投与を受けたRCC患者を対象に実施された。

初発Ph+ALLへのポナチニブvs.イマチニブ、年齢別・バリアント別のMRD陰性とPFS(PhALLCON)/日本臨床腫瘍学会

 新たにフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ALL)と診断された成人患者に対してポナチニブとイマチニブを比較した第III相PhALLCON試験では、すでに主要評価項目である導入療法終了時の微小残存病変(MRD)陰性完全寛解(CR)率において、ポナチニブ群(34.4%)がイマチニブ群(16.7%)に比べて有意に高かったことが2024年のJAMA誌に報告されている。日本も参加している本試験の結果を受け、米国では2024年3月にPh+ALLの1次治療にFDAより迅速承認されている(現在、日本で1次治療に承認されている薬剤はイマチニブのみ)。今回、本試験における年齢およびBCR::ABL1バリアント別の微小残存病変(MRD)陰性割合と無増悪生存期間(PFS)、さらに造血幹細胞移植(HSCT)を受けなかった患者における治療中に発現した有害事象(TEAE)の結果について、第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で国立がん研究センター東病院の南 陽介氏が発表した。

3年間の長期抗CGRPモノクローナル抗体治療は、片頭痛の経過にどう影響するか

 抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)モノクローナル抗体を3年以上使用することが片頭痛の経過にどのような影響を及ぼすかを判断するため、イタリア・IRCCS San Raffaele RomaのPiero Barbanti氏らは、12ヵ月間の抗CGRPモノクローナル抗体治療を3回繰り返した後、治療を中止した際の片頭痛頻度を明らかにするため、多施設プロスペクティブ実臨床試験を実施した。Journal of Neurology誌2025年1月25日号の報告。  対象は、12ヵ月間の抗CGRPモノクローナル抗体の皮下投与を1サイクルとし、3回完了した高頻度片頭痛または慢性片頭痛患者212例。中止期間(D1、D2、D3)は、3回の治療サイクル(T1、T2、T3)後、最初の1ヵ月間と定義した。主要エンドポイントは、D2と比較したD3での50%以上の治療反応率とした。副次的エンドポイントには、1ヵ月当たりの片頭痛日数(MMD)、1ヵ月当たりの頭痛日数(MHD)、1ヵ月当たりの鎮痛薬摂取量(MAI)、数値評価尺度(NRS)、頭痛影響テスト(HIT-6)、D3とD1およびD2の50%以上治療反応率の変化、慢性片頭痛の再発率、薬物過剰使用の再発率を含めた。

睡眠時間×身体活動量×食事の質、わずかな改善でも死亡リスク10%減

 睡眠・身体活動・栄養は健康の維持に重要な要素であるが、その影響について、これまで多くの場合個別に研究されてきた。オーストラリア・シドニー大学のEmmanuel Stamatakis氏らは、これらの要素の組み合わせが全死因死亡リスクに与える影響について評価し、リスクを有意に低下させる個人レベルの変化について明らかにすることを目的としたコホート研究を実施した。BMC Medicine誌2025年2月26日号掲載の報告。  本研究では、UK Biobankの前向きコホートデータから、7日間の手首装着型加速度計(Axivity AX3)データおよび自己申告による食事データを有する参加者5万9,078人(年齢中央値:64.0歳、男性:45.4%)を対象とした。加速度計で測定された睡眠時間(時間/日)と中~高強度身体活動(MVPA、分/日)は、機械学習ベースのスキーマを用いて計算された。10項目の食事品質スコア(DQS)により、野菜、果物、魚、乳製品、全粒穀物、植物油、精製穀物、加工肉および未加工肉、砂糖入り飲料の摂取量を評価した(各項目の摂取量を0[最も不健康]から10[最も健康的]の最大100ポイントで評価、値が高いほど食事の質が高いことを示す)。

米国では約10年で家族介護者数が30%以上増加

 米国では、2011年から2022年の間に自宅や介護施設で暮らす高齢者を介護する家族や友人などの数が32%増加し、このような介護者が介護に費やした時間も50%近く増加したことが、新たな研究で明らかにされた。米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のJennifer L. Wolff氏らによるこの研究は、「Health Affairs」2月号に掲載された。  この研究では、National Health and Aging Trends Study(NHATS)とNational Study of Caregiving(NSOC)の2011年と2022年のデータの分析が行われた。NHATSは、米国の65歳以上のメディケア受給者を対象にした全国調査で、高齢者の日常動作に関する情報を収集している。一方、NSOCは、家族や友人などの無償で介護を提供している人(以下、無償の介護者)に関する情報を収集している。2022年のデータでは、無償の介護者の約12%は家族以外の人(友人や近隣の人など)であり、残りは親族であった。

楽観的な人ほど貯蓄額が多い?

