医療一般|page:75

セマグルチド製剤の最適使用推進ガイドラインを公表/厚労省

 社会的に痩身目的での糖尿病治療薬の使用が散見され、本来必要な患者に治療薬が届かないといった事態が起こっている。そのような中でセマグルチド製剤のウゴービ皮下注が肥満症治療薬として承認され、2023年11月22日に薬価収載された。これらの事態を懸念し、厚生労働省は医療機関および薬局に対する周知を目的として、本剤に関する「最適使用推進ガイドライン」を11月21日に公表した。  本ガイドラインには、ウゴービ皮下注を肥満症に対して使用する際の留意事項が記載されており、その使用に際し、ガイドライン内容に留意するよう促している。

ワルファリン・DOAC、重大な副作用に「急性腎障害」追加/厚労省

経口抗凝固薬の添付文書について、2023年11月21日に厚生労働省が改訂を指示。国内で販売されている直接経口抗凝固薬(DOAC)4剤(アピキサバン、エドキサバン、ダビガトラン、リバーロキサバン)とワルファリンカリウムの添付文書の「副作用」に重大な副作用として急性腎障害が追記された。  経口抗凝固薬の投与後に急性腎障害が現れることがある。本剤投与後の急性腎障害の中には、血尿や治療域を超えるINRを認めるもの、腎生検により尿細管内に赤血球円柱を多数認めるものが報告されている。

日本における慢性疼痛・片頭痛患者の医療アクセスへの障壁

 慢性疼痛および片頭痛は、患者のQOLや生産性の低下などの経済的な負担が大きいにもかかわらず、十分に治療されていないケースが少なくない。治療を受けない理由を明らかにすることは、介護を求める行動を改善するための介入を可能にするためにも重要である。しかし、日本において、疾患特有の治療を受けない理由に関する報告は限られている。順天堂大学の唐澤 佑輔氏らは、慢性疼痛および片頭痛を有する未治療の患者における医療アクセスへの障壁を明らかにするため、調査を行った。その結果から、痛みに伴うリスクとその原因、安価な治療選択肢の利用の可能性、適切な治療施設へのアクセスについて患者教育を行うことで、治療率が向上する可能性が示唆された。Frontiers in Pain Research(Lausanne, Switzerland)誌2023年10月3日号の報告。

関節リウマチに対するJAK阻害薬、実臨床下で有効性を確認

 関節リウマチ(RA)に対する治療薬の中では比較的新しいJAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬は、その効果を疑問視する声があったものの、実臨床下において全般的に大きな効果を上げていることが、新たな研究で明らかになった。JAK阻害薬は、体内での炎症に関わっているサイトカインの細胞内伝達に必要な酵素であるJAKの働きを阻害することで炎症を制御する内服薬。神戸大学医学部附属病院の林申也氏らによるこの研究結果は、「Rheumatology」に11月1日掲載された。  RAは、免疫系が体内の関節組織を誤って攻撃することにより引き起こされる自己免疫疾患で、関節の痛み、腫れ、こわばりなどを引き起こす。炎症が全身に広がると、時間の経過とともに、心臓、肺、皮膚、目など、体の他の部位にも問題が生じる可能性がある。RA治療薬の多くは、免疫反応の一部を標的とすることで関節障害の進行を遅らせる。JAK阻害薬もそのような治療薬の一つだ。しかし、本研究には関与していない、米Rheumatology AssociatesのStanley Cohen氏は、「JAK阻害薬は、RA治療の第一選択肢とは考えられていない」と言う。

脳の活動はZoomよりも対面での会話の方が活発化する

 Web会議システムとして広く使われているズーム(Zoom)で誰かと話をする場合、相手はもちろん生身の人間だ。しかし、脳にとっては、対面での会話と同じとはいかないようだ。高度なイメージングツールを使った新たな研究によると、対面で会話をしている際の脳活動は、ズームで会話をしている際の脳活動とは異なることが示された。論文の上席著者である米イェール大学精神医学、比較医学、神経科学分野教授のJoy Hirsch氏は、「われわれの研究により、人間の脳の社会的な活動に関わる神経回路や領域は、ズームでの会話よりも対面での会話の方が活発化することが明らかになった」と述べている。この研究の詳細は、「Imaging Neuroscience」に10月25日掲載された。

猛暑日の増加で心血管疾患による死者が劇的に増加?

 夏に猛暑日が続くのが当たり前のようになりつつあるが、これから数十年のうちに米国では、暑熱に関連した心疾患や脳卒中などの心血管疾患による死者数が劇的に増加するとの予測が、米ペンシルベニア大学医学部のSameed Khatana氏らの研究で示された。この研究の詳細は、「Circulation」に10月30日掲載された。  専門家の間では、熱波がしばしば脳卒中や心筋梗塞などの心血管疾患を引き起こし、その発症例は特にリスク因子を持つ人で多いことが知られている。これは、Khatana氏によると、心臓や血管(心血管系)が体温調節で中心的な役割を果たしているためだという。体がオーバーヒートすると、発汗によって熱を放出するために、心臓はより激しく働いて血液を体の末梢まで行きわたらせようとするが、脆弱な人にはそれが過剰な負荷となることがある。

パクスロビドのCOVID-19罹患後症状の予防効果に疑問符

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬として知られるパクスロビド(一般名ニルマトレルビル・リトナビル、日本での商品名パキロビッドパック)のCOVID-19の罹患後症状(post-COVID-19 conditions;PCC)に対する効果に疑問を投げかける研究結果が報告された。COVID-19の重症化リスクや死亡リスクが高い患者に処方されることが多い抗ウイルス薬のパクスロビドを投与された患者と投与されなかった患者の間で31種類のPCCについて比較したところ、肺塞栓症・静脈血栓塞栓症以外はリスクが同等であることが示されたのだ。米Veterans Affairs Puget Sound Health Care Systemおよび米ワシントン大学消化器学分野のGeorge Ioannou氏らによるこの研究の詳細は、「Annals of Internal Medicine」に10月31日掲載された。

乳がん死亡率とスタチン使用、コレステロール値の関係

 スタチン使用と乳がん死亡率との関連が報告されているが、コレステロール値が考慮されている研究はほとんどない。フィンランド・Tays Cancer CentreのMika O Murto氏らは、乳がん死亡率と血清コレステロール値およびスタチン使用との関連を調査するコホート研究を実施し、結果をJAMA Network Open誌2023年11月1日号に報告した。  本研究には、フィンランドで1995年1月1日~2013年12月31日に新たに浸潤性乳がんと診断され、ホルモン受容体についての情報と少なくとも1回のコレステロール測定値が記録されていた女性患者が含まれた。主要評価項目は、乳がん診断日から2015年12月31日までの乳がん死亡率と全死亡率であった。

温泉地での集中的健康管理で身体の諸指標と睡眠の質が改善

 最近、温泉は、リゾートとしてヨーロッパなどでは健康増進の目的で利用されている。そこで、中国・重慶医科大学公衆衛生学のYu Chen氏らの研究グループは、温泉地での慢性疾患ハイリスク者の身体検査指標と睡眠の質に対する集中的健康管理の効果を検証し、その結果を報告した。International Journal of Biometeorology誌2023年10月6日に掲載。  本研究では、慢性疾患のリスクが高いボランティア114例を介入群57例、対照群57例に分けて検証。介入群には4週間(28日間)、重慶の統景温泉で定期的な日課、バランスの取れた食事、適切な運動、的確な健康教育など、包括的な健康管理介入を行った。

回復期リハビリテーション病棟でのせん妄に対する向精神薬の減量

 川崎こころ病院の植松 拓也氏らは、同施設の回復期リハビリテーション病棟に転院してくる患者さんの多くが、急性期病棟入院時にせん妄に対する向精神薬処方が行われている現状を踏まえ、精神科医、薬剤師、リハビリテーション医が協力し、向精神薬減量への取り組みを行った。その結果から、急性期病棟で処方されている向精神薬の種類および用量を回復期リハビリテーション病棟で減量できる可能性があることを報告した。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2023年10月26日号の報告。  対象は、2021年4月~2022年3月に川崎こころ病院の回復期リハビリテーション病棟を退院した患者88例。診療記録より基本的情報および向精神薬処方状況を抽出した。

米FDAが全身型重症筋無力症治療薬のジルビスクを承認

 米食品医薬品局(FDA)は10月17日、抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体陽性の全身型重症筋無力症の成人患者に対する治療薬として、補体5(C5)阻害作用を有する自己投与型の皮下注ペプチド製剤ジルビスク(一般名ジルコプラン)を承認した。  全身型重症筋無力症はまれな自己免疫疾患で、神経筋接合部における機能障害と損傷を特徴とする。全身型重症筋無力症の病態は、補体カスケードの活性化や免疫細胞の過剰反応、病原性のIgG(免疫グロブリンG)自己抗体の作用など複数の要因によって引き起こされると考えられている。

30代で糖尿病と診断されると寿命が14年短くなる?