 物事の明るい面を見ることは、気持ちを前向きにさせるだけでなく貯蓄にも役立つ可能性のあることが新たな研究で示唆された。米コロラド大学ボルダー校のJoe Gladstone氏と米ニューハンプシャー大学のJustin Pomerance氏らによる研究で、楽観性が高い人ほど貯蓄額が多い傾向があり、この傾向は特に低所得者層で顕著であることが示唆された。この研究結果は、「Journal of Personality and Social Psychology」1月号に掲載された。  Gladstone氏は、「楽観主義は、それをかけると全てが素晴らしく見えてしまう『バラ色のメガネ』であり、将来のための貯蓄を減らす原因になる可能性があると考えられがちだ。しかし、本研究では、特に経済的困難に直面しているときには、楽観主義が貯蓄に役立つ重要な心理的資源である可能性が示唆された」と話している。

TTF-1陰性Non-Sq NSCLCに対するアテゾリズマブ+カルボプラチン+nab-パクリタキセル(LOGIK2102)/日本臨床腫瘍学会

 非小細胞肺がん(NSCLC)の治療において、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)とペメトレキセドを含む化学療法の併用療法が広く用いられている。しかし、TTF-1陰性の非扁平上皮(Non-Sq)NSCLCでは、ペメトレキセドの治療効果が乏しいことも報告されている。そこで、ペメトレキセドを含まないレジメンとして、アテゾリズマブ+カルボプラチン+nab-パクリタキセルの有用性を検討する国内第II相試験「LOGIK2102試験」が実施された。第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)において、白石 祥理氏(九州大学病院 呼吸器内科)が本試験の結果を報告した。

統合失調症の認知機能改善に対するメトホルミンの有用性

 統合失調症の陰性症状に対して、メトホルミンに本当に有用性があるかは、まだ結論が出ているとはいえない。中国・The Brain Hospital of Guangxi Zhuang Autonomous RegionのZhen-Juan Qin氏らは、統合失調症患者の神経認知機能に対するメトホルミンの効果に関するランダム化比較試験(RCT)を評価するため、システマティックレビューを実施した。Frontiers in Psychiatry誌2025年1月20日号の報告。  中国のデータベース(WanFang、Chinese Journal Net)および英語のデータベース(PubMed、EMBASE、PsycINFO、Cochrane Library)より、包括的な検索を実施し、統合失調症の神経認知アウトカムに対するメトホルミンの影響を評価したRCTを特定した。

EBウイルスが腎移植後のリンパ増殖性疾患に関与

 腎移植は命を救うことにつながり得るが、移植を受けたレシピエントの中には、移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)のリスクの高い人のいることが、新たな研究で示唆された。リスクを高める元凶は、伝染性単核球症の原因ウイルスとして知られているエプスタイン・バー・ウイルス(EBV)であるという。米ペンシルベニア大学病院腎電解質・高血圧部門のVishnu Potluri氏らによるこの研究の詳細は、「Annals of Internal Medicine」に1月28日掲載された。

うつ病歴は慢性疾患の発症を早める

 過去にうつ病と診断されたことがある人は、同年代のうつ病歴がない人に比べて中高年期に慢性疾患に罹患している可能性が高く、また、より早いペースで新たな慢性疾患を発症する可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。英エディンバラ大学の統計学者であるKelly Fleetwood氏らによるこの研究は、「PLOS Medicine」に2月13日掲載された。Fleetwood氏は、「うつ病歴のある人は、ない人に比べて心臓病や糖尿病などの慢性疾患を発症しやすい」と述べている。  この研究では、UKバイオバンク参加者から抽出した17万2,556人を対象に、UKバイオバンク参加当時および追跡期間中のうつ病歴と慢性疾患との関連が検討された。対象者は、2006〜2010年にUKバイオバンクに参加し(参加時の年齢は40〜71歳)、評価を受けていた。追跡期間は平均6.9年だった。慢性疾患については、血液がん、固形がん、心筋炎、冠動脈性心疾患、脳卒中、1型および2型糖尿病、高血圧、勃起不全、アレルギー性・慢性鼻炎、慢性閉塞性肺疾患、認知症など69種類を対象とした。対象者の17.8%に当たる3万770人がうつ病歴を持っていた。

症状を電子的に報告するシステムががん患者の症状管理やQOLを改善

 電子機器を通じて週に1回、自分の症状をケアチームに知らせた進行がんの患者では、通常ケアを受けた患者に比べて生存期間の延長にはつながらなかったものの、身体機能の低下、症状の進行、健康関連QOLの低下、救急外来の初回受診までの期間が有意に遅延し、救急外来の受診回数も減少したとする研究結果が報告された。米ノースカロライナ大学(UNC)医学部教授で腫瘍内科学部長のEthan Basch氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Medicine」に2月7日掲載された。  今回の研究で検討された患者報告アウトカム(patient-reported outcome;PRO)による症状のモニタリングは、電子的に提供される分かりやすいチェックリストを用いて患者が痛みや運動能力などの日常的な問題の程度を評価するもので、患者はコンピューターやスマートフォンを使って自宅にいながらケアチームにフィードバックを送ることができる。

「善玉」コレステロールは緑内障リスクを高める?