 人生のより早い時点で2型糖尿病と診断されるほど、寿命が短くなることを示唆するデータが報告された。30代で診断された場合、50歳時点の余命が14年短くなる可能性があるという。英ケンブリッジ大学のEmanuele Di Angelantonio氏らの研究によるもので、詳細は「The Lancet Diabetes & Endocrinology」10月号に掲載された。性別で比較した場合、女性でより大きな影響が認められるという。  この研究では、2件の大規模疫学研究を統合したデータが用いられた。そのうち1件は、心血管疾患に関連する潜在的なリスク因子探索のための国際共同研究(Emerging Risk Factors Collaboration)であり、別の1件は英国で行われている「UKバイオバンク」。高所得国を中心に19カ国、151万5,718人(平均年齢55.0±9.2歳、男性45.6%)のデータが解析された。

認知機能維持にゴルフやウォーキングが有望か

 歳を重ねる中で思考力を保つためにするべきことは何なのか。その答えは、ゴルフ、2本のポールを持って行うノルディックウォーキングや通常のウォーキングであることが、新たな研究で明らかになった。東フィンランド大学(フィンランド)のJulia Kettinen氏らによるこの研究結果は、「BMJ Open Sport & Exercise Medicine」に10月12日掲載された。  一過性の有酸素運動により、運動の強度や実施時間、種類に関係なく認知機能が向上する可能性が過去の研究で示唆されている。この研究では、5日間にわたるランダム化クロスオーバー試験により、認知的要求度の高い3種類の高齢者に適した有酸素運動(18ホールのゴルフ、6kmのノルディックウォーキング、6kmのウォーキング)が認知機能に及ぼす即時的な効果が検討された。対象者であるゴルフを趣味とする健康な高齢者25人(平均年齢69±4歳、男性16人)には、3種類の運動の全てを、各運動の間に1日のウォッシュアウト期間を挟みながら、実際の生活環境の中で自分のペースで行ってもらった。運動の際には、フィットネスモニターにより距離、時間、ペース、エネルギー消費量、歩数を測定し、ECG(心電図)センサーにより心拍数も測定した。

肥満は胆道がんの発症・死亡に関連~アジア人90万人のプール解析

 肥満と胆道がんの関連について、愛知県がんセンターの尾瀬 功氏らがアジア人集団のコホート研究における約90万人のデータをプール解析した結果、BMIと胆道がん死亡率の関連が確認された。さらに肥満は胆石症を介して胆道がんリスクに影響を与え、胆石症がなくても胆道がんリスクを高める可能性があることが示唆された。International Journal of Cancer誌オンライン版2023年11月15日号に掲載。

認知症の進行抑制に難聴治療がカギとなる可能性/難聴対策推進議員連盟

 国会議員で組織する難聴対策推進議員連盟が、「難聴対策で認知症の進行抑制-補聴器を用いた聴覚介入の有用性を」テーマに、メディアセミナーを開催した。セミナーでは、難聴と認知症の関係や難聴と社会的孤立や受傷リスクの増大、難聴患者の声などが講演された。  はじめにフランク・リン氏(ジョンズ・ホプキンス大学教授)が「認知症の進行抑制における聴覚介入の有用性-ACHIEVE試験の結果より-」をテーマに研究内容と今後の展望について説明した。  全世界が高齢化による認知症の患者が増加している。そんな中、中年期および老年期の難聴は、認知症の深刻なリスク因子であることが明らかになっている。  難聴になると、認知的負荷、脳への刺激減少、社会的孤立が進み、認知機能の低下や認知症をもたらすとされている。そこで、リン氏らの研究グループは、高齢者の加齢と認知機能の健康評価について研究するACHIEVE試験を行った。