 心臓の健康に良いとされるHDLコレステロール(HDL-C)は緑内障のリスクを上昇させる一方で、心臓の健康に悪いとされるLDLコレステロール(LDL-C)は緑内障リスクを低下させる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。中山大学(中国)中山眼科センターのZhenzhen Liu氏らによるこの研究結果は、「British Journal of Ophthalmology」に2月4日掲載された。  Liu氏は、「HDL-Cは70年間にわたり『善玉コレステロール』と考えられてきた。しかし、この研究では、高レベルのHDL-Cが必ずしも良好なアウトカムと関連しているわけではないことが示された」と述べている。

新規作用機序の潰瘍性大腸炎治療薬オザニモド、その特徴は?/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブは、2024年12月27日にオザニモド(商品名:ゼポジア)について、「中等症から重症の潰瘍性大腸炎(既存治療で効果不十分な場合に限る)」の適応で、厚生労働省より製造販売承認を取得した。そこで潰瘍性大腸炎およびオザニモドへの理解を深めることを目的として、2025年2月25日にメディアセミナーを開催した。本セミナーでは、仲瀬 裕志氏(札幌医科大学医学部 消化器内科学講座 教授)が、潰瘍性大腸炎の概要、潰瘍性大腸炎患者を対象としたアンケート調査の結果、オザニモドの特徴や臨床成績などについて解説した。

治療抵抗性強迫症に対するSSRI+ブレクスピプラゾールの有用性

 強迫症(OCD)は、重大な機能障害を伴う慢性疾患である。OCDの治療では、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)により、一部しか症状が改善しないことも少なくない。このような場合、一般的に確立された治療法として、抗精神病薬併用によるSSRI増強療法が多くの患者で行われている。イタリア・ミラノ大学のLuca Giacovelli氏らは、治療抵抗性OCD患者におけるSSRIとブレクスピプラゾール併用療法の有効性および忍容性を評価するため、予備的レトロスペクティブ観察研究を実施した。International Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2025年2月6日号の報告。

硬膜外ステロイド注射は慢性腰痛に効果あり?

 特定のタイプの慢性腰痛患者において、痛みや障害の軽減を目的とした硬膜外ステロイド注射(epidural steroid injection;ESI)の効果は限定的であることが、米国神経学会(AAN)が発表した新たなシステマティックレビューにより明らかになった。このレビュー結果は、「Neurology」に2月12日掲載された。  ESIは、脊柱の硬膜外腔と呼ばれる部分にステロイド薬や局所麻酔薬を注入して炎症を抑え、痛みを軽減する治療法である。このレビューの筆頭著者である米ロマリンダ大学医学部のCarmel Armon氏は、「慢性腰痛は一般的だが、動作や睡眠、日常的な活動を困難にして、生活の質(QOL)に悪影響を及ぼし得る」とAANのニュースリリースで述べている。

日本人の4人に1人がコロナ陰謀論を信じている!?

 日本人の約4人に1人は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する何らかの陰謀論を信じているとする調査結果が報告された。旭川医科大学社会医学講座の佐藤遊洋氏、東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野の田淵貴大氏らの研究によるもので、詳細は「PLOS One」に12月30日掲載された。収入や保有資産が多い人、正規雇用されている人に陰謀論を信じている人が多いという、海外とは異なる傾向が観察されたとのことだ。  COVID-19パンデミック以降、製薬会社が利益を得るためにウイルスを作成した、世界人口を減らすためにウイルスがばらまかれたといった、さまざまな陰謀論が拡散された。そのような陰謀論、または不正確な情報の流布と支持の高まりのために、社会不安の拡大、あるいは公衆衛生対策への悪影響が生じ得ることが指摘されている。例えば国内では、陰謀論とは異なるが、偏った報道の影響でヒトパピローマウイルスワクチンの積極的勧奨一時中断に至り、子宮頸がん対策が遅延した。よってCOVID-19陰謀論についても、今後への備えとして、国内でそれを信じる人の割合や特徴の傾向を明らかにしておく必要がある。

過敏性腸症候群の精神的苦痛を可視化/川崎医大ほか

 過敏性腸症候群(IBS)は日本人の約10人に1人が罹患するとされ、不登校や休職など日常生活に支障を来すケースも多い。血液検査や内視鏡検査、CT検査などで異常が見つからないことから、周囲に苦痛が理解されにくいといった問題がある。また、IBS患者や機能性ディスペプシア(FD)患者は、不安や抑うつの傾向が高く、心理的ストレスはIBSやFDの病態生理において重要な役割を果たすと考えられている。しかし、心理的ストレス下での脳活動についての詳細な研究は少ないのが現状である。

多発性骨髄腫、ASCT後維持療法の中止から3年後のMRD陽性転換率/Blood

 多発性骨髄腫患者に自家造血幹細胞移植(ASCT)後、レナリドミド維持療法を実施し、微小残存病変(MRD)陰性を3年間維持した後、レナリドミド療法を中止したときのMRD陽性への転換、無治療生存期間(TFS)、無増悪生存期間(PFS)を、ギリシャ・National and Kapodistrian University of AthensのEvangelos Terpos氏らが評価した。その結果、レナリドミド維持療法中止後3年時点のTFS率は75.8%であった。また、MRD陽性に転換し維持療法を再開した12例のうち4人が進行したが全員生存しているという。Blood誌オンライン版2025年2月26日号に掲載。