地域のソーシャルキャピタルと認知症発症との関連~日本老年学的評価研究データ分析

 近年、社会や地域における、人々の信頼関係・結びつきを意味するソーシャルキャピタルという概念が注目されている。個人レベルでのソーシャルキャピタルは、認知機能低下を予防するといわれている。また、コミュニティレベルでのソーシャルキャピタルが、認知症発症に及ぼす影響についても、いくつかの研究が行われている。国立長寿医療研究センターの藤原 聡子氏らは、日本人高齢者を対象とした縦断的研究データに基づき、コミュニティレベルのソーシャルキャピタルと認知症発症との関連を調査した。その結果から、市民参加や社会的一体感の高い地域で生活すると、高齢女性の認知症発症率が低下することが示唆された。Social Science & Medicine誌2023年12月号の報告。

好きな音楽が痛みを軽減する可能性を示す新研究

 好きな音楽を聴くと痛みが和らぐ可能性のあることが、新たな研究で示唆された。これまでにも、音楽が鎮痛薬の代わりになる可能性については研究されてきたが、今回、音楽を聴いているときの感情的反応が痛みの緩和に大きな役割を果たすことが示されたという。マギル大学(カナダ)のDarius Valevicius氏らによるこの研究の詳細は、「Frontiers in Pain Research」に10月25日掲載された。

血液検査が双極性障害の診断に有用か

 双極性障害に関連するバイオマーカーを検出できる簡単な血液検査の開発に関する報告が、「JAMA Psychiatry」に10月25日発表された。論文の筆頭著者である、英ケンブリッジ大学のJakub Tomasik氏は、この検査法により双極性障害の診断が容易になる可能性があると話している。  Tomasik氏は、「双極性障害は、気分が落ち込むうつ状態(うつ病エピソード)と気分が高揚する躁状態(躁病エピソード)を繰り返す精神疾患だ。ただ、双極性障害患者はたいていの場合、うつ病エピソードのときにしか医師の診察を受けない。そのため、間違って大うつ病性障害(以下、うつ病)と診断されている患者は少なくない」と説明する。一方、論文の上席著者であり同大学ニューロテクノロジー分野教授のSabine Bahn氏は、「双極性障害とうつ病は別の疾患として扱う必要がある。双極性障害患者に、気分安定薬を加えずに抗うつ薬のみを処方すると、躁病エピソードを誘発してしまう可能性がある」と同大学のニュースリリースで語っている。

日常生活の中の短時間の身体活動でも寿命が延びるか

 日常生活における家事などの身体活動であっても、寿命延伸につながる可能性を示唆するデータが報告された。シドニー大学(オーストラリア)のMatthew Ahmadi氏らの研究によるもので、詳細は「The Lancet Public Health」10月号に掲載された。数分程度の身体活動でも有意な影響が認められるという。ただし、身体活動の持続時間がより長くより高強度である場合に、寿命に対してより大きな影響が認められるとのことだ。  この研究では、英国で行われている大規模疫学研究「UKバイオバンク」のデータが解析に用いられた。余暇時間に積極的な運動を行っていない成人2万5,241人(平均年齢61.8±7.6歳、女性56.2%)を7.9±0.9年間追跡。身体活動量はウェアラブルデバイスにより把握した。追跡期間中に主要心血管イベント(MACE)が824件発生し、全死亡(あらゆる原因による死亡)は1,111人だった。なお、これまでの研究で、健康アウトカムとの関連が検討されていた最も短い身体活動持続時間は10分であることから、今回の研究では持続時間10分未満の身体活動の影響が検討された。

侵襲的⼈⼯呼吸を要したCOVID-19患者は退院半年後も健康状態が不良

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が重症化してICUで長期にわたる侵襲的人口呼吸(IMV)を要した患者は、退院後6カ月経過しても、身体的な回復が十分でなく、不安やふさぎ込みといった精神症状も高率に認められることが明らかになった。名古屋大学大学院医学系研究科救急・集中治療医学分野の春日井大介氏らの研究結果であり、詳細は「Scientific Reports」に9月4日掲載された。  IMVの離脱後には身体的・精神的な後遺症が発生することがある。COVID-19急性期にIMVが施行された患者にもそのようなリスクのあることが、既に複数の研究によって明らかにされている。ただし、それらの研究の多くはICU退室または退院直後に評価した結果であり、かつ評価項目が限られており、COVID-19に対するIMV施行後の長期にわたる身体的・精神的健康への影響は不明。春日井氏らは、同大学医学部附属病院ICUに収容されたCOVID-19患者を対象とする前向き研究により、この点を検討した。